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Google Cloud Next 2026の全発表まとめ|TPU・Gemini Agentを徹底解説

この記事のポイント

  • Next 2026の中心テーマは「Agentic Enterprise」、6主要レイヤー(基盤/エージェント/データ/業務/セキュリティ/パートナー)で同時発表
  • 第8世代TPUは訓練用8tがIronwood比3倍コンピュート、推論用8iは80%優れた性能対コスト、年内GAで大規模推論のコスト構造を変える
  • Gemini Enterprise Agent PlatformはVertex AIから進化、Build/Scale/Govern/Optimizeで全体カバー
  • Agentic Data CloudはKnowledge Catalog・Cross-Cloud Lakehouseで信頼データを軸にエージェント基盤に再設計
  • Bedrock AgentCore・Foundry Agent Serviceと並ぶフル機能基盤、既存クラウド寄せと業務連携軸で選定する局面
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

XでフォローフォローするMicrosoftMVP

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

Google Cloud Next 2026は、2026年4月22〜24日にラスベガスで開催中のGoogle Cloudの年次イベントで、「Agentic Enterprise(エージェンティック・エンタープライズ)」を中心テーマに据えた大規模な製品・戦略アップデートが一気に発表されています。
基盤(第8世代TPU)、エージェント基盤(Gemini Enterprise Agent Platform)、データ層(Agentic Data Cloud)、業務層(Workspace Intelligence)、セキュリティ(Agentic Defense)、パートナーエコシステム($750Mファンド)まで、エージェント運用の全レイヤーに同時に手が入った形です。

本記事では、Sundar Pichai氏のキーノート内容と各製品ブログをもとに、2026年4月時点の一次情報から主要発表を整理し、各発表の詳細記事・関連記事へと辿れる「内部リンクハブ」として構成しています。
日本企業にとっての影響や、AWS・Microsoftの同時期発表との位置関係、今後どの発表から検討すべきかの優先順位まで踏み込んで解説します。

✅Googleの最新動画生成AIモデル「Gemini Omni」については、以下の記事をご覧ください。
Gemini Omniとは?その性能や使い方、料金体系を徹底解説!

Google Cloud Next 2026の全体像|今年のテーマは「Agentic Enterprise」

Google Cloud Next 2026は、2026年4月22〜24日に米ラスベガスで開催中のGoogle Cloudの年次イベントで、今年の中心テーマは「Agentic Enterprise(エージェンティック・エンタープライズ)」です。

昨年までは「エージェントをどう作るか」が議論の中心でしたが、Google CEOのSundar Pichai氏は基調講演で「エージェントを作れる段階から、数千のエージェントをどう管理・運用するかの段階に移った」と明確に位置づけました。

オープニング基調講演
オープニング基調講演の画像(Google Cloud Blog "Next '26 keynote recap")

主要発表の全体像

今年のNext '26では、エージェント運用の全レイヤーに一気にアップデートが入りました。主な発表カテゴリは次のとおりです。

  • 基盤:第8世代TPU(TPU 8t / TPU 8i)・Virgo Network・Managed Lustreなどハイパーコンピュータ刷新
  • エージェント基盤:Gemini Enterprise Agent PlatformでVertex AIから進化した統合環境
  • データ層:Agentic Data Cloud(Cross-Cloud Lakehouse・Knowledge Catalog)
  • 業務層:Workspace Intelligence(AI Inbox・Gmail・Docs刷新)
  • セキュリティ:Agentic Defense(Google Cloud × Wiz統合)
  • パートナーエコシステム:$750Mファンド、120,000社のパートナー向け投資拡大

これらが同時期に一気に発表されたことこそが今年のNext '26の特徴です。個々の発表も大型ですが、エージェント運用を「基盤→データ→業務→セキュリティ」で垂直統合する意図がはっきり見える構成になっています。

注目すべき成長数値

キーノートでは、Google Cloudの直近の成長指標として次のような数字が示されました。

注目すべき成長数値

指標 数値
Google Cloud顧客のうちAI製品利用率 75%
過去12カ月で1兆トークン到達の顧客数 330社
過去12カ月で10兆トークン到達の顧客数 35社
直接API経由のトークン処理量 160億/分(前四半期比 約60%増)
Gemini Enterprise有料MAU成長率 40%(前四半期比)
2026年Google全社のML投資に占めるCloud比率 50%超


この表から見えるのは、AIエージェントが「PoC段階」から「本番運用段階」に明確に移ったという点です。過去12カ月で10兆トークンに到達した顧客が35社存在すること、直接API利用が四半期で60%増えていることは、エージェント運用が業務基幹に組み込まれ始めたシグナルといえます。

Google Cloud成長指標
Sundar Pichai氏が講演したNext '26基調講演(出典: Google Cloud Next '26基調講演動画(公式YouTube) )


AI Agent Hub1


第8世代TPU(TPU 8t / TPU 8i): AIハイパーコンピュータの刷新

Next 2026で最も注目を集めた発表の1つが、第8世代TPUの登場です。第8世代は訓練用の「TPU 8t」と推論用の「TPU 8i」の2チップ構成で、「エージェンティック時代のための2つのチップ」というキーフレーズで紹介されました。前世代のIronwood(第7世代)からの飛躍幅が特に大きい発表です。

第8世代TPU

Googleは第8世代TPUを、単なる性能向上ではなく「AIワークロードの目的別最適化」という新たな設計思想として打ち出しました。訓練向けのTPU 8tと推論向けのTPU 8iを明確に分離することで、大規模モデル開発から実運用までをより効率的に支えるインフラ基盤へ進化しています。

第8世代TPU 8t/8i発表シーン
第8世代TPU 8t/8iの2系統発表(出典:Google Cloud Blog)*

TPU 8t(訓練用)の主要仕様

訓練ワークロード向けのTPU 8tは、大規模LLMのpre-training/fine-tuningを想定したスケールアップ設計です。

TPU 8tの主要仕様

  • 単一スーパーポッド規模:最大9,600チップ+2ペタバイトの共有高帯域メモリ
  • 演算性能:121エクサフロップス(スーパーポッドあたり)
  • 性能向上:Ironwood比でポッドあたり約3倍のコンピュート性能
  • 効率:前世代比で最大2倍の性能/ワット
  • 稼働率:実効稼働時間(goodput)97%以上
  • スケーリング上限:Virgo Networkと組み合わせて最大100万チップまでほぼ線形スケーリング

単一ポッドで2ペタバイトの共有メモリを持てる構成は、大規模なMixture-of-Expertsモデルや長文コンテキスト前提の訓練でメリットが大きく、LLMの次世代訓練基盤として設計されています。

TPU 8i(推論用)の主要仕様

推論ワークロード向けのTPU 8iは、エージェント運用でのリクエスト数急増に応える低遅延・低コスト設計です。

TPU 8iの主要仕様

  • ポッド構成:単一ポッドで1,152チップを直結
  • メモリ:288GBの高帯域メモリ+384MBのオンチップSRAM(前世代比3倍)
  • CPU:カスタムAxion(ARMベース)CPUをホストに搭載
  • インターチップ帯域:19.2Tb/sに倍増、新Boardfly構造でネットワーク径を50%以上削減
  • 遅延削減:Collectives Acceleration Engineにより最大5倍の低遅延化
  • コスト効率:前世代比80%優れた性能対コスト、約2倍の顧客ボリュームを同コストで処理可能

この表で特に効いてくるのが、オンチップSRAM 3倍・ICI帯域 2倍・低遅延 5倍という3点セットです。エージェントが同時に数千〜数万本並列実行される運用では、バッチ推論のスループットだけでなくリクエスト単位のテールレイテンシがサービス品質を決めるため、オンチップSRAMの拡張はそのまま体感品質に跳ね返ります。

Virgo NetworkとAI Hypercomputerの刷新

TPU 8t/8iと同時に発表されたのが、Virgo Networkと呼ばれるAI最適化ネットワークファブリックです。データセンター規模でTPU 8tやNVIDIA Vera Rubin NVL72を「スーパーコンピュータ化」する役割を担い、100万チップ級の線形スケーリングを支える設計となっています。

Virgo NetworkとAI Hypercomputer

ストレージ面でも、Managed Lustreで10TB/秒・Rapid Storageで6→15TB/秒といったスループット強化が発表されました。Cloud TPUを既に利用している企業にとっては、訓練ジョブのI/Oボトルネック解消と推論レイテンシの底上げが同時に効く構成変更です。

提供時期と実務判断の目安

TPU 8t/TPU 8iともに2026年内GA予定とアナウンスされています。顧客事例としてCitadel Securities(定量分析ワークロードの高速・低コスト化)の名前が挙がりました。

実務的な使い分けとしては、自社で大規模LLMを訓練する企業は少なく、多くの日本企業にとって効いてくるのはむしろTPU 8iの「推論コスト80%改善」の方です。自社でAIエージェントを本番運用し、月間トークン消費が数十億規模に達しているならTPU 8iのGAを前提に推論基盤の移行計画を立てる価値があります。一方、Gemini APIやVertex AI経由でモデルを呼ぶだけの段階なら、TPU自体を直接意識する必要はなく、モデル側の料金改定を待つのが現実的です。


Gemini Enterprise Agent Platform(4つの柱と2層構造)

次に、エージェント基盤側のフラッグシップ発表がGemini Enterprise Agent Platformです。Vertex AIから進化した統合基盤で、Sundar Pichai氏は「エージェンティック企業のmission control(航空管制塔)」と位置づけました。公式アナウンスでは、今後のVertex AIのサービス・ロードマップもAgent Platform経由で提供される方向が示されており、エージェント開発機能はAgent Platformへ集約されていく見通しです。

【関連記事】
Gemini Enterprise Agent Platformとは?機能・料金を徹底解説

Gemini Enterprise Agent Platform

4つの柱(Build / Scale / Govern / Optimize)

Agent Platformは、エージェント開発のライフサイクル全体を次の4つの柱で再整理しています。

4つの柱(Build・Scale・Govern・Optimize)

柱 役割 主要コンポーネント
Build 構築 Agent Studio・ADK・Agent Garden・Workspaces
Scale スケール Agent Runtime・Agent Memory Bank・Agent Sessions・長時間ワークフロー
Govern ガバナンス Agent Identity・Agent Registry・Agent Gateway・Anomaly Detection
Optimize 最適化 Agent Simulation・Agent Evaluation・Agent Observability・Agent Optimizer


特に注目されたのは、Govern層のAgent Identity / Gateway / Registryが最初から組み込まれている点です。「数千のエージェントをどう管理するか」という問いに、認証・認可・監査までを標準機能として応える構成で、これはAWS Bedrock AgentCoreやMicrosoft Foundry Agent Serviceと比較しても差別化されやすいポイントとなります。

Gemini Enterpriseアプリとの2層構造

もう1つ重要なのが、「Agent Platform(開発者層)」と「Gemini Enterpriseアプリ(ユーザー層)」の2層構造です。

Gemini Enterpriseアプリとの2層構造

  • Agent Platform:開発者・IT部門がエージェントを構築・デプロイ・ガバナンスする層
  • Gemini Enterpriseアプリ:全従業員がエージェントを発見・実行・管理するハブ層。Agent Designer・Inbox・Skills・Projects・Canvas・Agent Galleryを含む

この2層構造により、開発者はAgent Platformで洗練されたエージェントを作り込み、ビジネスユーザーはGemini Enterpriseアプリから自然なUIで利用する流れが確立されました。Gemini Enterpriseの有料MAUが前四半期比40%増という成長数値は、このユーザー層の拡大を反映しています。

対応モデルとエコシステム

Agent PlatformがサポートするLLMは、Gemini 3.1 Pro・Gemini 3.1 Flash Image(Nano Banana 2)・Lyria 3・Gemma 4といったGoogle純正モデルに加え、Model Garden経由で200以上のサードパーティモデル(Anthropic ClaudeのOpus/Sonnet/Haikuを含む)に対応します。BYO-MCP(Model Context Protocol)とA2A(Agent2Agent)プロトコルも前提に置かれており、マルチLLM運用とマルチエージェント連携の両方を想定した設計です。

対応モデルとエコシステム


AI研修


Agentic Data Cloud(Knowledge Catalog・Cross-Cloud Lakehouse)

データ層で発表されたのがAgentic Data Cloudです。「AIエージェントが信頼できるデータコンテキストで動く」ことに主眼を置き、ヒューマンが質問するためのデータスタックから、エージェントが行動するためのデータスタックへと再設計した形です。

Agentic Data Cloud

Cross-Cloud Lakehouse

Cross-Cloud Lakehouseは、Apache Iceberg標準に統一されたマルチクラウド対応のレイクハウスです。

Cross-Cloud Lakehouse

  • データをAWS・Azureに残したままクエリ可能(対応範囲は公式ブログ参照)
  • ベンダーロックイン回避と、クラウド間データ移動コストの削減を両立
  • Databricks・Palantir・Salesforce・SAP・ServiceNow・Snowflake・Workdayなど主要プラットフォームと連携

この設計は、既に複数クラウドに分散したデータ資産を持つ大企業にとって重要です。特にDatabricksやMicrosoft Fabric Lakehouseを既に使っている場合、データを移動せずにGemini側から分析・エージェント駆動できる選択肢が増えます。

Knowledge Catalog(旧Dataplex)

エージェント向けのビジネスコンテキストを扱うのが、Knowledge Catalog(旧称Dataplex)です。

Knowledge Catalog

  • BigQuery・AlloyDB・Spanner・Cloud SQL・Firestore(Preview)・Looker(Preview)からメタデータを自動ハーベスト
  • Geminiによる関係マッピングの自動化
  • エージェントに統一的なセマンティック定義を提供

ナレッジグラフやデータカタログの概念は従来から存在しましたが、Knowledge Catalogはエージェントが「どのテーブルが何を意味するか」を理解したうえで行動するための基盤として位置づけ直された点が新しい動きです。

Data Agent Kit・Lightning Engine・Deep Research Agent

データ活用を加速する周辺機能も複数発表されました。

Data Agent Kit・Lightning Engine・Deep Research

  • Data Agent Kit:IDE・ノートブック・エージェントターミナルから、Python/Spark/SQLをGemini支援で書ける開発環境
  • LookML Agent:戦略文書を読み込み、ビジネスレディなLooker用セマンティクスを自動生成
  • Deep Research Agent:BigQueryとSaaS統計データを統合し、従来数週間かかった複雑分析を数時間で完結させる
  • Lightning Engine for Apache Spark:オープンソース比4.5倍高速・競合比2倍の価格性能を実現するサーバーレスSpark基盤

既にBigQueryをデータウェアハウスとして運用している企業にとっては、Knowledge CatalogとData Agent Kitの2つがエージェント運用の入口になります。特に「社内の業務レポートをエージェントに任せたいが、テーブル定義や用語揺れで詰まる」という企業には、Knowledge Catalogのセマンティック層が直接効くはずです。


Workspace Intelligence(AI Inbox・Gmail・Docs刷新)

業務層の発表がWorkspace Intelligenceです。Google Workspaceにエージェントを深く埋め込み、メール・文書・スプレッドシート・スライドといった日常業務ツールを「エージェント前提」に再設計する動きです。

Workspace Intelligence

主要機能の刷新ポイント

Workspace Intelligenceが提供する新機能は次のとおりです。

  • AI Inbox:プロアクティブに優先度整理と要約を行う個人向け受信トレイアシスタント
  • Ask Gemini in Chat:Workspace全体のファイル・メール・チャットを横断した情報合成
  • Gmail Gemini時代:Gmail刷新によるドラフト生成・返信提案の強化
  • Docs再設計:メール・チャット・ファイルを統合したドラフト生成UI
  • Sheets:データからダッシュボードを自動生成
  • Slides:ブランドテンプレートに準拠した自動プレゼン生成
  • Drive Projects:ファイル・メールを自動整理する新ワークスペース

機能を並べると豪華ですが、要点はシンプルで「Workspaceユーザーが毎日触る画面の上でGeminiが常駐する」方向への統合です。これはChatGPT workspace agentsやMicrosoft 365 Copilotと直接競合する領域です。ただし各機能は対象のGoogle Workspace / Google AIプランごとに順次ロールアウトされる形で、全ユーザーが一律に追加投資なしで使えるわけではない点はWorkspace Updatesブログで確認する必要があります。

実務で効くポイント

Workspace Intelligenceが最も効きやすいのは、「社内にナレッジが散在していて検索・集約に時間を取られている」業務です。

例えば営業の提案書作成で、過去メール・社内Docs・Sheets上の案件履歴を毎回手動で集めているチームは、Ask Gemini in ChatとDocs再設計の組み合わせで工数が大きく減る可能性があります。

一方、社外のSaaS(Salesforce・Dynamics 365等)に業務の中核がある企業では、Workspace Intelligence単体では完結せず、Agent2Agentプロトコルや後述のWiz AI-APP連携と組み合わせた設計が必要になります。


Agentic Defense(Google Cloud × Wiz統合セキュリティ)

セキュリティ層の発表が、2026年3月にGoogleが買収を完了したWizとの統合によるAgentic Defenseです。Google CloudのThreat Intelligence・Security OperationsとWizのクラウドセキュリティプラットフォームを組み合わせ、AI時代のセキュリティ基盤として再定義されました。

Agentic Defense

Agentic SecOps

Agentic SecOpsは、SecOps業務をエージェントで再構成する新機能群です。

Agentic SecOps

  • Dark Web Intelligence:Gemini活用で組織固有の脅威プロファイルを生成(98%精度)
  • Threat Hunting Agent:従来型検出を回避するパターンを自律的に探索
  • Detection Engineering Agent:検出ルールを自動生成・調整

Sundar Pichai氏は基調講演で「Security OperationsエージェントがGoogle社内で脅威対応時間を90%以上削減した」と述べており、エージェント運用の成熟度が最も進んでいる領域の1つがSecOpsだと位置づけられています。

Wiz AI Application Protection Platform(AI-APP)

もう1つの中核が、Wiz AI-APPです。AIアプリケーションの全レイヤーを保護する設計になっています。

Wiz AI Application Protection Platform

  • 保護対象:インフラ → データ → アクセス → モデル → エージェント → アプリの全6層
  • 対応環境:マルチクラウド・ハイブリッド・AI環境を横断
  • 対応エージェントスタジオ:AWS Agentcore・Gemini Enterprise Agent Platform・Microsoft Azure Copilot Studio・Salesforce Agentforce・Databricks
  • AI-BOM:LangChain等のAIフレームワーク・モデル・IDE拡張(Gemini Code Assist / GitHub Copilot / Cursor)を自動インベントリ化

対応範囲に競合クラウドのエージェントスタジオまで入っている点がWiz AI-APPの特徴です。マルチクラウドでAIエージェントを運用する企業にとって、セキュリティの統合監視ができる選択肢が現実的に揃ったといえます。

Red / Blue / Green Agents

Wizからは、セキュリティ業務を担う3種類のAIエージェントも発表されました。

Red・Blue・Green Agents

  • Red Agent:脆弱性を能動的に検証するレッドチームエージェント
  • Blue Agent:脅威を調査し重大度を評価するブルーチームエージェント
  • Green Agent:ルートコーズ分析と修復ガイダンスを生成するグリーンチームエージェント

加えて、Google Cloud Fraud DefenseというreCAPTCHAの進化形も発表されています。

ボット・人間・正当なAIエージェントを区別する仕組みで、AIエージェントが企業間で相互に呼び出される時代の本人性担保に踏み込んだ設計です。


主要顧客事例と$750Mパートナーエコシステム

Next '26では、グローバル企業の具体的な導入事例と、パートナーエコシステムへの$750M(約1,100億円)の投資拡大が同時に発表されました。

主要顧客事例ロゴパネル
Next '26で発表された主要顧客事例ロゴパネル(出典:Google Cloud Blog)

業界別の主要顧客事例

各業界で名前の挙がった代表的な事例を整理します。

業界 企業 取り組み
金融 Citadel Securities TPUで定量分析ワークロードを高速・低コスト化
金融 Citi Wealth 「Citi Sky」AIアシスタントの展開
金融 Macquarie Bank(豪) Gemini Enterpriseで10万時間以上の時間削減
小売 The Home Depot Magic Apron+AI音声エージェント
消費財 Mars 全グローバル従業員向けAIオペレーティングシステム
消費財 Unilever 3.7億消費者向けエージェント展開
製造 Bosch AskBosch内でのエージェント自動デプロイ
製造 GE Appliances 800以上のエージェントを製造・物流・SCMに展開
製造 Merck 創薬〜臨床開発〜商業化までの意思決定加速
ゲーム SQUARE ENIX Dragon Quest X OnlineにGeminiコンパニオン
ゲーム Capcom ゲームテスト・予測エージェントの運用
広告 WPP AI主導で4日間サイクルのキャンペーン設計
通信 Vodafone(欧) 自己治癒診断で2030年までに€1億のコスト削減見込み


この表を読み解くと、金融・製造・消費財・ゲームと業界をまたいで「1業務1エージェント」を超えた規模での本番運用が既に始まっていることが見て取れます。GE Appliancesの800+エージェント運用や、Marsの「全グローバル従業員向けAI OS」は、エージェントを特定ワークフローの支援ツールではなくビジネスシステムそのものとして扱う段階に入ったケースです。

$750Mパートナーファンドと120,000社のエコシステム

Google Cloudは、既存の120,000社を超えるパートナー企業に対して、$750Mのファンドを通じてエージェンティックAI開発の加速を発表しました。パートナーが構築したエージェントをGemini Enterpriseアプリに直接登録・配布できるPartner-built agentsも同時に開始されています。

日本国内でも、Google Cloudパートナー経由のSIer・コンサルティングファームが同様の仕組みに参加していく可能性が高く、自社でゼロからエージェントを作るのではなくパートナーの成果物を組み合わせる選択肢が増える流れです。


各発表の提供時期と料金体系の全体像

各発表の提供時期と料金構造を一覧で整理すると、記事公開時点(2026年4月時点)で次のようになっています。

各発表の提供時期と料金体系の全体像

発表 提供時期 料金体系 詳細記事
TPU 8t / TPU 8i 2026年内GA予定 従量課金(Cloud TPU) Ironwood記事
Gemini Enterprise Agent Platform 段階的GA 従量課金+$300無料クレジット 詳細記事
Gemini Enterpriseアプリ 提供中 Business $21/seat/月、Standard / Plus $30/seat/月から 同上
Agentic Data Cloud Preview含む段階展開 BigQuery等既存料金+新機能分 BigQuery記事
Workspace Intelligence 機能ごとに順次ロールアウト 対象のGoogle Workspace / Google AIプランで順次提供 Workspace記事
Agentic Defense(Wiz AI-APP) 提供中 Wizサブスクリプション -


料金詳細はサービス別に大きく異なるため、この速報記事では個別深掘りせず、各発表の詳細記事へのリンクに委ねる形で整理しています。新規顧客は$300の無料クレジットで試せるため、まずはGemini Enterprise Agent Platformで1〜2個のプロトタイプエージェントを動かし、そこからTPUやAgentic Data Cloudへと広げていく進め方が現実的です。

SaaS型サービス(Gemini Enterpriseアプリ)の料金は2026年4月時点の公式ページ記載のリストプランに基づいており、リージョン概念はありません。インフラ系サービス(TPU・BigQuery・Cloud Storage等)の具体単価は公式料金ページでJapan East等のリージョン別に確認する必要があります。


日本企業にとっての意味と実務判断(AWS・Microsoftとの位置関係)

日本企業にとっての意味と実務判断

Next 2026の発表を日本企業の視点で整理すると、既存のクラウド資産とSaaS寄せが判断軸になります。

2025〜2026年にかけて、AWSはBedrock AgentCore(2025-10 GA)を、MicrosoftはFoundry Agent Serviceを投入しており、3クラウドがほぼ同じ抽象レイヤーでエージェント基盤を揃えた局面に入りました。

3クラウドの実務的な使い分け

3クラウドは機能的にほぼ横並びですが、寄せ先の業務システムによって実務上の向き不向きが明確に分かれます。

クラウド 強みが出る局面 寄せ先の例
Google Cloud(Gemini Enterprise Agent Platform) 既にGoogle WorkspaceとBigQueryを使っている/Claudeも併用したい/マルチLLM前提 Workspace・BigQuery・Lookerを既に導入済み
AWS(Bedrock AgentCore) AWS上の既存データ基盤・S3・RDSと深く統合したい/Anthropic優先 データレイクがS3、既存ワークロードがECS/Lambda
Microsoft(Foundry Agent Service) Microsoft 365・Dynamics 365・Fabricを軸に社内業務を回している M365導入済み/Copilot Studio併用


日本企業の多くはM365を業務ツールとして導入しているため、そのままの業務基盤ならMicrosoft寄りが現実的です。

一方、データ分析基盤にBigQueryを選択していたり、Google Workspaceに切り替えている企業では、Gemini Enterprise Agent Platformが最も統合コストの低い選択肢になります。

優先すべき発表と「様子見でよい」発表

Next '26の全発表を「すぐ検討すべきもの」「中期で評価」「当面様子見」に分けると、実務の判断軸が見えやすくなります。

優先すべき発表と様子見でよい発表

  • すぐ検討:Gemini Enterprise Agent Platform(新規エージェント開発はここ起点)、Workspace Intelligence(Workspace既存導入企業)
  • 中期で評価:Agentic Data Cloud(Knowledge Catalog・Cross-Cloud Lakehouse)、TPU 8iの推論コスト効果
  • 当面様子見:TPU 8tの訓練用途(自社LLM訓練を行う企業は限定的)、Virgo Networkなど超大規模インフラ

既に「エージェントをいくつか作ったが、組織全体に広げるとガバナンスが追いつかない」という段階にある企業は、Agent Platformの4つの柱のうちGovern層(Agent Identity・Gateway・Registry)から設計を始めるのが詰まりにくい進め方です。

逆にまだ「最初のエージェントをどこから作るか」で悩んでいる段階なら、Workspace Intelligenceで身近な業務から入る方が成果を見せやすく、経営層への説明もしやすくなります。


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Next 2026の発表を自社のAIエージェント戦略に落とし込むには

Next '26の主要発表を一通り見渡すと、Google Cloudが「エージェント運用の全レイヤーを揃えた」ことが見えてきます。ただし強力な基盤ほど、実業務に載せるには自社の業務システム連携・権限管理・実行ログ管理の設計が不可欠で、Google Cloud単体で完結しないケースが現実には多くあります。

AI総合研究所の「AI Agent Hub」は、Google Cloud・AWS・Azureを横断したマルチクラウド時代のAIエージェント統合基盤として、Gemini Enterprise Agent PlatformやBedrock AgentCore、Foundry Agent Serviceの成果物を自社テナント内に持ち込み、業務システム連携・権限設計・実行ログ管理まで伴走支援します。

Next 2026の発表を自社のAIエージェント戦略に落とし込むには

AI Agent Hub

マルチクラウド時代の業務実装基盤を整える AI Agent Hub

Gemini Enterprise Agent Platform・Agentic Data Cloud・Agentic Defenseといった新発表は、それ単体で動かすのではなく、自社の業務システム連携・権限管理・実行ログ管理の設計と合わせて設計する必要があります。AI Agent HubはGoogle Cloud・AWS・Azureを横断するマルチクラウド時代のAIエージェント統合基盤として、PoC設計から本番運用までを伴走支援します。


まとめ

Google Cloud Next 2026は、「Agentic Enterprise」を中心テーマに、基盤・エージェント基盤・データ・業務・セキュリティ・パートナーの全レイヤーで同時発表が行われている年次イベントです。個別発表の情報量は膨大ですが、日本企業が押さえるべきポイントは次の3つに集約できます。

  • 第8世代TPUが推論コストの構造を変える:TPU 8iの「80%優れたperf/cost」は、エージェントを本番運用する企業にとって中期的に大きな意味を持つ
  • Gemini Enterprise Agent Platformが3クラウド揃い踏みのフル機能エージェント基盤に:AWS Bedrock AgentCore・Microsoft Foundry Agent Serviceと並ぶ選択肢が出揃い、寄せ先クラウドで選ぶ時代に入った
  • Agentic Data CloudとAgentic Defenseでデータ層とセキュリティ層も揃った:エージェント運用を「PoC→本番」へ持ち上げるための周辺コンポーネントが一通り出揃った

次のステップとしては、まず本記事からリンクされている個別記事(特にGemini Enterprise Agent Platform・Vertex AI・ADK・Gemini 3.1 Pro・AIエージェント概論)を読み込み、気になる領域を深掘りするのが効率的です。そのうえで、自社の業務システム構成と既存クラウド寄せを照らし合わせ、「まずどの発表から検討すべきか」を社内で整理する段階に入ると、投資対効果の見通しが立てやすくなります。

監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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