この記事のポイント
VTLAはVLAに触覚(Tactile)を加えた4モーダルで、視覚だけでは解けなかった挿入・繊細組立などの接触密なタスクを解く次世代ロボット基盤モデル
主要4モデルは原点論文・Tactile-VLA・OmniVTLA・Sharpa CraftNetで、OmniVTLAはgripper 96.9%・dexterous hand 100%の成功率を達成
Sharpa CES 2026のNorthヒューマノイドは会期4日間・毎日8時間のライブセッションでピンポン・風車組立300個超・写真撮影などを実演、Wave(22DOF人手同等ハンド)を搭載し2026年半ば量産予定
2026年7月2日、川崎重工×ファナック×安川電機×大阪大学×FingerVisionのVTLA基盤モデル開発がNEDO/GENIAC事業に採択
導入判断は「学術追試」「NEDO成果活用またはFingerVision PoC」「CraftNet系様子見」の3ケースで、実務推奨は製造ライン投入への準備

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
VTLA(Vision-Tactile-Language-Action)モデルは、VLAに触覚(Tactile)を加えた4モーダルのロボット基盤モデルです。
2025年5月のarXiv原論文以降、Tactile-VLA・OmniVTLA・Sharpa CraftNetが相次ぎ、2026年7月2日には川崎重工・ファナック・安川電機・大阪大学・FingerVisionのVTLA基盤モデル開発がNEDO/GENIAC事業に採択されました。
本記事では、定義・仕組み・主要4モデル・CES 2026産業実装・NEDO採択・導入判断・詰まりポイントを、2026年7月時点の公式一次情報で解説します。
目次
VTLA(Vision-Tactile-Language-Action)モデルとは?触覚を統合した次世代ロボット基盤モデル
触覚を加えたVTLAの中身——VLAが届かなかった情報をどう扱うか
DPO(Direct Preference Optimization)が拓く連続制御
主要VTLA系モデル4選——原点/Tactile-VLA/OmniVTLA/CraftNet
VTLA(arXiv:2505.09577)——中国科学院・Samsung・BAAIの原点モデル
Tactile-VLA(arXiv:2507.09160)——VLMの物理知識を触覚汎化に活用
OmniVTLA(arXiv:2508.08706)——ObjTacデータセットと dual-path tactile encoder
CraftNet VTLA(Sharpa CES 2026)——3層非同期NN+System 0 reflex intelligence
CES 2026 の産業実装——Sharpa Wave×Northヒューマノイドが示した実装フェーズ
Sharpa Wave——22DOFの人手同等ロボットハンド
VTLA導入の判断軸と詰まりポイント——研究PoC・産業実装・国家連携のどこに乗るか
研究・学術追試——OmniVTLA/Tactile-VLAの再現から始める
製造ライン投入——NEDO成果活用またはFingerVision PoC
VTLA実装の開発コスト——学術追試・OEM統合・NEDO連携の桁感
VTLA(Vision-Tactile-Language-Action)モデルとは?触覚を統合した次世代ロボット基盤モデル

VTLA(Vision-Tactile-Language-Action)モデルとは、視覚・触覚・言語・行動を単一のニューラルネットワークで統合し、ロボットに接触密な操作を行わせる次世代の基盤モデルです。
学術的には「VLA(Vision-Language-Action)に触覚(Tactile)モダリティを加えた4モーダル基盤モデル」と定義され、視覚だけでは解けなかった挿入・組立・繊細な握りといった接触集約的なタスクへの汎化能力を狙って設計されています。

VLAとVTLAのモデル構造。VTLAは触覚(Tactile)トークナイザーを加えた4モーダル構造で、視覚だけでは解けなかった接触密タスクへの対応を狙う(出典:arXiv:2508.08706 OmniVTLA)
2026年現在、VTLAは中国科学院・Samsung北京R&D・BAAIによる原点論文(arXiv:2505.09577)にとどまらず、AIモデルと製造ロボットをつなぐ共通言語として再定義されつつあります。
CraftNet(Sharpa)・OmniVTLA・Tactile-VLA、そして日本の「製造現場視触覚データ収集によるVTLA基盤モデル」(NEDO/GENIAC採択)と、学術・OEM・国家プロジェクトが同時並行で動き始めていることが、この潮流を象徴しています。
VLAシリーズの中でのVTLAの位置づけ

2020年代後半に入り、ロボット基盤モデルはVLM(画像+言語のみ)→ VLA(+行動)→ VTLA(+触覚)という順序でモダリティが拡張されてきました。
どのモデルも「言葉の指示でロボットを動かす」というゴールは共通していますが、扱えるタスクの粒度と接触密度が段階的に上がっています。
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VLM(Vision-Language Model)
GPT-4VやGeminiのような画像・言語モデル。「見て説明する」までしかできず、行動出力は持たない
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VLA(Vision-Language-Action Model)
Helix・π0.5・Gemini Roboticsなど2026年の標準ラインアップ。「見て」「理解して」「掴む」までを1モデルで実行するが、視覚が主モダリティ
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VTLA(Vision-Tactile-Language-Action Model)
VLAに触覚を加えた4モーダル。挿入・組立・柔軟物ハンドリングなど、視覚だけでは判断が難しい接触密タスクを対象化
ここでのポイントは、VLAでは「掴めるが、締められない/挿せない/潰さずに持てない」タスクが構造的に残っていた、という点です。
たとえば0.6mmクリアランスのペグ挿入では視覚がハンド自身に隠れて情報が取れず、原点論文の実験ではVTLAがVLAより挿入成功率10ポイント上回ったと報告されています。触覚モダリティが「見えないところを埋める第4の感覚」として機能する構造になっています。
【関連記事】
VLAモデルとは?仕組み・主要モデル・2026年の産業実装を徹底解説
触覚を加えたVTLAの中身——VLAが届かなかった情報をどう扱うか

視覚だけを頼りにするVLAが、なぜ挿入や繊細な組立で躓くのか——ここを起点にVTLAのアーキテクチャを整理します。
視覚ハンドリング系のロボットは、ハンドが対象物に接触した瞬間に「見たいものが自身の指で隠される」という原理的な問題を抱えています。
VTLAが解こうとしているのは、この瞬間から先の「触ることでしか分からない情報」をモデルに与える設計です。
接触密なタスクでVLAが躓く3つの理由

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視覚遮蔽(Visual Occlusion)
ハンドが対象を掴んだ瞬間、指の陰でカメラから物体が見えなくなる。挿入・締結・柔軟物操作で決定的な情報損失を生む
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接触力の不可視性
「どれくらい強く握っているか」「引っかかっているか、すべっているか」は画像に写らない。強すぎれば壊し、弱すぎれば落とす失敗が視覚だけでは避けにくい
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微細な位置合わせ
0.6mm級のクリアランスでは、視覚では見えない反発力・摩擦・引っかかりが挿入の成否を決める。視覚推定の分散が精度要求を上回る
原点論文(arXiv:2505.09577)は、これらをまとめて「contact-intensive scenarios(接触集約シナリオ)」と呼び、視覚言語モデルが原理的に届いていない領域と位置づけました。
VLAが2020年代前半に「見て理解して動く」を実現したのに対し、VTLAは「触って感じて調整する」までを1モデルに閉じ込める設計です。
VTLAの基本アーキテクチャ——4モダリティを言語で束ねる
VTLAは、視覚(Vision)・触覚(Tactile)・言語(Language)を並列にエンコードし、行動(Action)を出力する4層構造で組まれます。

VTLA原点論文が示す4モダリティ統合アーキテクチャ。QwenLMデコーダが視覚・触覚・言語トークンを受け取り、実世界のpeg-in-hole挿入まで実行する(出典:arXiv:2505.09577 VTLA原点論文)
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視覚エンコーダ
RGB画像やRGB-Dをトークン化する層。ViT(Vision Transformer)系の事前学習済みエンコーダを流用するのが標準
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触覚エンコーダ
指先・掌に取り付けた触覚センサの出力(分布力・すべり・接触点)をトークン化する層。画像ベース触覚と力覚ベース触覚の2型がある
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言語エンコーダ
「棒を穴に挿して」「そっと置いて」のような自然言語指示を通常の大規模言語モデル(LLM)エンコーダで処理
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アクションデコーダ
これらを統合したLLM・トランスフォーマ層が、関節角度・力目標・グリッパー開閉などの行動コマンドを出力
これはVLAの標準構造に「触覚エンコーダ」を1本増やした形と見ることもできますが、実際にはcross-modal alignment(言語と触覚の意味整合)が肝で、単純に足し合わせるだけでは学習が進みません。
触覚エンコーダの2型——画像ベース触覚と力覚ベース触覚
触覚センサの実装は大きく2系統に分かれ、VTLAモデル側の触覚エンコーダも同じ2系統で設計されます。
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画像ベース触覚(Vision-based Tactile)
指先のゲルに接触面の変形が現れるのをカメラで撮影する方式。FingerVisionの光学式触覚センサや研究界のGelSight系が代表。「画像処理としてそのまま扱える」ため、ViTを再利用しやすい
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力覚ベース触覚(Force-based Tactile)
6軸力覚センサや圧電センサで接触力の分布・時系列を直接取る方式。センサ種類が多様で、統一エンコーダの構築が難しい

画像ベース触覚センサを搭載した3Dプリントグリッパの実装例。指先に取り付けたTactile Sensorと俯瞰用のGoPro Cameraが視覚と触覚の同期取得を担う(出典:Tactile-VLA プロジェクトサイト)
この2系統をまとめて扱うのが2025年〜2026年のVTLA研究の焦点で、たとえばOmniVTLA(arXiv:2508.08706)は「dual-path tactile encoder」を提案し、両系統を1モデルでカバーする設計を打ち出しています。
DPO(Direct Preference Optimization)が拓く連続制御

VTLAが従来のVLAより一段高い精度を出せる背景には、Direct Preference Optimization(DPO)の導入があります。
VLAが「次のトークン予測」に基づく分類的な学習を使うのに対し、DPOは「A案とB案どちらが良いか」の選好データで直接ロス関数を組み立てる手法です。
これにより、連続値である関節角度・力目標のような回帰的な出力に対しても、模倣学習だけでは届かない微調整が可能になります。原点論文は「classification-based next token prediction lossとcontinuous robotic tasksの間のギャップを埋める」と説明しており、VTLAの90%超という挿入成功率の主因の1つになっています。
主要VTLA系モデル4選——原点/Tactile-VLA/OmniVTLA/CraftNet
2025年5月の原点論文以降、VTLA系モデルは急速に多様化しました。本セクションでは学術・産業実装を代表する4モデルを、公式一次情報に基づいて整理します。

以下の表で、4モデルの位置づけを比較しました。
| モデル | 開発元 | 公開時期 | 主な特徴 | 代表数値 |
|---|---|---|---|---|
| VTLA (arXiv:2505.09577) | 中国科学院・Samsung北京R&D・BAAI | 2025年5月 | 「VTLA」命名の原点。DPOで連続制御を実現 | 未見peg形状で90%超成功率 |
| Tactile-VLA | 清華大学・電子科技大学・上海交通大学等 | 2025年7月 | VLMの物理知識を触覚汎化に活用 | Zero-shot generalization達成 |
| OmniVTLA | 上海交通大学等 | 2025年8月→2026年6月 v3 | dual-path tactile encoder+ObjTacデータセット | gripper 96.9%/dexterous hand 100% |
| CraftNet VTLA | Sharpa(産業実装) | 2026年1月 | 3層非同期NN+System 0 reflex intelligence | Northヒューマノイドで実演 |
arXiv系3モデルはOSS・研究ベース、CraftNetは商用OEM実装で、それぞれ狙うレイヤーが異なります。次にそれぞれのモデルの詳細を見ていきます。
VTLA(arXiv:2505.09577)——中国科学院・Samsung・BAAIの原点モデル

2025年5月14日にarXivで発表された「VTLA: Vision-Tactile-Language-Action Model with Preference Learning for Insertion Manipulation」は、「VTLA」という名称を業界に定着させた原点論文です。
著者は中国科学院自動化研究所(State Key Laboratory of Multimodal AI Systems)、Samsung R&D Institute China-Beijing、北京智源人工知能研究院(BAAI)の共同研究チームです。
技術的な特徴は3点に集約されます。
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cross-modal language grounding
視覚と触覚を言語で束ねることで、モダリティ間の意味整合を実現
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低コストな模擬データセット
シミュレーション環境でvision-tactile-action-instructionペアを構築し、fingertip insertionタスクに絞って高密度に学習
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DPO(Direct Preference Optimization)
分類ロスと連続タスクの間のギャップを埋め、回帰型の教師信号を与える
実験結果としては、未見のpeg形状で90%超の成功率、そして「実世界のpeg-in-hole実験でSim2Real性能を実証」と報告されています。
中国系の研究チーム主導ですが、Samsung系スポンサーが入っており、産業応用への意識も強く反映されているのが特徴です。

原点論文が構築したTacFlex Simulation環境。5形状のPegに対して、指先の触覚画像シーケンスと手首カメラの視覚画像を同期取得しモデルへ供給する(出典:arXiv:2505.09577)
補足資料と動画はプロジェクトサイト(sites.google.com/view/vtla)で公開されており、追試のハードルは比較的低く抑えられています。
Tactile-VLA(arXiv:2507.09160)——VLMの物理知識を触覚汎化に活用

Tactile-VLA(arXiv:2507.09160)は2025年7月12日投稿の続編的モデルで、Jialei Huang氏(清華大学・電子科技大学・上海交通大学等)らが著者です。
このモデルの核心は「VLMの事前学習には既に物理相互作用の意味理解が含まれている」という発見です。ハイブリッド位置力制御と触覚推論モジュールを組み合わせることで、少数のデモだけでゼロショット汎化を達成しています。

Tactile-VLA のアーキテクチャ。Pretrained VLM(Gemma 2.6B)に触覚エンコーダを重ね、Tactile-Aware Action Expertとハイブリッド位置力制御を組み合わせる(出典:Tactile-VLA プロジェクトサイト)
公式Abstractでは3つの成果が示されています。
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tactile-aware instruction following
「そっと」「強く」といった触覚を伴う指示の理解
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tactile-relevant commonsense
「柔らかい物体は潰れる」といった常識推論の活用
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adaptive tactile-involved reasoning
触覚フィードバックに基づく戦略変更

Tactile-VLAが示した3側面の実演。USBのそっと挿入・柔らかい果物の把持・拭き作業での失敗からの補正など、触覚依存タスクへの汎化を実機で確認している(出典:Tactile-VLA プロジェクトサイト)
「VLMは既に物理を知っているのだから、あとは触覚センサとつなぐだけ」という設計思想は、VTLA分野の実装コストを大きく下げる方向性を示唆しています。
OmniVTLA(arXiv:2508.08706)——ObjTacデータセットと dual-path tactile encoder

OmniVTLA(arXiv:2508.08706)は2025年8月投稿、2026年6月にv3となった最新モデルで、IEEE Robotics and Automation Letters(RA-L)にacceptedされています。

OmniVTLAのアーキテクチャ。事前学習済みViTと意味整合された触覚専用ViT(SA-ViT)の2経路を並列に走らせ、画像ベース触覚と力覚ベース触覚を1モデルでカバーする(出典:arXiv:2508.08706)
3つの主要貢献が論文で明示されています。
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dual-path tactile encoder
事前学習済みViTと、意味整合された触覚専用ViT(SA-ViT)を並列に走らせることで、画像ベース触覚と力覚ベース触覚のどちらのセンサにも対応
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ObjTacデータセット
56物体・10カテゴリに対して、テキスト・視覚・触覚の3モーダル135Kサンプルを収録した実データセット。既存の視触覚データセットを補完する目的で構築(公開先)
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semantically-aligned tactile encoderの学習
ObjTacを使い、触覚センサ間の統一表現を学習する

OmniVTLAが公開したObjTacデータセット。56物体・10カテゴリ・135Kサンプルのtri-modality(Visual・Tactile・Text)を収録し、触覚センサ間の意味整合の学習に用いる(出典:arXiv:2508.08706)
実世界実験ではpick-and-placeタスクでgripper 96.9%成功率(VLAベースラインより21.9%改善)、dexterous hand 100%成功率(同6.2%改善)、さらにタスク完了時間短縮とtrajectoryのスムーズ化も報告されています。
OmniVTLAは「触覚センサの実装形態が違っても同じモデルで扱える」という汎用性を狙った設計で、複数OEM横断のフィジカルAI基盤としての可能性を示しています。
CraftNet VTLA(Sharpa CES 2026)——3層非同期NN+System 0 reflex intelligence
CraftNetは、AIロボティクススタートアップのSharpaが2026年1月のCES 2026で公開したVTLA商用実装です。
arXiv系3モデルが学術ベースであるのに対し、CraftNetはanthropomorphic dexterous manipulation(人型器用操作)に特化した実装向けVTLAという位置づけです。
Sharpa公式サイトによれば、CraftNetは異なる周波数で動く3つの非同期ニューラルネットワークを結合した設計で、以下のように役割分担しています。

CraftNetの3層非同期NN構造。System 2 Reasoning Brain(言語・計画)・System 1 Motion Brain(動作生成)・System 0 Interaction Brain(反射制御)が異なる周波数で動作する(出典:Sharpa CES 2026 プレスリリース)
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System 2
長期プランニング・タスク分解を担う層(LLM相当)
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System 1
中期の動作生成・軌道計画を担う層
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System 0 for reflex intelligence
高頻度で走る反射層。触覚センサの生値に近い位置で動き、Transformer推論を待たずに反射的な力調整・微細補正を行う。人間が熱いものに触った瞬間に手を引くような、判断を待たない反射系の実装
「System 1/System 2」の二段構えは他社のVLA(NVIDIA GR00Tなど)でも見られる設計ですが、CraftNetは**「System 0」を明示的に加えた**点でVTLA特有の設計思想を示しています。触覚は「遅延を許さない情報」であるため、通常のTransformer推論とは別ループで処理する必要があるという判断です。
加えてCraftNetは、Sharpa自社製の22DOFロボットハンド「Wave」(次のセクションで仕様を整理)と垂直統合されており、モデルとハードウェアが分離していない点も他モデルとの大きな違いです。
CES 2026 の産業実装——Sharpa Wave×Northヒューマノイドが示した実装フェーズ

前セクションでCraftNet VTLAのモデル構造を整理しました。
本セクションでは、そのモデルが実機でどう動いているのかを、Sharpaのプレスリリースと公式サイトに基づいて整理します。
CES 2026 でのSharpaブースが示した最も強いメッセージは、「触覚統合の効果は既にライブで見せられる段階に来ている」という点です。
プロトタイプ展示ではなく、4日間連続の稼働という信頼性で見せる戦略に変わってきています。
Sharpa Wave——22DOFの人手同等ロボットハンド

CraftNet VTLAの実機を支えるハードウェアが、Sharpaが2025年5月に発表した「Wave」ロボットハンドです。
Sharpa公式によれば、Waveは22 active degrees of freedom(22自由度)、人手と同じサイズ・構造・触覚感度を持つdexterousハンドとして設計されており、embodied AI研究者と、ハンドを組み込みたいロボットOEMの双方をターゲットにしています。
22自由度は、人間の手(拇指5・他指4×4=21+手首)に匹敵する運動性能で、既存の産業用グリッパーとは別次元のハードウェアです。ロボットOEM側から見ると、CraftNetを持ち込む場合はこのハンドとセットで検討する形になり、単独調達で他モデルに載せ替えるのは容易ではありません。
加えて2026年6月1日には、SharpaがNVIDIA Isaac GR00T Reference HumanoidへのWave搭載を発表しており、Waveを自社ヒューマノイド専用パーツではなく、業界横断の触覚ハンドとして展開する動きも表面化しています。

NVIDIA Isaac GR00T Reference Humanoid RobotにSharpa製Waveハンドを両手搭載した実機構成。触覚統合ハンドが特定ヒューマノイドに閉じず、業界標準の参照設計に組み込まれつつある(出典:Sharpa GR00T連携プレスリリース)
Northヒューマノイドの4日間ライブデモ

CES 2026 Las Vegasで初公開されたSharpaの全身ヒューマノイド「North」は、CraftNet VTLA搭載の実装評価機として披露されました。

Sharpa Northヒューマノイド。全身ダイナミクス制御と人間レベルの器用マニピュレーションを統合したCraftNet VTLA搭載機として、CES 2026で公開された(出典:Sharpa公式サイト)
Sharpaのプレスリリースによれば、Northは会期4日間・毎日8時間のライブセッションで以下の複数タスクを実演したと報告されています。
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自律ピンポンラリー
人間対戦相手と全自動でラリーを継続。反射的な力調整が要求される競技系タスク
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2,000枚超のインスタント写真撮影
来場者に対して能動的にカメラを向け、シャッターを切る動作までモデルが判断
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300個超の風車組立
1個あたり30ステップ超の連続成功を要求するタスクを繰り返し実演
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カード配りなど複数タスクの並列実演
接触密なタスクを組み合わせた汎化能力の訴求
会期4日間の長時間デモに複数タスクを組み込んだ点は、単発の見せデモではなく再現性を訴求する構成でVTLA実装の完成度をアピールする、Sharpaの戦略が表れています。
量産計画と産業実装のインパクト

Sharpaはプレスリリースで、Northの商用版を2026年半ばに市場投入する計画を明示しています。

CES 2026 のSharpaブース会場。ステージ中央のロボットハンド展示と「Ping-Pong」タスクを中心に、4日間のライブセッションで多くの来場者を集めた(出典:Sharpa CES 2026 プレスリリース)
量産版が実際に出た場合、日本の製造業SIerや研究機関にとっての含意は次の3点です。
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VTLAが「触覚統合モデル」から「触覚統合製品」に変わる
CraftNet単体では研究者・OEM向けだが、Northに載って製品化されることで、生産ライン導入検討の対象になる
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調達単位が「モデル+ハンド+全身ロボット」に一体化する
Waveハンド単独調達より、Northパッケージでの実装検証の方が現実的な選択肢になる可能性
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競合ヒューマノイドとの比較軸に「触覚統合」が入る
Figure・Boston Dynamics系のVLA型ヒューマノイドと差別化する主軸として、触覚精度が評価指標に加わる
ただし価格帯・保守体制・日本での販路は現時点で未公表で、実際に選定の俎上に載るのは2027年以降になる見通しです。
CraftNet VTLAが示した「触覚を持つ全身ロボット」という方向性が業界の標準的な設計思想になるかは、この量産版の実性能次第です。
【日本】NEDO/GENIAC採択
の「VTLA基盤モデル」プロジェクト——川崎重工×ファナック×安川電機×大阪大学×FingerVision
2026年7月2日、日本の製造業とフィジカルAI領域で注目度の高い発表が出ました。
「製造現場視触覚データ収集によるVTLA基盤モデルに向けたデータセットの構築」が経済産業省・NEDOのGENIAC事業に採択されたという発表です。
これは日本のロボットメーカー3社(川崎重工業・ファナック・安川電機)が同じテーブルに揃うという、産業競争の観点からも異例のプロジェクトです。
VTLAというテクノロジーが「日本の製造業を国として守るインフラ」として位置づけられたことを示しています。
プロジェクトの目的と実施計画

NEDO/GENIAC「製造現場視触覚データ収集によるVTLA基盤モデル」の全体構成。データ収集→データ共通化・蓄積→VTLA基盤モデル開発→製造現場活用の流れと、労働力不足解決・産業競争力強化への波及効果を示す(出典:FingerVision プレスリリース)
FingerVisionのプレスリリースおよび経済産業省のGENIAC採択発表を突き合わせると、プロジェクトの骨格は以下のとおりです。
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正式名称
製造現場視触覚データ収集によるVTLA基盤モデルに向けたデータセットの構築
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枠組み
GENIAC「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/データエコシステムの構築等に関する研究開発」の助成
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実施期間
2026年8月〜2027年7月の1年間
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目的
製造現場で収集した視覚・触覚・言語・動作データを統合するVTLA基盤モデルの開発、およびVTLAに適したデータセットの設計・収集・蓄積によるデータエコシステム構築
1年という短期集中の設計は、CES 2026 で表面化した産業実装スピードに追いつくための現実的な判断です。
基盤モデル本体の開発だけでなく、「日本の製造データを活用するためのデータエコシステム」構築が明示的な目的に含まれている点が、他国のVTLAプロジェクトとは異なる方向性です。
5社主要参画メンバーと役割分担
プロジェクトの主要参画企業・大学は以下の5社です。
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川崎重工業株式会社
産業ロボットとヒューマノイド「Kaleido」開発の実績。データ収集の実装環境を提供
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国立大学法人大阪大学(大学院基礎工学研究科 原田研究室)
基盤モデルの理論設計・触覚センシング研究の学術主体
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ファナック株式会社
産業ロボットの世界的リーダー。現場データ収集と実装検証を担当
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株式会社FingerVision
「画像で触覚を再現する」視触覚センサのスタートアップ。触覚センシングのハードウェア主体
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株式会社安川電機
サーボモータ・産業ロボットの主要OEM。現場データ収集の実装環境を提供

共同プロジェクト体制。Kawasaki・大阪大学・FANUC・FingerVision・YASKAWAが同じテーブルに揃うのは、産業競争の観点でも異例(出典:FingerVision プレスリリース)
加えて、株式会社ABEJA、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学が連携先として明記されており、基盤技術の高度化を担います。
ABEJAはAI基盤技術、産総研は横断的な研究支援、名古屋大学は触覚センシング・ロボティクスの学術支援という布陣です。
「ロボットOEM3社+大学+スタートアップ+横断研究機関」という座組は、日本のフィジカルAI国家戦略における中核プレーヤーが揃った形と言えます。
GENIAC枠組みと日本の製造業戦略における含意

GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)は2024年2月から経産省・NEDOが進めているプロジェクトで、生成AI・基盤モデルの国内開発力強化と社会実装促進を目的としています。
VTLA基盤モデルがGENIAC枠に採択されたことの含意は、以下3点に集約されます。
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フィジカルAIの位置づけがLLM並みに引き上がった
生成AIの中でもテキスト系のみだった支援対象が、視触覚・行動を含むフィジカルAIまで広がった
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国家として熟練工の手先技能を守る方針が明示された
NEDOリリース本文は「熟練作業者の減少、生産の高度化・多品種化への対応」を課題として明示。VTLAは労働人口減少対策の柱の1つ
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ロボットOEM3社の共同参画で寡占的な国内基盤の芽が生まれた
川崎重工・ファナック・安川電機が同時参画するのは、産業競争の観点でも異例。今後、他企業の追随参入の呼び水になる可能性
特にNEDOは「日本の製造業が長年蓄積してきた高信頼・高品質な製造データを活用することが産業競争力強化の鍵」と明言しており、VTLA基盤モデル開発を通じて日本の製造データを国内でモデル化するデータ主権の確立が狙われています。
現場実装で解ける「熟練者作業」の具体例

プロジェクトが対象とする「複雑かつ繊細な手先作業」の具体例は、公式リリースでは概念的な記述にとどまっていますが、参画企業の技術資産と過去のFingerVision実装事例から、以下のような領域が想定できます。
- 電子部品の実装・接続作業(コネクタ挿入・ケーブル配線)
- 食品・柔軟物のピック&プレース(惣菜盛付・野菜ハンドリング)
- 精密機械の組立(歯車噛み合わせ・ボルト締結)
- 加工の微調整(バリ取り・研磨のトルク調整)
- 検査・仕分け(表面粗さ・柔らかさの触覚判定)
これらは従来「熟練者しかできない」とされてきたタスクで、視覚だけの自動化では歩留まりが上がらなかった領域です。
VTLA基盤モデルがカバーすることで、多品種少量・段取り替えの多い日本製造業の現場に、AI主体の自動化が入ってくる可能性が現実的になります。
VTLA導入の判断軸と詰まりポイント——研究PoC・産業実装・国家連携のどこに乗るか

ここまでのVTLAの全体像を踏まえ、企業として「いま何をすべきか」をSIerの視点で整理します。
VTLAは学術・OEM・国家プロジェクトが同時並行で動いており、乗るレイヤーによって取れる打ち手が変わります。
以下の表で、企業タイプ別の推奨アクションと判断基準をまとめました。
| 企業タイプ | 推奨アクション | 判断基準 |
|---|---|---|
| 研究機関・大学 | OmniVTLA・Tactile-VLAのOSS実装を追試、ObjTacデータセットで再現実験 | 触覚センサの入手・研究予算が確保できるか |
| 製造業(大手) | NEDO/GENIAC成果へのアクセス確保、FingerVision PoCで先行検証 | 「熟練者依存工程」の棚卸しが済んでいるか |
| 製造業(中小) | 自社の触覚データ資産の整理、パートナーOEM経由での成果活用準備 | 参画OEMからの技術移管フローが引ける関係にあるか |
| ロボットSIer | 触覚センサの調達ルート確保、CraftNet系OEMとの連携検討 | 顧客の現場で触覚データ収集ができる関係が構築済みか |
| 一般企業 | 数年後の一般化を見越し、社内デジタル業務のAIエージェント自動化を先に進める | 現場作業以外のホワイトカラー業務でPoCが回っているか |
この表の各企業タイプについて、以下で順に深掘りします。
研究・学術追試——OmniVTLA/Tactile-VLAの再現から始める

研究機関・大学が最初に取れるアクションは、公開されているVTLA系モデルのOSS実装を追試することです。
原点論文(arXiv:2505.09577)のプロジェクトサイトはsites.google.com/view/vtlaで公開されており、動画・補足資料が提供されています。OmniVTLAのObjTacデータセットはreaderek.github.io/Objtac.github.ioで公開されており、追試のハードルは大きく下がっています。
ただし、実世界での再現には触覚センサ(FingerVision光学式やGelSight系)の実機が必要で、シミュレーションだけでは触覚統合の本質は掴めません。触覚センサの調達を含めた予算計画が最初のハードルになります。
シミュレーション環境で先行実験を進めるなら、NVIDIA Isaac Simのような産業ロボットシミュレータを触覚エンコーダと組み合わせるアプローチも選択肢になります。
製造ライン投入——NEDO成果活用またはFingerVision PoC

大手製造業でVTLAを製造ラインに投入したい場合、2つのルートが現実的です。
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ルートA: NEDO/GENIAC成果活用
2027年7月のプロジェクト完了後、成果へのアクセス条件は現時点で未公表。NEDO資料ではデータセットを用途・機密度・利用者ごとに区分し、有償提供やアクセス制限を設ける方針が示されている。参画OEM経由の実装ルートは今後の公表を待つ必要がある
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ルートB: FingerVision PoC
FingerVisionの視触覚ハンドは既にPoCサービスと月額プランで提供されており、NEDOプロジェクトを待たずに触覚統合の実証実験を始められる。食品盛付・フライ投入などで実装事例が既に存在
AI総研の支援現場での実感として、触覚統合の投資判断は「モデル性能」よりも「触覚データを組織的に集められる体制があるか」で決まる傾向があります。触覚データはビジネス機密度が高く、後から集めようとしても現場との交渉に数ヶ月かかります。ライン投入を検討する企業は、モデルの選定より先にデータ収集の合意形成に着手すべきです。
ヒューマノイド統合——CraftNet系の様子見

自社でヒューマノイドの導入を検討している企業は、当面は「様子見」が現実的な判断になります。
Sharpa Northは2026年半ばの量産予定ですが、価格帯・保守体制・日本での販路は現時点で未公表です。加えて、10710のVLA記事で整理したように、FigureやBoston DynamicsなどVLA系ヒューマノイドも同時並行で量産設計が進んでいます。
ヒューマノイド市場は2026年〜2028年で複数プレーヤーが並走する構造で、単一OEMに賭ける判断は時期尚早です。まずは「触覚統合が必要な工程は何か」を社内で棚卸しし、市場が固まり始める2027年以降にプラットフォーム選定を判断する方が合理的です。
汎用ロボットの全体像はAIロボットの概要記事も併せて参照してください。
VTLA導入で詰まる4つの論点

どのケースで進めても、実装段階で共通して詰まりやすい論点が4つあります。事前に想定しておくことで手戻りを減らせます。
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触覚センサのハードウェア依存
FingerVision光学式・GelSight系・6軸力覚センサで出力形式やデータ分布が異なるため、センサ変更時には追加データ収集・再調整が必要になりやすい。OmniVTLAのdual-path encoderがsemantic alignmentで一部緩和するが、まだ標準化されていない
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触覚データ収集コスト
視覚データより取得が難しく、テレオペレーション環境の整備・データ収集アノテーションが人手のかかる工程になる。編集部目安では、タスクやセンサ構成に応じて数千〜数万サンプル規模を見込む(原点論文で5形状28,000サンプル、OmniVTLAでは135Kサンプルが構築されている)
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Sim2Realギャップ
シミュレーションで学習したモデルを実機に持ち込むと、触覚センサの応答特性の違いで精度が落ちる。原点論文がSim2Real性能を強調しているのは、このギャップが業界共通の課題だから
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標準化はまだこれから
モデル重み・データフォーマット・評価ベンチマークのいずれも共通化が進んでいない。arXiv系論文で使われるベンチマークもタスクごとに異なり、研究段階の追試コストが高い
実務でVTLAを検討する企業には、モデル本体の性能比較よりもこの4論点への対処戦略を先に固めることを推奨します。特に「VTLA向けデータ仕様・収集基盤の共通化」は、NEDOのGENIACプロジェクトが1年で取り組む中心テーマの1つです。
VTLA実装の開発コスト——学術追試・OEM統合・NEDO連携の桁感

VTLAの実装コストは、公式に公開された価格が乏しく、参入するレイヤーごとの相場感も明確には定まっていません。
以下は公開情報と隣接プロダクトの相場から編集部試算として桁感を示すものであり、実際の商談・共同研究では別の水準になる可能性があります。
具体的な内訳は非公開部分が多いため、判断の目安としてお読みください。
学術追試コスト——編集部試算で500万〜1,500万円規模

OmniVTLA・Tactile-VLAの追試を大学・研究所で行う場合、主な費目は以下のとおりです。
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触覚センサ実機
FingerVisionが提供する食品盛付ロボットRaaSプラン(月額25万円〜)が公表価格の1例。センサ単体調達はPoCサービス経由で相談ベースとなり、用途と契約形態で費用が変動する
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GPUクラスタ
A100・H100規模で数百万円〜、GPUクラウド利用なら月額数十万円〜
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人件費
研究者・エンジニア1名の年間人件費として600万〜1,200万円
arXiv系論文は論文・一部データセットが公開されている一方、コードやモデル重みは「Coming Soon」段階のものもあるため、学術追試でも再実装・学習/微調整コストを見込む必要があります。センサ費・GPU費・人件費を積み上げた編集部試算では500万〜1,500万円が1年間の再現実験プロジェクトの目安になりますが、契約条件・スケール次第で変動します。
OEMライセンス統合——編集部試算で数千万〜数億円規模

SharpaのCraftNet VTLAやWaveハンドを自社製品に組み込みたい場合、OEMライセンス・カスタム開発の商談ベースになります。
Sharpa公式に価格・提供形態の公開はなく、以下は編集部試算として隣接プロダクトの相場から推定した桁感です。
- Waveハンド単体のOEM調達:Sharpa公式には価格公開なし。22DOFで人手同等の触覚感度を持つ同等ハンドの市場相場から、1台数百万円〜1,000万円台のオーダーが想定される
- CraftNet VTLAのモデルライセンス:Sharpa公式に価格・提供形態の公開なし。商用SDKとして提供される可能性があり、契約は商談ベース
- 統合開発人件費:数百時間〜数千時間規模のエンジニアリング工数
Sharpa公式・OEM各社の公開価格が乏しいため合計金額は幅がありますが、編集部試算では量産設備1本のPoCで5,000万〜3億円のオーダーになります。ヒューマノイド全体を導入する場合はNorthの2026年半ばの正式発表を待つ形になります。
NEDO/GENIAC連携——共同研究による支援

NEDO/GENIAC「データエコシステムの構築等に関する研究開発(助成)」によれば、この事業枠は2026年度から2028年度のうち最大2年間で運営されます。
個別案件(VTLA基盤モデルを含む)ごとの支援金額はNEDO・参画企業から公表されておらず、公開一次資料から具体的な内訳を示すことはできません。
ただしこれは参画企業への支援であり、外部企業がNEDO成果に無償でアクセスできる訳ではありません。
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参画企業
助成金による共同開発費用の一部を国から支援。開発成果へのアクセス条件は公式資料では詳細未公表
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業界コミュニティ
NEDO公式資料では、データセットを用途・機密度・利用者ごとに区分し、有償提供やアクセス制限を設ける方針が示されている
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外部企業
成果活用ルートは今後の公表を待つ必要がある。参画OEM・SIerパートナーとの関係構築を先行させる価値はある
製造業がVTLA基盤モデルの成果を活用する現実的なタイムラインは、2027年後半以降の実証段階からの参加、または参画OEM3社の顧客・SIerパートナーとしてNEDO成果の公表・提供条件を追跡する形になります。
VTLA実装を待つ数年間で、製造現場のデジタル工程を先に自動化するなら
VTLAが現場に届くまでの2〜3年、熟練者の手先そのものはロボットに委ねられません。ただしその手前には、検査帳票の読み取り・基幹システムへの入力・工程移行の判定といった「熟練者の判断が担ってきたデジタル工程」が広がっており、これらは今日からAIエージェントで自動化できます。
触覚データ収集の合意形成を進める傍らで、周辺工程のAI化と現場データ蓄積を先行させることが、VTLAが届いた瞬間に一歩先行するための備えになります。
このレイヤーを担うのが、自社のAzureテナント内で動くエンタープライズAIエージェント基盤です。
AI総合研究所のAI Agent Hubは、AI-OCR Agent・自動入力Agent・フロー判定Agentを組み合わせて、製造現場の情報処理と判定工程をMicrosoft Teamsから呼び出せる形でパッケージ化しています。
- AI-OCR Agentで検査帳票・受入伝票を電子化
紙の検査記録・現場帳票をAgentがOCR+構造化し、そのままFabric OneLakeや基幹システムに登録。手書きメモや自社フォーマット帳票のばらつきをAgentが吸収するため、現場作業を変えずに現場データの蓄積が進みます。
- 自動入力Agentで基幹システムへの手入力を代行
勘定奉行クラウド・Dynamics 365・Salesforceなどへの繰り返し入力作業をAgentが代行。生産管理・在庫・発注データの入力工程を減らし、熟練者を判断業務に集中させられます。
- フロー判定Agentで工程移行・承認判定を自動化
検査結果や不適合品判定など「次工程に進めるか」の判断ロジックをAgentが実行。Human-in-the-Loopで熟練者の承認を挟みながら判定基準そのものをデータ資産化できるため、将来のフィジカルAI導入時の教師データとしても活きます。
AI総合研究所の専任チームが、製造業向けAIエージェントの現場適合設計から運用まで伴走支援します。製造業向けLPで、自社の熟練者依存工程がどのAgentで代替できるかを具体例とともにご確認ください。
製造現場のデジタル工程をAIエージェント化
VTLAが届くまでの数年で先行できる領域
VTLA実装まで2〜3年、その手前の検査帳票・基幹入力・工程判定といった「熟練者の判断が担ってきたデジタル工程」は今日からAIエージェントで自動化できます。AI Agent Hub 製造業向けLPで、AI-OCR Agent・自動入力Agent・フロー判定Agentが自社の現場で何を代替できるかご確認ください。
まとめ
本記事では、VTLA(Vision-Tactile-Language-Action)モデルについて、定義と仕組み・主要4モデル・CES 2026 産業実装・NEDO/GENIAC採択・導入判断軸と詰まりポイント・開発コストまで、2026年7月時点の最新情報で解説しました。要点を改めて整理します。
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VTLAはVLAに触覚(Tactile)を加えた4モーダル基盤モデルで、視覚遮蔽・接触力の不可視性・微細な位置合わせといった視覚だけでは解けなかった接触密なタスクを対象化し、原点論文ではDPO(Direct Preference Optimization)で連続制御の教師信号を与える設計を確立した
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主要4モデルは原点論文(arXiv:2505.09577)・Tactile-VLA・OmniVTLA・CraftNetで、OmniVTLAはgripper 96.9%/dexterous hand 100%の成功率をVLAベースラインから改善、CraftNetは3層非同期NN+System 0 reflex intelligenceで反射的な触覚制御を実装
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CES 2026 のSharpa NorthヒューマノイドはCraftNet VTLA搭載で会期4日間のライブセッションを継続、自律ピンポン・風車組立300個超・写真撮影・カード配りなど複数タスクを実演し、2026年半ばの量産版リリースが予定されている
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日本では2026年7月2日にNEDO/GENIAC事業「製造現場視触覚データ収集によるVTLA基盤モデル」が採択され、川崎重工・ファナック・安川電機の3OEM、大阪大学、FingerVision、ABEJA、産総研、名古屋大学が同じテーブルに揃うという異例のプロジェクトが2026年8月から始動する
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導入判断は「研究追試」「NEDO成果活用またはFingerVision PoC」「CraftNet系様子見」の3ケースが基本。触覚センサのハードウェア依存・データ収集コスト・Sim2Realギャップ・標準化未整備の4論点が実装時に共通で詰まる
VTLAの実装が製造業の現場に届くまでには、まだ2〜3年のタイムラインが必要です。ただし「触覚統合が必要な工程は何か」を社内で棚卸しし、触覚データ収集の合意形成を先に進めておくことが、市場が固まった瞬間に一歩先行するための最も現実的な備えになります。
熟練者の手先技能をロボットで再現する時代は、2026年のNEDO採択でようやく国家プロジェクトとしての助走に入りました。日本の製造業がフィジカルAI国際競争でどこに立てるかは、この1〜2年の判断で決まります。












