この記事のポイント
Gemini Enterprise Agent PlatformのBuild層を担うローコードUI。プロンプト設計から複雑なマルチエージェント構成までを1つのキャンバスで連続設計できる
ADKは「コード優先でエージェントを書きたい開発者向け」、Agent Studioは「ビジネス・IT部門が仕様を握ったままプロトタイプを量産したい組織向け」と使い分けるのが実務的な第一候補
プロンプト最適化・Model Garden 200超のモデル選択・RAG Engine/MCP連携が統合されており、従来Vertex AI Agent Builderで複数サービスを跨いでいた工程が1画面で完結する
料金はAgent Platform従量課金に統合。公開価格ページで明示されているのはモデル利用料・Grounding・Provisioned Throughputで、付帯機能の課金体系は追加料金の可能性を踏まえて見積もり確認が前提
Vertex AI Agent Builder資産の扱いは、今後のVertex AIサービス・ロードマップ進化がAgent Platform経由になる方針を踏まえつつ、公式ドキュメントと契約条件で個別確認する

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
Agent Studioとは、2026年4月のGoogle Cloud Next '26で発表されたGemini Enterprise Agent PlatformのBuild層に位置づくローコード・ビジュアルの設計UIです。
プロンプト1行のプロトタイプから、ツール連携・メモリ参照・サブエージェント分岐を含む本格的なマルチエージェント構成まで、同じキャンバス上で連続的に設計できる点が特徴です。
本記事では、Agent Studioの主要機能(デュアルペインキャンバス・プロンプト最適化・Model Garden連携)、ADKやAgent Designerとの使い分け、Agent Gardenからデプロイまでの開発フロー、料金体系、導入事例、そしてVertex AI Agent Builder資産との共存判断までを、2026年4月時点の最新情報をもとに体系的に解説します。
Merck・Danfoss・AccentureなどCloud Next '26で公表された導入事例と、ケース別の実装判断軸も合わせて整理しています。
目次
CX Agent Studio / Workspace Studioの立ち位置
Step 1:Agent Gardenからテンプレートを選ぶ
Memory Bank / Memory Profiles(Scale層)
Agent Identity / Gateway / Registry(Govern層)
Agent Observability / Optimizer(Optimize層)
Agent Studioとは?
Agent Studio(エージェント スタジオ)は、Google Cloudが2026年4月のGoogle Cloud Next '26で発表したGemini Enterprise Agent Platformに組み込まれた、ローコード・ビジュアルのエージェント設計UIです。

Agent PlatformはBuild(構築)/ Scale(スケール)/ Govern(ガバナンス)/ Optimize(最適化)の4層で構成されていますが、Agent Studioはその中でBuild層の中核を担います。
コードファーストのADK(Agent Development Kit)と対になる存在で、ビジュアルキャンバス上でエージェントを設計し、必要になったらADKコードにエクスポートして深く作り込むという開発パスが成立します。
Agent Studioが解決する課題
従来のVertex AI Agent Builder時代でも、エージェントを作るためのツール群は提供されていました。
しかし、プロンプト設計/ツール登録/データ接続/評価/デプロイが別々のコンソールに散らばっており、開発者は画面とCLIを往復しながら設定を寄せ集める必要がありました。

Agent Studioはこれを単一キャンバスに統合します。左側にフローや設定を、右側にリアルタイムプレビューを並べるデュアルペイン構成で、編集した瞬間にどう動くかを確かめながら設計できるのが最大の違いです。
Agent Studioの位置づけ
Agent Studioは、Gemini Enterprise Agent Platformのコンソールから起動します。
Google Cloud Console上のAgent PlatformメニューにBuild層の入り口として配置されており、Agent Garden(テンプレート集)・ADK(コードエディタ)と同じ階層から呼び出せます。

このため、次のような段階的な使い方が自然にできます。
-
Phase 1
Agent Gardenで近いテンプレートを選び、Agent Studioで数分間編集してプロトタイプを動かす
-
Phase 2
Agent Studioでツール・データソース・評価を追加し、実運用に近い状態まで作り込む
-
Phase 3
本番品質のロジック部分はADKコードにエクスポートし、CI/CD連携・テスト自動化を整備する
この3段階は、プロトタイプと本番実装の段差を埋めるための設計パスとして機能します。ビジュアルで作ったものがコードにエクスポートできるため、プロトタイプの労力が捨てられない点が実務的に効きます。
Agent Studioと関連ツールの違い
Google CloudのエージェントUIは「Agent Studio」「Agent Designer」「CX Agent Studio」「Workspace Studio」と複数存在し、名前が似ているため混同されやすい領域です。ここでは主要4つを並べ、どれをいつ使うかを整理します。

4つのツールの役割比較
以下の表は2026年4月時点の公開情報をもとに、Agent Studioと関連3ツールの位置づけを整理したものです。表の後で、どの状況でどれを選ぶかの読み解きを示します。
| ツール | 主な対象 | 提供層 | 想定ユーザー |
|---|---|---|---|
| Agent Studio | 汎用エージェント構築 | Gemini Enterprise Agent Platform(開発者層) | 開発者・IT部門・パワーユーザー |
| Agent Designer | エンドユーザー向けエージェント作成 | Gemini Enterprise app(ユーザー層) | ビジネスサイド・現場担当者 |
| CX Agent Studio | 顧客体験(CX)特化エージェント | Customer Engagement Suite | CX・マーケ・カスタマーサポート |
| Workspace Studio | Workspace上のAIエージェント・ワークフロー設計 | Google Workspace | Workspaceユーザー |
この表で押さえたいのは、Agent Studioは開発者層の汎用設計UIという位置づけです。Agent Designerはユーザー層のノーコードツール、CX Agent StudioはCXドメインに特化したADKベースのUI、Workspace StudioはGoogle Workspace上でAIエージェントやワークフローを設計・管理・共有するUIで、それぞれ対象範囲と動作する管理面が異なります。
Agent Studioを選ぶケース
次のようなシナリオでは、Agent Studioが第一候補になります。
- 社内の複数部門で利用する横断的なエージェントを作りたい
- RAG Engine・Vertex AI Search・MCPなどのデータ連携を使いたい
- プロトタイプをそのまま本番ADKコードに引き継ぎたい
- Agent Identity・Gatewayなどガバナンス機能を最初から組み込みたい

Agent Designerを選ぶケース
一方、Agent Designerは「全従業員がGemini Enterpriseアプリから自分用エージェントを作る」用途に向きます。チャットボックスに目的を入力するだけで自動でフローが生成されるため、ビジネスサイドが既製品として使えるのが特徴です。社内全員展開を前提にするエージェントではなく、個人・部署内で自己完結するエージェントの量産に適しています。
CX Agent Studio / Workspace Studioの立ち位置
CX Agent Studioは、Customer Engagement Suite(Google Cloud Contact Center AI系)の一部としてADKベースで提供される、顧客接点向けの専用UIです。
ショッピング体験・問い合わせ対応・予約仲介など、**CXドメインに限定した事前統合(ShoppingエージェントやConversational Commerce連携)**が用意されている点が特徴です。
Workspace StudioはGoogle Workspace上でAIエージェントやワークフローを設計・管理・共有するためのUIです。Gmail・Docs・Sheetsなどを起点としたエージェントを個人やチーム単位で立ち上げ・共有することに向いており、Agent Platformとは別の管理面で動作します。
実務では「全社横断・Build層」はAgent Studio、「全従業員のセルフサービス」はAgent Designer、「CX領域」はCX Agent Studio、「Workspace起点のエージェント」はWorkspace Studio、という4分割で整理すると迷いません。
Agent Studioの主要機能
Agent Studioは単なる「見た目がきれいなドラッグ&ドロップUI」ではなく、Agent Platformの基盤機能をBuild層でまとめて呼び出せる統合UIです。
ここでは実装時に効く主要機能を6つに分けて整理します。

デュアルペインキャンバス
Agent Studioの設計面は、左ペインにフロー・指示・ツール設定を、右ペインにリアルタイムプレビューを配置するデュアルペイン構成です。
編集した設定がそのままプレビューに反映され、「設定→実行→ログ確認」の往復を1画面に閉じ込められます。

この設計が効くのは、プロンプトやツールの挙動を試行錯誤のサイクルが速いフェーズです。従来はコンソール・ノートブック・Logs Explorerを行き来する必要がありましたが、同一画面で完結するため試行回数が増え、結果として設計の質が上がります。
プロンプト最適化
Agent Studioは、入力したプロンプトを自動で改善候補として生成・比較する機能を備えています。ユーザーが書いた初期プロンプトに対して、Gemini系モデルによる書き換え候補が提示され、出力の差分を並べて比較できます。

この機能は、プロンプトエンジニアリングに自信のない担当者でも、公式ベースラインに近い品質までプロンプトを持ち上げられる点で価値があります。ただし自動生成されたプロンプトを無条件に採用するのではなく、業務文脈・禁止事項・出力形式の指定を手動で加える運用が前提です。
Model Gardenから200超のモデル選択
Agent Studioで設計するエージェントは、Model Garden経由で200以上のモデルから切り替えて実行できます。主な対応モデルは次の通りです。
-
Google純正
Gemini 3.1 Pro、Gemini 3.1 Flash、Gemini 3.1 Flash Image(Nano Banana 2)、Gemma 4
-
Anthropic
Claude Opus・Sonnet・Haiku系
-
Meta / オープンソース
Llama系、Jina Embeddings v3ほか埋め込みモデル
-
業界特化モデル
医療・金融・法務などのサードパーティ製特化モデル
モデル差し替えは設定1カ所で完結するため、「プロトタイプはHaikuで低コストに、本番はOpusで精度優先に」といった切り替えが容易です。モデル選定はエージェント単位・セッション単位で変えられます。

データソース接続(RAG / Search / MCP)
エージェントを業務で役立つ水準にするには、社内データへのアクセスが欠かせません。Agent Studioは次のデータソースをネイティブに接続できます。
| 接続先 | 用途 | 実装のヒント |
|---|---|---|
| Google検索・URL Context | Web上の一般情報を参照 | 最新情報を要するエージェントの基本セット |
| RAG Engine | 社内ドキュメント検索 | Vertex AI Searchのマネージドベクター検索 |
| Vertex AI Search | 構造化・非構造化データの統合検索 | エンタープライズ検索の王道 |
| Agent Search | エージェント内からの検索専用インターフェース | 長時間ワークフローでの補助検索 |
| MCPサーバー | 社内ツール連携のオープン規格 | 2026年4月時点のAgent Studioは認証不要のMCPサーバーに限定。認証付き接続は現行制約の確認が必要 |
| Knowledge Catalog | データ資産・メタデータ管理 | Agentic Data Cloud連携の起点 |
この表から読み取れるのは、エージェントが触れるデータの粒度と所在に応じて接続方式を選べるという点です。汎用的な情報はGoogle検索・URL Context、社内ドキュメントはRAG Engine、認証不要で公開されている社内ツールはMCPサーバー、というように使い分けると、性能と安全性のバランスを取りやすくなります。ただしAgent Studio公式ドキュメントによれば、2026年4月時点でMCP接続は認証不要のサーバーに限定されているため、認証を要する基幹システム連携が必要な場合はADK側での実装を検討する必要があります。

ツール・関数呼び出し
Agent StudioではLLMが呼び出せるツール(関数・API・MCPサーバー・Vertex AI Search等)を、キャンバス上でドラッグ&ドロップ風に登録できます。ツールの入出力スキーマはUIで確認・編集でき、実行ログはプレビュー側で確認可能です。
また、Agent Gateway経由でツール呼び出しを中央集約するポリシー(Model Armor連携によるプロンプトインジェクション対策・データ漏洩防止)を適用できるため、設計段階から運用ガバナンスを織り込めます。
ADKコードエクスポート
Agent Studioで組んだフローは、ADKコードとしてエクスポートできます。これはプロトタイプを捨てずに本番実装へ引き継げる重要な機能で、次のような流れが成立します。
- Agent Studioで設計・試行錯誤(ビジュアル)
- ADKにエクスポート(コードベース)
- ADKで本番ロジックを深く作り込む(テスト自動化・CI/CD連携)
- デプロイ(Agent Runtime)
逆向きの「ADKコードをAgent Studioで編集する」は、サポート範囲が限定される場合があるため、本番品質に到達したエージェントはADK側を単一真実の源泉として扱う運用が推奨されます。

Agent Studioでのエージェント開発フロー
Agent Studioでエージェントを1つ立ち上げるときの実務フローを整理します。ここではAgent Gardenから近いテンプレートを選ぶ「既成テンプレート起点」のパターンを例に進めます。

Step 1:Agent Gardenからテンプレートを選ぶ
Agent Gardenは事前構築されたエージェントテンプレート集です。代表的なテンプレートには次のようなものがあります。
- コードモダナイゼーション(レガシーコード変換)
- 財務分析(四半期レポート自動生成)
- 請求書処理
- 経済調査
- 顧客問い合わせ対応
ゼロから作るより、近いテンプレートを選んでから差分を埋める方が、プロンプト設計・ツール登録のひな形が揃った状態で始められるため、初期費用を大幅に抑えられます。
Step 2:プロンプトとロール設定
テンプレートを選んだら、次にシステムプロンプトとロール(エージェントに期待する役割)を編集します。Agent Studioのプロンプト最適化機能を使うと、初期テキストから改善候補を自動生成できるため、ここで一度最適化をかけておくのが定石です。
Step 3:データソースを接続する
ツールパネルからRAG Engine / Vertex AI Search / URL Context / MCPサーバーなどのデータ接続を追加します。接続数は1エージェントにつき複数可能で、優先順位と呼び出し条件を設定できます。
実務的には「社内QAはRAG Engine、最新情報はURL Context、基幹連携はMCP」のように役割を分けて接続するのがおすすめです。接続を増やすほど回答の正確性は上がりますが、レイテンシとトークン消費も上がるため、最小構成から始めて必要に応じて足すのが安全です。
Step 4:ツールを追加する
外部API・社内関数・サブエージェントなどをツールとして登録します。ツールの入出力スキーマはUIで編集でき、呼び出しログもプレビューで確認可能です。
サブエージェントを呼び出す場合は、A2A(Agent-to-Agent)プロトコル経由で連携できます。メインエージェントが複雑なタスクを分解し、専門サブエージェントに委譲する構成もAgent Studio上で設計できます。
Step 5:プレビューと評価
右ペインのプレビューで対話を実行し、期待した出力が得られるかを確認します。Agent Evaluationと連携すれば、ベンチマークデータセットに対する正答率・ツール呼び出し正確性・レイテンシをスコアとして取得できます。
品質が一定水準に届かない場合、ここでプロンプト・データ接続・モデル選定を見直します。SIerの実装経験からは、「プロンプト改善で2割、データ接続調整で3割、モデル切り替えで5割」の改善幅が出るケースが多く、モデル選定が最もインパクトが大きい要因になりがちです。
Step 6:ADKエクスポートまたは直接デプロイ
最終段階で次の2つの選択肢があります。
-
直接デプロイ
Agent Runtime上で即座に稼働させる運用パス。Agent Studio本体と同様にPreview扱いの機能が含まれるため、小規模・部門限定のエージェントから開始する想定で評価する
-
ADKエクスポート
本番ロジックとしてコードに落とし、CI/CD・自動テスト・チームレビューを整備してから本番化
全社展開・監査要件が厳しい場面では、後者のADKエクスポートを推奨します。プロトタイプのままでは変更履歴の可視化と品質保証が弱くなるため、重要性の高いエージェントほど早めにコード側に移す方が安全です。
Agent Platform他コンポーネントとの連携
Agent Studioで設計したエージェントは、単体で動くわけではありません。Agent PlatformのScale / Govern / Optimize層と連携することで、本番運用に耐える状態になります。ここでは代表的な4コンポーネントとの関係を見ていきます。

Agent Runtime(Scale層)
Agent Studioでデプロイしたエージェントは、Agent Runtime上で稼働します。Agent Runtimeはサブ秒の冷起動を実現したスケーラブルな実行環境で、エージェント特有の短時間セッションに最適化されています。
WebSocket双方向ストリーミング・多日ワークフロー対応に加え、エージェントのスケール要件(同時セッション数・CPU/GPU割り当て)もRuntime側で制御されます。Agent Studioからはデプロイ時にRuntime構成を選ぶ形になり、設計と実行環境が分離しているのが設計思想です。
Memory Bank / Memory Profiles(Scale層)
Agent Studio上で「このエージェントに長期記憶を持たせる」と設定すると、Memory Bankに接続されます。Memory Bankはエージェントがセッションを跨いで情報を保持する仕組みで、Memory Profilesで低レイテンシにユーザー別の文脈を呼び出せます。
RAGが「外部知識を都度検索する」のに対し、Memory Bankは「ユーザーと積み重ねた対話の要約・設定を保持する」役割です。2つは併用でき、併用することで「社内知識は正確、ユーザー個別の文脈もずれない」状態を作れます。

Agent Identity / Gateway / Registry(Govern層)
本番展開を想定すると、Govern層との接続は避けて通れません。Agent Studioで設計するエージェントには、次の3つのガバナンス機能が紐づけられます。
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Agent Identity
各エージェントに暗号化された一意IDを付与し、監査ログで「誰が」「どのエージェントに」「何を指示したか」を追跡可能にする
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Agent Gateway
ツール呼び出しを中央集約するポリシー執行点。Model Armor統合でプロンプトインジェクション対策・データ漏洩防止を自動適用
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Agent Registry
企業内のエージェント・ツール・MCPサーバーのカタログ。IT部門が「承認済み/未承認」を管理し、シャドーIT化を防ぐ
これらは個別に設定する必要はなく、Agent Studioで作成したエージェントはデフォルトでIdentityが発行され、Gateway経由でツールが呼び出されるように構成されます。全社展開時には、Registryに登録して承認フローに乗せる運用が標準です。

Agent Observability / Optimizer(Optimize層)
本番稼働後は、Agent Observabilityでエージェントの推論を可視化できます。「どのサブエージェントがどのツールを呼び出したか」「どの判断で失敗したか」がグラフで確認でき、デバッグ・監査に役立ちます。
さらにAgent Optimizerは、本番トラフィックから失敗パターンを自動クラスタリングし、システムプロンプトの改善提案まで行います。Agent Studioで作ったエージェントでも、本番投入後は自動で改善ループに乗る形になります。

Agent Studioの料金体系
Agent Studio単体の料金メニューは存在せず、Gemini Enterprise Agent Platformの従量課金に統合される形です。料金は「モデル利用料+付帯機能料金」の組み合わせで構成されます。

主な課金要素
2026年4月時点で公式生成AI価格ページから確認できる主要な課金要素は次のとおりです(Japan EastほかGoogle Cloudのリージョン別価格ではなく、モデル利用はトークン単位の共通料金が基本です)。
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モデル利用料
エージェント実行で呼び出されるGemini・Claude・Model Garden各モデルのトークン課金
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Grounding料金
Google検索・Vertex AI Searchでの参照データ取得に対する従量課金
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Provisioned Throughput
予約枠を確保する運用向けの定額プラン
Agent Runtime・Memory Bank・Agent Gateway・Agent Observabilityなどの付帯機能については、2026年4月時点の公式価格ページで単価が明示されていない要素があります。追加料金が発生する可能性はあるものの、具体的な課金粒度(稼働時間単位・ストレージ単位・通過量単位など)については、実費試算時に公式価格ページとGoogle Cloudアカウントチームへの見積もり依頼で個別確認する前提にしてください。
モデル利用料の確認ポイント
モデル利用料はモデル種別(Gemini 3 Pro / Gemini 3 Flash / Claude各種など)と料金モードによって単価が異なります。Agent Platform経由での利用時は、Agent Platform公式価格ページで入出力トークン単価と料金モードの組み合わせを確認するのが前提です。Gemini API側の課金ページとは料金体系が別個に記載されるケースがあるため、Agent Studioから呼び出す前提での適用価格を公式側で確認してください。
PoC段階は$300クレジット枠内で運用できる余地がありますが、全社展開時はモデル利用料の比重が大きくなりやすいため、モデル選定・トークン予算・呼び出し頻度の3軸で費用見通しを立てる運用が現実的です。
Model Optimizerによる動的料金
Agent PlatformではModel Optimizer(モデルを自動で使い分けるルーティング機能)が提供されており、Agent Studioで作ったエージェントにも適用できます。簡単な質問はHaiku系、複雑な推論はOpus系、というようにリクエスト単位で最適モデルに振り分けることで、品質を保ったままトークン単価を下げる運用が可能です。
ただし、Optimizerに任せきりにすると「想定外のモデルが呼ばれて料金が跳ねる」ケースもあるため、モデル選定の上限設定と日次課金アラートの組み合わせが前提になります。

PoC段階のコスト制御
Agent Studioは試行錯誤のサイクルが速い分、トークン消費が予算を超えやすいUIでもあります。PoC段階では以下を必ず設定しておくのがおすすめです。
- 日次予算アラート(Google Cloud Billing)
- プロジェクト単位の課金割り当て上限
- モデル選定の制限(高額モデルの使用を一部アカウントに限定)
- Provisioned Throughputではなく従量課金から始める
これらを設定しておくと、プロトタイプ段階で想定外の課金が発生しても早期に気づけます。本番移行時に再設計すればよく、PoCで攻めた使い方をする際の安全弁として機能します。
Agent Studioの導入事例
Cloud Next '26の基調講演と関連発表では、Agent StudioやAgent Platform全体の導入事例が複数公表されています。ここでは設計UIとしてのAgent Studio文脈で理解しやすい事例を3つ紹介します。

Merck:75,000名規模のエージェンティックAI推進
Merck(製薬大手)はGoogle Cloudとの提携拡大を発表し、研究開発・臨床試験・事業運営にまたがるエージェンティックAI推進を打ち出しました。
Merckのプレスリリースでは、約75,000名の従業員を対象としたAI活用と、Google Cloud関連のAI投資として最大$1 billion規模の数字が示されています。
Merckの発表はGemini Enterprise Agent Platformを含む広範なGoogle CloudのAgentic AI採用事例として位置づけられており、全社規模で段階的にエージェント基盤を広げていく企業が、Agent Studio・ADK・Agent Gardenなどをどう組み合わせていくかを考える際の参考になります。
なお、ここからはAgent Studio導入企業の直接事例ではなく、Agent Platform時代の参考指標として読み取る前提です。
Danfoss:問い合わせメールの処理時間を大幅削減
産業機械・空調機器で知られるDanfossは、Google CloudのGenerative AIとAgentic AIでカスタマーサポートのメール処理を大幅に効率化しています。
Google Cloudの顧客事例ページでは、メール注文の約80%を自動化し、処理時間を従来の42時間からほぼリアルタイムへ短縮した効果が公表されています。
Danfossの事例は、Agent Platform時代のBuildツール群(Agent Studio・ADK・Agent Gardenなど)でメール処理エージェントを構築・運用する際の現実的な効果レンジを示す参考指標として読み取れます。

Accenture:Gemini Enterprise活用の提携拡大
AccentureはGoogle Cloudとの提携を拡大し、グローバル企業のエージェンティック変革をGemini Enterpriseベースでスケールさせる方針を発表しています。
公式リリースではGemini Enterprise Acceleration Program・Intelligent Digital Brain・Gemini Enterprise for Customer Experience(Google AI Studio活用)・Generative Content OSといった具体的な取り組みが示されており、クライアント企業のAgentic変革をGemini Enterprise側で加速する構えがわかります。
Agent Platform向けにAccenture、Oracle、ServiceNowのエージェントがAgent Marketplaceで提供されており、Gemini Enterpriseから直接アクセスしてunified Agent Registry経由で扱える形が公式に示されています。
自社実装と外部パートナー製エージェントをAgent Platform / Gemini Enterprise経由で組み合わせる道筋が広がっており、エージェント調達の選択肢が広がっています。

事例から見える実装パターン
これらの事例はいずれも、Gemini Enterprise・Agent Platform・agentic AIの広い採用事例として公表されているもので、Agent Studio単体の効果を分離した数値ではありません。
自社で参考にする際は、Agent Studioを「素早いプロトタイプ」と位置づけ、ADK・MCP・Memory Bankへ段階的に深化させる使い方を前提にすると、本番規模展開時の延長線として事例を読み解きやすくなります。
Agent Studio導入判断で詰まる論点
Agent Studioを評価し始める段階で、多くの企業が同じポイントで判断に迷います。AI総合研究所の支援事例で頻出する4つの論点を、先回りで整理しておきます。

Agent Studio vs ADKのどちらから始めるか
「ビジュアル設計UIと、コードファーストの開発フレームワーク、どちらから入るか」は最初の分岐点です。判断の目安を表にまとめました。
| 条件 | Agent Studio起点が向く | ADK起点が向く |
|---|---|---|
| 開発体制 | IT・ビジネス部門の混成チーム | 開発者中心の少人数チーム |
| 初期段階の成果物 | 業務担当者と見ながら合意形成 | バージョン管理・テスト自動化 |
| 将来のロジック複雑度 | 中程度(単一エージェント〜小規模マルチ) | 高(大規模マルチ・A2A・独自アルゴリズム) |
| 求めるスピード | プロトタイプ2〜3週間 | 本番同等の品質を最短で |
実務では、最初はAgent Studioで動かし、複雑度が上がり始めたところでADKに移す流れが多くなっています。最初からADKに行く選択は、開発者中心の小規模チームで、かつ複雑なマルチエージェント設計が最初から確定している場合に限って有利です。

Vertex AI Agent Builder資産との共存
Vertex AI Agent Builderで構築済みのDialogflow CX資産・社内QAボット・RAGアプリを抱えている企業が、Agent Studioへ一斉移行すべきかは判断が分かれます。
Google Cloud公式ブログでは「今後のVertex AIサービスとロードマップ進化はAgent Platform経由で提供される」方針が示されており、新機能の追加先がAgent Platform側に集約されていく見立てが読み取れます。
既存Agent Builder資産の具体的な提供継続条件・移行期の運用影響は公開情報では断定しきれないため、以下は公開情報ベースの実務的な判断例として、ハイブリッド戦略を整理します。
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新規プロジェクト
Agent Studio起点で開発
-
既存Agent Builder資産
公式ドキュメント・契約条件を確認し、段階的に移行タイミングを判断
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過渡期
移行期の運用影響(コンソール利用・IAM・監査ログ・権限設計など)は構成・契約条件により異なるため、公式ドキュメントとアカウントチームへの確認を前提に設計する
Google Cloud公式ブログは、今後のVertex AIサービスとロードマップの進化がAgent Platform経由で提供される方針を示しています。
既存Agent Builder資産の継続提供条件・移行タイミング・強制度合いについては公開情報だけでは読み切れない部分があるため、実プロジェクトでは公式ドキュメントとアカウントチームへの確認を前提に、移行計画を個別に設計するのが現実的です。

PreviewとGAの見極め
Agent Platformは機能ごとにPreview/GAのステータスが異なります。Agent Studioの中でも設計・デプロイ系の機能は2026年4月時点でPreview(Pre-GA)であり、加えてMemory Bank・Agent Optimizer・特定のモデル連携などもPreview扱いの可能性があります。
本番採用時は、必ずGoogle Cloud公式ブログとリリースノートで各機能のステータスを確認してください。
Previewの機能に依存した本番設計は、SLA・サポート範囲が限定される前提で扱う必要があります。「PoCはPreview込みで試し、本番にはGA機能のみを残す」設計が安全です。

マルチLLM運用での役割分担
Agent StudioはGemini・Claude・Model Garden 200超のモデルに対応していますが、実運用では「どのエージェントでどのモデルを使うか」の役割分担設計が悩みどころです。
- 顧客対応の高精度エージェント → Gemini 3.1 Pro or Claude Opus
- 大量バッチ処理の要約 → Gemini 3 Flash or Claude Haiku
- コード生成・レビュー → Claude Sonnet or Gemini 3.1 Pro
- 画像分析・マルチモーダル → Gemini 3.1 Flash Image
SIer視点では、全エージェントを1モデルで統一するのではなく、用途別に2〜3モデルを使い分けつつ、Model Optimizerで動的ルーティングを検証する流れを推奨します。モデル単価・レイテンシ・精度の3軸で評価軸を固定し、四半期ごとに再検証する運用が現実的です。

自社のエージェント開発を国産マルチLLM基盤で実装するには
Agent Studioは、Google Cloud資産を中心にエージェントを設計したい企業にとって強力なBuild層です。一方、日本企業の業務慣習・オンプレミス環境・既存SaaSとの連携を視野に入れると、海外クラウドだけで完結させるのは難しい場面が少なくありません。
AI総合研究所では、Gemini・Claude・GPTを含むマルチLLM環境で企業ごとのエージェント基盤を構築する「AI Agent Hub」を提供しています。
Agent StudioやADKをPoCで評価しつつ、日本語業務フロー・既存基幹システム・セキュリティ要件に適合した社内標準基盤を整えたい企業に選ばれています。
自社のエージェント開発をマルチLLM基盤で実装するには
AI Agent Hubでビジュアル設計とコード開発を両立
Agent Studioは海外クラウドの強力な設計UIですが、日本企業の業務慣習・既存データ基盤・セキュリティ要件に合わせて本番運用まで到達させるには、伴走支援が不可欠です。AI総合研究所の「AI Agent Hub」は、Gemini・Claude・GPTを含むマルチLLM対応のエージェント構築環境と、PoCから本番運用までの実装伴走を1パッケージで提供します。
まとめ
Agent Studioは、Gemini Enterprise Agent PlatformのBuild層を担うローコード・ビジュアル設計UIで、プロンプト設計から複雑なマルチエージェント構成までを同一キャンバスで扱えることを狙った設計です。
公式ドキュメント上でAgent Studioの設計・デプロイ機能は2026年4月時点でPreview(Pre-GA)と明記されているため、本番採用時はSLA・サポート範囲・リリースノートでの最新状態確認が前提です。コードファーストのADK・ユーザー向けのAgent Designer・CX特化のCX Agent Studio・Workspace上のエージェント設計を担うWorkspace Studioと使い分けることで、汎用エージェントのBuild入口としての役割を果たします。
実務での価値につながる要素を3つ挙げると、次のようになります。
-
ビジュアルとコードの連続性
Agent StudioからADKにエクスポートできるため、プロトタイプの労力が本番実装にそのまま引き継げる
-
マルチLLMとデータ接続の統合
Gemini・Claude・Model Garden 200超をRAG Engine・Vertex AI Search・MCPと組み合わせて、1画面で試せる
-
ガバナンスと最適化の自動統合
Agent Identity・Gateway・Registryが自動で紐づき、本番投入後はObservability・Optimizerで継続改善ループに乗る
次のステップとしては、まずAgent Gardenから近いテンプレートを選び、例えば2〜3週間の小規模PoCをAgent Studioで回すのが現実的です。Google Cloudの新規ユーザー向け90日間・$300クレジットを活用すれば初期PoC費用を抑えられる可能性があり、効果を確かめた上でMemory Bank・Agent Identityを段階的に導入していく流れが、投資対効果の見通しを立てやすい進め方です。
Vertex AI Agent Builder資産がある場合は、新規プロジェクトからAgent Studio起点に切り替え、既存資産は公式ドキュメントと契約条件を確認しつつ段階的に判断するハイブリッド戦略で、移行コストとリスクのバランスを取れます。どのBuild UIを選ぶか迷う場合は、**チーム構成(開発者中心かビジネス混成か)と初期成果物の形(合意形成用プロトタイプか、本番コードか)**の2軸で整理すれば、判断はシンプルになります。













