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Cosmos 3 Edgeとは?NVIDIAの4Bエッジ世界基盤モデルの性能や使い方を解説

この記事のポイント

  • Cosmos 3 EdgeはJetson Thor上の後訓練済みWAM構成で15Hzのリアルタイム制御を回す4B世界基盤モデル。クラウド往復レイテンシを許容できない現場が第一候補
  • ライセンスはOpenMDW-1.1で商用可、Hugging Faceの「nvidia/Cosmos3-Edge」から重みを直接取得できる
  • Nano16B・Super64Bはクラウド/DGX側で世界生成、Edge4Bはロボット側でリアルタイム推論という役割分担が本命ルート
  • 動作モードはimage2video・forward/inverse dynamics・policy・reasonerの5系統。1本のモデルで世界生成と行動生成を切り替えられる
  • Fanuc・Yaskawa・Kawasaki・Fujitsu・SoftBankら日本22社がCosmos Coalitionへの参加意向を表明、協調制御プラットフォームの構想も動き始めた
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

Cosmos 3 Edge(コスモス3エッジ)は、NVIDIAが2026年7月15日に東京で発表した、フィジカルAI向けの4Bパラメータのオープン世界基盤モデルです。
クラウド往復なしにロボットが「見て・考えて・動く」を1台で完結させることを狙い、Jetson Thor上でのリアルタイム制御を前提に設計されています。

本記事では、Cosmos 3 Edgeの主要スペックと対応ハードウェア、5つの動作モード、Cosmos 3 Nano/Superとの使い分け、後訓練とデプロイフロー、GR00TやGemini Robotics・π0.5との違い、Cosmos Coalitionの日本参加企業の実装先、導入で詰まる論点までを2026年7月時点で体系的に解説します。

目次

Cosmos 3 Edgeとは?NVIDIAが4Bでエッジに降ろした世界基盤モデル

Cosmos 3シリーズの中でのEdgeの位置づけ

Cosmos 3 Edgeの主要スペックと対応ハードウェア

4B・OpenMDW-1.1・BF16という基本仕様

学習データは13億ポイント・393データセット

H100系からJetson Thor全世代までの対応

H100 SXM 80GBでの推論性能

Cosmos 3 Edgeの5つの動作モード

世界を生成する2つのモード

行動と計画を出力する3つのモード

5モードを1本で切り替える意味

Cosmos 3 EdgeとNano・Super、Cosmos Reason 2の使い分け

パラメータ・想定ハード・用途の比較

Edge単独/Edge+Nano+Superの使い分け

Cosmos 3 Edgeの後訓練とデプロイフロー

Cosmos Frameworkのセットアップ

reasonerモードの推論コマンド例

後訓練の所要時間とハード構成

Jetson Thorへのデプロイ

Cosmos 3 EdgeとGR00T・Gemini Robotics・π0.5の違い

4モデルの立ち位置比較

GR00T:ヒューマノイドに特化した上位モデル

Gemini Robotics On-Device

π0.5:オープンVLAの本命

Cosmos Coalitionの日本参加企業とNVIDIA physical AI stack

Cosmos Coalition参加意向企業(22社)

NVIDIA physical AI stackでの公式発表用途

4社連合の協調制御プラットフォーム構想

業種別の採用パターン予想

Cosmos 3 Edge導入で詰まる論点と制限事項

モデル本体の制限事項

ハードウェア調達の詰まりポイント

後訓練データ整備の負荷

商用ライセンスの再配布条件

Cosmos 3 Edgeを選ぶ条件と競合モデルとの使い分け

ロボット制御と業務システム連携を1本のAI基盤で進めるなら

まとめ

Cosmos 3 Edgeとは?NVIDIAが4Bでエッジに降ろした世界基盤モデル

Cosmos 3 EdgeとはNVIDIAが4Bでエッジに降ろした世界基盤モデル

Cosmos 3 Edge(コスモス3エッジ)とは、NVIDIAが2026年7月15日に東京で発表した、フィジカルAI向けの4Bパラメータのオープン世界基盤モデルです。

画像・動画・アクション軌跡から「次に物理空間で何が起こるか」を予測し、ロボット制御用の関節角度・軌道コマンドを生成する世界モデル(World Foundation Model)に分類されます。


2026年7月15日の東京発表で、Cosmos 3 Edgeはクラウド往復のいらないエッジAI推論を担う最軽量ティアとして、5月先行公開のNano(16B)・Super(64B)に続くファミリー3本目のポジションを固めました。

Fanuc・Yaskawa・Kawasaki Heavy Industries・Fujitsu・SoftBank・Preferred Networks・Sonyら日本の22社が同時に「Cosmos Coalition」への参加意向を表明したことも、単なる新モデル追加にとどまらない発表であることを示しています。

Cosmos 3シリーズの中でのEdgeの位置づけ

Cosmos 3ファミリーはクラウド〜デバイスまでを1系統でカバーする3階層で構成され、Edgeはそのうちデバイス側の推論を担う末端層にあたります。

  • Cosmos 3 Super(64B):データセンターで動く最大級モデル。シミュレーション生成・学習データ合成
  • Cosmos 3 Nano(16B):ワークステーション・オンプレサーバーで動く中間層の汎用モデル
  • Cosmos 3 Edge(4B):ロボット・車載・産業機器のエッジデバイスに搭載可能な最軽量層


ここでのポイントは、同じCosmos 3ファミリーでも「学習・シミュレーション寄りのSuper/Nano」と「推論・実行寄りのEdge」で用途が明確に分かれる、という点です。

自社のフィジカルAI構想がクラウド側でシミュレーション生成をやりたいのか、エッジで即応推論をやりたいのかで選ぶティアが変わります。

AI Agent Hub1


Cosmos 3 Edgeの主要スペックと対応ハードウェア

Cosmos 3 Edgeの主要スペックと対応ハードウェア

Cosmos 3 Edgeは「4Bパラメータで軽量」という表現だけでは実像が見えにくいモデルです。学習データ規模・対応ハードウェア・推論性能を順に押さえていきます。

4B・OpenMDW-1.1・BF16という基本仕様

4B・OpenMDW-1.1・BF16という基本仕様

まずは基本仕様を表で整理しました。
ライセンスと精度サポート範囲は導入検討のとっかかりになる項目です。

項目
パラメータ数 4B(4 billion)
アーキテクチャ Mixture-of-Transformers(自己回帰タワー+拡散タワー)
ライセンス OpenMDW-1.1(商用・非商用の両方で利用可)
公式サポート精度 BF16(FP4・FP8・FP16は非公式)
対応OS Linux
配布 Hugging Face(nvidia/Cosmos3-Edge)/GitHub NVIDIA/cosmos
一般公開日 2026年7月20日


OpenMDW-1.1はLinux Foundationが管理するオープンモデル向けライセンスで、Cosmos 3ファミリー3本すべてに共通で適用されています。

モデル素材を再配布する場合には、OpenMDW-1.1本文と適用される著作権・出所表示を保持することが求められる一方、モデル改変・派生モデル配布・商用利用は許容範囲に入ります。

学習データは13億ポイント・393データセット

学習データは13億ポイント・393データセット

Cosmos 3 Edgeは既存Cosmos 3 Nano/SuperのようにQwen3-VLからの初期化ではなく、ゼロから訓練されたモデルです。学習に使われたデータの内訳は以下のとおりです。

モダリティ 推論用(Reasoning) 生成用(Generation)
テキスト 2,200万件
画像 1,900万件 7億6,700万件
ビデオ 100万件 3億4,800万件
アクション軌跡 700万件


合計13億データポイント・393データセットで、収集期間は2024〜2026年。公開データセット(OpenImage・Coyo700M・YouTube Video・UMI)と、Egocentric・Nexar・AgiBotなどのプライベートデータ、Qwen3-VL合成キャプション約11億件(公式値1,115M)などの合成データを組み合わせた構成です。

Qwen-Image-2512・HiDream-I1で生成した合成画像を訓練に混ぜている点は、実世界データの偏りを補正するNVIDIAらしい設計といえます。

H100系からJetson Thor全世代までの対応

Cosmos 3 Edgeがユニークなのは、H100/DGX Station級のサーバーGPUから、Jetson AGX Orinのような従来型エッジまで、幅広いNVIDIA GPUで動作テストが公表されている点です。

Jetson製品ロードマップ
Jetson Thorはフラッグシップ(T5000/T4000)とメインストリーム(T3000/T2000)の2ライン構成でOrin世代の上に位置する(出典:NVIDIA Blog

H100系からJetson Thor全世代までの対応

以下の表は、NVIDIA公式が動作確認済みと明記している主なハードウェアです。

カテゴリ 動作確認済みハードウェア
データセンター B200 SXM 192GB/H100 SXM 80GB/H100 NVL 96GB/H20 SXM 96GB
ワークステーション RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition/DGX Station/DGX Spark
エッジ(Jetson Thor) T5000/T4000/T3000/T2000
エッジ(旧世代) Jetson AGX Orin


T3000・T2000は2026年7月15日にNVIDIAが同時発表したJetson Thorの新モジュールで、2027年Q1の一般提供が予告されています。

つまりCosmos 3 Edgeを「新しいエッジハード×新しいモデル」の同時導入で使いたい場合、実機は2027年前半まで待つ必要があります。
既存のJetson Thor T5000・T4000は既に出荷済みで、こちらは今すぐ検証可能です。

H100 SXM 80GBでの推論性能

H100 SXM 80GBでの推論性能

Cosmos 3 Edgeの推論性能を、NVIDIA公式が公開したH100 SXM 80GBでの実測値で見ていきます。

タスク PyTorch vLLM-Omni
Image-to-Video生成(PBR基準・480p・189フレーム) 23.92秒 27.64秒
Forward Dynamics(動画予測) 3.69秒 3.91秒
Inverse Dynamics(動作推定) 3.56秒 5.60秒
Policy(DROIDデータセット後訓練版) 1.25秒 1.41秒


Policyの1.25秒はDROID由来の操作タスク向けに後訓練された参照チェックポイントでのアクションチャンク生成時間で、別筐体で使う場合は追加適応が前提になります。

H100上でロボット制御ループに組み込みやすいレイテンシに収まっている点は確認できますが、そのまま制御周期になるわけではありません。

エッジ側については、NVIDIA公式ブログが「Jetson Thor上の後訓練済み世界アクションモデル(WAM)構成で15Hzのリアルタイム制御を実現し、1推論あたり32アクションを生成する」と、640×360入力・後訓練済み構成という条件付きで説明しています。

15Hzは高レベル方策の更新頻度として実用可能性がある水準ですが、産業用ロボットの制御周期として組み込めるかは実機検証が必要な段階です。

Jetson T3000性能ベンチマーク
Jetson T3000はT5000比0.87〜0.93のスコアでLLM/VLM/WFM/VLAをカバーし、Cosmos 3 Nanoは0.88(出典:NVIDIA Blog


Cosmos 3 Edgeの5つの動作モード

Cosmos 3 Edgeの5つの動作モード

Cosmos 3 Edgeは「1本のモデルで理解・生成・制御を切り替える」設計になっており、「model_mode」パラメータで動作を切り替えます。

本セクションでは、5つの動作モード(image2video・forward_dynamics・inverse_dynamics・policy・reasoner)を役割別に整理します。

世界を生成する2つのモード

世界を生成する2つのモード

まずは「未来の映像を生成する」系統のモードです。この2つは、ロボットの行動決定に使うシミュレーション基盤として機能します。

  • image2video
    1枚の画像とテキストプロンプトから、480pの動画(121フレーム/24fps)を生成する。データ拡張・想定シナリオの前置き映像生成に使う

  • forward_dynamics
    現在のフレーム+アクションチャンク(16フレーム分の関節指令など)を入力し、その行動を取った結果の映像を予測する。方策探索・行動シミュレーションに使う


forward_dynamicsは「動かす前に、動かしたらどうなるかを試す」ためのモードで、World Modelとしてのコアな用途にあたります。

複数のアクションチャンクを連鎖させることで、長期のロールアウト映像を積み上げる使い方もサポートしています。

行動と計画を出力する3つのモード

行動と計画を出力する3つのモード

続いて「行動そのものを出力する」系統のモードです。

  • inverse_dynamics
    入力動画から、その動画を再現する動作シーケンスを推定する。模倣学習・遠隔操作ログからの方策抽出に使える

  • policy
    現在の観測(画像+テキスト指示)から、次に取るべきアクションチャンクを直接出力する。ロボット制御ループの中核

  • reasoner
    画像とプロンプトから、タスク分解や計画のテキストを生成する。「花を赤いボトルに入れる」といった目的から、サブタスクの手順書を出力する用途に使う


policyモードはDROID(Distributed Robot Interaction Dataset)で後訓練された参照チェックポイントが提供されており、DROID由来の操作タスク向けの参照実装として使えます。別筐体への適用には追加の後訓練が必要です。

reasonerモードは推論用に最大256Kトークンの入力コンテキストを扱え、複雑な多段タスクの計画立てにも使えます。

5モードを1本で切り替える意味

5モードを1本で切り替える意味

5つのモードを1本のCosmos 3 Edgeで賄えることが、他のVLA(Vision-Language-Action)モデルと本質的に違う点です。

Cosmos 3オムニモデル概念図
Cosmos 3のオムニモデルは動画観察・推論による誤り訂正・タスク実行を1本で担う(出典:NVIDIA Blog

多くのVLAは「観測→アクション」の1経路に特化しますが、Cosmos 3 Edgeは同じ重みで「未来の映像を予測する(world model)」と「アクションを出す(policy)」を両方担えます。

これは、方策改善のループを1つのモデル内で完結できることを意味します。policyで動かした結果をforward_dynamicsで検証し、reasonerで次のサブタスクを組み立て、というAgentic Loop的な使い方が同じモデル内で可能になります。


Cosmos 3 EdgeとNano・Super、Cosmos Reason 2の使い分け

Cosmos 3 EdgeとNano・Super、Cosmos Reason 2の使い分け

Cosmos 3ファミリーは4B・16B・64Bと大きなパラメータ差があり、実装時はどこにEdgeを使い、どこにNano/Superを使うかの判断が必要です。あわせて、前世代の推論特化モデルであるCosmos-Reason2-2Bとの住み分けも整理します。

パラメータ・想定ハード・用途の比較

以下の表で、Cosmos 3ファミリーとCosmos Reason 2の位置づけを整理しました。

モデル パラメータ 想定ハード 主な用途
Cosmos 3 Edge 4B Jetson Thor T3000/T5000(リアルタイム制御・世界予測)/DGX Spark(オンプレ検証・後訓練環境)/T2000(Reasoner・Image-to-Video中心) ロボット筐体側でのリアルタイム制御・世界予測(Jetson Thor)+オンプレでの検証・後訓練(DGX Spark)
Cosmos 3 Nano 16B DGX Spark 128GB/H100 1〜2枚 単一ノードでの理解・生成・制御の統合運用
Cosmos 3 Super 64B DGX Station/H100クラスタ 高精度の世界生成・シミュレーション・データ拡張
Cosmos-Reason2-2B 2B Jetson・小型GPU 前世代の推論特化モデル(Reason 2ファミリーには2B/8B/32Bが存在)


Classmethod DevelopersIOのCosmos 3ファミリー整理記事は、DGX Spark(128GBメモリ)を基準にすると「Nanoが快適・Superはメモリ圧迫」と実測でまとめており、単一ノード運用ならNanoが主軸になると分析しています。

ハードウェアの制約が「DGX Sparkかそれ以上」なのか「Jetson Thorで完結させたい」なのかで、Nano中心/Edge中心が分岐します。

Edge単独/Edge+Nano+Superの使い分け

Edge単独とEdge+Nano+Superの使い分け

実装時にありがちなパターンを3つに整理します。

  • Edge単独パターン
    ロボット筐体にJetson Thorを積み、そこでpolicy+reasonerを完結させる。クラウド接続なし・低レイテンシ最優先の現場向け。介護・現場作業ロボット・農業機械など、通信が不安定な環境に適する

  • Edge+Nanoパターン
    ロボット側でEdgeを動かし、DGX Spark級のオンプレノードでNanoが方策改善・シミュレーションデータ生成を回す。工場ライン・倉庫のように「エッジで動かしつつ拠点内で改善サイクルを回す」構成

  • Edge+Superパターン
    Edgeで本番稼働、SuperをH100クラスタで走らせて大規模な合成データ生成・世界生成を担わせる。自動運転・都市規模のスマートインフラのように、シミュレーション側にコンピュート予算を割ける案件向け


実務で有力な想定構成としては、2番目のEdge+Nano構成が挙げられます。DGX Sparkがオフィス設置可能な省スペースサーバーとして機能するため、部門単位で完結した「エッジ本番+オンプレ学習」ラインを組みやすいというのが理由です。

Superはクラウド運用が現実的で、AWS/Azure/OCI経由の一時借用と組み合わせるパターンも想定される選択肢の一つです。


Cosmos 3 Edgeの後訓練とデプロイフロー

Cosmos 3 Edgeの後訓練とデプロイフロー

Cosmos 3 Edgeを既存モデルとして使うだけでなく、自社ロボット・センサー・環境に合わせて後訓練(post-training)することが想定されています。

ここでは、Cosmos Framework経由での後訓練・推論のフローを整理します。

Cosmos Frameworkのセットアップ

Cosmos Frameworkのセットアップ

NVIDIAはCosmos FrameworkというOSSフレームワークをGitHub上で公開しており、Cosmos 3 Edgeの学習・推論はこれを介して行います。基本セットアップは以下の通りです。

sudo apt-get install -y --no-install-recommends \
    curl ffmpeg git-lfs libx11-dev tree wget

git clone https://github.com/NVIDIA/cosmos-framework.git
cd cosmos-framework

# CUDA 12.8対応環境の場合
uv sync --all-extras --group=cu128-train
source .venv/bin/activate
export LD_LIBRARY_PATH=


このセットアップには2つの利点があります。

  • 依存関係のバージョン整合を自動化
    「uv sync」一発でCUDA・PyTorch・vLLMのバージョン整合まで揃うため、環境構築で詰まりにくい

  • 後訓練用ライブラリの一括セットアップ
    「cu128-train」グループを指定するだけで、後訓練に必要なライブラリ一式が同時にインストールされる

Cosmos Framework側で推論エンジンとしてDiffusers・Transformers・vLLMをサポートしており、本番デプロイ時のエンジン選択肢も広いです。

reasonerモードの推論コマンド例

reasonerモードの推論コマンド例

実際の推論は「cosmos_framework.scripts.inference」をCLIから叩く形になります。以下は、画像とタスク指示からタスク分解プランを生成するreasonerモードの公式実行例です。

cat > reasoner_edge.json <<'JSON'
{
    "model_mode": "reasoner",
    "prompt": "The task is to put flower into the red bottle. Generate a plan consisting of subtasks for accomplish the task.",
    "vision_path": "https://huggingface.co/nvidia/Cosmos3-Edge/resolve/main/assets/example_reasoning_input.png"
}
JSON

python -m cosmos_framework.scripts.inference \
    --parallelism-preset=latency \
    -i reasoner_edge.json \
    -o outputs/reasoner_edge \
    --checkpoint-path Cosmos3-Edge \
    --seed 0


この構成には2つの利点があります。

  • 同一CLIをモード横断で再利用できる
    image2video・forward_dynamics・inverse_dynamics・policyの各モードを同じCLIから呼び出せる

  • プリセットで実行特性を1オプション切替
    「--parallelism-preset=latency」のようなプリセットで、レイテンシ優先/スループット優先を1オプションで指示できる


ただし入力JSON側の設定はモードごとに異なり(action_path・domain_name・解像度・フレーム数など)、モード固有のパラメータを組み替える必要があります。

「--checkpoint-path」にはローカルダウンロード済みの重みディレクトリを指定するほか、Hugging Face経由でも読み込めます。

後訓練の所要時間とハード構成

後訓練の所要時間とハード構成

後訓練のハード構成については、NVIDIA Cosmos 3 Edge公式ブログが「小規模H100クラスタもしくはDGX Stationで微調整できる」と説明しています。

所要時間については、NVIDIA公式プレスリリースが「約1日で適応可能」と説明しており、詳細な計測条件(データ量・GPU台数等)は公表されていません。

  • ドメイン適応型ポストトレーニング
    自社のロボット・センサー・現場データで追加学習を行い、対象タスクに最適化する

  • Cosmos 3 Super 4-Step蒸留
    リファレンス実装として提供されている高速化技法。拡散ステップを従来の35〜50ステップから4ステップまで削減し、推論を最大25倍高速化する


後訓練スクリプトはCosmos Frameworkのリポジトリにサンプル同梱されており、Fine-tune用データの前処理・トークナイズ・チェックポイント保存が一通り揃っています。

NVIDIAが「約1日で適応可能」と説明している水準感で計画できるのは、フィジカルAI開発では例外的な速さです。

ただし計測条件(データ量・GPU台数等)は非公表のため、実案件では自社データでの検証が前提になります(データ整備側の工数は後述の「後訓練データ整備の負荷」を参照)。

Jetson Thorへのデプロイ

Jetson Thorへのデプロイ

学習・検証をH100/DGX側で回した後、Jetson Thorへは同じCosmos FrameworkからBF16重みを転送する形でデプロイします。公式にサポートされている精度はBF16のみで、FP4・FP8・FP16は非公式のためカスタム変換が必要になります。

FP4 TFLOPS値(T3000:865/T5000:2,070、いずれもFP4 Sparse時の公表ピーク値)は最大値であり、Cosmos 3 EdgeでのFP4推論は公式PBRの対象外です。
ロボット筐体でリアルタイム制御を回す場合は、公式PBR(BF16)の実測値でJetson Thor T3000またはT5000を選ぶのが基本になります。

T2000(400 FP4 TFLOPS)は「動画像処理AI・移動ロボット・軽量な産業アーム」向けとNVIDIAが位置づけており、公式PBRではReasonerと軽量な視覚生成(Image-to-Video)の測定値がある一方、Policy・forward_dynamics・inverse_dynamicsの測定値は未掲載です。

Cosmos 3 Edgeの全モード運用より、reasoner中心の視覚AI用途と相性が良い構成といえます。

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Cosmos 3 EdgeとGR00T・Gemini Robotics・π0.5の違い

Cosmos 3 EdgeとGR00T・Gemini Robotics・π0.5の違い

2025年から2026年にかけてのVLA市場は、Cosmos 3 EdgeだけでなくNVIDIA GR00TGemini Robotics 1.5Physical Intelligenceのπ0.5/π0.7といった複数の重量級モデルが本格投入されました。

ここでは、それぞれの立ち位置とCosmos 3 Edgeとの違いを整理します。

4モデルの立ち位置比較

以下の表で、フィジカルAIの主要4モデルを比較します。

モデル 提供元 パラメータ 特徴 公開ウェイト/提供形態
Cosmos 3 Edge NVIDIA 4B オムニ世界基盤(world+policy)、Jetson特化 公開ウェイトあり/OpenMDW-1.1(商用可)
GR00T N1.7 NVIDIA 3B(Cosmos-Reason2-2Bバックボーン) ヒューマノイド特化VLA・現行の公開版 公開ウェイトあり(オープンモデル)
GR00T N2(プレビュー) NVIDIA 未公開 次世代VLA・2026年末提供予定 プレビュー段階/提供形態は要確認
Gemini Robotics 1.5 / On-Device Google DeepMind 非公開 ALOHA・bi-arm Franka FR3・Apolloで実績 公開ウェイトなし/On-Device SDKは申請・待機リスト制
π0.5(公開ウェイト) Physical Intelligence 非公開 openpiの公開版・多様なロボットへの汎化 公開ウェイトあり(コードはApache-2.0/モデル利用時はGemma Termsも要確認)
π0.7(現行モデル) Physical Intelligence 非公開 2026年4月公開・現行の最新モデル 公開ウェイトなし/提供形態は要確認


この比較から分かるのは、Cosmos 3 Edgeが「1本で世界生成もアクション生成も担う」オムニ設計を採用している点です。

GR00T N1.7はCosmos-Reason2-2Bをバックボーンとする「アクション生成特化型VLA」として設計されていますが、Cosmos 3 Edgeとの直接連携は現時点で公式に明言されていません。

GR00T:ヒューマノイドに特化した上位モデル

GR00Tはヒューマノイドに特化した上位モデル

GR00Tは同じくNVIDIAの製品ラインで、ヒューマノイドロボット向けにチューニングされたVLAです。

GR00T N1.7はバックボーンにCosmos-Reason2-2Bを使い、20,854時間の人間視点動画で事前学習されている点が特徴です。GR00T N2はプレビュー段階で2026年末の提供予定と発表されており、現時点で商用利用条件を確定させるのは早すぎます。

  • 用途特化: ヒューマノイド/二足歩行機
  • モデル層: バックボーン(Cosmos-Reason2-2B)+ VLA上位層(GR00T N1.7)
  • Cosmos 3 Edgeとの連携: 公式では明言されておらず、組み合わせるならSIer側の統合設計になる


ヒューマノイドを扱う案件ではGR00T中心、産業アーム・移動ロボット中心ならCosmos 3 Edge単独、というのが自然な使い分けになります。

Gemini Robotics On-Device

Gemini Robotics On-Device

Gemini Robotics On-Deviceは、Googleが2025年6月に投入したVLAで、Cosmos 3 Edgeより1年ほど早くオンデバイス向けに投入されました。

ALOHA・bi-arm Franka FR3・Apptronik Apolloへの対応実績があり、双腕・ヒューマノイドの巧緻性で評価が高いモデルです。

Cosmos 3 Edgeとの違いは、以下の3点に集約されます。

  • 配布形態: Gemini Robotics On-DeviceはSDKアクセスの申請・待機リスト制/Cosmos 3 Edgeは重みそのものをOpenMDW-1.1で公開配布
  • ハードウェア: Gemini Robotics On-Deviceの動作ハードウェアはGoogle側で限定的に公開/Cosmos 3 EdgeはNVIDIA GPUを前提とする明示的スコープ
  • 拡張性: Gemini Robotics On-DeviceのSDKアクセスは審査経由/Cosmos 3 Edgeは後訓練スクリプトまで公開


ロボットハード側でNVIDIA Jetsonを採用している現場では、Cosmos 3 Edgeのほうがハードとの統合コストが低くなります。

Googleエコシステムに寄せたい現場ではGemini Robotics On-Deviceが第一候補になりますが、SDKアクセスの申請が通ることが前提条件になります。

π0.5:オープンVLAの本命

π0.5はオープンVLAの本命

Physical Intelligence(PI)は、多様なロボット筐体への汎化性能を売りにする「openpi」ファミリーのVLAを公開しています。
公開ウェイトとしてはπ0.5(2025年)が代表格、現行の最新モデルは2026年4月公開のπ0.7です。

PIは企業価値$11B超・追加$1Bの資金調達を交渉中と報じられている事業化フェーズのスタートアップです。

Cosmos 3 Edgeとの違いは、単一モデルでのforward_dynamics統合の有無です。π0.5単体にはCosmos 3 Edgeのようなforward_dynamics統合機能がなく、世界シミュレーションを行うには外部ワールドモデル(Cosmos 3 Nano/Super等)と組み合わせる形になります。

ただしπ0.7は推論時に視覚サブゴールを利用する構成も選べるため、外部ワールドモデル併用は選択肢の一つで必須ではありません。

実務での使い分けとしては、πシリーズは「多様な筐体で汎化させたいアクション生成」に、Cosmos 3 Edgeは「NVIDIAハード縛りでも世界モデル込みで完結させたいオムニ用途」に、それぞれ強みが出ます。

なお、触覚センサーの入力を統合する派生系としてVTLA(Vision-Tactile-Language-Action)モデルも登場しており、精密ハンドリング領域ではVTLA系との組み合わせも視野に入ります。


Cosmos Coalitionの日本参加企業とNVIDIA physical AI stack

Cosmos Coalitionの日本参加企業とNVIDIA physical AI stack

Cosmos 3 Edgeの発表と同じ7月15日、NVIDIAは日本の22社がCosmos Coalitionへの参加意向を表明したことを東京で発表しました。

CosmosだけでなくIsaac・Metropolis・Jetsonを含むNVIDIA physical AI stack全体を対象として、参加意向企業と想定用途が公表されています。

ここからは、Cosmos 3 Edgeを含む物理AI基盤が日本の製造・介護・農業・小売・建設で実装される想定シナリオが読み取れます。

Cosmos Coalition日本4社シミュレーション
Fujitsuと産業ロボット3社(FANUC・Kawasaki・Yaskawa)が公表したCosmos上のシミュレーション(出典:NVIDIA Newsroom

Cosmos Coalition参加意向企業(22社)

Cosmos Coalition参加意向企業22社

NVIDIA公式プレスリリースで参加意向を表明した22社は以下のとおりです。

企業 カテゴリ
Fujitsu 電機・SI
Hitachi 電機・SI
NEC 電機・SI
Sony Group 電機
FANUC 産業ロボット
Yaskawa Electric 産業ロボット
Kawasaki Heavy Industries 重工業
SoftBank 通信・AI
Kubota 農機
Mitsui & Co. 総合商社
Mitsubishi Corp. 総合商社
AIRoA AI研究
classmethod クラウド
TIER IV 自動運転
Turing 自動運転
Preferred Networks AI研究
GROOVE X ロボットベンチャー
Enactic ロボットベンチャー
Telexistence ロボットベンチャー
Mujin ロボットベンチャー
TRON K.K. ソフトウェア
Honda R&D 自動車


Sony Group・Mitsui & Co.・Mitsubishi Corp.・AIRoA・classmethod・TIER IV・Turing・Honda R&Dの8社は参加意向表明のみで、具体的な想定用途は公式発表では未記載です。

NVIDIA physical AI stackでの公式発表用途

NVIDIA physical AI stackでの公式発表用途

参加意向22社のうちNVIDIA公式が具体的な想定用途を明示している14社と、参加意向表明はないが同じ発表で用途が公表されたOMRON・Shimizu Corporation(清水建設)の2社を加えた16社の用途を整理します。

用途はCosmos単体ではなく、Cosmos/Isaac/Metropolis/Jetsonを含むNVIDIA physical AI stack全体を対象とした公式説明です。

企業 参加意向 NVIDIA physical AI stackでの想定用途
Fujitsu 協調制御プラットフォーム構想を主導
FANUC 協調制御プラットフォームへの参画
Yaskawa Electric 協調制御プラットフォームへの参画
Kawasaki Heavy Industries 医療・造船・運輸・航空宇宙・エネルギー領域への応用
SoftBank フィジカルAI開発プラットフォーム構築、AI-RAN構想
Hitachi 世界モデル研究、スマートビル運営(Metropolis併用)
NEC 世界モデル・産業AI
Kubota 自動農業・スマートファーミング
Preferred Networks 世界モデル・産業AIの研究開発
GROOVE X Jetson搭載コンパニオンロボット「LOVOT」の開発
Enactic 介護用セミヒューマノイドロボットのモデルチューニング
Telexistence 小売店舗の自動化
Mujin 自律ロボティクスと知能化された産業自動化
TRON K.K. 製造データワークフロー、組立・ピッキング・検査・搬送タスク
OMRON 自動検査(Metropolis併用)
Shimizu Corporation 建設現場の安全管理(Metropolis併用)


2つの表から見えてくるのは、Coalition参加意向側は電機・SI・産業ロボット・重工業・自動運転・総合商社まで幅広く並び、Fujitsuと産業ロボット3社(FANUC・Yaskawa・Kawasaki)の協調制御プラットフォーム構想がCoalition内の看板企画となっている点です。

海外モデル発表時によくある「大手数社との覚書のみ」というパターンとは違い、22社の参加意向表明と16社の想定用途が同時に公表されている点は珍しい形です。

用途表側には、ロボットベンチャー・農機・FA機器・ゼネコンが並び、Kubota農業・Groove X LOVOT・Enactic介護・Shimizu建設のように、日本独自のロボット需要領域が最初から視野に入っている点も特徴です。

4社連合の協調制御プラットフォーム構想

4社連合の協調制御プラットフォーム構想

Cosmos Coalitionの発表で最も注目されたのが、Fujitsu主導で、FANUC・Yaskawa・Kawasakiと共同で「協調制御プラットフォーム」を構築する構想です。

Cosmos Omniverseロボット物体認識
NVIDIA Agent Toolkitと新Omniverseライブラリで倉庫内のヒューマノイドが物体を3Dバウンディングボックスで認識するシミュレーション例(出典:NVIDIA Newsroom - Omniverse Libraries発表

  • 公式説明によると、Cosmos world foundation models/Isaac/Omniverse NuRec/Newtonを組み合わせ、複数メーカーのロボットを一つのAI基盤で協調動作させる構想
  • 目的は、工場ラインで異なるベンダーのロボットが混在しても、単一のフィジカルAI基盤で動作制御できる状態を作ること
  • 適用領域や展開ロードマップは公式発表では明示されておらず、製造業以外への展開はAI総研の見立てにとどまる


これまでロボットベンダー各社は自社独自の制御プラットフォームを持っており、混在環境の統合は各案件で個別開発するのが定石でした。

この構想が実現すれば、フィジカルAI基盤側で共通化される大型ケースの一つとなります。

業種別の採用パターン予想

SIerとしての読み解き

これら日本の参画企業の顔ぶれから、AI総研の見立てとして提示できる構成の見通しは以下のとおりです(一次情報で確定済みの構成ではなく、支援現場の観察に基づく想定です)。

  • 産業ロボット系はEdge+Nanoのハイブリッドが有力候補になる想定(工場内は電力・コストの制約が強く、DGX Sparkクラスをオンプレ設置してNano運用が現実的なため)
  • 介護・農業・小売のロボット系はEdge単独運用が有力候補になる想定(クラウド不安定・通信コスト高・現場が屋外のケースが多いため)
  • 建設・スマートインフラ系はMETROPOLIS+Cosmos 3 Edge併用が有力候補になる想定(既存の映像解析パイプラインにフィジカルAI推論を差し込む形)


まだ発表段階の企業も多く、実装事例が公表されるタイミングは公式に明示されていませんが、「日本の製造・現場系ロボット案件はCosmos基盤で組む」という選択肢が、案件初期の企画段階から選ばれる状況になりつつあります。


Cosmos 3 Edge導入で詰まる論点と制限事項

Cosmos 3 Edge導入で詰まる論点と制限事項

Cosmos 3 Edgeは「発表されたばかりの新モデル」でもあり、実装検討の段階で必ず突き当たる技術・調達・運用面の制約があります。

ここでは、AI導入支援の現場で実際に浮上している論点を整理します。

モデル本体の制限事項

モデル本体の制限事項

NVIDIA公式のモデルカードには、Cosmos 3 Edgeの既知の制限が明記されています。

  • 時間的不整合
    長時間ロールアウトすると、カメラやオブジェクト動作の一貫性が崩れる場面がある

  • 接触ダイナミクスの近似
    3D幾何や物体接触の物理を厳密には解いておらず、近似モデルとして動作する

  • 物理シミュレータ非搭載
    NVIDIA Isaac Simのような剛体シミュレーションを内蔵しておらず、精密検証には別途シミュレータが必要

  • 分布外環境での品質低下
    学習データと大きく異なる環境(未見のオブジェクト・特殊照明)では性能が落ちる


これらは4Bの軽量モデルとしての制約であり、超精密なマニピュレーション(医療ロボット・半導体ハンドリング)を全自動化する用途には向きません。

作業指示から粗い実行までを担わせ、詰めの動作は従来のロボット制御にオフロードする設計が現実的です。

加えてNVIDIA公式モデルカードは、Cosmos 3 Edgeの出力を物理的に正確なシミュレーションや安全認証済みの判断として扱うことはできず、外部の制約・検証・ガードレールを組み合わせて運用する必要があると明示しています。

ロボット・自動運転・スマートインフラのいずれの用途でも、モデル出力を最終判断に直結させない設計を前提にする必要があります。

ハードウェア調達の詰まりポイント

ハードウェア調達の詰まりポイント

Jetson Thor T2000/T3000は2027年Q1の一般提供予定で、Cosmos 3 Edge発表時点ではT3000のエミュレーションモードが2026年7月後半にJetPack 7.2.1で提供予定・T2000のエミュレーションは将来リリースで対応予定という段階です。

このため、実機評価は以下の3ルートに分かれます。

  • 既存のJetson Thor T5000で先行検証(T5000は2025年から一般提供済み)
  • T3000のエミュレーションモードで開発(JetPack 7.2.1・7月後半提供予定/T2000は将来リリースで対応予定)
  • DGX Sparkでオンプレ検証・後訓練環境を先行構築(Jetson Thor実機に載せる前段のモデル検証・微調整用。DGX SparkのPolicy DROID推論は5秒台〜7秒台のため、Jetson Thor上の15Hzリアルタイム制御とは別レイヤーとして扱う)


2026年中にCosmos Coalition参加意向の各社が先行検証を始める場合は、T5000搭載の産業ロボット・DGX Sparkベースのオンプレ検証のいずれかで進めるのが妥当なルートになります。

後訓練データ整備の負荷

後訓練データ整備の負荷

NVIDIA公式プレスリリースは適応時間を「約1日」と説明しています。

一方、HF公式ブログは「小規模H100クラスタまたはDGX Stationで微調整可能」と別途説明しており、両者は同一の実測条件を示しているわけではありません。

これはあくまでモデル適応の水準感であって、その前段でロボット固有のセンサーデータ・アクション軌跡・映像を整備する工数はSIer側で発生します。
詳細な計測条件は公式では公表されていない点も要注意です。

  • 対象ロボットの関節・センサー仕様に合わせたアクション表現の設計
  • 実機での教示・遠隔操作ログの収集(案件規模で変動、AI総研の支援経験では数十〜数百時間規模になることが多い)
  • 収集データのラベリング・チャンク化・データ拡張
  • 検証環境(本番前段のIsaac Sim/実機テストベッド)の準備


ここのコストがモデル適応の前段で発生する点は、AI総研の支援経験では数週間〜数か月かかることが多く、企画時点で織り込む必要があります。

GROOVE XのLOVOTのように既存の実機がある案件では、収集環境を設計しやすい可能性がある一方、これから新規に立ち上げるロボットではデータ整備計画がプロジェクト成否を分けます。

商用ライセンスの再配布条件

OpenMDW-1.1は商用利用・派生モデル配布ともに許容していますが、Cosmos 3 Edgeを組み込んだ製品・派生モデルを再配布する際には、OpenMDW-1.1ライセンス本文と適用される著作権表示・出所表示を保持することが求められます。

自社製品ブランドとして展開する場合でも、依存関係表記やドキュメント側でライセンス本文と表示条件を継承しておくのが安全です。

SaaSやマネージドサービス経由の間接提供の場合は、モデル素材そのものを渡していない構成になっているかを含めて、契約・法務側で確認しておく必要があります。

Cosmos 3 Edgeを選ぶ条件と競合モデルとの使い分け

SIer視点の採用判断

これらを踏まえ、AI総研の支援現場で提示している採用判断の軸は以下のとおりです。

  • クラウド往復レイテンシが問題なら第一候補
    クラウド往復のレイテンシが問題になるロボット制御ループなら、Cosmos 3 Edge+Jetson Thorが最短ルート

  • 既存のNVIDIAハードスタックがあるなら第一候補
    Jetson・DGX・RTX Proが既に導入済みなら、既存投資を活かせる

  • オムニ用途(世界モデル+アクション両方)なら第一候補
    forward_dynamicsとpolicyを同一チェックポイントで扱える点がCosmos 3 Edgeの差別化要素

  • ヒューマノイド全身制御が主目的ならGR00Tを優先
    ヒューマノイド案件ではGR00T N1.7を直接採用するのが近道。Cosmos 3 Edgeとの直接統合は公式未発表

  • 多様なロボット筐体への適応を重視するならπ0.5やGemini Roboticsも比較候補
    筐体側の汎化性能を優先する場合はπ0.5・Gemini Robotics On-Deviceも検討対象になる。ただし計算基盤の要件は個別確認が必要(π0.5の公式openpi実装はRTX 4090・A100・H100などNVIDIA GPUを前提としており、GPUメーカー中立ではない点に注意)


「Cosmos 3 Edgeを使うかどうか」ではなく、「フィジカルAI導入のどのレイヤーにCosmos 3 Edgeを配置するか」が本質的な問いになります。

単独導入より、Nano/Super/GR00T/既存パイプラインとの組み合わせで設計する視点が実務では重要になります。

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Cosmos 3 Edgeでロボット筐体側の制御を実装しても、稼働ログ・例外通知・承認フロー・部品在庫の引き当てまでを既存の業務システム(ERP・調達・生産管理)に接続する層がなければ、現場のROIは可視化できません。

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まとめ

本記事では、Cosmos 3 Edgeについて、定義と主要スペック、5つの動作モード、Nano/Super/Reason 2との使い分け、後訓練とデプロイフロー、GR00T/Gemini Robotics/π0.5との違い、Cosmos Coalitionの日本参加企業、導入で詰まる論点までを、2026年7月時点の最新情報で解説しました。

2026年時点で押さえておくべきポイントは次の3つです。

  • Cosmos 3 EdgeはNVIDIAが2026年7月に発表した4Bオープン世界基盤モデルで、Jetson Thor上でのリアルタイム制御を前提にゼロ学習された最軽量ティア
  • image2video・forward_dynamics・inverse_dynamics・policy・reasonerの5モード切替とOpenMDW-1.1ライセンスによる商用利用可を武器に、GR00T/Gemini Robotics On-Device/π0.5と差別化される
  • Nano(16B)・Super(64B)と組み合わせた二段構えのハイブリッド構成が本命で、Cosmos Coalitionには日本22社が参加意向を表明済み

まずはH100クラスタまたはDGX Stationで後訓練を試し、Jetson Thor T2000/T3000のエミュレーション提供時期・OpenMDW-1.1再配布条件を企画段階で織り込むのが、最も現実的な第一歩になります。ロボット制御と業務システム連携を1本のAI基盤で進める設計が、2026年後半のphysical AI競争の主戦場になります。

監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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