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検図AIとは?主要5サービスの機能・料金・PoCチェックリストを解説

この記事のポイント

  • 検図AIは寸法漏れ・部品欄不整合・図面間差分・流用差分の効率化に強く、設計意図や製造性判断は人が担う「AI下検図+人間最終確認」の二層構成が現実解
  • 検図AI特化型(KENZ・KK Generation・東芝CISSART)・検図関連支援型(CADDi Drawer)・生成AI型(電通総研Know Narrator)の3レイヤーで棲み分けが進み、社内ルールの構造化レベルで選定軸が変わる
  • KENZ大手防災機器メーカー検証で検図時間50%削減/CADDi Drawer川崎重工業の類似品検索で年300万円削減(隣接事例)/KK Generation名古屋市上下水道局との実証プロジェクトなど、定型検図中心の部門でROI試算の起点が揃ってきた
  • 検図AIの精度は「ルール定義の質」に依存し、社内標準・業界規格の形式知化が未整備ならルール整理を先行させた方が失敗しにくい
  • ライセンス費以外に既存図面取込・PLM連携・教育・チューニングの隠れコスト4項目が乗るため、月額×台数だけのROI試算で判断すると事故が起きる
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

検図AIは、設計図面のチェック工程——寸法整合・部品欄・図面間差分・流用差分・法規/標準照査——をAIで肩代わりさせる仕組みです。

2025年7月のKENZ正式リリース、CADDi Drawerの3D CAD対応発表、KK Generation検図照査AIと名古屋市上下水道局の実証プロジェクト、電通総研Know NarratorのマルチLLM選択機能追加など、2025〜2026年で主要プレイヤーとユースケースが一気に厚みを増しました。

本記事では、2026年7月時点の最新情報をもとに、検出領域・中核技術・主要5サービスの比較軸・料金構造・国内事例・PoCで詰まる5パターン・段階導入の判断軸まで、検図AI導入判断に必要な論点を体系的に解説します。

目次

検図AIとは?図面チェックをAIで自動化する新しい仕組み

検図AIでカバーできる5つの検出領域

①寸法整合の自動化——下検図の主戦場

②部品欄・タイトル欄の照合——後工程ロス削減の要

③図面間整合・形状差分——要件別に構成を分ける

④流用図面差分——過去資産との照合が肝

⑤法規・標準照査——RAG構成で柔軟性を確保

検図AIを成立させる4つの中核技術

マルチモーダル生成AIが柔軟性を底上げする

画像解析・形状認識が図面間整合と流用差分の核

RAGで企業固有ルールを反映する

AI-OCRは既存図面取り込みの前段を担う

AI検図と従来検図のワークフロー比較

検図担当スキルセットの変化

二層構成「AI下検図+人間最終確認」を崩さない

検図AIの主要5サービス比較

KENZ|システムインテグレータの検図特化AI

CADDi DRAWER|過去図面活用基盤としての検図前段

KK Generation 検図照査AI|建築・土木の高速照査

東芝CISSART|土木設計図書照査の公共案件特化

電通総研 Know Narrator|生成AI型のAIエージェント実装

検図AIの料金構造

①初期セットアップと既存システム接続の構築工数

②既存図面・データの取り込みと前処理

③現場メンバーへの教育・利用ガイド整備

④運用担当者の継続的なフィードバック工数

検図AI導入の国内事例と定量効果

KENZ|大手防災機器メーカーで検図時間50%削減

CADDi DRAWER|川崎重工業の類似品検索で1件4.4分・年300万円削減(隣接事例)

KK Generation|名古屋市上下水道局との実証プロジェクト

電通総研 Know Narrator|GPT系マルチモーダルで形状公差6種を全正解

隣接事例|横河電機×ENEOSマテリアルの強化学習AIで40%削減

検図AIのPoCで必ず試す5パターン

①古いスキャン図面|紙→スキャン由来の歪み・ノイズ・解像度ばらつき

②版違い|同一部品の改訂で寸法・公差が部分的に変わる

③左右対称部品|鏡像で形状同一・部番違い

④材質違いで形状が同じ部品

⑤2D-CAD原本と紙スキャンが混在する図面庫

検図AI導入の段階ステップと判断軸

段階導入の4ステップ

3レイヤーの使い分け

PLM連携要否で構成が変わる

検図AIから設計フロー全体をAIエージェントで自動化するなら

まとめ

検図AIとは?図面チェックをAIで自動化する新しい仕組み

検図AIとは?図面チェックをAIで自動化する新しい仕組み

検図AIとは、設計図面のレビュー工程——寸法整合・部品欄・図面間差分・流用差分・法規/標準照査——をAIで肩代わりさせる仕組みの総称です。

寸法漏れや部品欄の不整合、複数図面間の食い違いといった定型ルールで判定できる指摘は、ルールエンジン・画像解析・マルチモーダルLLMを組み合わせて高精度で検出できるようになりました。

一方で、設計意図の妥当性や製造性の判断は依然として人間の専門知識が必要な領域として残っています。
実務では「AIで下検図を回し、最終承認は人が担う」二層構成が、2026年半ば時点で成果を検証しやすいフローです。

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検図AIでカバーできる5つの検出領域

検図AIでカバーできる5つの検出領域

検図AIで実用化されている検出領域は、2026年時点で大きく5つに整理できます。

以下の表で、5領域の検出範囲・主な担当製品・技術タイプを整理しました。

検出領域 検出範囲の例 主な担当製品 技術タイプ
①寸法整合 寸法値の記入漏れ・公差不整合・JIS幾何公差記号の誤用 KENZ/KK Generation/Know Narrator 実務AI+生成AI
②部品欄・タイトル欄 部品表と図面本体の数量・型番不整合、改訂番号ずれ KENZ/KK Generation 実務AI
③図面間整合/設計図書・数量整合 複数図面間の整合性、平面図と詳細図の食い違い、数量総括表と図面の照合、3D-2D照合(要要件確認) KENZ/CADDi DRAWER/東芝CISSART 実務AI+画像解析
④流用図面差分 過去図面と新版図面の改訂差分・寸法変更箇所の可視化 CADDi DRAWER/Know Narrator 画像解析+生成AI
⑤法規・標準照査 社内設計基準・業界規格・建築/土木法規との適合性 KK Generation/Know Narrator 実務AI+RAG


5領域のうち、①寸法整合と②部品欄は実用化例が見られる領域で、KENZが大手防災機器メーカーでの検証で検図時間50%削減を公表しています(一社事例のため、市場全体の到達水準ではなく個別PoCでの効果検証が前提です)。

一方、③図面間整合・形状差分と④流用差分は形状認識アルゴリズムの精度に依存するため、ベンダー間の実力差が大きい領域です。

①寸法整合の自動化——下検図の主戦場

寸法整合の自動化

寸法整合は、検図AIで早く成果を検証しやすい領域の一つです。

寸法値の記入漏れ、公差記号と数値の整合、JIS幾何公差記号(真直度・平面度・真円度など)の誤用は、ルールベースで判定できるためAIの得意領域と一致します。電通総研AITCの検図実証レポートでは、マルチモーダルAIが形状公差6種類(真直度・平面度・真円度・円筒度・線の輪郭度・面の輪郭度)を全て正解で識別しました。

中堅製造業の設計部では、1図面あたり数十か所の寸法チェックが発生します。モデルケースとして検図担当10名・1人あたり月80時間の検図工数を仮定すると、寸法整合の自動化で工数削減の試算が立ちますが、実効果は図面複雑度・現行フロー・PoC結果で個別に検証が必要です。

実務では、寸法整合のAIチェックを「人手検図の前段で必ず通す下検図ライン」として設計部の標準フローに組み込むと、ROI試算を組み立てやすい入り方になります。

②部品欄・タイトル欄の照合——後工程ロス削減の要

部品欄・タイトル欄の照合

部品表(BOM)と図面本体の照合は、検図担当が最も時間を取られる作業の一つです。

数量の桁ミス、型番の表記ゆれ(半角全角・略号差)、改訂番号と日付の食い違いは、人間の目視では集中力低下で見落としが発生しやすい典型例です。KENZ公式ページでは、部品表と組立図の整合性チェック・端子ユニット表マッチングが主要機能として紹介されています。

部品欄のミスは調達発注の誤りや、製造現場での部品取り違えに直結します。検図段階で防げれば、後工程での再発注費用・納期遅延・現場の手戻り工数を丸ごと避けられる構造です。

実務では、部品欄チェックは設計者本人ではなく検図担当が見る工程になっているため、AI下検図を入れると検図担当の負荷が大きく下がりやすい領域でもあります。

③図面間整合・形状差分——要件別に構成を分ける

図面間整合・形状差分

複数図面間の整合性確認や形状差分の検出は、対象が「同じ部品の改訂前後」「平面図と詳細図」「3Dモデルと2D投影図」のどれかで、必要な機能と構成が大きく変わる領域です。

CADDi DRAWERは2D図面と3D CADデータを紐づけて閲覧できると公式リリースで説明されており、形状特徴による類似図面検索と組み合わせて、設計参照効率と差分の早期発見に貢献しています。ただし、3Dモデルと2D投影図の寸法差異を自動照合する純粋な2D-3D整合検図機能は公開情報からは確認できないため、自社検図要件との適合度は個別ヒアリングで確認するのが安全です。

実務では、平面図・詳細図・部品表など複数図面の整合が中心ならKENZの複数ドキュメント横断機能、過去図面との形状差分が中心ならCADDi DRAWERの類似検索+差分表示、3D-2Dの寸法自動照合まで必要ならカスタム開発を組み合わせる構成が候補になります。関連する2D図面3D変換AIの考え方もあわせて整理すると、設計→検図→形状照合の一貫フローが見えてきます。

④流用図面差分——過去資産との照合が肝

流用図面差分

製造業の新規設計は過去図面の流用が多くを占めるため、流用元との差分管理が検図の重要論点になります。

CADDi DRAWERは、登録図面全体から類似形状を検出し差分を表示する独自アルゴリズムを持ちます。電通総研のKnow Narrator検図実証でも、2枚の図面を比較して作成者名・日付・改訂番号・寸法値の違いを正確に抽出できたと報告されています。

流用差分の検図は、設計者本人が忘れている改訂箇所を第三者の目で再確認する役割を持ちます。AIが網羅的に差分を出したうえで、設計者が「意図した変更か/意図しないコピペミスか」を判断する流れが現実解です。

詳細な選定軸は類似図面検索AI流用設計AIで扱っています。

⑤法規・標準照査——RAG構成で柔軟性を確保

法規・標準照査

社内設計基準・業界規格・建築/土木法規との適合性チェックは、参照ルールが多岐にわたるため、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)構成のAIエージェントが向きます。

東芝デジタルソリューションズのCISSARTは土木工事の設計図書照査に特化し、設計図面から工種名称・規格・数量を抽出して数量総括表と照合する機能を国交省のi-Construction施策に沿って展開しています。異なる用語や略語について同義語・類語を考慮したチェックも可能です。

KK Generationの検図照査AIは、PDF・CAD・BIM図面を照査項目でAI判定するSaaSで、法規照査に加えて企業独自の設計基準も照査項目に追加できます。

実務では、自社の設計ルールが文書化されている企業は実務AI型のルールエンジンに登録、文書化ルールが自然言語や複数文書に分散している企業はRAG構成で取り込むのが向きます。ベテランの頭の中にしかない暗黙知は、RAGが自動で形式知化するわけではないため、まずヒアリング・ルール文書化を先行させたうえでRAGへ流し込む段階設計が現実的です。


検図AIを成立させる4つの中核技術

検図AIは単一のAI技術で成立するわけではなく、複数の要素技術の組み合わせで実現します。

検図AIを成立させる4つの中核技術

以下の表で、4つの中核技術と役割を整理しました。

技術 役割 担当領域
マルチモーダル生成AI(LLM) 図面画像・テキスト・記号の文脈解釈、自然言語による指摘文生成 仕様書整合・自然言語ルール照査・指摘の言語化
画像解析・形状認識 図面の形状特徴抽出、類似図面検索、差分可視化 図面間整合・流用差分・形状ベース検索
RAG(検索拡張生成) 社内設計ルール・業界規格・過去事例の検索拡張 企業固有ルール照査・法規適合性
AI-OCR スキャン図面・PDF図面からのテキスト・寸法値抽出 既存図面の取り込み・電子化前段


2024〜2026年で検図AI市場が一気に広がった大きな駆動要因の一つが、マルチモーダル生成AIの登場です。これまで「テキスト情報」と「画像情報」が分断されていた検図処理を、一つのAIで連続処理できるようになりました。

マルチモーダル生成AIが柔軟性を底上げする

マルチモーダル生成AIが柔軟性を底上げする

電通総研AITCの検図実証では、Know NarratorがOpenAI GPT系・Google Gemini・Anthropic Claudeなど最先端のマルチモーダルLLMに対応しており、同実証ではGPT-5.2を用いて図面画像とテキスト情報を「文脈を持つ情報」として直接解釈できることが示されました。

従来のAI-OCR+ルールエンジンでは難しかった、表記ゆれを含む自然言語ルール(「断面詳細図にはハッチング指示が必要」のような曖昧な指示)にも対応できるようになりました。一方で、A2より大きい大型図面は解像度制限により分割処理が必要という制約も明示されており、精度は「モデル×プロンプト×前処理」の設計品質に依存します。

実務では、生成AIの柔軟性を活かす場面(自然言語ルール照査・指摘文の自動生成)と、実務AI型の厳密性を活かす場面(寸法値の数値判定)を分ける設計が現実解になります。

画像解析・形状認識が図面間整合と流用差分の核

画像解析・形状認識が図面間整合と流用差分の核

画像解析・形状認識は、検図AIの中でも特許や独自アルゴリズムによる差別化が進んでいる領域です。

CADDi DRAWERは形状特徴を判断し、登録図面全体から類似形状を検出する独自アルゴリズムを搭載しています。形状ベース検索ができれば、ファイル名や部品番号が違っても「形が同じ過去図面」を引き当てられるため、流用設計と検図の効率が同時に上がります。

実務では、図面庫が大規模なほど形状認識の恩恵が大きくなり、小規模ならテキストベース検索でも十分カバーできるケースがあります(モデルケース:登録図面が10万枚を超える規模だと形状認識、数千枚程度ならテキスト検索から、というのがベンダー選定時の目安感)。規模で導入判断が分かれるポイントです。

RAGで企業固有ルールを反映する

RAGで企業固有ルールを反映する

RAGは、社内設計基準書・業界規格(JIS・ISO・建築基準法など)・過去の検図指摘事例をベクトルデータベースに登録し、AIが図面を見ながら関連ルールを検索して照査する仕組みです。

KK Generationの検図照査AIは照査項目のカスタマイズと検図ルールの学習で企業ごとの検図要件に対応し、Know NarratorはRAG構成で文書化された設計ルールを取り込みつつ運用できます。実務AI型のルールエンジンが事前設定の正規表現や数値ルールで判定するのに対し、RAG構成は自然言語で書かれた「曖昧なルール」を柔軟に解釈できる点が違いです。

自社の設計基準が構造化されているならルールエンジンに直接登録、自然言語や複数ファイルに分散しているならRAG、暗黙知中心の場合はまずヒアリング・ルール文書化を先行、という段階設計が実装判断の起点になります。

AI-OCRは既存図面取り込みの前段を担う

AI-OCRは既存図面取り込みの前段を担う

過去図面の多くはPDFスキャンや紙資産で残っており、これらをAI検図に流し込む前段としてAI-OCRが有効なケースがあります。

寸法値・記号・部品番号・タイトル欄の文字情報を構造化テキストに落とし込むことで、後段のルールエンジンが処理できる形式に整えます。マルチモーダルAIは図面画像を直接処理できるため常にAI-OCRが必須というわけではありませんが、ルールエンジン主体の構成や紙資産の構造化データベース化が必要な場面ではAI-OCRの前処理が必要になる場合があります。CISSARTでもPDF設計図書をAI-OCRでExcel化するオプション機能が提供されており、既存資産のデジタル化が検図AI導入の入口になっている企業が少なくありません。

図面資産の電子化そのものは図面デジタル化AI図面OCRで詳しく扱っています。


AI検図と従来検図のワークフロー比較

AIを入れる前と入れた後で、検図ワークフローがどう変わるかを工程ごとに整理します。

AI検図と従来検図のワークフロー比較

以下の表で、従来検図とAI検図の各工程の役割分担を比較しました。

工程 従来検図 AI検図(実務AI+人間)
図面提出 設計者がPDFで提出 設計者がPDF/CADで提出
一次チェック(下検図) 検図担当が目視で寸法・部品欄・整合性を確認(数時間〜数日) AIが寸法・部品欄・図面間整合・流用差分を自動チェック(数分〜数十分)
二次チェック ベテラン設計者が設計意図・製造性を確認 ベテラン設計者がAIの指摘を確認+設計意図・製造性を判断
指摘集約 検図担当が手書きまたはExcelで指摘リスト作成 AIが指摘リストを自動生成、人が確認・追記
修正後の再検図 同じプロセスを繰り返し AIが差分検出で修正箇所のみ再チェック


最も大きな変化は一次チェック(下検図)の工数です。検図担当の目視で数時間かかっていた寸法・部品欄チェックが、AIで数分単位に短縮されます。

二次チェック以降はベテランの判断が残るため、検図担当が丸ごと不要になる訳ではなく、検図業務の役割分担が「目視チェッカー → AI指摘の確認者+判断者」にシフトすると捉えると実態に近いです。

検図担当スキルセットの変化

検図担当スキルセットの変化

AI検図の導入で、検図担当のスキルセットも変わります。

AIが指摘した寸法エラーを転記する仕事から、AIが見つけられない設計意図の妥当性や製造性の判断にリソースを集中させる方向へシフトする流れです。ベテラン検図者に集中していた「なぜこの寸法にした?」の判断ノウハウを、若手が学ぶ場面としてAI指摘レビューが機能する側面もあります。

実務では、AI導入と同時に検図担当のジョブディスクリプションを見直し、「AI指摘の妥当性判断」「設計意図確認」「製造性レビュー」のような判断業務に評価軸を寄せると、現場の納得感が得やすくなります。属人化していた検図知見を製造業のナレッジ承継AIの観点から資産化するアプローチとセットで進める企業も増えています。

二層構成「AI下検図+人間最終確認」を崩さない

二層構成 AI下検図と人間最終確認を崩さない

AI検図で最も事故が起きるのが、「AIが指摘しなかった=OK」と読み替えてしまうケースです。

2026年時点の検図AIは、定型ルールで判定できる指摘には強い一方、AIが学習していないパターン・新規部品・過去に発生していないミス様式は取りこぼす可能性があります。AI指摘ゼロを「完璧な図面」の証明として扱う運用は、事故に直結します。

実務では、AIの指摘リストを「必ず人間が全件確認し、AIが見落とした項目を追記する」フローを社内標準として明文化するのが安全です。AI検図の役割はあくまで「人間の負荷を下げる」ことであり、「人間の判断を無くす」ことではない、という前提を組織で共有しておく必要があります。


検図AIの主要5サービス比較

2025〜2026年で主要プレイヤーが一気に増えた検図AI市場の代表5サービスを比較します。

検図AIの主要5サービス比較

まず市場全体で把握したいのが、検図AI特化型と検図関連支援型、そして生成AI型の3レイヤーで棲み分けが進んでいる点です。**検図AI特化型(KENZ・KK Generation・東芝CISSART)**は「定型検図の高速化」に振り切っており、**検図関連支援型(CADDi DRAWER)**は製造業AIデータプラットフォームとして類似検索・過去図面活用を軸に検図の前段(流用差分検出)で価値を出します。**生成AI型(電通総研Know Narrator)**は「自然言語ルールの柔軟解釈」に振り切る棲み分けです。社内の検図ルールが構造化されている企業ほど検図AI特化型と相性がよく、文書化ルールが自然言語や複数文書に分散している企業はRAG構成が向きます(暗黙知中心の場合はまずヒアリング・文書化を先行)。設計フロー全体を見渡した比較軸はAI搭載CADソフトの比較図面検索AIもあわせて確認するとイメージが立体化します。

以下の表で、5サービスの提供企業・対応図面形式・主要チェック領域・対応業界・特徴を整理しました。

製品名 提供企業 対応図面形式 主要チェック領域 対応業界 特徴
KENZ システムインテグレータ 2D図面・仕様書 寸法・部品欄・図面間整合・複数ドキュメント横断 製造業全般(防災機器メーカー事例) 2025年7月1日リリース、クラウド/オンプレ対応、日本の設計慣行に最適化
CADDi DRAWER キャディ 2D/3D図面・スキャンPDF 形状認識・類似図面検索・差分表示 製造業全般 過去図面活用基盤、形状ベース検索の独自アルゴリズム
検図照査AI KK Generation PDF・CAD・BIM カスタマイズ照査項目(法規+企業独自) 建築・土木(上下水道局実証事例) 30〜90秒で照査完了、複数図面横断、AI判断根拠コメント化
CISSART 東芝デジタルソリューションズ 設計図書(土木・SXF/DXF/PDF) 工種・規格・数量抽出と数量総括表照合 土木工事(国交省・自治体・建設コンサル) i-Construction対応、同義語・類語考慮、AI-OCRオプション
Know Narrator 電通総研 図面画像・PDF マルチモーダル生成AI+RAGで自然言語ルール照査 製造業・建築(業界横断) GPT系/Gemini/Claude対応、業務内容・精度・コスト要件でLLMを選択(2025年10月機能追加)


製造業のメカ設計中心ならKENZ・CADDi DRAWERの組み合わせ、建築・土木の確認照査ならKK Generation・東芝CISSARTの公表事例が参考になり、文書化ルールが自然言語や複数文書に分散しているならKnow Narrator型のRAG構成——というのが実務での選定軸です(暗黙知中心の場合はヒアリング・文書化を先行)。

KENZ|システムインテグレータの検図特化AI

KENZ システムインテグレータの検図特化AI

KENZは、システムインテグレータが2025年5月8日に発表し2025年7月1日にリリースした検図特化のAIサービスです。

日本の設計慣行に合わせて開発された高精度検図AIとして位置付けられ、図面と仕様書の整合性、寸法の記入漏れ、部品欄の照合、複数ドキュメント横断の整合性チェックなどを、顧客ごとにカスタマイズして検出できます。クラウドとオンプレミスの両構成に対応するため、図面という機密情報をインターネットに出さずに運用したい業界(防衛・重工・自動車部品など)でも構成を選べる点が特徴です。

大手防災機器メーカーでの検証実績として検図時間50%削減が公表されており、中堅以上の設計部門で定型検図比率が高い場合のPoC候補として有力です。機密性要求の高い業界(防衛・重工・自動車部品)で有力候補に挙がるサービスと位置付けられます。

CADDi DRAWER|過去図面活用基盤としての検図前段

CADDi DRAWER 過去図面活用基盤としての検図前段

CADDi DRAWERは、キャディが提供する図面データ活用クラウドで、特許取得済みの独自画像解析アルゴリズムで類似図面検索と差分検出を実現します。

2024年10月には3D CADデータへの対応が発表され(発表時点では年明けからのオープンβ版提供予定)、2D図面と3D CADを紐づけて閲覧する構成が示されています。3D形状を360度確認しながら部品標準化や原価予測にも活用でき、「検図単体ツール」というより「過去図面を活用しながら新規図面を作る基盤」として設計されています。

図面上のテキスト情報を自動抽出してデータベース化する機能もあり、テキスト+形状の両軸で検索できます。

過去図面が10万枚を超える企業や、流用設計の比率が高いメカ設計部門で特に効果が出やすい候補です。

川崎重工業の導入事例では、類似品検索・調達コスト精査で1件あたり4.4分の時間短縮・年間300万円以上の削減効果が公表されています(本事例は調達領域での効果であり、検図時間の直接測定ではありません)。

KK Generation 検図照査AI|建築・土木の高速照査

KK Generation 検図照査AI 建築・土木の高速照査

KK Generationの検図照査AIは、2DやBIM図面をアップロードすると、事前設定の照査項目に基づいてAIが自動チェックし、30〜90秒で適合/不適合を判定するAI SaaSです。

判定結果は図面上にハイライト表示され、AIの判断根拠もコメント化されるため、チェックの妥当性を即座に確認できます。複数図面を参照した整合性チェックにも対応し、平面図・立面図・建具表など横断照査が必要な建築領域で強みを発揮します。

名古屋市上下水道局とは先進技術を用いた社会実証プロジェクトが公表されており、公共インフラの設計図書照査領域での検証例が出てきています。

法規チェックに加えて企業独自の設計基準も照査項目に追加できるため、社内ルールが文書化されている設計事務所・ゼネコン設計部でカスタマイズ導入しやすいサービスです。

東芝CISSART|土木設計図書照査の公共案件特化

東芝CISSART 土木設計図書照査の公共案件特化

東芝デジタルソリューションズのCISSARTは、土木工事における設計図書類の照査業務をAIで支援するシステムです。

設計図面から工種名称・規格・数量を自動抽出し、数量総括表との照合、平面図と詳細図間の整合性確認、「赤黄チェック」機能による審査状況の可視化などを提供します。国土交通省の働き方改革施策「i-Construction」に対応し、国交省・自治体・建設コンサル向けに展開されています。

対応形式はISO10303(STEP)/AP202準拠のSXF(p21)とDXFで、PDF設計図書はAI-OCRオプションでExcel化できます。

異なる用語や略語について同義語・類語を考慮したチェック機能を持つため、土木設計書の表記ゆれにも対応します。公共土木の設計コンサル・自治体案件で有力候補として検討されるポジションです。

電通総研 Know Narrator|生成AI型のAIエージェント実装

電通総研 Know Narrator 生成AI型のAIエージェント実装

電通総研のKnow Narratorは、マルチモーダル生成AIをコアにした企業向けAIエージェント基盤で、OpenAI GPT系・Google Gemini・Anthropic Claudeなど複数LLMに対応しています。AITCの検図実証ではGPT-5.2を用いた検図例が示されました。

2025年10月29日には業務ごとに最適なLLMを選択できる機能が追加され、業務内容・精度・コスト要件に応じて複数LLMから適切なものを選択できる構成が公表されました。企業固有の設計ルールはRAGで組み込み、寸法値・記号読み取り、図面間整合性、法規適合性、2枚の図面差分、公差記号解釈、書き間違い・抜け漏れ検出まで柔軟にカバーします。

形状公差6種類(真直度・平面度・真円度・円筒度・線の輪郭度・面の輪郭度)を全て正解で識別する実証結果が公表されており、生成AIによる検図の実用性が一段引き上げられた事例として業界で参照されています。

A2より大きい大型図面は解像度制限で分割処理が必要という制約はあるものの、社内ルールを継続的に育てていきたい企業ほどフィットします。

AI研修


検図AIの料金構造

検図AIの料金構造と隠れコスト4項目

検図AI主要サービスの料金は、2026年7月時点でも大半が「個別見積もり」で、公式に金額レンジを公表しているのはKnow Narrator(月額数十万円〜)のみという状況です。

以下の表で、各サービスの公表状況と価格構造の特徴を整理しました。

製品名 公表料金 価格構造の特徴
KENZ 非公表(要問い合わせ) 要件により変動、クラウド/オンプレミス対応で構成により個別見積もり
CADDi DRAWER 非公表(要問い合わせ) 図面数・アカウント数に応じた提案型
KK Generation 検図照査AI 非公表(要問い合わせ) 照査項目のカスタマイズ範囲で変動
東芝CISSART 非公表(要問い合わせ) 利用構成・要件に応じて個別確認
Know Narrator 月額数十万円〜(別途初期導入費用) 月額利用料+初期導入費用(構成により変動)


料金が非公表になるのは、検図AIが「導入企業ごとの設計ルール・図面庫規模・カスタマイズ範囲」で実装コストが大きく変わるためです。

ROI試算をする際は、月額ライセンス費だけでなく以下の隠れコスト4項目を必ず織り込む必要があります。

①初期セットアップと既存システム接続の構築工数

検図AIを単体ツールで終わらせず、PLM・PDM・CAD・生産管理システムと連携する構築工数です。

SSO認証設定、図面取り込みパイプライン構築、検図結果の保管先設計、権限管理(部門別アクセス制御)などが該当します。製造業の場合、PLMやPDMとの双方向連携を組むと初期工数が大きく膨らむケースがあり、金額感は連携本数・人月単価・既存基盤の成熟度で個別見積もりの前提条件を明確にしたうえで要見積もりとする形になります(連携本数×人月単価×調整工数の掛け合わせで、案件ごとの幅が大きい領域です)。

実務では、まずAI検図ツール単体で部門PoCを回してROIを実証してから基幹システム連携に進む段階アプローチが現実的です。

PLM側の設計と併走する場合はPLM・ERP連携ガイドも参照して基幹連携の全体像を掴んでおくと、投資回収の見通しが立てやすくなります。

②既存図面・データの取り込みと前処理

検図AIの精度は、登録される図面データの品質に強く依存します。

紙→スキャン由来の図面は、向き補正・縮尺合わせ・解像度補正・ノイズ除去が必要です。CADデータでもメタデータ整備、命名規則統一、部品番号の名寄せ、OCR処理などの前処理が発生します。筆者のモデルケースとして、図面庫が10万枚を超える企業だと、この前処理だけで数か月〜半年規模のプロジェクトに膨らむこともあり、期間は図面枚数・スキャン品質・整備方針で見立てを立てます。

過去図面の電子化が未完了なら、検図AI導入の前に図面デジタル化AIの整備を先行させた方が、結果的に検図AIのROIが立ちやすくなります。

③現場メンバーへの教育・利用ガイド整備

検図担当・設計者・購買担当それぞれに、AIツールの操作研修と利用ガイドが必要です。

特に重要なのは「AIが指摘した内容をどう判断するか」のガイドラインです。AIが寸法エラーを誤検知した場合の対応、設計意図とAI指摘の優先順位、最終承認のフローなど、AIと人の役割分担を明文化しないと現場が混乱します。

実務では、検図フロー全体の見直しとセットでAI導入を進めた方が、現場の納得感が高くなります。特にベテラン検図者が「AIの検図結果は信用できない」と抵抗するケースは頻出するため、初期のPoCから現場のキーマンを巻き込む設計が失敗回避の鍵です。

④運用担当者の継続的なフィードバック工数

検図AIは「導入して終わり」ではなく、検出精度のチューニングを継続する必要があります。

誤検知の対応、新しい設計ルールの追加、新製品ライン投入時の図面パターン学習、検図ルールの定期レビューなど、運用担当者の継続工数が発生します。運用負荷は導入規模・製品ラインの改廃頻度・現場からのフィードバック量に依存するため、PoC段階で運用担当者の稼働見立てを併走で計測しておくと本番の見積もりがブレません(筆者のモデルケースでは月数十時間規模を想定しておくと安全側)。

月額ライセンス費×台数だけのROI試算で判断すると事故が起きるのは、この4項目の見落としが根本原因です。年間の総保有コスト(TCO)ベースで、隠れコストを含めた投資回収年数を試算するのが実務的な進め方になります。


検図AI導入の国内事例と定量効果

検図AI導入の国内事例と定量効果

検図AI導入の効果は、定型検図の時間短縮、検図品質の均質化、属人化解消、設計者の負荷軽減の4軸で現れます。

ここでは検図AI本体の公表事例と、周辺領域(図面検索・調達・AI×製造業)の隣接事例をあわせて整理します。

KENZ|大手防災機器メーカーで検図時間50%削減

KENZ大手防災機器メーカーで検図時間50%削減

システムインテグレータのKENZは、大手防災機器メーカーでの検証実績として検図時間50%削減公表しています。

検図対象は仕様書と図面の整合性、寸法の記入漏れ、部品欄のチェックなど。発表時期は2025年5月8日で、サービス全体の概要はシステムインテグレータのプレスリリースに記載されています。

中堅以上の設計部門で定型検図の比重が高い場合、KENZは有力候補の一つとして検討する価値があります。防災機器メーカーのように図面が多品種少量で改訂頻度が高い業態では、下検図の自動化効果が特に出やすい構造です。

CADDi DRAWER|川崎重工業の類似品検索で1件4.4分・年300万円削減(隣接事例)

CADDi DRAWER 川崎重工業の類似品検索

キャディのCADDi DRAWERは、川崎重工業で類似品検索・調達コスト精査の効率化により1件あたり4.4分の時間短縮・年間300万円以上の削減効果が公表されています。

対象は調達部門の類似品検索・コスト精査業務で、検図時間や設計品質を直接測定した事例ではありません。重工業のように多品種で図面資産が膨大な業態では、「探す時間」の削減が調達・設計参照の稼働構造そのものを変えるインパクトを持ちます。

CADDi DRAWERの類似検索機能を検図の前段(流用差分検出)に組み込むと、検図ROIとして波及する可能性があります。ただし本事例そのものは調達領域での効果である点を明示的に切り分けたうえで、隣接事例として参考にしてください。

KK Generation|名古屋市上下水道局との実証プロジェクト

KK Generation 名古屋市上下水道局

KK Generationの検図照査AIは、2025年にデモを公開して以降、公共インフラの設計図書照査領域で実証事例が出てきています。

名古屋市上下水道局とは先進技術を用いた社会実証プロジェクトが実施され、2026年3月に実証結果レポートが公表されています。複数図面を参照しての整合性チェック、AIの判断根拠コメント化などの機能が、公共土木設計の確認照査業務のニーズと噛み合った実証事例です。

自治体・公共インフラ事業者の設計図書照査は、標準化された設計ルールに従って進めるため、KK Generation型のカスタマイズ照査項目AIとの適合度が高い領域と言えます。正式採用・調達実績とは切り分けて、実証段階の取り組みとして参照してください。

電通総研 Know Narrator|GPT系マルチモーダルで形状公差6種を全正解

Know Narrator GPT系マルチモーダル 形状公差6種

電通総研AITCは、Know Narratorを用いた検図実証で、マルチモーダルAIが形状公差6種類(真直度・平面度・真円度・円筒度・線の輪郭度・面の輪郭度)を全て正解で識別した結果を公表しました。

さらに複数の図面を比較して作成者名・日付・改訂番号・寸法値の違いを正確に抽出でき、生成AIによる検図の実用性が一段引き上げられた事例として業界で広く参照されています。

2025年10月29日には業務ごとに最適なLLMを選択できる機能が追加されており、業務内容・精度・コスト要件に応じて複数LLMから適切なものを選択できる構成になっています。文書化ルールが自然言語や複数文書に分散している企業でKnow Narrator型のRAG構成が有力候補となります(暗黙知中心の場合はヒアリング・文書化を先行させる段階設計が必要)。

隣接事例|横河電機×ENEOSマテリアルの強化学習AIで40%削減

隣接事例 横河電機×ENEOSマテリアル

検図AIではないものの、AI×製造業の隣接事例として参考になるのが、横河電機とENEOSマテリアルの共同実証です。

2023年3月30日発表、化学プラントの蒸留塔制御で1年間連続稼働を実現し、蒸気使用量とCO2排出量を従来比約40%削減しています。検図とは別領域ですが、AI×製造業の現場実装で定量効果を出した代表事例として国内で広く参照されており、経営層向けのAI投資稟議で「他社の成功事例」として引用しやすいケースです。


検図AIのPoCで必ず試す5パターン

検図AI PoCで必ず試す5パターン

検図AIは「精度95%」のような単一数値では実力が測れず、現場の図面パターン別に挙動が大きく変わります。

導入前のPoCでは、最低でも以下5パターンの図面を持ち込んで照合することを推奨します。

①古いスキャン図面|紙→スキャン由来の歪み・ノイズ・解像度ばらつき

20年以上前の青焼き図面をスキャンしたPDFは、傾き・かすれ・解像度ばらつきが大きく、OCR精度や形状認識精度が落ちる典型例です。

PoCではこの「最も難しい図面」を必ず入れて、ベンダー側の前処理機能(傾き補正・解像度向上・ノイズ除去)の実力を見ます。古いスキャン図面の比率が高い企業ほど、この検証結果が導入可否を左右します。

紙資産のデジタル化そのものが未着手なら、検図AIより先に図面デジタル化AIの整備を進めた方が結果的にROIが立ちやすい構造です。

②版違い|同一部品の改訂で寸法・公差が部分的に変わる

部品番号は同じだが、改訂で寸法や公差が部分的に変わっている版違い図面は、差分検出AIの精度が試される領域です。

「ぱっと見そっくりだが寸法が3か所違う」ような図面ペアをPoCに含めて、差分が漏れなく検出されるかを確認します。流用設計の比率が高い企業では特に重要なテストパターンで、ここで漏れが出ると本番運用でも設計ミスの見逃しが発生します。

③左右対称部品|鏡像で形状同一・部番違い

左右対称の部品は、形状認識AIが「同一部品」と誤判定しやすいパターンです。

PoCでは左右対称ペアを入れて、AIが「鏡像である」ことを正しく識別できるか、または「同一形状」とフラグを立てたうえで人間に確認を委ねる挙動になるかをチェックします。誤判定を検図担当が救う運用に耐えるかで、実務適用の可否が決まります。

④材質違いで形状が同じ部品

材質指示や表面処理の指示だけが異なる、形状は同じ部品も検図AIの判定精度を試します。

材質欄・表面処理欄を正しく読み取り、「形状は同じだが材質が違う別部品」と認識できるかをPoCで確認します。AIが材質を見落とすと、形状ベース検索で誤った流用候補を出してしまうリスクがあり、調達サイドでの部品取り違えに直結します。

⑤2D-CAD原本と紙スキャンが混在する図面庫

2D-CADで作成した原本と、紙スキャンの旧図面が混在する図面庫は、AI処理の精度が形式ごとに大きくばらつきます。

PoCでは両形式を含む実際の図面庫をサンプル投入し、形式横断で安定した精度が出るかを確認します。「CAD原本なら高精度、スキャン図面では精度が落ちる」というベンダーは多いため、自社の図面庫の構成比に合わせた検証が不可欠です。


検図AI導入の段階ステップと判断軸

検図AI導入の段階ステップと判断軸

検図AIは、PoCから本番展開までのステップを設計しないと「ツール導入したが現場で使われない」状態に陥りやすい領域です。

段階導入の4ステップ

段階導入の4ステップ

ステップ 期間目安 やること 成功基準
ステップ1:ルール棚卸し 1〜2か月 社内検図ルールの形式知化、チェックリスト整備 検図観点が文書化される
ステップ2:単体PoC 2〜3か月 1製品で1部門でAIチェックを試行、5パターンPoC 検図時間短縮の効果測定(モデルケース:30%以上削減を仮基準として実測)
ステップ3:部門展開 3〜6か月 設計部全体へ展開、検図フロー再設計、教育 PoCで設定したKPI(工数削減率・指摘漏れ率等)を継続達成
ステップ4:基幹システム連携 6か月〜 PLM・PDM・CAD・生産管理との接続、データ連携 検図結果の自動還流


ステップ1のルール棚卸しを飛ばしてAIツール導入に進むと、AIが「何を判定すべきか」が定義されないまま現場展開され、PoC失敗の典型パターンに陥ります。

AI導入の可否よりも先に、社内ルールの形式知化が進んでいるかを確認するのが実装判断の起点です。

3レイヤーの使い分け

3レイヤーの使い分け

選定で最も判断が分かれるのが、検図AI特化型(KENZ・KK Generation等)・検図関連支援型(CADDi DRAWER)・生成AI型(Know Narrator等)のどれを軸に据えるかです。

以下の表で、自社の状況ごとの推奨レイヤーと候補サービスを整理しました。

自社の状況 推奨レイヤー 候補
検図ルールが文書化されている/定型検図比率が高い 検図AI特化型 KENZ・KK Generation
文書化ルールが自然言語や複数文書に分散 生成AI型(RAG構成) Know Narrator型・自社開発エージェント
機密性が高くオンプレ運用必須 検図AI特化型(オンプレ対応) KENZ
過去図面の活用と検図を一体で進めたい 検図関連支援型(形状認識特化) CADDi DRAWER
建築・土木の確認照査が主用途 検図AI特化型 KK Generation/東芝CISSART


実務では、形式知化されたルールを検図AI特化型で高速処理しつつ、ルール外の曖昧な指摘を生成AI型で補完し、過去図面の活用が中心なら検図関連支援型を組み合わせるハイブリッド構成が、検図全体をカバーするのに現実的です。

暗黙知中心の場合、RAGが自動で形式知化するわけではないため、まずヒアリング・ルール文書化を先行させたうえでRAGへ流し込む段階設計が現実解になります。

PLM連携要否で構成が変わる

PLM連携要否で構成が変わる

検図AIをPLM・PDM・CADと連携させるかどうかで、構築コストが大きく変わります。

以下の表で、連携範囲ごとのコスト構造と効果を整理しました。具体金額は「連携本数×人月単価×既存基盤の成熟度」で決まるため、案件ごとの要見積もりが基本です

連携範囲 コスト構造 効果
単体ツールのみ 月額ライセンス+初期セットアップ工数 検図単体の効率化のみ
CADデータ取り込み連携 単体+CAD連携アダプタ構築工数 設計→検図のシームレス連携
PLM/PDM双方向連携 単体+PLM/PDM側の書き戻し設計・改訂履歴API連携工数 検図結果の自動還流、改訂履歴連携
基幹システム横断(ERP/生産管理含む) 上記+ERP/生産管理側のマスタ整合・部品調達フロー連携工数 部品調達・製造指示まで連動


初期段階では単体ツール運用でROIを実証し、ステップ4で基幹連携を進める段階アプローチが、投資回収の見通しが立てやすい進め方です。

図面一元管理AI流用設計AIなど、検図の前後工程をAIで連携させる視点もあわせて検討すると、設計部全体の生産性が変わります。

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まとめ

検図AIは2025〜2026年で主要プレイヤーが一気に増え、検図AI特化型・検図関連支援型・生成AI型の3レイヤーで棲み分けが進んだ領域です。

  • 検図AIは寸法整合・部品欄・図面間差分・流用差分・法規照査の5領域でカバー範囲が広がり、「AI下検図+人間最終確認」の二層構成が現実解
  • 主要5サービス(KENZ・CADDi DRAWER・KK Generation・東芝CISSART・電通総研Know Narrator)は検図AI特化型(KENZ・KK Generation・東芝CISSART)・検図関連支援型(CADDi DRAWER)・生成AI型(Know Narrator)の3レイヤーで棲み分けが進み、社内ルールの構造化レベルで選定軸が変わる
  • 料金は大半のサービスが個別見積もり(Know Narratorは月額数十万円〜という参考料金を公表)、隠れコスト4項目(初期構築・データ取込・教育・運用)を必ずROIに織り込む


「検図のすべてをAIに任せる」段階には到達していないものの、下検図をAIで標準化する運用は個別PoCで工数短縮効果を検証できる段階にあります。社内ルールの構造化レベルで検図AI特化型・検図関連支援型・生成AI型の3レイヤーを使い分け、PoCで5パターンを照合したうえで段階導入を進めることが、検図AI導入の現実解です。

監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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