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SECIモデルとは?4つのプロセスと知識創造の仕組みを事例で解説

この記事のポイント

  • SECIモデルは暗黙知を共同化→表出化→連結化→内面化の4段階で形式知に変え、再び暗黙知へ戻す知識創造の循環理論
  • 形式知化の核心は「表出化」だが、起点の「共同化」を欠くと形だけのマニュアルに終わる構造的リスク
  • 知識創造は単発でなく、4種類の「場(Ba)」を設計してスパイラルで回し続けることが成否を分ける要点
  • 生成AIで加速できるのは表出化・連結化が中心で、共同化・内面化は人の経験と実践が担い続ける領域
  • エーザイの理念経営やホンダのワイガヤなど、現場の体験を価値へ昇華させた古典事例でSECIは理解できる
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

SECIモデルとは、個人がもつ暗黙知を組織の形式知へと変換し、再び個人の暗黙知へ落とし込む循環を通じて、新しい知識を生み出す理論です。
経営学者の野中郁次郎氏と竹内弘高氏が提唱し、共同化・表出化・連結化・内面化という4つのプロセスで、組織の知識創造の仕組みを説明します。

本記事では、4つのプロセスと知識スパイラル、場の設計、エーザイやホンダといった古典的な実践事例、そしてSECIモデルの限界までを体系的に整理します。
あわせて、生成AIで加速できる領域と人が担い続ける領域の線引きまで、2026年5月時点の視点でわかりやすく解説します。

SECIモデルとは|暗黙知と形式知から理解する知識創造理論

SECIモデルとは、個人がもつ暗黙知を組織で共有できる形式知へと変換し、それを組み合わせて新しい知識を生み出し、再び個人の暗黙知として定着させる——この循環を通じて組織の知識が増幅していく仕組みを説明した理論です。
 
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SECIモデルとは

「SECI(セキ)」は、知識創造の4つのプロセスである共同化(Socialization)・表出化(Externalization)・連結化(Combination)・内面化(Internalization)の頭文字をとった呼び名です。

本セクションでは、4プロセスの詳細に入る前に、SECIモデルを理解するための前提と、なぜいま改めて注目されているのかを整理します。

SECIモデルを支える「暗黙知」と「形式知」

SECIモデルを理解するうえで欠かせないのが、知識を2種類に分けて捉える考え方です。

暗黙知と形式知

  • 暗黙知
    熟練者の勘・コツ・経験のように、本人は使えるのに言葉にしにくい知識。OJTや「見て覚える」世界の中心にあるもの。

  • 形式知
    マニュアル・手順書・図面・データのように、言語や図で表現され、他者に共有できる形になった知識。

SECIモデルの本質は、この2つを固定的に捉えず、暗黙知と形式知が相互に変換され続けるプロセスとして知識創造を描いた点にあります。暗黙知の概念自体は、ハンガリー出身の科学哲学者マイケル・ポランニーが提唱した「人は語れる以上のことを知っている」という考え方が土台になっています。

なお、暗黙知と形式知それぞれの具体例や、生成AIを使って暗黙知を形式知に変える実践的な手法については、暗黙知の形式知化の記事で詳しく扱っています。本記事はSECIモデルという理論そのものを主役に解説します。

SECIモデルの提唱者と原典

SECIモデルは、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏と、同じく一橋大学の竹内弘高氏によって体系化されました。

両氏が1995年に英語で出版した著書 The Knowledge-Creating Company(邦訳『知識創造企業』、1996年)で提示され、日本発の経営理論として世界的に知られるようになりました。中間管理職を起点とした知識創造の考え方は、ホンダなど日本企業の成功を説明する枠組みとしても繰り返し参照されています。

提唱者の野中郁次郎氏は2025年1月に逝去されましたが、知識創造理論は現在もナレッジマネジメントの基礎として位置づけられています。

SECIモデルがいま再注目される理由

SECIモデルは1990年代の理論ですが、近年あらためて関心を集めています。背景には大きく2つの流れがあります。

ひとつは、ベテランの退職や人材の流動化による暗黙知の継承問題です。属人化した知識が引き継がれないまま失われる課題は、多くの企業で深刻化しています。

もうひとつが、生成AIの普及です。社内の文書を検索・要約するAIが実用段階に入ったことで、「では言葉になっていない暗黙知はどう扱うのか」という問いが浮上しました。この論点は記事後半であらためて掘り下げます。

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SECIモデルの4つのプロセス(共同化・表出化・連結化・内面化)

SECIモデルの中核は、知識が変換されていく4つのプロセスです。共同化から始まり、表出化・連結化・内面化を経て、また次の共同化へとつながっていきます。

SECIモデルの4つのプロセス

ここからは、4つのプロセスがそれぞれ「どの知識を、どの知識へ変換するのか」を順に解説します。

共同化(Socialization)

共同化は、暗黙知から暗黙知への変換です。言葉にせず、経験や体験を共有することで暗黙知が人から人へ伝わる段階を指します。

職人が弟子に技を見せて覚えさせるOJT、先輩への同行営業、顧客と同じ現場に立って空気を肌で感じる——こうした「共に体験する」行為がここに当たります。

共同化は4プロセスの出発点であり、ここで質の高い暗黙知が共有されないと、後続のすべての段階が痩せていきます。後述するように、SECIモデルが形骸化する原因の多くは、この共同化を飛ばしていきなり文書化に走ることにあります。

表出化(Externalization)

表出化は、暗黙知から形式知への変換です。言葉にしにくい知識を、言語・図・コンセプト・比喩などを使って外に表現し、他者と共有できる形にします。

ベテランの勘を対話で引き出してマニュアル化する、現場のノウハウを図解にする、といった営みがこれにあたります。

表出化は、いわゆる「形式知化」の核心にあたる工程です。4プロセスの中でも特に難度が高く、価値が生まれやすい段階でもあります。なぜなら、暗黙知は本人ですら言語化できていないことが多く、それを引き出すには問いかけと対話の設計が必要だからです。

連結化(Combination)

連結化は、形式知から形式知への変換です。すでに言語化された知識どうしを組み合わせ、編集・体系化して、新しい形式知をつくり出します。

複数の部署のマニュアルを統合して標準手順をつくる、社内のデータを分析してレポートにまとめる、といった作業が典型例です。

この段階は情報システムやデータベースと相性がよく、4プロセスの中で最も仕組み化・自動化しやすい領域です。後述するとおり、生成AIと特に相性がよいのもこの連結化です。

内面化(Internalization)

内面化は、形式知から暗黙知への変換です。マニュアルや手順として共有された形式知を、実際に使って実践することで、個人の身体的な知識(暗黙知)として定着させます。

手順書を読んで実際に作業を繰り返し、考えなくても体が動くようになる状態がこれにあたります。

内面化によって個人に蓄えられた新しい暗黙知は、次の共同化の起点になります。こうして4プロセスは一度きりで終わらず、循環していきます。次のセクションで、この循環の仕組みを詳しく見ていきます。


SECIモデルの知識スパイラルと「場(Ba)」

SECIモデルが単なる4分類で終わらないのは、プロセスが循環し、知識が回るほど質と量を増していく動的な構造を持つからです。

SECIモデルの知識スパイラルと場Ba

本セクションでは、この循環を表す「知識スパイラル」と、循環を支える「場(Ba)」という2つの概念を解説します。

知識のスパイラル

SECIモデルの4プロセスは、平面的な四角形を一周して終わるのではなく、らせん状に上昇していくと説明されます。これが「知識スパイラル」です。

内面化で個人に定着した新しい暗黙知が、次の共同化の起点になります。一周するごとに知識の質が上がり、関わる人の輪も個人からチーム、組織、組織間へと広がっていきます。

つまりSECIモデルは「一度マニュアルをつくって終わり」ではなく、回し続けることで価値が増えていく仕組みです。この点を見落とすと、形式知化を一度やっただけで満足してしまい、知識創造が止まってしまいます。

知識創造を支える「場(Ba)」

スパイラルを回すには、各プロセスが起こる「場」が必要になります。これが「場(Ba)」の概念です。SECIモデル自体は野中郁次郎氏と竹内弘高氏が体系化しましたが、場(Ba)は野中氏と紺野登氏が1998年に発表した概念で、知識が共有・創造される文脈や関係性を指します。欧米でもそのまま「ba」として知られています。

場は単なる物理的な空間ではなく、人と人とが相互作用し、知識が生まれる関係性そのものを意味します。物理的な会議室もあれば、オンラインの対話空間や、共有された問題意識のような心理的な場も含まれます。

SECIの4プロセスに対応する4つの場

野中氏らは、4つのプロセスそれぞれに対応する場を整理しています。以下の表で、各プロセスとその場の関係をまとめました。

SECIの4プロセスに対応する4つの場

プロセス 対応する場 場の性質
共同化 創発場 経験や感情を共有し、暗黙知を交換する対面的な場
表出化 対話場 対話を通じて暗黙知を言語化し、概念へ落とし込む場
連結化 システム場 形式知を集約・編集・体系化する、情報システム的な場
内面化 実践場 形式知を実際に使い、行動を通じて体得する場


この対応関係から読み取れるのは、SECIを回すには4種類の異なる場を意図的に用意する必要があるという点です。創発場(共同化)を欠いたまま対話場(表出化)だけを設けても、共有すべき暗黙知が乏しく、形だけの議論に終わります。逆にシステム場(連結化)が整っていなければ、せっかく言語化した知識が散逸します。

場の設計こそが、SECIモデルを「絵に描いた理論」で終わらせないための実務上の鍵になります。


SECIモデルの企業事例|知識創造の古典的実践

SECIモデルは抽象的に見えますが、実際の経営に落とし込んで成果を上げた企業事例を見ると、各プロセスの意味が具体的に理解できます。

SECIモデルの企業事例

ここでは、SECIモデルを語るうえで繰り返し参照される古典的な実践例を取り上げます。生成AIを使った近年の形式知化事例(ストックマーク・NTTデータなど)は暗黙知の形式知化の記事で扱っているため、本記事では知識創造の経営レベルの事例に絞ります。

エーザイ|共同化を起点にした理念経営

製薬企業のエーザイは、患者と同じ時間を過ごし、その思いに寄り添う「hhc(ヒューマン・ヘルスケア)活動」をSECIモデルと結びつけて実践してきた企業として知られます。

日経ビジネスの取材によれば、エーザイは社員が患者や生活者と共に過ごす「共同化」を特に重視し、現場で得た気づきを新しい製品やサービスの着想(表出化・連結化)へとつなげてきました。

この事例が示すのは、SECIモデルの起点である共同化(現場での体験共有)に経営として投資した点です。形式知化の前段にある「共に体験する」プロセスを軽視しなかったことが、独自の価値創造につながっています。

ホンダ|「ワイガヤ」から生まれた知識創造

自動車メーカーのホンダは、役職や立場を越えて本音で議論する「ワイガヤ」と呼ばれる対話文化で知られます。

合宿形式で徹底的に議論を重ねる中から、言語化されていなかった問題意識やアイデアが表出し、新しいコンセプトへと結実していく——これはまさに共同化から表出化への流れにあたります。野中氏らの『知識創造企業』でも、ホンダの製品開発は中間管理職が暗黙知と形式知をつなぐ知識創造の典型例として論じられています。

ワイガヤが示すのは、対話の「場」を組織文化として制度化することの効果です。前のセクションで触れた対話場を、ホンダは日常の仕組みとして埋め込んでいたと言えます。

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SECIモデルの限界と誤解|理論を実務で活かすための注意点

SECIモデルは強力なフレームワークですが、万能ではありません。理論として知っているだけでは現場で回らない、という声も多く聞かれます。

SECIモデルの限界と誤解

差別化のためにも、本セクションではSECIモデルへの主な批判と、実務で陥りがちな誤解を率直に整理します。

SECIモデルへの主な批判

学術・実務の両面から、SECIモデルにはいくつかの指摘があります。代表的なものは以下のとおりです。

これらの批判は「SECIが間違っている」という話ではなく、理論をそのまま当てはめるだけでは機能しないという実務的な注意点として受け止めるのが適切です。

形式知化をめぐるよくある誤解

SECIモデルを導入しようとする現場で繰り返し起きる誤解が、「表出化=とにかく文書化すること」という捉え方です。

形式知化をめぐるよくある誤解

しかし表出化の本質は、共同化で共有された質の高い暗黙知を、対話を通じて引き出し、意味のある概念へ昇華させることにあります。共同化を飛ばして手当たり次第にマニュアルを量産しても、読まれず使われない形式知が積み上がるだけです。

もうひとつの誤解が、「一度形式知化すれば完了」という見方です。知識スパイラルの考え方が示すように、SECIは回し続けてこそ価値が出ます。

SECIモデルの導入判断で詰まりやすい論点

実際にSECIを自社で回そうとすると、次のような点で判断に迷うケースが多くなります。

  • 共同化の「場」をどう確保するか(対面機会が減る中で経験共有をどう設計するか)
  • 表出化を誰が担うのか(暗黙知を引き出すファシリテーションのスキルを持つ人材の確保)
  • 形式知を散逸させない連結化の仕組み(蓄積した知識をどこに集約し、どう検索可能にするか)

これらは技術論というより組織設計の話です。AI総研の支援現場でも、ツール導入より先に「誰がどの場を回すのか」という役割設計でつまずく企業が少なくありません。SECIを動かす推進役を明確に置けるかどうかが、定着の分かれ目になります。


生成AI時代のSECIモデル|AIで加速できること・人が担うこと

生成AIの普及は、SECIモデルの一部を大きく加速します。ただし、4プロセスのすべてをAIが担えるわけではありません。

生成AI時代のSECIモデル

本セクションでは、AIが効く領域と人が担い続ける領域の線引きを整理します。各プロセスを生成AIで具体的にどう実装するか(文字起こし・AIインタビュー・RAGなど)は暗黙知の形式知化の記事で詳しく解説しているため、ここではSECIの観点からの位置づけに絞ります。

AIが加速できるプロセスと、人が担い続けるプロセス

生成AIは、形式知を扱う段階で特に力を発揮します。プロセスごとの役割を整理すると、次のように分かれます。

  • 表出化(暗黙知→形式知)|AIが部分的に支援
    対話の文字起こしや要約、ベテランへのヒアリング内容の構造化など、言語化の補助としてAIが効きます。ただし「何を引き出すか」を決めるのは人の役割です。

  • 連結化(形式知→形式知)|AIと特に相性がよい
    散在する文書やデータの集約・検索・再編集は、RAG(検索拡張生成)やナレッジグラフAIエージェントが大きく加速します。SECIの中でAIの支援効果が特に大きい領域です。

  • 共同化(暗黙知→暗黙知)|人が担う領域
    現場での体験共有や、対面でしか伝わらない感覚の継承は、AIに代替させにくいプロセスです。

  • 内面化(形式知→暗黙知)|人が担う領域
    形式知を実践して体得する過程は、実際に手を動かす人の経験に依存します。

ここから見えるのは、生成AIは連結化を中心に表出化を補助するが、起点の共同化と仕上げの内面化は人が担い続けるという構図です。AIに社内文書を読ませれば知識継承が完了する、という発想は、SECIの観点からは片手落ちになります。

社内のナレッジ検索に毎日30分以上を費やしているなら、それは連結化をAIで加速できる典型的なサインです。一方で、ベテランの勘がそもそも言葉になっていないなら、まず共同化・表出化の「場」を設けることが先決になります。

SECIをAIで実践する際のコスト感

SECIをAIで回す基盤を整える際のコストは、用途によって幅があります。おおまかな目安は以下のとおりです。

SECIをAIで実践する際のコスト感

  • 社内Wiki・ナレッジ共有型のツールは1ユーザーあたり月額数百〜数千円程度の例が多い一方、全体では初期費用0〜250万円・月額300円〜50万円程度と幅があります(2026年5月時点)
  • RAGや生成AIを使った独自のナレッジ基盤は個別見積もりや利用量に応じた従量課金が中心で、構築費を含め規模によって大きく変動します

ツール選びの基準や費用相場の詳細は暗黙知の形式知化の記事で整理しています。重要なのは、ツールのコストよりも「AIが集約した知識を現場が使い続けられるか」という運用設計です。連結化の仕組みだけ立派でも、内面化(実践での活用)まで回らなければ投資は回収できません。


SECIモデルを自社で活かすケース別の進め方

SECIモデルは理論として知るだけでなく、自社の状況に当てはめて初めて意味を持ちます。ここでは、AI総研が企業のナレッジ活用を支援してきた経験を踏まえ、状況別の現実的な進め方を整理します。

SECIモデルを自社で活かすケース別の進め方

属人化に悩む企業も、すでにツールはあるが活用されない企業も、まず押さえるべきは「4プロセスのどこが詰まっているか」を見極めることです。

  • 暗黙知が継承されず属人化している場合
    まず共同化の場(同行・OJT・対話の機会)を確保し、表出化(言語化)に人を割り当てるところから始めます。AIの導入はその後で十分です。

  • 文書は多いが活用されていない場合
    連結化が機能していない状態です。RAGやAIエージェントで散在する形式知を検索・再利用できる状態にすることが効果的です。

  • 製造業で設計ノウハウや過去図面の継承が課題の場合
    熟練設計者のナレッジをAIで承継・再利用する取り組みは、製造業のナレッジ承継の事例が参考になります。

いずれのケースでも、ツール選定や基盤投資に入る前に、まず自社のボトルネックがどのプロセスにあるかを関係者で一度言語化してみることをおすすめします。

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形式知を「使われ続ける仕組み」に変えるには

SECIモデルを学んでも、多くの組織が最後につまずくのは、表出化・連結化でせっかく整えた形式知が、現場で使われないまま埋もれてしまう点です。知識のスパイラルは、生み出した知識が実践(内面化)で使われて初めて、次の一周へとつながります。

この「使われ続ける状態」をつくる鍵になるのが、社内に散らばる情報を横断的に統合し、現場の入口に置く仕組みです。AI総合研究所が提供するエンタープライズAIエージェント基盤「AI Agent Hub」は、部門ごとにばらばらだったデータを自社のAzureテナント内で統合し、使い慣れたMicrosoft Teamsから呼び出せるAIエージェントとして業務に組み込みます。形式知を「探さないと出てこない資料」から「業務の流れの中で自然に呼び出される知識」へと変えることで、知識のスパイラルを止めない運用を支えます。

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SECIモデルを実務で回すうえで難所になるのが、整理した形式知を現場で使われ続ける状態にすることです。AI Agent Hubは、社内に散らばる情報を自社テナント内で統合し、Teamsから呼び出せるAIエージェントとして業務に組み込むエンタープライズAI基盤です。知識のスパイラルを止めない仕組みづくりの進め方を資料にまとめています。


まとめ

本記事では、SECIモデルについて、4つのプロセスと知識スパイラル、場(Ba)、古典的な企業事例、理論の限界、そして生成AI時代の活かし方までを2026年5月時点の視点で解説しました。要点を改めて整理します。

  • SECIモデルは、暗黙知と形式知を共同化・表出化・連結化・内面化の4プロセスで循環させ、組織の知識を生み出す野中郁次郎氏らの知識創造理論であり、形式知化の核心は「表出化」にある

  • 4プロセスは一度きりでなく「知識スパイラル」としてらせん状に回り続けることで価値を増し、それを支えるのが創発場・対話場・システム場・実践場という4つの「場(Ba)」である

  • エーザイの理念経営やホンダのワイガヤは、共同化と表出化に経営として投資した古典的な実践例として理解できる

  • SECIモデルには実証の難しさや運用の難易度といった限界があり、共同化を飛ばした文書化や「一度作って終わり」の発想では機能しない

  • 生成AIが加速できるのは連結化を中心に表出化の補助までで、共同化と内面化は人が担い続ける領域として残る


SECIモデルを実務で活かす出発点は、自社の知識創造が4プロセスのどこで詰まっているかを見極めることです。属人化が課題なら共同化・表出化の「場」づくりから、文書が活用されないなら連結化をAIで支える基盤づくりから着手するのが現実的です。理論を「知っている」状態から、自社のナレッジが回り続ける状態へ——その一歩を踏み出すタイミングが、生成AIが実用段階に入ったいまだと言えます。

監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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