この記事のポイント
2026年9月にオープンベータ開始予定、追加スキルは2026年後半から順次投入されるロードマップが公式に示されている
Claudeへプラグインとして37の営業スキルが実装され、Salesforceを開かずに商談準備・案件レビュー・パイプライン更新まで実行できる
Agentforceの代替ではなく、Claudeが Agentforce の推論モデルとしても採用される「双方向統合」が本質
Salesforceの既存権限モデル・ビジネスルールをそのまま踏襲し、admin接続1回で全ユーザーが即日利用可能な設計
料金・必要ライセンス構成とも現時点で未公表、公式発表とベータ案内・営業ヒアリングでの確認が必要

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
Claudeforce(クロードフォース)は、SalesforceとAnthropicが2026年8月26日に発表した戦略的パートナーシップの名称で、ClaudeがCRMのデータ・ワークフロー・ガバナンスに直接踏み込む枠組みです。
単なるAPI連携ではなく、Salesforce側の権限モデル・ビジネスルール・ガバナンスをそのまま踏襲しながら、Claudeから商談準備や案件レビュー、パイプライン更新までを実行できる設計になっています。
本記事では、Salesforce in Claudeの37スキル・技術基盤(Headless 360とAIforce)・Agentforceや競合Copilotとの違い・料金と提供時期・セキュリティで確認すべき点・SIer視点の導入判断ステップを2026年8月時点の最新情報で体系的に解説します。
目次
Claudeforceとは?CRMをClaudeから直接動かすSalesforce×Anthropicの提携ブランド
Salesforce in Claudeが実装する37スキルと業務体験
Claude in Salesforce——AgentforceとSlackへのClaude組み込み
Amazon BedrockでSalesforce Trust Boundary内にClaudeが常駐
Headless 360——UIなしでSalesforce能力を呼び出す仕組み
Agentforce・Microsoft Copilot・ServiceNowとの違い
Agentforce単体 vs Claudeforceの違い
ChatGPT Enterprise + Salesforceとの違い
Claudeforceのセキュリティ・ガバナンス・データ保持
Salesforce Trust Boundaryとデータ保持
Anthropicと共同開発中の追加エンタープライズコントロール
Agentforce未導入だがSalesforce活用中の企業
Claudeforceとは?CRMをClaudeから直接動かすSalesforce×Anthropicの提携ブランド

Salesforce×Anthropicが2026年8月26日に発表したClaudeforceのキービジュアル(出典:Salesforce Newsroom)

Claudeforce(クロードフォース)とは、SalesforceとAnthropicが2026年8月26日に発表した戦略的パートナーシップの拡張プロジェクトの名称です。
Claudeforceは単独の製品ではなく、両社が共同で展開する複数の統合プロジェクトを束ねるブランド呼称です。中核となる「Salesforce in Claude」を皮切りに、Agentforce・Slack・Bedrockといった既存の各層で相互統合が進みます。
公式プレスリリースでは、「Salesforce's trusted enterprise harness」と「Claude's intelligence and reasoning」を組み合わせて、CRMのデータ・ワークフロー・ビジネスロジック・ガバナンスをClaudeから直接呼び出せる状態にすると説明されています。
Salesforce CEOのMarc Benioffは「UI is the AI(インターフェイスがAI)」というフレーズで、静的UIの操作から脱却して推論できる動的インターフェイスへシフトすると位置づけています。Anthropic CEOのDario Amodeiは、「フロンティア級の知能を、世界の商業活動が実際に動いているシステムの中に持ち込む」と発言しました。
Salesforce in Claudeが実装する37スキルと業務体験
ここからは、Claudeforceの中核として最初にリリースされる「Salesforce in Claude」を、スキル体系と実際の業務体験の観点で整理します。
Salesforce in Claudeは、Salesforce公式の説明によれば「Salesforce側のスタックを自力で組み立てるのではなく、既に組み立てられたPluginとして入手できる」体験です。MCPサーバー・API呼び出し・認証設定を一つずつ自前で書く必要がなく、admin接続1回で全ユーザーが即日利用できます。

37スキルの全体像

37の事前構築済み営業スキル(prebuilt sales skills)は、Salesforceとの共同エンジニアリングでゼロから設計されました。汎用CRMプロンプトをAPIでラップしたものではなく、Claudeの推論・エージェント的ツール使用・generative UI(生成される動的インターフェイス)を前提に組まれた実装です。
代表的なスキルカテゴリは以下の3系統に整理できます。
-
商談準備(Meeting prep)
次の会議に向けて必要な顧客・案件情報を横断で参照し、準備を支援するスキル
-
案件健全性レビュー(Deal health review)
案件のステージ・関与者・活動履歴などから健全性を評価するスキル
-
パイプラインレビュー(Pipeline review)
パイプライン全体の状態をClaude上で確認し、優先順位付けや停滞案件の把握を支援するスキル
上記3種類は公式ページで名称が示されている代表例で、各スキルの詳細な機能仕様・カバー範囲はベータ以降の公開情報で確認する必要があります。
オンボーディング体験——ダッシュボードが動的に立ち上がる

Salesforce in Claudeを最初に起動したとき、Claudeがそのセラーの企業コンテキスト——Salesforce・Slack・接続済みコネクタすべて——を読み込み、担当アカウント・パイプライン・ライブデータを反映した専用ダッシュボードを動的に生成します。
ダッシュボード自体はClaudeが対話中に生成する対話型ビューであり、あらかじめ設計された静的レポート画面ではありません。この点が、Salesforce Lightning UIやTableauダッシュボードとの本質的な違いです。
Salesforce社の販売部門トップであるAlexa Vignoneは公式ページで、「セラーがパイプラインレビューが完了した状態と過去のアカウント履歴が揃った状態から1日を始められる。その時間がそのまま顧客との会話に回る」と証言しています。
「Claudeから離れずに行動できる」ことの意味
従来のAI+CRM連携では、AIが調べて要約した後、実際に更新するにはSalesforceに戻る必要がありました。Salesforce in Claudeでは、Claudeから直接レコード更新やワークフロー起動が実行されます。

Claudeとの対話画面から直接Salesforceのカスタマーサービスエージェント作成を依頼している例(出典:Claudeforce公式ページ)

上図はSalesforce公式ページに掲載されているサンプル画面で、セラーがClaudeの対話ウィンドウからカスタマーサービスエージェント作成を依頼している状態を示しています(レコード更新完了の状態を示す画像ではありません)。実際にClaude側から書き込み操作が実行される場合、それらはすべてSalesforceのビジネスルールを経由するため、承認フロー・必須項目チェック等の既存ガバナンスがそのまま働きます。Claude側でルールを再実装する必要がないという点が、Salesforce in Claudeの設計上の大きな判断です。
書き込みの自律性はadmin側で細かく制御できます。社外にメールを送る前にClaudeが人間に確認する運用も、admin判断で「Claudeが直接送る」に切り替える運用も、両方サポートされています。
Claude in Salesforce——AgentforceとSlackへのClaude組み込み
Claudeforceは「SalesforceがClaudeに入る」だけでなく、逆方向の「ClaudeがSalesforceプラットフォームに入る」統合も同時に進みます。ここでは、Agentforce・Slack・Amazon Bedrockの3層でClaudeがどう扱われるかを整理します。

Agentforce内でClaudeが推論モデルとして採用

ClaudeはAgentforce上で以下のポジションを担います。
-
Atlas Reasoning Engineの推論モデル
Agentforce全体の推論を司るAtlas Reasoning Engineで、Claudeが利用可能な推論モデルとして統合される
-
Agentforce VibesとAgentforce Coworkerのデフォルトモデル
コード生成・共同作業型エージェントの Agentforce Vibes と、業務並走型の Agentforce Coworker で、Claudeがデフォルトモデルに指定される
-
Agent Builderで選択可能
ノーコード/ローコードでエージェントを構築するAgent Builderで、Claudeが推論エンジンとして選択できる
Agentforceを既に導入している企業から見ると、Claudeforceは「Agentforceを置き換えるもの」ではなく、「Agentforceの推論エンジン選択肢がClaude寄りに厚くなる」という位置づけになります。既存のAgentforceフロー・ビジネスルールはそのまま活かせます。Claudeforceとの組み合わせに伴う料金・必要ライセンスは未公表のため、営業ヒアリングでの個別確認が必要です。
SlackがClaudeで動く

Slackは今回の提携で「デフォルト推論モデル=Claude」の位置づけに正式移行します。
Slack公式は、Slackを「multiplayer work OS(人とエージェントが一緒に働くOS)」と定義し直しており、その中核レイヤーでClaudeが動く構造です。具体的には以下のレイヤーが対象です。
- Slackbot全体: Slackbotがユーザーの個人生産性支援でClaude推論に切り替わる。Salesforce社内では既にSlackbotが年換算810万時間の生産性向上(annualized productivity gains)を生み、四半期比で2倍以上に伸びていると公表されている
- Claude Tag: Slack内で任意のメッセージに
@Claudeのようにタグ付けして質問・要約・意思決定サポートを呼び出す仕組み - Slack Code: マルチプレイヤー型のコード共同編集機能。Slack上のスレッドから直接コードレビュー・修正提案を回せる
Slackを日常業務のハブに使っている組織にとっては、Claudeforceが正式リリースされる前から、SlackbotとClaude Tag経由でClaudeの推論に触れる機会が既に増えている状態です。
Amazon BedrockでSalesforce Trust Boundary内にClaudeが常駐

規制業界(金融・医療・公共など)では、Claudeを直接呼び出すよりもAmazon Bedrock経由で、Salesforceが管理するprivate AWS環境(Salesforce Trust Boundary内のSalesforce VPC)にLLMトラフィックを閉じたい要件があります。
Claudeforceでは、このSalesforce Trust Boundary内でBedrock経由のClaudeを利用できる設計になっています。Salesforceのデータ・AIワークロードがSalesforce管理境界の外に出ない形で、Claudeの推論を業界特化AIとしてデプロイできる構造です。
Salesforceが「Claudeは Salesforce Trust Boundary 内に完全統合された初のLLMプロバイダー」と明記している点は、規制業界の情シス・法務部門にとって重要な設計上の合意事項です。
Headless 360とAIforceが実現する技術基盤
Claudeforceがなぜ「単なるAPI連携以上」の位置づけになるかは、技術基盤のHeadless 360とAIforceを理解すると見えてきます。ここでは、Salesforce公式資料をもとに、この2つの技術層を整理します。

Headless 360——UIなしでSalesforce能力を呼び出す仕組み

Headless 360は、Salesforceが保有するデータ・アプリ・ワークフロー・エージェント・ガバナンス機能を、UIを介さずに外部AIが直接呼び出せるようにする仕組みの総称です。
従来、Salesforceに蓄積した情報(データ・関係性・ルール)を外部から使うには、Lightning UIにログインして画面遷移する必要がありました。それを解消するのがHeadless 360で、MCP(Model Context Protocol)経由でAIエージェントが直接Salesforce能力を呼び出せる状態にします。
Salesforce公式ページには「同じ能力を、Claudeの中で使うために既に組み立てた版がClaudeforce。自分でHeadless 360を叩いて独自に組み立てたい開発者向けにも同じインターフェイスは開かれている」という趣旨の記載があります。つまりHeadless 360は開発者向けのビルディングブロックであり、Claudeforceはその上に完成品として乗るTurnkey体験です。
AIforce——エージェントの外向きハーネス
AIforceは、Salesforceが持つ全ての業務データ・ワークフローをMCPサーバー・API・CLIツール経由で任意のAIエージェントに届ける「Trusted enterprise harness(信頼された企業向けハーネス)」です。
Claudeforceの内部では、AIforceがSalesforceのデータ・ワークフローをClaude側のエージェントに接続する役割を担います。既存の権限・ビジネスルール・ガバナンスの保持は、AIforceそのものではなく、その下のHeadless 360/Salesforce Platform側が担う構造です。以下のような対応関係で整理できます。
| 技術層 | 役割 | Claudeforce内での位置 |
|---|---|---|
| Claude(採用モデル・バージョンは未公表。公式はSonnet/Opus/Haiku系列に言及) | 推論エンジン | ユーザーからの依頼を解釈し、意図に沿ったツール呼び出しを計画 |
| AIforce(enterprise harness) | エージェント接続層 | Salesforceのデータ・ワークフローをMCP・API・CLI経由でエージェントに届ける |
| Headless 360 | データ・アプリ・ワークフローの外向きAPI | Salesforce能力をUIなしで公開し、既存の権限・ビジネスルール・ガバナンスを保持したままMCP/CLIから利用可能に |
| Salesforce Platform | 実際の業務システム | Sales Cloud・Service Cloud・Data 360等が動作 |
この4層構造が、Claudeforceを「PoCで作られたRPA的な連携」ではなく、企業のガバナンスに載せられる本番運用向けの統合として成立させています。既存のSalesforce権限・ビジネスルールがそのまま適用される設計のため、Claude側で追加の権限管理を再構築する必要がありません。
既存Salesforce権限モデルの引き継ぎ

Salesforceの権限モデルはオブジェクト単位・レコード単位・フィールド単位で緻密に設定されており、多くの企業で長年運用されています。Claudeforceはこの権限モデルをそのまま継承します。
Claudeが見られる情報・実行できる操作は、そのユーザーがSalesforce上で許可されているものと完全一致します。adminは一度Salesforce in Claudeを接続するだけで、既存の権限設計がそのまま働きます。新しい権限モデルを一から構築する必要はなく、アカウントごとの再監査も不要です。
書き込み操作についても、フィールド単位の変更は「Claudeが宣言した通りの項目にしか反映されない」設計になっており、宣言外のフィールドが意図せず更新される事故を防ぎます。
Agentforce・Microsoft Copilot・ServiceNowとの違い
エンタープライズAIエージェント市場は現在3強(Salesforce・Microsoft・ServiceNow)が競り合う構図で、それぞれ得意領域が異なります。ClaudeforceがAgentforce・Microsoft Copilot Studio・ServiceNowとどう違うかを整理します。

以下の表で、主要エンタープライズAIエージェント基盤の位置づけを比較しました。
| プラットフォーム | 中核推論モデル | 主戦場 | データ基盤 | 提供モデル |
|---|---|---|---|---|
| Claudeforce | Claude(採用バージョン未公表) | CRM×営業(Salesforceデータ資産に強い) | Data 360・Tableau・Salesforce Platform | パイロット→2026年9月ベータ |
| Agentforce(単体) | Atlas Reasoning Engine(Claude含む複数モデル選択可) | Salesforceプラットフォーム内の業務エージェント | Data 360・Tableau | GA済み(Agentforce 360) |
| Microsoft Copilot Studio | GPT系+独自モデル | Dynamics 365・M365全般(Dynamics 365導入企業に強い) | Microsoft Fabric・Dataverse | GA済み・Copilot Studioは2025年1月時点で16万組織以上が利用、直近3か月で40万件のカスタムエージェントが作成された(Microsoft FY25 Q2発表) |
| ServiceNow AI Agent | 独自Now Assist+外部モデル | ITSM・従業員体験(Workflow Data Fabric強い) | Workflow Data Fabric | GA済み・2025年Gartnerレポートの「Building and Managing AI Agents」ユースケースで首位評価 |
| ChatGPT Enterprise + Salesforce | GPT系 | 汎用ナレッジワーク+Salesforce連携(ChatGPT Enterprise側から利用) | Salesforce公式プラグイン経由の連携 or SF API内製 | GA済み・Salesforceが提供するChatGPT向け公式プラグインでCRMレコード参照や営業ワークフロー更新に対応 |
実務での選び分けは、既存の主要CRM/ITSM資産がどこに寄っているかで大枠が決まります。Salesforceを深く使い込んでいる企業ならAgentforceかClaudeforceの二択、Microsoft 365中心ならCopilot Studio、ITSMがServiceNowで完結しているならServiceNow AI Agent、という配分になりやすい構図です。
Agentforce単体 vs Claudeforceの違い

Agentforce単体とClaudeforceは、同じSalesforceの資産を使う点で最も混同されやすい2つです。以下の観点で違いを整理します。
-
推論モデルの主導
Agentforceは複数モデルを Atlas Reasoning Engine 経由で選択可能。Claudeforceは Claude を主軸に据えた完成品体験
-
提供チャネルの違い
Agentforce単体はLightningに加えてSalesforce Mobile・Slack・Web・メール・各種メッセージング等の複数チャネルに展開できる。Claudeforceは、それらとは別に「Claude内で使える構築済みSalesforceプラグイン」というチャネルを追加する位置づけ
-
実装粒度
Agentforceは自社でエージェントを設計・構築。Claudeforceは37の営業スキルが最初から入った状態で提供
-
既存Agentforce導入企業からの拡張
既にAgentforceを回している企業は、Claudeforceを「Claude UIからも同じ資産にアクセスできる追加チャネル」として位置づけられる
SalesforceとしてはAgentforceの置き換えではなく併存を想定しています。営業担当がClaudeの汎用チャットUIから業務を始めることに価値を感じるチーム構成なら Claudeforce が刺さり、Salesforce管理者が業務エージェントを設計する運用主体ならAgentforce単体が中心になります。
Microsoft Copilot Studioとの違い
Microsoft Copilot Studioは、Dynamics 365 CRM・M365・Windowsを中心にMicrosoftスタック全体へ広くリーチする設計です。
Microsoftの2025年1月発表(FY25 Q2)では、Copilot Studioを利用する組織が16万以上、直近3か月で作成されたカスタムエージェントが40万件(稼働数ではなく作成数)と公表されています。加えて、Microsoftは2024年11月のIgnite 2024で、Microsoft 365 CopilotがFortune 500企業の約70%で利用されていると公表しており、これはCopilot Studioの採用率ではなくMicrosoft 365 Copilot本体の利用率です。データ基盤はMicrosoft Fabric・Dataverseで、Azureエコシステム全体と統合されています。
対してClaudeforceはSalesforce専用の統合で、Salesforce Platform・Data 360・Tableauに絞ってワークフローを組みます。SalesforceがCRMとして深く根付いている企業では、Copilot Studioで別途構築するよりClaudeforceの方が実装工数を抑えられる可能性があります。ただし、実際のコスト差は個別要件・ライセンス構成・カスタム開発範囲によって変わるため、案件ごとに見積もりで確認する必要があります。逆にDynamics 365中心の企業では、Claudeforceを検討する前にCopilot Studioの評価が先に来ます。
ServiceNow AI Agentとの違い
ServiceNowは主戦場がITSM・HR・従業員体験で、AI Control Tower・Workflow Data Fabricというガバナンス機能が特徴です。2025年のGartnerレポート「Building and Managing AI Agents」ユースケース評価では、ServiceNowが首位を獲得しています(AIエージェント基盤全体の首位ではなく、当該ユースケースでの評価)。
Claudeforceは営業・CRM文脈に振り切っており、ServiceNowとは主戦場が異なります。ITSMも含めた全社エージェント統合をやりたい企業はServiceNowを検討し、営業体験を最初にAIで変えたい企業はClaudeforceという住み分けが自然です。
ChatGPT Enterprise + Salesforceとの違い

ChatGPTでSalesforceを扱う経路は現在2つあります。
-
Salesforce公式のChatGPT向けプラグインを使う経路
CRMレコードの参照や営業ワークフロー更新など、Salesforce側が用意した機能に対応。ChatGPT UIから直接呼び出せる
-
Salesforce APIを直接叩いて内製する経路
公式プラグインでカバーされない業務ロジックを扱う場合。認証・権限マッピング・スキル設計・エラーハンドリングなどを自前で構築する必要がある
Claudeforceは、37スキル・認証・既存Salesforceガバナンスの適用までがパッケージ済みの状態で提供されるため、Claude側から始める場合の実装工数を大幅に圧縮できます。「Claudeを既に社内標準に採用している、Salesforceも使っている、あとはClaude UIからCRM業務を回したい」という状況で、ChatGPT公式プラグイン経由・SF API内製・Claudeforceの三択を比較する意義が高い選択肢になります。
Claudeforceの料金・提供時期・必要ライセンス
Claudeforceの料金プランは、2026年8月31日時点で公式には未公表です。ここでは公式で確定している情報だけを整理し、見積もりで押さえるべき前提条件を示します。

提供ロードマップ
Salesforce公式プレスリリースで示されているロードマップは以下のとおりです。
| 時期 | 提供内容 | 状態 |
|---|---|---|
| 2026年8月26日 | Claudeforce発表、Salesforce in Claudeがパイロット提供開始 | 選定パイロット顧客のみ |
| 2026年9月 | Salesforce in Claudeのオープンベータ開始予定 | 参加条件・申込方法は現時点で未公表 |
| 2026年後半(late 2026) | 追加スキルの順次投入開始(Sales以外の11領域が候補) | Service・Marketing・Commerce・Revenue・Field Service・Tableau・MuleSoft・Informatica・Data 360・Headless 360・Industriesが「COMING SOON」ラベル |
| 2026年9月15〜17日 | Dreamforce 2026(サンフランシスコ)でClaudeforceの実演・紹介予定 | 公式イベント |
2026年秋のロードマップは、9月ベータ→Dreamforce 2026での続報→late 2026にスキル拡張、という流れが想定されます。最初にリリースされるSales領域を除いた11領域(Service、Marketing、Commerce、Revenue、Field Service、Tableau、MuleSoft、Informatica、Data 360、Headless 360、Industries)は、現時点で全て「COMING SOON」表記になっています。
見積もり時に確認すべきライセンス構成

料金体系は未公表で、公式プレスリリースも「料金・パッケージは変更される可能性があり、提供可否は地域によって異なり、顧客契約に基づく」と明記しています。過去のSalesforce・Anthropic製品の慣行から想定すると、以下のような要素が絡み得るため、いずれもベータ案内または営業ヒアリングで個別確認が必要です。
-
Salesforce側のライセンス
Sales Cloud・Service Cloud・Data 360・Tableau・MuleSoftなど、活用するSalesforce製品ごとのライセンスが絡み得る。既存契約の範囲で使えるか、追加ライセンスが必要かは未公表
-
Claude側のサブスクリプション
Claude for Enterpriseを含むClaudeエンタープライズ契約が入口として想定されるが、必要ライセンスの種別・最小契約規模は公式発表なし
-
Salesforce in Claudeのアクセス費用
Plugin自体のアクセス料金は現時点で不明。ユーザー単位課金・利用量課金・パッケージ課金のどれになるかも未確定
-
Bedrock構成を選ぶ場合
Bedrock経由でSalesforce Trust Boundary内にClaudeを配置する構成では、Bedrockの利用料金が別ラインで絡む可能性がある。追加コストの有無・課金経路は公式発表待ち
公式プレスリリースの末尾には「Pricing and packaging are subject to change. Availability may vary by region and is governed by customer agreements.(料金・パッケージは変更される可能性があり、提供可否は地域によって異なり、顧客契約に基づく)」と明記されています。日本での提供時期・日本語UI対応・日本リージョン対応は現時点で明示されていません。
見積もり時に問い合わせるべき情報

現在パイロット・9月ベータへの参加を検討中の企業は、以下の情報を担当営業に確認して見積もりの粒度を上げておくと本番展開時の判断がスムーズになります。
- 対象ユーザー数(セラー数)と課金単位(seat/月額 or 利用量ベース)の想定
- 既存Salesforceライセンスの拡張が必要か、そのまま利用可能か
- Claude for Enterprise契約の必要性と最小契約規模
- 日本での提供時期・日本語対応スケジュール・日本リージョン提供有無
- Bedrock構成を採用した場合のTrust Boundary運用オプションと追加費用
- 37スキルの各カテゴリで、自社の運用に不足するスキルがある場合の追加カスタマイズ経路
Claudeforceのセキュリティ・ガバナンス・データ保持
Claudeforceの導入を判断するとき、情シス・法務・監査部門が最も気にする論点はセキュリティとガバナンスです。ここでは、公式発表で明示されている統制機能と、契約段階で確認すべき事項を整理します。

権限モデルの継承——新規モデル構築が不要

Salesforce in Claudeは、既存のSalesforce権限・共有ルール・オブジェクト権限・フィールドレベルセキュリティをすべて継承します。
Claudeが見られる情報はそのユーザーがSalesforce上で許可されている情報と一致し、Claudeが実行できる操作もそのユーザーの権限範囲を超えません。アカウントごとに再監査を実施する必要はなく、adminが一度Salesforce in Claudeを接続すれば全ユーザーが即日利用開始できます。
書き込みの自律性はadminが決定

書き込み操作の自律性(Claudeが人間の確認なしに実行するか、都度確認するか)は、admin側でコントロール可能です。
- 社外メール送信: Claudeが送信前に確認するモードと、直接送信するモードを選択可能
- レコード更新: Claudeが宣言した項目のみが更新される。宣言外のフィールドは変更されない
この設計により、「AIが暴走して顧客に誤ったメールを送る」「意図しないフィールドが上書きされる」といった典型的リスクをアーキテクチャレベルで抑制できます。
Salesforce Trust Boundaryとデータ保持
Amazon Bedrock経由でClaudeを利用する場合、Salesforce Trust Boundary(信頼境界)内にClaudeが完全統合された状態で運用できます。この構成は、金融・医療・公共など規制業界向けに設計されたものです。
Salesforce Shield・Salesforce Backup・Sandboxes環境がそのままセキュリティ・レジリエンス・開発支援として活かせるため、既存のSalesforce統制フレームワークを崩さずにClaudeforceを追加できます。
なお、データが誰の所有物として扱われるか・どこに保存されるか・アクセスログはどこに書かれるかといった詳細は、契約書・DPA(Data Processing Agreement)で個別に確認が必要です。特にAnthropicへのデータ提供・学習利用の有無は、契約段階でZDR(Zero Data Retention:APIに送信したデータをモデル学習にも内部保管にも使わない契約オプション)相当の条項があるかをチェックすべきポイントです。
Anthropicと共同開発中の追加エンタープライズコントロール

Salesforce公式は「Anthropicとともに追加のエンタープライズコントロールを共同開発中」と発表しています。以下2点が示唆されています。
-
データ保存場所と管理者アクセスの制御機能
どこにデータを保存し、誰がアクセスできるかをより細かく制御する仕組み
-
顧客到達前の自動レビュー機能
Claudeの出力を顧客に届く前に自動レビューし、問題を検出する仕組み
これらの追加コントロールの提供時期は公式に明示されていません。今後の公式発表や営業確認で提供時期を確認する必要があります。規制業界の本番導入判断を行う場合は、コンプライアンス要件と比較したギャップリストを事前に作成し、既存機能で埋まる部分と、追加コントロールの提供を待つ必要がある部分を営業経由で整理しておくと安全です。
Claudeforceを検討する企業が今取るべき次の一歩
Claudeforceは9月にオープンベータ開始という段階で、多くの企業が「今何をすべきか」に迷う時期です。SIerとして企業のAI導入支援に関わってきた経験から、企業タイプ別に取るべきアクションを整理します。

既にSalesforceを深く運用している企業
Sales Cloud・Service Cloud・Data 360を中心にSalesforceを長年運用している企業は、Claudeforceの恩恵を最も受けやすい層です。
このタイプの企業に推奨する動きは以下です。
-
9月オープンベータへの申込みを準備
Salesforce営業経由でパイロット/ベータ参加の意向を伝え、社内では利用対象部門(Inside Sales/Field Sales/Marketing)・利用シナリオ・成功指標を整理しておく
-
既存Agentforce導入企業は「拡張チャネル」として位置づけ
Agentforceを既に運用しているならClaudeforceは代替ではなく、Claude UIからも同じ資産にアクセスできる追加チャネルとして併存させる
-
権限モデル・監査ログ運用の再確認
Claudeforceが権限モデルを継承する設計のため、既存Salesforce権限設計が「今後もAIエージェントの入口として使える粒度」になっているかを見直す。過剰権限や未整理ロールが残っているとClaudeforce導入後の統制が難しくなる
Agentforce未導入だがSalesforce活用中の企業
Sales Cloudは使っているがAgentforceはまだ触っていない、というタイプの企業は、Claudeforceを「Agentforce導入の代わりに」と考える誘惑があります。
このタイプの企業に対するSIer視点の判断は以下です。
-
Agentforceを飛ばしてClaudeforceに行く判断は現時点では時期尚早
Agentforceの一般提供・実績は既に厚く、Claudeforceは9月ベータの新参者。エージェント運用の統制ノウハウはまずAgentforceで蓄積した方が組織学習として堅い
-
並行検証の設計を推奨
社内の1〜2部門でAgentforceを本番導入しつつ、別の1部門でClaudeforceベータを試す2トラック運用で比較する
-
Claudeforceは営業チームのUI起点をClaudeに寄せたい場合の候補
Claude UIを既にセラー個人が愛用しているケースでは、そのUI起点をClaudeforceで公式サポートに載せる意義がある
複数CRM併用企業(Salesforce+Dynamics 365等)

SalesforceとDynamics 365を部門別に使い分けている企業では、AIエージェント基盤の選定がより複雑になります。
-
CRMの主軸がSalesforce側にあるならClaudeforce優先
Salesforce側の売上構成比が高く、意思決定データもSalesforceに寄っているならClaudeforceが最初の統合対象
-
CRMの主軸がDynamics側にあるならCopilot Studio優先
Dynamics 365中心・Microsoft Fabric活用済みならCopilot Studioが第一候補で、Claudeforceは補完役
-
AIエージェント基盤を1本に絞る判断は急がない
2026年後半はプラットフォーム側の機能追加が続く時期。基盤選定を1本に絞り込むのは、late 2026以降の追加スキル投入と本番実装事例の蓄積を見てから判断する方が現実的
ISV・SalesforceパートナーやCSベンダー
Salesforce AppExchangeで独自製品を提供しているISV・Salesforceインテグレーターは、Claudeforceの登場でビジネスチャンスと競合圧力の両方に直面します。
-
Headless 360とAIforceに沿った再設計
既存の連携アプリを、UI起点前提の設計からMCP/CLI起点前提の設計に段階的に移行する準備を進める
-
37スキルと重複するプロダクトの再定義
自社が提供している商談準備・パイプラインレビュー機能が37スキルとぶつかる場合、機能差別化ポイントを明確化する必要が出る
-
業界特化スキルの提案チャンス
「Industries」カテゴリがCOMING SOONになっており、業界特化スキルはClaudeforce本体では今後の展開待ち。この間に業界特化ISVが独自スキルを先行実装する余地は残る
PoC設計時の注意点

どのタイプの企業でも、Claudeforce PoCで陥りがちな落とし穴は以下です。
-
チャット体験だけで判断しない
「Claudeと会話できるようになった」を成功指標にすると本質を見誤る。実際の業務時間削減・意思決定スピード改善・機会損失削減など、業務KPIで測る
-
いきなり全業務を接続しない
初回PoCは1〜2部門・1〜2スキルに絞る。組織全体を一気に載せる設計は権限整理と監査設計が破綻する
-
本番と同じ自動処理連鎖でテストする
「読み取り専用」でしか触らないPoCは、書き込み側の統制課題を発見できない。フェーズを分けて書き込み含めた本番相当の連鎖をテストする
Claudeforceでできることを実務で試す
ClaudeforceとAgent Hubで営業業務を実装する
9月ベータを待たずに業務エージェント運用を始める
Claudeforceが待ちきれない業務にはAI Agent Hubで先行実装が可能です。AI Agent Hubは営業・カスタマーサクセス・バックオフィス業務向けエージェントを1つのダッシュボードで統合管理し、Salesforce・Slack・メール等の既存業務データと連携させたエージェント運用を今日から始められます。
まとめ
Claudeforceは、SalesforceとAnthropicが2026年8月26日に発表した戦略的パートナーシップの拡張で、CRMをClaudeから直接動かす統合ブランドです。中核のSalesforce in Claudeは37の営業スキルを実装済みで、パイロット提供中・2026年9月にオープンベータ・late 2026以降に他領域スキル追加のロードマップになっています。
- Salesforce in Claudeは37の営業スキルで、商談準備・案件レビュー・パイプライン更新までClaudeから直接実行できるパッケージ
- Claude in Salesforceは Agentforce・Slack・Bedrockの3層でClaudeがデフォルトモデル/推論エンジンとして統合される
- 技術基盤の Headless 360 と AIforce により、Salesforce権限モデルをそのまま引き継いだ状態で運用可能
- 競合は Agentforce単体・Microsoft Copilot Studio・ServiceNow AI Agent。主戦場と既存資産のフィットで選び分ける
- 料金・必要ライセンス構成とも未公表。Salesforce側ライセンス・Claude側契約・Bedrock構成の絡み方は営業ヒアリングで個別確認が必要
- セキュリティは既存Salesforce統制を継承、追加エンタープライズコントロールはAnthropic共同で開発中
- Salesforce深く運用中の企業は9月ベータ準備、Agentforce未導入企業は2トラック並行検証、複数CRM併用企業は主軸CRMで判断分岐が現実的
Claudeforceの提供体制が固まっていく2026年秋は、Dreamforce 2026(9月15〜17日)と追加スキル発表が続く重要な時期です。9月ベータの実運用データが出始めるタイミングで、自社の営業体験をClaudeベースで再設計する判断に踏み込むか、Agentforceと二本立てで進めるかが問われることになります。













