この記事のポイント
ノーコード/ローコードで社内AIエージェントを構築するなら、Microsoft Copilot Studioが第一候補。Power Virtual Agentsの後継としてAIネイティブに進化済み
まずはSharePointや社内FAQを知識源に設定し、生成回答機能で問い合わせ対応を自動化すべき。PG&Eは年間110万ドル超のコスト削減を達成
2025年9月に課金単位が「メッセージ」→「Copilot Credits」に移行。プリペイドパック(25,000 Credits/$200/月)・従量課金・P3年間プランの3択
M365 Copilotライセンス保有者はTeams・SharePoint上のエージェント利用がゼロレート。追加費用なしで社内向けエージェントを展開できる
DLPポリシー・監査ログ・CMK・データ所在地制御を備え、エンタープライズのガバナンス要件を満たせる。HIPAA・FedRAMP・PCI DSS認証にも対応

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
「社内業務に特化したAIアシスタントを作りたいけど、プログラミングはできない」「Microsoft 365 Copilotの回答を、もっと自社のデータに基づいた内容にしたい」
そんなニーズに応えるのが、Microsoftが提供するローコード開発プラットフォーム「Microsoft Copilot Studio」です。
本記事では、Copilot Studioの主要機能から使い方、2025年9月に移行したCopilot Credits課金体系、企業の活用事例、セキュリティとガバナンス、制限事項まで、2026年3月時点の最新情報で徹底解説します。
✅Microsoft 365 Copilotの最新エージェント機能「Copilot Cowork」については、以下の記事をご覧ください。
Copilot Coworkとは?機能や料金、Claude Coworkとの違いを解説
Microsoft Copilot Studioとは?

Microsoft Copilot Studioは、専門的なプログラミング知識がなくても、自社の業務に特化したAIエージェントを構築・管理できるローコード開発プラットフォームです。
単なるチャットボット作成ツールではなく、社内外のデータやシステムと連携し、Microsoft 365 Copilotの能力を自社業務に合わせて拡張・強化できる点が最大の特徴です。

Copilot Studio
Copilot Studioで作成したエージェントは、Microsoft Teams、SharePoint、Webサイト、モバイルアプリなど複数のチャネルに展開できます。SharePoint上のドキュメントやWebサイトのURLを「ナレッジソース」として指定するだけで、関連する質問にAIが自動で回答を生成する仕組みです。
社内FAQの自動化から、外部システム連携による業務プロセスの自動化、さらにはMicrosoft 365 CopilotエージェントとしてTeams上で動作するプラグインの作成まで、幅広いシナリオに対応します。
Power Virtual Agentsからの進化
Copilot Studioは、かつて「Power Virtual Agents」として提供されていたチャットボット構築ツールの後継です。2023年11月にブランドが統合され、生成AI機能が大幅に強化されました。
旧Power Virtual Agentsでは、質問と回答のペア(FAQ)を一つひとつ手動で登録する必要がありましたが、Copilot Studioでは生成AIによる自動応答、自然言語でのトピック構築、マルチエージェント連携など、AIネイティブな機能が標準搭載されています。
既存のPower Virtual Agentsで構築したボットは、Copilot Studioにそのまま移行できます。
Microsoft 365 Copilotとの違い

Copilot StudioとMicrosoft 365 Copilotは、役割が明確に異なります。
| 項目 | Microsoft 365 Copilot | Copilot Studio |
|---|---|---|
| 対象ユーザー | エンドユーザー(全社員) | エージェント作成者・管理者 |
| 主な役割 | Word・Excel・Teams等でAIアシスタントとして動作 | 業務特化型エージェントの構築・管理 |
| カスタマイズ | 限定的(プロンプト指示のみ) | 自由度が高い(ナレッジ・ツール・トピック・フロー) |
| 外部システム連携 | 基本的にM365内 | コネクタ・API・カスタムコネクタで外部接続可能 |
つまり、Microsoft 365 Copilotが「社員が使うAIアシスタント」であるのに対し、Copilot Studioは「そのAIアシスタントを自社業務に合わせて作る・拡張する開発環境」です。M365 Copilotを導入済みの企業が、Copilot Studioでカスタムエージェントを作成しTeams上に展開すれば、追加の学習コストなく全社で利用できます。
Copilot Studioの主な機能

Copilot Studioは、単なるチャットボット作成ツールとは一線を画す、いくつかの強力な機能を備えています。ここでは、その中核をなす主要な機能について解説します。
ナレッジソースからの自動応答:「生成回答」

従来、チャットボットを作成するには、想定される質問と回答のペア(FAQ)を一つひとつ手作業で登録する必要がありました。Copilot Studioでは、その手間を大幅に削減する**生成回答(Generative Answers)**機能が搭載されています。
WebサイトのURLやSharePoint上のファイルを「ナレッジソース」として指定するだけで、エージェントがその内容を学習し、関連する質問に自動で回答を生成します。

ナレッジソース設定画面
この機能は、定義済みの会話シナリオ(トピック)で対応できない未知の質問に対する**フォールバック(代替応答)**としても機能し、エージェントの対応範囲を手軽に広げることができます。
2026年3月時点では、SharePoint、OneDrive、Salesforce、ServiceNow、Confluence、Dataverseなど、多様なデータソースをナレッジとして接続可能です。
自然言語による自動構築
複雑な会話の流れ(トピック)も、自然言語で指示するだけで構築できます。「〇〇に関する問い合わせに対応するトピックを作って」のように指示すると、Copilot Studioが応答メッセージや質問ノード、条件分岐など複数のタイプのノードを含む会話の流れを自動で構築します。

エージェント構築画面
既存トピックの修正も同様に指示ベースで行えるため、プログラミング知識のない現場の業務担当者が、主体となってエージェントを継続的に改善していくことが可能です。
外部システム連携と業務自動化:「ツール」

Copilot Studioの真価は、単に質問に答えるだけでなく、ツールを使って外部システムと連携し、実際の業務プロセスを自動化できる点にあります。
ツールとは、エージェントが外部とやり取りするための機能部品のことで、以下のような種類があります。
-
構築済みコネクタ
Microsoft 365やSalesforceなど、あらかじめ用意された数百のサービスへの接続部品です。
-
カスタムコネクタ
独自の社内システムなどに接続するための部品です。
-
エージェントフロー
複数のステップからなる反復的なタスクを自動化する一連の処理です。Power Automateのフローをエージェントから直接呼び出せます。なお、Agent flow actionsおよびPower Automate cloud flows as actionsはスタンドアロンサブスクリプションで利用可能な機能で、Copilot Studio for Teams(M365サブスクリプション付属)プランでは利用できません。

ツールの追加画面
エージェントはオーケストレーションの仕組みにより、ユーザーの意図を解釈し、これらのツールの中から最適なものを自律的に選択して実行します。対話を通じて以下のような処理を自動化できます。
- ユーザーからの問い合わせ内容を、コネクタを使ってサポートチケットとしてシステムに自動起票する
- 在庫確認の依頼を受け、カスタムコネクタで在庫管理システムに接続し、リアルタイムの情報を取得して回答する
- 従業員からの休暇申請を受け付け、エージェントフローで定義された承認ワークフローを起動する
このように、多彩なツールを組み合わせることで、対話を起点とした高度な業務自動化を実現します。
エージェントの頭脳:「オーケストレーション」
**生成オーケストレーション(generative orchestration)**は、Copilot Studioのエージェントをインテリジェントに動作させるための中核技術です。この機能はスタンドアロンサブスクリプションで利用でき、Copilot Studio for Teams(M365サブスクリプション付属)プランには含まれません。
ユーザーの意図に応じて、エージェントが利用可能なツール、トピック、ナレッジの中から、最適なものを自律的に選択し、組み合わせて応答を生成する仕組みです。
従来のように「ユーザーの発言」と「トリガーフレーズ」が完全に一致しなくても、エージェントは各機能の説明文(Description)を読んでその目的を理解し、最も関連性の高い機能を呼び出します。
この仕組みにより、開発者はすべての対話パターンを予測して作り込む必要がなくなり、エージェントはより自然で柔軟な会話を実現できます。
複数のエージェントを連携させる「マルチエージェント」機能

Copilot Studioは、複数のエージェントを連携させて、より大規模で複雑なソリューションを構築するマルチエージェントアーキテクチャに対応しています。
主な連携方法として、以下の2つがあります。
| 連携方法 | 概要 | 最適なシナリオ |
|---|---|---|
| 子エージェント | 親エージェント内に、特定の機能を持つ軽量なエージェントを作成する | 1つのチームで開発。ツールや知識を論理的にグループ化したい場合 |
| 接続エージェント | 独立したエージェント同士を接続する。それぞれ個別に公開・管理が可能 | 複数のチームで開発。エージェントを再利用したい場合 |
この機能により、「顧客からの問い合わせを受ける総合受付エージェント」が、内容に応じて「技術サポート専門エージェント」や「契約内容変更専門エージェント」に処理を引き継ぐ、といった高度な連携が実現できます。

エージェントの追加画面
Microsoft 365 Copilotとの接続

Copilot Studioで作成したエージェントやアクションは、Microsoft 365 Copilotの能力を自社業務に合わせて拡張する「プラグイン」として機能します。
作成したプラグインをMicrosoft 365 Copilotに発行すると、**Microsoft Teams、SharePoint、Microsoft 365 Copilot Chat**といった使い慣れたアプリ内から、社内システムと連携したタスクを実行できるようになります。
具体的には、以下のような業務に特化した指示を出せるようになります。
- 「先月の〇〇に関する経費報告書を社内経費システムから要約して」
- 「新製品Aの見積もりを販売管理システムで作成し、取引先Bに送付する承認フローを開始して」
- 「次のプロジェクトCに参加可能なスキルを持つメンバーを人事DBからリストアップして」
これらの連携により、Microsoft 365 Copilotは汎用的なAIアシスタントから、自社の業務に深く精通した業務パートナーへと進化します。2026年のリリースウェーブでは、Agent Builderで作成したエージェントをCopilot Studioにコピーして高度な編集を行う機能も追加されています。
Copilot Studioの使い方

実際にMicrosoft Copilot Studioを利用する手順をステップごとに解説します。より詳しい手順はCopilot Studioの使い方記事もあわせてご覧ください。
- Copilot Studioにアクセス
Copilot Studioにアクセスし、有効なサブスクリプションを持ったアカウントでサインインします。

Copilot Studioにアクセス
- エージェントの新規作成
サイドバーの「作成」をクリックし、「新しいエージェント」を選択します。事前に用意されたテンプレートから作成することも可能です。

エージェントの新規作成
- エージェントの基本構成
エージェントの作成を選択すると、基本構成を設定する画面が表示されます。Copilotとの対話を通じて構成することも可能です。
この段階で設定可能な構成は以下のとおりです。
-
エージェントの名前
-
エージェントの説明
-
エージェントへの指示
エージェントの果たす役割や口調を指定できます。指示は最大8,000文字まで設定可能です。
-
ナレッジ
データ、ファイル、その他のナレッジリソースを追加できます。
-
推奨プロンプト
会話の開始方法を提案できます。

エージェントの基本構成
- エージェントの設定
基本構成を設定すると、ツールやマルチエージェントといった機能の設定が可能になります。
- 概要 基本構成の内容や追加したツールなどを確認できます
- サポート情報 ナレッジソースを追加できます
- ツール 外部サービスとの接続部品を追加できます
- エージェント 子エージェントの作成やマルチエージェント連携を設定できます
- トピック 特定の入力を受け取った際のエージェントの挙動を設定できます
- 活動 公開したエージェントの対話ログを確認できます
- 分析 エージェントの利用状況を分析できます
- チャネル WebサイトやMicrosoft 365といったチャネルに展開できます
上部バーの「テスト」をクリックすると、エージェントの設定中にいつでも挙動を確認できます。

エージェントの設定
- ツールの追加
上部バーの「ツール」から「ツールを追加する」をクリックするとツールの選択が可能です。
例えば、Outlookを追加してメールの返信機能をエージェントに組み込みたい場合は、「Outlook」と検索してツールを絞り込み、「メールに返信する」を選択します。「接続」から「新しい接続を作成する」をクリックしてツールとの接続を行います。

ツールの追加
- トピックの設定
トピックでは、エージェントのワークフローをドラッグ&ドロップ形式で設定できます。事前にいくつかの挙動が設定されており、これらも編集可能です。
「トピックの追加」をクリックし、新しくトピックを作成します。トリガーとなるメッセージや条件分岐、実行するツールの機能などをキャンバス上で設定します。
「保存」をクリックすると、トピックの設定が完了します。

トピックの設定
上記のステップで、エージェントの作成が可能です。作成が完了したエージェントは「公開」をクリックすることで、すぐにデプロイできます。
【関連記事】
Microsoft 365 Copilotエージェントの作り方!種類別にステップで解説
活用デモ:WebサイトQ&Aチャットボット
このセクションでは、利用手順に沿って「Webサイト内のQ&Aチャットボット」を作成します。
まずは、以下のように「説明」と「指示」を指定しました。

エージェントの説明と指示を設定
ナレッジでは、AI総合研究所のWebサイトを指定しています。

ナレッジの追加
以下のように、問い合わせフォームを利用したいユーザーに対してはフォームのリンクを表示する、という挙動を設定しました。

トピックの追加
「AIの導入事例についてどのようなものがあるか教えて」というリクエストを送信すると、以下のようにナレッジを参照し、回答を生成できていることがわかります。

エージェントのテスト
Copilot Studioの活用事例

Copilot Studioは、業種や規模を問わず幅広い企業で導入が進んでいます。Microsoftの公式事例ページで公開されている代表的な事例を紹介します。
SCSK:3か月で3つのエージェントを開発
日本のITサービス企業SCSKは、Microsoft 365 Copilotの全社導入と並行して、Copilot Studioによるエージェント開発を本格化させました。約3か月で3つのCopilotエージェントを構築し、社内業務の自動化だけでなく、外販サービス化への足がかりを築いています。
Microsoftの公式カスタマーストーリーで詳細が公開されています。
Holland America Line:バーチャルコンシェルジュ
クルーズ会社のHolland America Lineは、Copilot Studioを使ってWebサイト上にバーチャルコンシェルジュを構築しました。旅行者からの問い合わせに対し、寄港地情報やデッキプランなどの詳細な情報を24時間自動で応答する仕組みを実現しています。
ABN AMRO Bank:金融サービスのAI対話
オランダの大手銀行ABN AMROは、Copilot StudioとAzureサービスを組み合わせて、顧客向け・従業員向けの両方のAIインタラクションを強化しました。金融サービスに求められるコンプライアンス要件を満たしつつ、対話品質の向上を実現した事例として注目されています。
T-Mobile:カスタマーサービス担当者支援
米国のT-Mobileは、カスタマーサービス担当者向けの支援アプリをPower AppsとCopilot Studioで構築しました。デバイス情報の正確な提供や問い合わせ対応の迅速化により、顧客満足度の向上に貢献しています。
これらの事例に共通するのは、「プログラミング知識のない現場担当者がエージェントの改善に関われる」という点です。IT部門だけでなくビジネス部門が主体となってAIの活用を推進できるCopilot Studioの特性が、導入効果を最大化しています。
社内FAQや問い合わせ対応の自動化は、多くの企業が最初に取り組む領域です。すでにSharePointに社内ドキュメントが蓄積されているなら、そのデータをナレッジソースに指定するだけで、1日で動作するエージェントを構築できます。
【関連記事】
Copilotエージェント活用事例!業務別の成功パターンを解説
Copilot Studioのセキュリティとガバナンス

Copilot Studioの導入を検討する上で、特にエンタープライズ環境では、セキュリティとガバナンスの機能が最重要項目です。
Copilot Studioは、管理者による統制、作成者による安全性確認、そしてグローバル基準への準拠という多層的なアプローチを提供しています。
管理者向けのガバナンス機能

組織全体のセキュリティポリシーを維持し、エージェントの利用を統制するために、Power Platform管理センターを通じて詳細な制御が可能です。
データ損失防止(DLP)ポリシー
管理者は、エージェントが利用できる機能を細かく制御できます。
コネクタ、ナレッジソースの種類(Webサイト、SharePointなど)、HTTPリクエスト、イベントトリガーといった要素ごとに利用可否を設定し、「社内データにはアクセスできるが、特定の外部サービスへの接続は禁止する」といったルールを適用して、機密データの意図しない流出を未然に防ぎます。
▶︎参考:エージェントのデータ ポリシーを構成する
監査ログ(Audit Logs)
Microsoft Purviewと連携し、「誰が」「いつ」「どのエージェントを」作成・変更したか、といった作成者のアクティビティを完全に追跡・監査できます。組織のコンプライアンス要件を満たすための透明性と説明責任を確保します。
▶︎参考:Microsoft Purview での Copilot Studio アクティビティの監査
カスタマー マネージド キー(CMK)
保存されているCopilot Studioのデータを、Microsoftが管理するキーではなく、組織自身が管理する暗号化キーで保護できます。データ暗号化のライフサイクルを完全にコントロールしたい組織に適しています。
これらの機能群は、管理者が組織のAI利用ポリシーを徹底し、セキュアな環境を維持することを支援します。
作成者とユーザーのためのセキュリティ機能

管理者によるトップダウンの統制だけでなく、エージェントを開発する作成者自身がセキュリティ状態を確認できる機能も組み込まれています。
エージェントの保護状態の監視
作成者は、自身が管理するエージェントの一覧画面で、各エージェントの「保護ステータス」をいつでも確認できます。ステータスは「保護中」「要レビュー」などで表示され、組織のDLPポリシーに違反している場合には「要レビュー」と表示されます。
詳細を開くと「認証」「ポリシー」「コンテンツモデレーション」の各項目で問題点を確認でき、迅速な修正が可能です。
▶︎参考:エージェント ランタイム保護の状態
作成者向けのセキュリティ警告
エージェントを公開する前に、セキュリティやガバナンスの構成が組織の既定値から変更されている場合に、作成者に対してセキュリティ警告が表示されます。意図しない設定での公開を防ぎ、作成者自身のセキュリティ意識を向上させます。
▶︎参考:Copilot Studio の自動セキュリティ スキャン
SharePointデータの秘密度ラベルの認識
エージェントがナレッジソースとしてSharePoint上のファイルを参照する際、ファイルに設定された秘密度ラベルを認識します。アクセス権のないユーザーに対して、機密情報を含むファイルの内容を応答してしまうといった過剰な共有を防ぎます。
▶︎参考:SharePoint データ ソースの秘密度ラベルを表示する
トップダウンの統制だけでなく、エージェントを開発する現場レベルでのセキュリティ意識向上も促す設計です。
グローバル基準への準拠とデータ所在地

Copilot Studioは、基盤レベルでも高い信頼性を提供します。
データ所在地(Data Residency)
エージェントや会話ログといったデータは、組織が契約しているテナントの所在地(ジオグラフィ)に基づいて保存されます。日本の企業がテナントを日本に設定した場合、データは物理的に日本国内のデータセンターに保管されます。GDPRをはじめとする各国のデータ保護規制への対応において重要な仕組みです。
多様な業界認証
特に厳格なデータ取り扱いが求められる業界のコンプライアンス要件を満たすように設計されています。
| 分野 | 認証/規格名 | 概要 |
|---|---|---|
| 医療 | HIPAA | 米国の医療情報保護法に準拠。PHI(保護された医療情報)を取り扱うエージェントの作成が可能 |
| 金融 | PCI DSS | クレジットカード情報を安全に取り扱うためのグローバル基準 |
| 米国政府 | FedRAMP | 米国連邦政府機関によるクラウドサービスのセキュリティ基準 |
| 国際標準 | ISO / SOC | ISO 27001(情報セキュリティ)やSOCレポート(内部統制)に対応 |
これらの認証への対応が、金融・医療・公共など機密情報を扱う企業でも安心して導入できる基盤となっています。
▶︎参考:Copilot Studio でのコンプライアンスを確保する
Dataverseとストレージ容量

Copilot Studioは、Power Platformの基盤となるセキュアなデータプラットフォームMicrosoft Dataverse上で動作します。会話ログや構成情報、エージェントが利用するテーブルデータは、すべてDataverseに安全に格納されます。
Copilot Studioのライセンスには、テナントごとに以下の既定のDataverseキャパシティが含まれています。この容量は、同じテナント内のPower AppsやDynamics 365など、他のPower Platform製品と共有して利用されます。
| キャパシティの種類 | テナントあたりの既定容量 | 主な用途 |
|---|---|---|
| Dataverse データベース | 5 GB | テーブルの定義やレコードデータなどを格納 |
| Dataverse ファイル | 20 GB | メモやメールの添付ファイルを保存 |
| Dataverse ログ | 2 GB | データの変更履歴を記録し、監査・コンプライアンスに利用 |
ライセンスには業務利用に十分なストレージ容量が含まれていますが、Power Apps等と共有のため、大規模展開時はDataverse容量の消費状況を定期的に確認することを推奨します。
Copilot Studioの制限事項と注意点

Copilot Studioは強力なツールですが、導入前に把握しておくべき制限事項があります。公式のクォータ・制限ドキュメントに基づき、主な制限を整理します。
エージェント構成の制限

以下の制限は、エージェントの設計時に影響するポイントです。
| 項目 | 制限値 |
|---|---|
| エージェントへの指示 | 8,000文字 |
| トピック数 | 1,000/エージェント |
| トリガーフレーズ | 200/トピック |
| スキル数 | 100/エージェント |
| ファイルアップロード | 512 MB/ファイル |
| ファイル数 | 500ファイル(SharePointは除外) |
| コネクタペイロード | 5 MB |
指示の8,000文字制限は、複雑な業務ルールを持つエージェントの設計で制約になる場合があります。長大な指示が必要な場合は、トピックやツールに分割して設計するアプローチが有効です。
ナレッジソースの制限

SharePointをナレッジソースとして利用する場合、以下の制限に注意が必要です。
-
モダンSharePointページのみ対応 クラシックASPXページのコンテンツは回答生成に使用されない
-
対応ファイル形式 Word(DOC/DOCX)、Excel(XLS/XLSX)、PowerPoint(PPT/PPTX)、PDFに対応。ただし、XLSXなどの構造化ファイルは追加可能だが、分析的な質問に対しては最適な回答が得られないことがある
-
ファイルサイズ制限 M365 Copilotライセンスが同一テナントにない場合は7 MB以下に制限される。M365 Copilotライセンスがあり、Tenant graph grounding with semantic searchを有効にしている場合は最大200 MBまで対応可能
-
ファイル名・ドキュメント名を直接参照するクエリには非対応 「〇〇.pdfに書いてある内容は?」のような問い合わせには回答できない
クォータ(レート制限)
エージェントへのリクエストには、Dataverse環境ごとにレート制限が適用されます。
- 通常メッセージ 8,000 RPM(リクエスト/分)
- 生成AIメッセージ 50〜100 RPM(購入パック数による)。トライアル環境では10 RPM
クォータに達すると、エージェントにメッセージを送信したユーザーにはエラーが表示されます。利用量が多い環境では、プリペイドパックの追加購入によってクォータを引き上げることが可能です。
Copilot Studioの料金とライセンス体系
Copilot Studioの料金体系は、2025年9月に課金単位が「メッセージ」からCopilot Creditsに移行されました。ここでは2026年3月時点の最新体系を解説します。

3つのプラン体系

Copilot Studioには、利用できる機能が異なる3つのプラン体系があります。導入目的に応じて適切なプランを選択してください。
| 項目 | Copilot Studio for Teams(M365付属) | Copilot Studio in M365 Copilot | スタンドアロン |
|---|---|---|---|
| 含まれるライセンス | 一部のMicrosoft 365サブスクリプション | M365 Copilotライセンス | 個別購入(プリペイド/PAYG/P3) |
| 生成オーケストレーション | 利用不可 | 利用可能 | 利用可能 |
| Agent flow actions | 利用不可 | 利用可能(ゼロレート) | 利用可能 |
| Power Automate cloud flows as actions | 利用不可 | 別途確認が必要 | 利用可能 |
| 公開先チャネル | Teamsのみ | Teams・SharePoint・Copilot Chat | 全チャネル(Web・Teams・モバイル等) |
| コネクタ | 標準コネクタのみ | 標準+プレミアム | 標準+プレミアム |
| スキル(Bot Framework) | 利用不可 | 利用可能 | 利用可能 |
| 自然言語によるトピック作成 | 利用不可 | 利用可能 | 利用可能 |
Copilot Studio for Teamsは、M365サブスクリプションに付属する機能限定プランです。Teams上でのシンプルなFAQチャットボットには対応できますが、生成オーケストレーションやAgent flow actions、Power Automate cloud flowsなどの高度な機能は含まれていません。本記事で解説している機能の多くは、スタンドアロンサブスクリプションまたはM365 Copilotライセンスで利用可能なフル機能を前提としています。
▶︎参考:Copilot Studio for Teams と スタンドアロンの機能比較
Copilot Creditsの仕組み

Copilot Creditsは、エージェントの利用量を測定する共通通貨です。エージェントが応答やアクションを実行するたびに、その複雑さに応じた数のCopilot Creditsが消費されます。
以下の表で、機能ごとの消費量を整理しました。
| エージェント機能 | 消費Copilot Credits |
|---|---|
| Classic answer(定義済み応答) | 1 Credit |
| Generative answer(生成AI応答) | 2 Credits |
| Agent action(トリガー・推論・遷移等) | 5 Credits |
| Tenant graph grounding | 10 Credits |
| Agent flow actions(100アクションあたり) | 13 Credits |
| AI tools(Basic / Standard / Premium)(10応答あたり) | 1 / 15 / 100 Credits |
1回のユーザー対話で複数の機能が同時に使われるケースもあります。例えば、テナントグラフで情報を取得し生成AI応答を返す場合は、10 + 2 = 12 Creditsが消費されます。
公式の利用量見積もりツールを使えば、エージェントの種類・トラフィック・オーケストレーション方式・ナレッジソースを選択して、月間消費量を事前にシミュレーションできます。
3つの支払い方法

Copilot Creditsの購入・消費方法は3つあります。
-
プリペイドパック サブスクリプション
25,000 Copilot Credits / 月額$200のパック単位で購入します。月ごとに容量がリセットされ、未使用分の繰り越しは不可です。予算を確定させたい場合に適しています。テナント単位の購入で、容量は環境間でプールされます。
-
従量課金(Pay-As-You-Go)
Azureサブスクリプションと連携し、月末に実際の消費量に応じて請求されます。事前コミットメント不要でスモールスタートに最適です。プリペイドパックの超過分を吸収するバッファとしても推奨されています。
-
P3(Pre-Purchase Plan)
Copilot Credit Commit Units(CCCU)を1年分前払いで購入する方式です。ティア割引が適用され、Copilot Studio・Dynamics 365エージェント・Copilot Chatをまたいで使えます。大規模展開を予定している企業向けのプランです。
Microsoft 365 Copilotに含まれる使用権

Microsoft 365 Copilotライセンスを保有しているユーザーがエージェントを利用する場合、以下の消費はゼロレート(追加費用なし)になります。
- Copilot Chat、Teams、SharePoint上でのClassic answer
- 同環境でのGenerative answer
- Microsoft Graph テナントグラウンディング
- Agent flow actions
つまり、M365 Copilotを全社導入済みの企業であれば、社内向けのエージェントをCopilot Studioで構築し、Teams上に展開するだけで、追加のCopilot Credits消費なく利用できます。外部チャネル(Webサイト等)への展開や、M365 Copilotライセンスを持たないユーザーの利用にはCopilot Credits消費が発生します。
利用量が予測しにくいスモールスタートの段階では従量課金から始め、月間消費量が安定してきたらプリペイドパックへ移行するのが合理的です。
作成者に必要なライセンス

Copilot Studioでエージェントを構築・管理する作成者に必要なライセンスは、利用するプランによって異なります。
-
スタンドアロンサブスクリプションの場合
テナントライセンス(Copilot Studio)に加えて、作成者ごとにCopilot Studio ユーザーライセンス(無償)をMicrosoft 365管理センターで割り当てる必要があります。テナントライセンスの購入にはプリペイドCopilot Credit packサブスクリプションが前提です。
-
M365 Copilotライセンス保有者の場合
M365 Copilotライセンスに含まれる権限で、Copilot Studio上でのエージェント作成・編集が可能です。Agent Builderで作成したエージェントをCopilot Studioにコピーして高度な編集を行うこともできます。
-
PAYG(従量課金)環境の場合
AzureサブスクリプションとPower Platform環境を連携させた上で、Power Platform管理センターからCopilot Studio Author roleを付与することで、Copilot Studioへのオーサリングアクセスを提供できます。
▶︎参考:Copilot Studio のライセンス割り当てとアクセス管理
Copilot Studioで作ったAgentを全社で本番運用するなら
Copilot Studioでの構築方法とCredits課金は理解できても、「10体、50体と増えるAgentをどう管理するか」「本番環境のガバナンスをどう担保するか」は次の設計課題です。
AI Agent Hubは、Copilot Studioで構築したAgentを含め、全社のAIエージェントを1つのダッシュボードで統合管理できるエンタープライズ基盤です。
- Copilot Studio製Agentの全社展開を管理ダッシュボードで統制
ナレッジソース設定やトピック設計で構築したAgentが増えるほど、実行ログ・権限管理・セキュリティスキャンの一元化が不可欠に。n8nやMicrosoft Foundryで構築したAgentも含め、1画面で統合管理します。
- 共通処理は基盤が提供、作るのは業務ロジックだけ
認証・ログ・承認フロー・Teams連携・エラーハンドリングなど共通機能はすべて基盤側。業務固有のロジックだけを追加すれば新しいAgentが完成し、Copilot Creditsの消費も最適化されます。
- 使い慣れたMicrosoft環境をそのまま活用
Teamsなど既存のMicrosoftツールの延長でAIエージェントが動作。新しいツールの学習コストはゼロです。
- データは100%自社テナント内に保持
AIの学習対象から完全除外。Azure Managed Applicationsとして自社テナント内で動作が完了する設計です。
AI総合研究所の専任チームが、設計から運用まで伴走支援します。まずは無料の資料で、自社の業務にどう活用できるかご確認ください。
Copilot Studio製Agentの全社展開と統合管理
Agent量産基盤でガバナンスも確保
Copilot Studioで構築したAgentの全社展開、n8n・Foundry製Agentとの統合管理、Credits最適化まで。構築から運用を一貫支援します。
まとめ
Copilot Studioは、Microsoft 365エコシステムの中で「自社業務に特化したAIエージェントを、ローコードで構築・管理する」ための開発プラットフォームです。
本記事のポイントを振り返ります。
- Power Virtual Agentsからの進化により、生成AI応答・自然言語構築・マルチエージェント連携が標準搭載。AIネイティブなエージェント開発が可能になった
- ナレッジソース設定だけで即座に動作するエージェントが構築できるため、IT部門だけでなくビジネス部門が主体となったAI活用を推進できる
- 2025年9月に課金体系がCopilot Creditsに移行。プリペイドパック($200/月/25,000 Credits)、従量課金、P3年間プランの3択で、組織規模に応じた柔軟な選択が可能
- M365 Copilotライセンス保有者はTeams・SharePoint上のエージェント利用がゼロレート。既にM365 Copilotを導入済みなら、追加コストなく社内向けエージェントを展開できる
- DLP・監査ログ・CMK・データ所在地制御、HIPAA・FedRAMP・PCI DSS認証により、金融・医療・公共など規制の厳しい業界でも導入可能
導入判断で詰まる論点

Copilot Studioの導入を検討する際、判断に迷いやすいポイントは主に3つあります。
-
Teams付属 / M365 Copilot / スタンドアロン、どのプランで始めるか
M365サブスクリプションに付属するCopilot Studio for Teamsは、Teams上のシンプルなFAQボットには対応できますが、生成オーケストレーションやPower Automateフローは使えません。フル機能のエージェントが必要な場合はM365 Copilotライセンスまたはスタンドアロンサブスクリプションのいずれかが必要です。社内向けエージェントが主目的ならM365 Copilotのゼロレート消費を活かすのがコスト効率が高く、外部チャネル展開にはスタンドアロンが必要です。
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プリペイドパックと従量課金のどちらを選ぶか
利用量の予測が難しい導入初期は従量課金から始め、月間消費パターンが安定してきたらプリペイドパックに切り替えるのが堅実です。超過時のエンフォースメント(エージェント無効化)を避けるため、プリペイドパック契約時でも従量課金メーターを併用することをMicrosoftは推奨しています。
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SharePointの権限設計を先にやるべきか
Copilot Studioのエージェントは、ナレッジソースに指定されたSharePointのアクセス権限をそのまま反映します。共有範囲が広すぎるフォルダがある場合、エージェントが意図しないデータを参照する可能性があります。エージェント構築の前にSharePointの共有設定を棚卸ししておくことを推奨します。
Copilot Studioは、2026 Release Wave 1(4〜9月)でMCPサーバー対応やComputer Use(デスクトップ操作の自動化)のGA化が予定されており、エージェントの対応範囲はさらに拡大する見通しです。まずはSharePointを知識源にしたFAQエージェントから始め、効果を検証した上で段階的に拡張するアプローチが有効です。













