この記事のポイント
ChatGPT Atlasは、ChatGPTをネイティブ統合したOpenAIの新型Webブラウザ
サイドチャット機能で、どのタブでも閲覧中のページ文脈を理解したAI支援を受けられる
「ブラウザメモリ」が過去の閲覧情報を自動で記憶し、長期的な文脈に基づいた対話が可能
「エージェントモード」はユーザーの代わりにWeb上のタスク(商品購入など)を自律的に実行(プレビュー機能)
サイト別にAIのアクセス可否を制御でき、ブラウジング内容はデフォルトでAIの学習に使われないなど、プライバシーを重視した設計

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
「ChatGPT Atlasって何?」「普通のブラウザと何が違う?」
2025年10月、OpenAIは待望の新型ブラウザ「ChatGPT Atlas」を発表しました。これは単なる「ブラウザにChatGPTを追加したもの」ではなく、ChatGPTをブラウザの中核に据えた、AIとウェブの関わり方を根本から変えるアプリケーションです。
本記事では、ChatGPT Atlasの全機能、エージェントモード、ブラウザメモリ、プライバシー設定から、実践的なユースケースまで、詳しく解説します。
2025年12月12日に発表された最新モデル、「GPT-5.2(ChatGPT 5.2)」については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎GPT-5.2(ChatGPT 5.2)とは?その性能や使い方、料金体系を徹底解説!
ChatGPT Atlasとは?
ChatGPT Atlasは、OpenAIが開発した新型ウェブブラウザで、ChatGPTを完全にネイティブ統合した初のアプリケーションです。
従来のブラウザは「ウェブページを表示する」という受動的な役割に留まっていましたが、ChatGPT AtlasではブラウザそのものがAIアシスタントの「体」となります。

ChatGPT Atlasのイメージ
ウェブ上で行うあらゆる作業に対して、ChatGPTが即座に理解し、質問に答え、データを分析し、さらには代わりにアクションを実行する。これまで複数のウィンドウを切り替えながら、スクリーンショットを撮ってChatGPTに説明していた手間が、すべて不要になるのです。
ChatGPT Atlasでできること
ChatGPT Atlasは、複数の革新的な機能を備えています。それぞれがウェブ作業の効率性と体験を大きく変えるものです。
サイドチャット:どのウィンドウからでもChatGPTを活用
ChatGPT Atlasの最も基本的な機能が「サイドチャット」です。ブラウザのどのタブを開いていても、サイドバーからChatGPTにアクセスできます。
記事を読んでいれば「この記事を要約してください」、複数の製品ページを見ていれば「これらの製品を比較して」、さらには「今閉じたばかりのサイトの情報を使って分析してください」といった指示を出すことができます。

サイドチャット機能 (参考:OpenAI)
従来のブラウザであれば、このような操作は:
- 別のウィンドウやタブでChatGPTを開く
- スクリーンショットを撮るか、テキストを手動でコピー
- ChatGPTに貼り付けて質問
という3ステップが必要でした。ChatGPT Atlasでは、ブラウザが「あなたが今見ているもの」を自動的に理解しているため、こうした手間が完全に不要になります。
ブラウザメモリ:過去のブラウジング文脈を自動保持
ChatGPT Atlasの最も革新的な機能が「ブラウザメモリ」です。これは、ユーザーが訪問したサイトから重要な情報を、ChatGPTが自動的に記憶する機能です。


ブラウザメモリ (参考:OpenAI)
例えば、あなたが1週間かけて複数の求人サイトを巡回して、気になる職位を見て回ったとします。従来であれば、その情報は自分のメモやブックマークに留まります。
しかし、ChatGPT Atlasのブラウザメモリが有効であれば、ChatGPTは「先週見た求人の情報」を自動的に記憶しており、「先週見た求人を全部探して、業界トレンドをまとめて、面接準備のアドバイスをして」という一つの質問に対して、過去のブラウジング履歴を踏まえた回答ができるのです。
ブラウザメモリは完全にユーザーコントロール下にあります:
- メモリの有無を選択可能
- どのサイトについてメモリを作成するかを指定可能(サイト別の表示/非表示)
- 特定のメモリをいつでも削除可能
- ブラウジング履歴全体の削除で、関連メモリもすべて削除
このようにプライバシーを保ちながら、AIの文脈理解能力を最大限に活用できるのです。
エージェントモード:ChatGPTがあなたの代わりにアクションを実行
ChatGPT Atlasの最も強力な機能が「エージェントモード」です。これは、ChatGPTがウェブサイトと対話し、ユーザーの代わりにタスクを自動実行する機能です。

エージェントモード (参考:OpenAI)
具体的な例を想像してみてください。あなたが「明日、友人とビーチに行く予定だから、ビーチ用品をまとめて買ってきて」とChatGPTに指示したとします。エージェントモードが有効であれば、ChatGPTは:
- 日焼け止め、浮き輪、ビーチタオルなど、ビーチに必要な品目を判断
- オンラインストア(例:Instacart)にアクセス
- 各品目を検索して、適切な商品を選定
- ショッピングカートに追加
- 配送先や支払い情報を確認(ユーザー確認後)
- 注文を完了
このすべてをユーザーが何もしなくても、ChatGPTが自動的に実行するのです。
仕事の場面では、「今月の競合企業のニュースを収集して、チーム向けのレポートにまとめて」という指示であれば、ChatGPTが複数のニュースサイトにアクセスし、関連記事を検索し、内容を分析して、レポート形式でまとめるといったタスクを完結させます。
ただし、エージェントモードはまだプレビュー段階であり、複雑なワークフローではエラーが発生する可能性があります。OpenAIは信頼性、レイテンシ、複雑なタスク成功率の向上に継続的に取り組んでいます。
カーソル機能:メールやドキュメント内でのインラインAI支援
ChatGPT Atlasのカーソル機能は、より日常的な作業を支援します。メール、カレンダーの出席依頼、Google Docsなどのドキュメント内で、テキストを選択するだけで、ChatGPTのサポートをワンクリックで表示できます。

カーソル機能 (参考:OpenAI)
例えば、長いメールを読んだ後、「この人は何を求めている?」と選択して質問したり、ドキュメント内の表現を選んで「これをもっと簡潔にして」とお願いしたり、カレンダーの出席依頼を選んで「これに対する返信を作成して」と指示したりすることができます。
このカーソル機能により、ChatGPTはまさに「同僚のような協力者」となり、あなたの作業の流れを一切中断させずに支援するのです。
スマート検索機能:複数形式の情報を並列検索
ChatGPT Atlasの検索機能は、従来の検索エンジンを進化させています。テキスト、画像、動画、ニュース記事を同時に検索し、ChatGPTが検索結果を統合して提示します。
例えば「2025年のAIトレンド」と検索すれば、テキスト記事だけでなく、関連動画、業界ニュース、画像を含めて、複数の形式から情報を取得でき、ChatGPTがそれらを分析して、統合的な回答を提供します。
ChatGPT Atlasの使い方
ChatGPT Atlasは、公式サイトからmacOS版をダウンロードできます(※Apple Silicon M1以上、macOS 14以降が必要)。Windows、iOS、Android版は近日公開予定です。
インストールと初期設定
- ChatGPT Atlasの公式サイトにアクセスし、「Atlasをダウンロードする」を選択します。

「Atlasをダウンロードする」 ボタン
- 起動すると次のような画面が表示されるので、「ChatGPTを使用してログイン」を選択します。

ChatGPTを使用してログイン
- ログイン画面が表示されるので、任意のアカウントでログインします。

ログイン画面
- 既存のブラウザからブックマーク、保存されたパスワード、ブラウジング履歴をインポートできます。不要な場合はスキップすることも可能です。

ブラウザデータのインポート
- 次に、キーチェーンへのアクセス許可の設定を行います。この設定を行うと、普段利用しているブラウザに保存済みのパスコードをAtlas内で利用できます。
この手順もスキップ可能です。
- メモリ機能のオンオフを聞かれます。

前述の通り、オンにした場合でもデータコントールはユーザー側で行えます。

メモリ機能の概要
- Atlasの説明が表示されるので、「続ける」を選択します。

Atlasの説明
- こちらも機能説明なので、「続ける」を選択します。

機能説明
- 次に、ChatGPT Atlasをデフォルトのブラウザにするかを選択します。
デフォルトに設定すると、ChatGPTとのメッセージのやりとりやファイルアップロード、画像生成などの上限が7日間拡張されます。

デフォルト設定
- これで初期設定は完了です。

基本的な操作フロー
ChatGPT Atlasの基本的な作業フローは非常にシンプルです。
- 新規タブを開く
新しいタブを開くと、ChatGPTのホーム画面が表示されます。

ChatGPT Atlasのホーム画面
- URLを入力するか、ChatGPTに質問
アドレスバーにウェブサイトのURLを入力するか、ChatGPTに直接質問を入力します。自動補完機能により、過去のサイトや関連検索が提案されます。
サジェスト表示される「Google」のタブをクリックすると、通常の検索が可能です。

- 検索、チャット、エージェント実行を選択
結果に応じて、「検索結果のリンク」「チャットでの詳しい説明」「エージェント実行」など、必要な形式を選びます。
- 結果を確認、必要に応じてアクション実行
ChatGPTが提示した情報やサジェスションに基づいて、追加のアクション(ページの詳細を見る、エージェントに自動実行させるなど)を実行します。
さらに使いこなすためのTips
基本的な操作に加えて、以下のテクニックを覚えておくと作業効率が格段に向上します。
ショートカットキーと右クリックメニューの活用
日常的な操作は、ショートカットキーや右クリックから素早く呼び出すことができます。
- サイドチャットを即座に開く:
「CMD + .」 を押すと、いつでも画面右側にサイドチャ-ットパネルが表示されます。
- カーソル機能を呼び出す:
テキストフィールド内で 「CMD + E」 を押すと、文章の編集や新規作成を行うカーソル機能が起動します。
- 選択したテキストについて質問:
Webページ上の気になる文章を選択して右クリックし、「〜についてChatGPTに質問する」を選ぶと、そのテキストを引用した状態でサイドチャットが開き、すぐに質問を始められます。

ChatGPTに質問する
エージェントモードの高度な設定
エージェントモードは、ただ指示を出すだけでなく、より細かな設定が可能です。
- カスタム指示 (Custom Instructions):
設定画面からエージェントモードにあらかじめ指示を与えておくことができます。例えば、「情報源は公式サイトを優先して」「金額が関わる操作の前には必ず承認を求めて」といった独自のルールを設定し、エージェントの行動をコントロールできます。
- ログアウトモード:
プライバシーを特に保護したいタスクを実行する際に、このモードを使うと、既存のログイン情報(Cookie)を引き継がずにエージェントが動作します。これにより、意図せず個人アカウントで操作してしまうリスクを低減できます。
カーソル機能の応用的な使い方
メールやドキュメント作成を助けるカーソル機能には、さらに便利な使い方があります。
- テキストの新規挿入:
既存の文章を選択して書き換えるだけでなく、何もない場所にカーソルを合わせることで、新しい文章をゼロから生成して挿入することも可能です。
- 音声入力:
マイクボタンをクリックすれば、キーボードを打つ代わりに話した言葉をそのままテキストとして入力できます。長文のドラフト作成などに便利です。
ChatGPT Atlasの料金
ChatGPT Atlasは、OpenAIのすべてのプランユーザーが利用できます。ただし、プランによって利用可能な機能が異なります。
| 機能 | Free | Plus | Pro | Business | Enterprise | Edu |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 基本的なブラウジング | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| サイドチャット | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ブラウザメモリ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| エージェントモード(プレビュー) | - | ○ | ○ | - | ○ | - |
| カーソル機能 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| スマート検索 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
料金については、ChatGPT Atlasそのものは追加料金なし。既存のChatGPTプラン(Plus: $20/月、Pro: $200/月など)内での利用となります。
ChatGPTの料金体系については、以下の記事をご覧ください。
▶︎ChatGPT料金プランを比較!無料・有料プランの違いと選び方【2025年最新】
ChatGPT Atlasのセキュリティ
ChatGPT Atlasの設計において、プライバシーとセキュリティは最優先事項です。すべての機能がユーザーコントロール下に置かれています。
ユーザー主導のプライバシー設定
ChatGPT Atlasでは、ユーザーが細かいレベルでプライバシー設定をコントロールできます。デフォルトではセキュリティ・プライバシー重視の設定になっており、必要に応じて調整することが可能です。
Page Visibility(ページ表示制御)
アドレスバーのページ設定ボタンをクリックして「ChatGPTのページの表示」を選択することで、特定のウェブページをChatGPTから非表示にできます。非表示にしたページは、ブラウザメモリから除外され、チャット応答生成時に使用されません。
Incognito モード
「インコグニットモード」(⌘ + Shift + N)を使用すれば、一時的にChatGPTをログアウト状態でブラウジングできます。このモードではブラウザメモリやカスタム指示は利用されません。

*インコグニットモード:
Incognito モードでのデータ保持について
- チャット履歴はアカウントには保存されませんが、不正利用の検出と防止のため、アカウントとは切り離された形で30日間保持されます。
ただし、Incognito モードでも雇用主、学校、インターネットプロバイダーが活動を監視する可能性があります。また、OpenAI APIを使用するサイトにアクセスすると、OpenAIが活動データを受け取ります。
Browser Memories と Data Controls
ブラウザメモリ機能は ChatGPT Atlas の最も革新的な機能の一つですが、この機能を支える詳細なデータ管理機構があります。OpenAIはプライバシー保護を最優先に設計しており、複数のセキュリティ層を備えています。
Browser Memories の安全性メカニズム
ウェブコンテンツがサーバーで要約される際、OpenAIは以下の個人識別情報を自動的にフィルタリングします:
- 政府ID番号、社会保障番号(SSN)
- 銀行口座番号、パスワード、認証トークン
- 住所、医療記録、財務情報
元のウェブコンテンツはサマリー後即座に削除され、フィルタリング済みサマリーは7日以内に削除されます。
Browser Memories のコントロール
ブラウザメモリは、「設定 > パーソナライズ > ブラウザーのメモリを参照する」 でオン/オフできます。

記憶されたメモリの確認・削除は、「設定 > パーソナライズ > ブラウザーのメモリを参照する」 から行えます。

より高いプライバシーを求める場合、macOS 26 以降ではウェブコンテンツをデバイス上でローカルにサマリー化するオプション(On-Device Summaries)も利用可能です。
データ利用と学習
ユーザーの情報がどのように利用されるかは、ユーザー自身が完全にコントロールできます。OpenAI は複数の設定オプションを提供し、デフォルトではプライバシー保護側に設定されています。
Include Web Browsing(ウェブ閲覧の学習への利用)
この設定は、Atlasでの一般的なウェブ閲覧内容をモデル改善に利用することを許可するものです。
- デフォルトでOFF: この設定はデフォルトで無効になっており、明示的に有効にしない限り、閲覧内容が学習に使われることはありません。
- ウェブサイト側が GPTBot を拒否している場合は、設定をONにしても学習対象から除外されます。
Help Improve Browsing & Search
ブラウザ品質改善のための診断ログ共有です(デフォルトON)。Settings > Data controls > Help improve browsing & search で制御できます。これはモデル学習ではなく、ブラウザ機能改善のみに使用されます。
BusinessおよびEnterpriseプランのコンテンツは、これらの設定に関わらずモデル学習には使用されません。
Web Browsing History
ユーザーがいつでもブラウジング履歴を削除できるように、細粒度の削除オプションが提供されています。削除時に時間範囲と削除対象を自由に選択でき、ブラウザメモリとの連動削除も自動で実行されます。
Settings > Web Browsing > Delete から、ブラウジング履歴を削除できます。
- 時間範囲の選択:
Last 15 minutes / Last hour / Last 24 hours / Last 7 Days / Last 4 weeks / All time
- 削除対象の選択:
Chats、Web History、Cookies & other site data、Cached images and files から個別選択
Web History 削除時は、関連するブラウザメモリも自動削除されます。
まとめ:ブラウザはAIの時代へ
ChatGPT Atlasの登場は、ブラウザの役割を根本的に再定義するマイルストーンです。
従来のブラウザは「情報表示装置」でした。複数のタブやウィンドウを管理しながら、必要な情報を手動で探し、取捨選択する。その作業は実は非常に時間がかかり、認知負荷が高いものでした。
ChatGPT Atlasが実現するのは、「AIが理解するウェブ」です。あなたがどこにいて、何を見ていて、何をしたいのかをChatGPTが完全に理解し、その場で支援し、さらには代わりに行動してくれる。このような体験は、ウェブの使い方そのものを変えるのです。
ブラウザメモリにより、あなたが過去に見た情報とAIの推論能力が組み合わさることで、より賢明な判断や提案が可能になります。エージェントモードは、日常的なタスクを自動化し、あなたの時間を本当に重要な仕事に充てさせてくれます。
2025年は、AIが「アシスタント」から「協働者」へと進化する年になるでしょう。ChatGPT Atlasは、その進化の象徴的な存在なのです。
OpenAI自身が述べているように、この先の未来では「ほとんどのウェブ利用がエージェントシステム経由で行われる」ようになるかもしれません。その未来は、ChatGPT Atlasの登場によって、すでに始まっているのです。










