この記事のポイント
Azure Custom Visionは2028年9月25日に廃止予定。移行計画の策定が急務
画像分類と物体検出の2機能を、少量データ・ノーコードで構築可能
移行先はAzure ML AutoML(従来型ML)とContent Understanding(生成AI型)の2択が主軸
Free枠(2プロジェクト・5,000画像・月10,000予測)で無料で試用可能
既存プロジェクトのデータエクスポートと移行準備チェックリストを網羅

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
Azure Custom Visionは、機械学習の専門知識がなくても画像分類や物体検出のカスタムモデルを構築できる、Azureの画像認識サービスです。
少量の画像データから高精度なモデルをすばやくトレーニングでき、クラウドとエッジの両方にデプロイできます。
ただし、MicrosoftはCustom Visionの廃止を発表しており、2028年9月25日にサービスが終了します。
本記事では、Custom Visionの概要・機能・使い方・料金に加え、Azure ML AutoMLやContent Understandingなど移行先サービスの比較まで詳しく解説します。
Azureの基本知識や料金体系については、こちらの記事で詳しく解説しています。
Microsoft Azureとは?できることや各種サービスを徹底解説
Microsoft 365 Copilotの最新エージェント機能「Copilot Cowork」については、以下の記事をご覧ください。
Copilot Coworkとは?機能や料金、Claude Coworkとの違いを解説
目次
Azure Custom Visionとは

Azure Custom Vision
Azure Custom Visionは、Azure AI Servicesの一部として提供されている画像認識サービスです。機械学習の専門知識がなくても、独自の画像分類モデルや物体検出モデルを構築・デプロイ・改善できるように設計されています。
Azureポータルからリソースを作成し、Custom VisionのWebポータルまたはREST API・SDKを通じてモデルを管理します。少量の画像データ(タグあたり50枚程度が推奨)でトレーニングを開始でき、画像を追加するたびに精度が向上するフィードバックループが特徴です。
Custom Visionの仕組み
Custom Visionは、ユーザーが提供した画像にタグ(ラベル)を付けてアップロードし、そのデータをもとに学習モデルを構築する仕組みです。モデルは画像のパターンを学習し、新しい画像が入力された際にそれらのパターンを識別します。
このサービスの強みは、学習プロセスがユーザーの介入を最小限に抑えつつ、高い精度で自動化されている点にあります。Webポータル上のGUI操作だけでモデルを構築できるため、コーディングの経験がない業務担当者でもプロトタイプを作成できます。
Custom Visionの主な特徴
Custom Visionが持つ主な特徴を以下にまとめます。
- シナリオに応じたカスタマイズ
特定のユースケースに適したオブジェクトを識別するためのモデルカスタマイズが可能です。ドメイン(全般、食料、ランドマーク、小売、コンパクトなど)を選択することで、用途に最適化されたモデルを構築できます。
- 直感的なモデル作成
複雑なコードは不要で、WebポータルのGUIを通じて画像のアップロード、タグ付け、トレーニング、評価までを完結できます。
- 柔軟なデプロイメント
モデルをクラウド上のAPIとして公開するだけでなく、ONNX形式やDockerコンテナとしてエクスポートし、エッジデバイスで実行することも可能です。
- 組み込みのセキュリティ
すべてのデータとトレーニング済みモデルには、企業レベルのセキュリティとプライバシー保護が適用されます。
- 少量データでの学習開始
タグあたり最低5枚(推奨50枚以上)の画像があればトレーニングを開始でき、画像を追加するごとに精度が向上するフィードバックループが特徴です。
これらの特徴から、Custom Visionは「画像認識のプロトタイプをすばやく作りたい」「MLの専門チームがいない」といった状況に適したサービスといえます。ただし、2028年9月の廃止が決まっているため、新規で本番環境に組み込む場合は移行先サービスの検討が必要です。
Azure Custom Visionの基本機能
Azure Custom Visionは、画像分類と物体検出の2つの主要機能を提供しています。それぞれの機能がどのような場面で役立つのか、具体例を交えて解説します。
画像分類
画像分類機能は、入力された画像を特定のカテゴリに自動で振り分けます。

画像分類イメージ
分類方式は2種類あり、用途によって使い分けます。
- マルチクラス分類
1枚の画像に対して1つのラベルだけを付与します。例えば「犬」「猫」「鳥」のいずれかに分類するような場面で使います。
- マルチラベル分類
1枚の画像に複数のラベルを同時に付与します。例えば風景写真に「山」「湖」「雲」の3つのラベルを付けるような場面で使います。
たとえばオンライン小売業者が大量の衣料品画像を「Tシャツ」「ジャケット」「パンツ」といったカテゴリに自動で分類し、顧客がオンラインストアで商品を見つけやすくする用途や、自動車販売会社が車両の種類やモデルを迅速に識別して在庫管理を改善する用途に利用されています。
物体検出
物体検出機能は、画像内の特定のオブジェクトの「位置」と「種類」を同時に識別します。画像分類がラベルだけを返すのに対し、物体検出はバウンディングボックス(矩形領域)の座標情報も返す点が異なります。

物体検出イメージ
交通管理システムでは、道路の監視カメラ映像から車両、歩行者、自転車、交通標識などをリアルタイムに識別し、交通流の分析や異常の検出に使用されています。特定の交差点での車両密度を測定して信号のタイミングを最適化し、交通渋滞の軽減に貢献する事例もあります。
製造業では、製造ラインに設置されたカメラが製品の品質を検査し、不良品を即座に検出して排除するプロセスに利用されています。目視検査では見逃しがちな微細な不良も検出でき、品質保証の効率向上とリコールリスクの低減に寄与します。
制限事項
以下の表は、Custom Visionの主な制限事項を公式ドキュメントからまとめたものです。
| 項目 | Free (F0) | Standard (S0) |
|---|---|---|
| プロジェクト数 | 2 | 100 |
| トレーニング画像数(プロジェクトあたり) | 5,000 | 100,000 |
| 予測回数(月あたり) | 10,000 | 無制限 |
| タグ数(プロジェクトあたり) | 50 | 500 |
| イテレーション数 | 20 | 20 |
| 予測TPS(ストレージあり) | 2 | 10 |
| 予測TPS(ストレージなし) | 2 | 20 |
| 画像サイズ上限(トレーニング) | 6 MB | 6 MB |
| 画像サイズ上限(予測) | 4 MB | 4 MB |
| 最小画像サイズ | 256 x 256 px | 256 x 256 px |
| 対応形式 | jpg, png, bmp, gif | jpg, png, bmp, gif |
Free枠でもプロジェクト数やタグ数の制限こそあるものの、基本的な機能は一通り利用可能です。本番運用で予測回数や画像数が増える場合はStandard枠への移行が必要になります。
Azure Custom Visionの使い方
ここでは、Azure Custom Visionを使って画像分類モデルを構築する手順を、スクリーンショットとともに解説します。
前提条件
モデルのトレーニングを始める前に、以下を準備してください。
- 画像のセット
トレーニングには、タグごとに少なくとも30枚の画像が推奨されます。サンプル画像はGitHubの公式リポジトリから取得するか、独自の画像を用意します。
- サポートされるWebブラウザー
Custom Visionポータルを利用するには、Microsoft Edge(最新版)またはGoogle Chrome(最新版)が必要です。
リソースの作成
まず、AzureポータルでCustom Visionリソースを作成します。
Azureポータルの検索バーに「Custom Vision」と入力して検索します。

Custom Visionの検索
Custom Visionを選択し、リソースを作成します。

リソースの作成
TrainingリソースとPredictionリソースを選択してデプロイします。Trainingはモデルの学習に、Predictionは学習済みモデルによる推論に使用されます。

作成画面
デプロイが完了すると、リソース一覧に表示されます。

デプロイ完了画面

作成されたCustom Visionリソース
プロジェクトの作成
Custom VisionのWebポータル(customvision.ai)にアクセスし、Azureアカウントでサインインします。

Custom VisionのWebページ
「新しいプロジェクト」を選択し、プロジェクトの名前、説明、ドメイン(全般、食料、ランドマーク、小売、コンパクトなど)を設定します。

新しいプロジェクトの選択
分類の種類(マルチラベルまたはマルチクラス)を選択します。

プロジェクトの設定
プロジェクト作成が完了し、ワークスペースを利用できるようになります。

プロジェクト作成が完了
トレーニングと評価
画像のアップロード、タグ付け、トレーニング、評価の流れを順に説明します。
タグごとに多様性のある画像を選択し、少なくとも30枚を用意します。画像は.jpg、.png、.bmp、.gif形式で、サイズは6MB未満、最短辺が256ピクセル以上である必要があります。
「画像の追加」を選択し、アップロードする画像を選びます。

アップロードした画像例(りんご)
画像に適切なタグを付けてアップロードします。

画像のアップロード
「トレーニング」ボタンを選択して、分類器のトレーニングを開始します。以下の例では、りんごとオレンジの画像を使用しています。

トレーニングボタンを選択
トレーニングには数分かかります。完了するとモデルのパフォーマンスが表示されます。

トレーニング中画面
トレーニングが完了したら、精度(Precision)と再現率(Recall)を確認してモデルの有効性を評価します。

トレーニングが完了画面
必要に応じて確率しきい値を調整し、精度と再現率のバランスを取ります。
トレーニングを繰り返すことで、パフォーマンスメトリックを更新し、新しいイテレーション(バージョン)を作成できます。精度が十分に高くなったら、予測APIとして公開するか、モデルをエクスポートしてエッジデバイスにデプロイします。
Azure Custom Visionの活用事例
Azure Custom Visionは、さまざまな業界で画像認識を活用した業務改善に使われています。代表的な活用シナリオを紹介します。
- 自動ビジュアルアラート
ビデオストリーム監視において、煙や異常な水泡、野生動物の侵入など、特定の現象がビデオに捉えられた際に自動で警報を出すシステムです。カスタムモデルが特定の異常パターンを学習しているため、汎用的な監視カメラでは検出が難しい事象にも対応できます。
- 製造業での品質検査
製品の品質検査をAIで拡張し、人の目では見逃しがちな微細な不良も検出します。製造ラインのカメラ映像をリアルタイムで解析することで、不良品の早期排除と品質の一貫性を実現します。
- 小売業での在庫管理
商品の識別と在庫確認を効率化し、商品の数を自動でカウントしたり、棚に必要な商品が揃っているかを確認できます。人手による棚卸し作業の負担を大幅に削減します。
- 画像のメタデータ付与
画像にタグやメタデータを自動で付与し、検索や分類を容易にします。製品カタログの管理が効率化され、特定の画像をすばやく見つけられるようになります。

Custom Visionの活用事例イメージ
これらの事例に共通するのは、「特定のドメインに特化した画像パターンの認識」という点です。汎用的な画像認識ではなく、自社のビジネスに特有の画像データでカスタムモデルを構築することに価値があります。
ただし、Custom Visionは2028年9月に廃止されるため、今後新規に本番システムへ組み込む場合は、次のセクションで紹介する移行先サービスの利用を検討してください。
Azure Custom Visionの移行先サービス
MicrosoftはCustom Visionの廃止にあたり、用途に応じた移行先を公式の移行ガイドで案内しています。主な選択肢は以下の3つです。
| 移行先 | アプローチ | 画像分類 | 物体検出 | コード不要 | 対応状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| Azure Machine Learning AutoML | 従来型機械学習 | 対応 | 対応 | スタジオUIあり | GA |
| Azure Content Understanding | 生成AI(Foundryモデル) | 対応 | 非対応 | ポータルあり | GA(2025年11月) |
| Microsoft Foundryモデルカタログ | 生成AIモデル直接利用 | 柔軟 | 柔軟 | コード必要 | GA |
Custom Visionで画像分類と物体検出の両方を使っている場合は、Azure ML AutoMLが最も近い移行先です。画像分類だけを使っている場合は、Content Understandingも選択肢に入ります。
Azure Machine Learning AutoML
Azure Machine LearningのAutoML機能は、Custom Visionと同様に画像分類(マルチクラス/マルチラベル)と物体検出、さらにインスタンスセグメンテーションにも対応しています。
Custom Visionとの違いは、AutoMLがより幅広いアルゴリズムを自動で試行し、最適なモデルを選択してくれる点です。SDK(Python)を使ったコードファースト体験と、Azure Machine Learning Studioを使ったノーコード体験の両方が用意されています。
Custom Visionでエクスポートしたラベル付きデータセットを、Azure Machine Learningのデータアセットとして読み込んでトレーニングを開始できるため、移行の手間を抑えられます。
Azure Content Understanding
Azure Content Understandingは、2025年11月にGA(一般提供)となった新しいFoundry Toolsサービスです。生成AIモデルを活用し、画像・ドキュメント・音声・動画などの非構造化データから構造化された情報を抽出します。
Custom Visionの画像分類の代替として、カスタム分類ワークフローを作成できます。プロンプトエンジニアリングとスキーマ定義によってカスタマイズするため、大量のトレーニング画像を用意する必要がなく、少ないサンプルで高い精度を実現できる可能性があります。
ただし、物体検出(バウンディングボックスの出力)には対応していないため、物体検出が必要な場合はAzure ML AutoMLを選択してください。
移行の優先度
公式の移行ガイドでは、2026年9月25日までに移行計画を策定することが推奨されています。新規プロジェクトでCustom Visionを採用するのは避け、既存プロジェクトについてはデータのエクスポートと移行先の選定を早めに進めることが重要です。
Azure Custom Visionの注意点
Custom Visionを利用する際に知っておくべき注意点と、廃止に向けた移行準備について解説します。
サービス廃止スケジュール
Custom Visionの廃止に関する主なマイルストーンは以下のとおりです。
- 2028年9月25日
サービスが完全に終了し、APIへのリクエストが失敗するようになります。
- 2026年9月25日(推奨期限)
Microsoftが移行計画の策定を推奨している期限です。この時点までに移行先の選定とテストを完了しておくことが理想です。
- 現在〜2028年9月25日
フルサポートが継続されます。既存のプロジェクトは引き続き利用でき、新しいプロジェクトも作成可能です。
移行期間は十分に確保されていますが、本番環境で稼働しているモデルがある場合は、移行先でのモデル再トレーニングと精度検証に時間がかかることを考慮して、早めに計画を立てることが重要です。
移行準備チェックリスト
既存のCustom Visionプロジェクトを移行する際は、以下の手順で進めることが推奨されています。
- 現在のCustom Vision利用状況と依存関係を棚卸しする
- 画像分類・物体検出それぞれの業務要件を整理する
- 移行先サービス(AutoML / Content Understanding / Foundryモデル)を評価・選定する
- ラベル付きデータセットとモデルメタデータをCustom Visionからエクスポートする
- 移行先のデータ形式に変換し、ステージング環境でテストする
- 本番ワークフローを更新し、関係者にトレーニングを実施する
特にステップ4のデータエクスポートは早めに実施しておくことを推奨します。Custom Vision APIを使ってプロジェクト内の画像とタグ情報を一括エクスポートできます。
画像データに関する制限
Custom Visionのトレーニングデータには、画像のアスペクト比が25:1を超えないという制限があります。また、256ピクセル未満の画像は自動的にアップスケールされますが、精度低下の原因になるため、元の画像サイズを256ピクセル以上に保つことが推奨されます。
Custom Visionに蓄積した画像データやラベル情報は、廃止後にアクセスできなくなります。現時点でバックアップを取っておくことが、将来の移行をスムーズにするための最も重要な準備です。
Azure Custom Visionの料金
Azure Custom Visionの料金体系は、Free (F0) とStandard (S0) の2つのティアで構成されています。
以下は、各ティアの主な機能と料金の比較です。2026年3月時点の公式料金ページでは一部の金額が表示されていないため、Azure公式料金ページで最新の価格を確認してください。
| 項目 | Free (F0) | Standard (S0) |
|---|---|---|
| TPS | 2 | 10 |
| プロジェクト数 | 最大2 | 最大100 |
| トレーニング画像 | プロジェクトあたり5,000枚 | プロジェクトあたり100,000枚 |
| 予測回数 | 月10,000回 | 無制限 |
| トレーニング時間 | 月1時間 | 従量課金(コンピューティング時間あたり) |
| 画像ストレージ | 無料(5,000枚以内) | 1,000枚あたり従量課金 |
| 予測トランザクション | 無料(10,000回以内) | 1,000トランザクションあたり従量課金 |
Free枠は評価やプロトタイプに十分な容量があります。2プロジェクト・5,000画像・月10,000予測という制限内であれば、費用をかけずにCustom Visionの機能を試すことができます。
Standard枠に移行すると、プロジェクト数が100まで、トレーニング画像が100,000枚まで拡張され、予測回数の上限もなくなります。料金はトレーニングのコンピューティング時間、画像ストレージ、予測トランザクションの3要素で従量課金されます。
Azureの料金を事前に見積もりたい場合は、Azureの料金計算ツールの利用をおすすめします。また、Azureの無料アカウントを作成すれば、Custom VisionのFree枠を含む多くのAzureサービスを無料で試用できます。
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まとめ
Azure Custom Visionは、機械学習の専門知識がなくても画像分類と物体検出のカスタムモデルを構築できるサービスです。直感的なWebポータル、少量データでの学習開始、クラウドとエッジの両方へのデプロイなど、プロトタイプから本番運用まで幅広い用途に対応しています。
ただし、Microsoftは2028年9月25日にCustom Visionを廃止することを発表しています。新規プロジェクトではAzure Machine Learning AutoML(画像分類・物体検出の両方に対応)やAzure Content Understanding(画像分類に対応、生成AI型)の利用を検討してください。既存プロジェクトについては、2026年9月25日までに移行計画を策定し、ラベル付きデータセットのエクスポートを済ませておくことが推奨されます。
まずは現在のCustom Vision利用状況を棚卸しし、移行先サービスの公式移行ガイドを確認するところから始めてみてください。











