この記事のポイント
ChatGPT上で「@freee確定申告」とメンションして起動、税理士の実回答に基づくQ&Aを提示
AI生成ではなく過去事例を検索する仕組みを採用、回答した税理士の氏名・所属も表示され出所が明確
経費の計上可否や家事按分、副業の申告義務など、個人事業主・副業ワーカーに多い疑問の解消に有効
複雑な個別事情や税務リスク判断は対象外、最終判断は専門家への相談を前提とした設計
自動仕訳機能とは異なり、「そもそもどう処理すべきか」の判断をサポートする相談窓口としての位置づけ

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
2026年2月、freeeはChatGPT上で動作する確定申告相談専用アプリ「freee確定申告」の提供を開始しました。
AIによる独自の回答生成ではなく、税理士が実際に回答した1万件以上のQ&Aデータベースから類似事例を検索・提示することで、経費判断や申告義務といった悩みに対して、根拠のある情報を迅速に引き出せる点が特徴です。
本記事では、アプリの仕組みや具体的な相談シナリオ、freee会計本体との機能分担に加え、税務相談におけるAI利用の限界と専門家への切り替えタイミングについて、2026年2月時点の情報を基に解説します。
freee確定申告 ChatGPTアプリとは?
freee確定申告は、ChatGPT上で動作する「確定申告の相談専用アプリ」です。
ユーザーが「@freee確定申告」とメンションして質問すると、AIがゼロから生成した答えではなく、税理士が実際に回答した1万件以上のQ&Aデータから、内容の近い相談例を検索・抽出して提示します。
freeeの「ひとりじゃない、確定申告」というコンセプトの一環として提供されており、「これって経費になる?」「何から手をつければいい?」といった、個人事業主や副業ワーカーが悩みやすいポイントをChatGPT上で相談できるのが特徴です。
freee確定申告アプリの仕組み
ここでは、アプリ内部で何が行われているのかを、ユーザー目線のフローと技術的な視点から整理します。
税理士Q&Aデータベースを起点にした設計
freee確定申告アプリは、freeeが提供する「税理士相談Q&A」サービス上に蓄積された1万件以上の相談・回答データをベースにしています。

税理士相談Q&Aのイメージ (参考:税理士相談Q&A by freee税理士検索)
このデータベースには、例えば次のようなテーマが含まれています。
- カフェ代や電車賃など、経費になるか迷いやすい支出の扱い。
- 自宅兼事務所の家賃・光熱費など、按分が必要な費用の考え方。
- 副業を始めた会社員が、どこから確定申告が必要になるか。
- 領収書やレシート、電子帳簿保存法など、証憑の管理ルール。
アプリはこのデータベースを検索し、質問内容に近いQ&Aを抽出します。
ChatGPTの画面には、**Q&A本文に加えて、回答した税理士の氏名やプロフィール(所属情報など)**も表示されるため、「誰の意見か分からない」状態になりにくい設計です。
回答生成ではなく「回答検索」に特化
一般的なChatGPTの利用では、モデルが回答文を生成します。加えて、利用環境や設定によってはWeb検索やアプリ/コネクタを通じて外部情報を参照し、その内容を踏まえて回答を組み立てることもあります。
これに対して、freee確定申告アプリは、税理士Q&Aを検索して参照し、近い事例(回答)を提示することに重点を置いた設計です。
- ユーザーが「@freee確定申告 + 質問」を送信する。
- アプリが質問文を解析し、税理士Q&Aデータベースから類似の相談事例を検索する。
- 関連度の高いQ&Aをいくつか選び、ChatGPTの画面にテキストとして表示する。
このため、AIが独自に判断した「オリジナル回答」ではなく、実際の税理士の回答をベースにした内容が返ってくる点が大きな違いです。
ただし、ユーザーから見えるのはあくまで「結果のテキスト」であり、内部実装の詳細(埋め込みの種類など)は一般には公開されていないため、あくまで「人間の回答をAIで引き出すレイヤー」として理解しておくのが現実的です。
freee確定申告アプリでできること・できないこと
freee確定申告アプリは非常に便利ですが、「何でもできる魔法の税理士」ではないという前提を押さえておく必要があります。
アプリで解決しやすい相談内容
freee確定申告アプリが得意なのは、過去のQ&Aとしてパターン化されているような相談です。
代表的なものを挙げると、次のようなイメージになります。
-
経費になるかどうかの判断の目安
- 例:カフェで作業したコーヒー代/同席した人との食事代。
- 例:自宅の家賃・光熱費・通信費の按分方法。
-
確定申告が必要かどうかの整理
- 例:会社員+副業ライターの所得水準と申告義務の有無。
- 例:アルバイト・副業の組み合わせでどこまで申告が必要か。
-
帳簿・書類の扱いに関する一般的なルール
- 例:レシートの保管方法と保存期間。
- 例:電子データ化した場合に原本を破棄できるか。
このような「よくあるパターン」はデータベース内にも多数蓄積されているため、自分のケースと近い事例を参照しやすいのが強みです。
アプリでは完結しない領域と限界
一方で、freee確定申告アプリだけではカバーしにくい領域もあります。
たとえば、次のようなケースでは、最終的に税務署への確認や税理士への正式な依頼が必要になります。
-
個別事情が複雑なケース
- 事業と投資・不動産収入などが絡み合っている場合。
- 海外所得・暗号資産などを含む高度な申告内容。
-
税務調査リスクや過去分の修正申告を伴う判断
- 既に何年分か申告済みで、遡って修正したい場合。
- 特例や優遇措置の適用可否が高額の税額に関わる場合。
-
税法改正やグレーゾーンに関する最終判断
アプリはあくまで参考情報として活用しつつ、最終的な判断は国税庁の情報確認や税理士への相談も含めて行うのが安全です。
ChatGPT上でのfreee確定申告アプリの使い方
freee確定申告は、無料プランを含む全プランで利用でき、初回だけアプリの「接続」が必要です。
- ChatGPTのアプリディレクトリで「freee確定申告」を検索、または次のURLにアクセスし、右上の「接続する」を選択します。
freee確定申告(ChatGPTアプリページ)
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- すると、次のような確認画面が表示されます。内容を確認したうえで、メモリとチャットを参照するかどうかをトグルで選択し、接続を完了します。

-
接続が完了したら、チャットで「@freee確定申告」と入力し、続けて質問を書きます。
- 例:
@freee確定申告 カフェで1人で編集作業したコーヒー代は経費にできますか?

- 例:
-
送信すると、質問に対する回答に加えて、関連するQ&A事例がカード形式で提示されます。

freee会計本体のAI機能との違いと組み合わせ方
freeeは、ChatGPTアプリとは別に、自社サービスの中でもAI機能を展開しています。ここでは、その棲み分けを整理します。
freee確定申告アプリとfreee会計の違い
freee会計本体には、以下のようなAI関連機能が用意されています。
- 仕訳候補の自動提案。
- レシートを撮影して明細化するAI-OCR。
- 「入力おまかせプラン」によるオペレーター代行入力。
これらは「作業を自動化・省力化する」機能であり、既に決まっているルールに沿って、記帳や入力を楽にする役割が中心です。
一方、freee確定申告ChatGPTアプリは、「そもそもこの処理はどうするべきか?」を相談するための入り口といえます。
-
ChatGPTアプリ:
- 「これは経費?」
- 「どの控除が使えそう?」
- 「どんな書類を用意すべき?」
-
freee会計本体:
- 決まった方針に沿って仕訳登録する。
- 申告書を作成し、電子申告まで進める。
という役割分担を意識するとイメージしやすくなります。
他サービスとの連携や今後の拡張可能性
freeeのプレスリリースでは、freee確定申告アプリを通じて確定申告の疑問を解消した後、freee会計のAI機能や入力おまかせプランへの導線を用意していると説明しています。
今後の拡張としては、次のような方向性が想定されます(現時点ではあくまで推測です)。
- freeeアカウントとの連携が進み、自分の仕訳や残高の状況に応じたアドバイスが提示される。
- ChatGPT上の相談内容が、freee会計のタスクやメモに反映される。
ただし、これらはまだ公式には発表されていないため、「現時点ではQ&A参照アプリ」「将来的にはワークフロー連携もあり得る」くらいのスタンスで捉えておくのが無難です。
セキュリティ・プライバシーの注意点
税務は個人情報・機微情報を含みやすいため、ChatGPT上のアプリで扱うときは「どこに共有され得るか」を分けて考えます。Appsは会話の文脈を参照して動くことがあるため、入力内容の粒度が重要になります。
無料プラン・個人有料プラン(Go/Plus/Pro)の場合
個人プランでは、会話データがモデルの学習に使われる設定がデフォルトになっています(設定から無効化は可能)。Appsを使う場合はさらにアプリ提供者への共有リスクも加わるため、入力する情報の粒度には注意が必要です。
具体的には次の方針で運用します。
- 実名、住所、電話番号、取引先名、口座情報、マイナンバーなど、個人・法人を特定し得る情報は入れない。
- 「売上がいくら」「利益がいくら」のような金額も、必要がなければレンジ表現に置き換える。
- 相談は「状況を一般化した文章」に置き換え、必要な条件だけを短く書く。
「何を確認したいか」さえ伝われば回答は得られるため、個人を特定できる情報を削っても実用上の支障はほとんどありません。
法人プラン(Business/Enterprise/Edu)の場合
ChatGPT Business / Enterprise / Edu では、デフォルトで組織の入力・出力などのデータが OpenAI のモデル学習や改善に使われない前提で設計されています。
一方で、Apps(連携アプリ)を使う場合は「学習」ではなく第三者共有が別軸の論点になります。ワークスペースで有効化されたAppsを接続すると、会話の文脈(設定によってはMemoryの情報も)を参照して処理に必要なデータがアプリ提供者へ渡り得ます。
法人プランだからといって、サードパーティアプリへの情報共有まで自動的に遮断されるわけではありません。
したがって、法人利用では次の運用が現実的です。
- 管理者が、ワークスペース設定でAppsを必要最小限に絞る(BusinessはAppsがデフォルト有効、Enterprise/Eduはデフォルト無効なので差が出やすい)。
- Appsを使う会話では、機微情報は扱わない(特に個人情報と取引先情報)。
- 本番の判断(高額・複雑・複数年)は、国税庁や税理士に切り替える。
法人プランのデータ保護は OpenAI 側の取り扱いに関するものです。Apps を経由して第三者へ共有されるデータは別問題として、各アプリの利用規約・プライバシーポリシーの範囲で評価する必要があります。
参考:
まとめ
freee確定申告は、ChatGPTの中から税理士の実回答1万件超を検索・参照できるアプリとして、2026年2月に提供が開始されました。
- 「AIが勝手に考えた答え」ではなく、専門家の実例ベースのアドバイスを引き出す設計。
- ChatGPT上で「@freee確定申告」と入力するだけで、確定申告まわりの典型的な疑問に素早くアクセスできる。
- freee会計や入力おまかせプランと組み合わせることで、「相談→入力→申告」という一連の流れをサポートできる。
一方で、税務の最終的な責任はあくまでユーザー側にあり、複雑な案件や金額の大きな判断については、税務署や税理士への正式な相談が不可欠です。
確定申告を「完全に丸投げする」ツールというよりも、
- 一人で悩む時間を減らし、
- 信頼できるQ&Aを素早く参照し、
- 必要なときには人の専門家にバトンを渡す、
そのための身近な相談パートナーとして位置づけると、このアプリの価値がよりクリアに見えてきます。
2026年シーズンの確定申告で、不安やモヤモヤを感じている方は、ChatGPT上でまず一度「@freee確定申告」と打ち込んでみると、自分にとっての使いどころがイメージしやすくなるはずです。







