AI総合研究所

【2026年最新】SAP Concurとは?機能・料金・導入事例を徹底解説

この記事のポイント

  • グローバル展開・SAPエコシステム利用・海外拠点ありの中堅〜大企業ならConcurが第一候補。国内拠点のみ50名以下なら楽楽精算やマネーフォワード クラウド経費の方がコスト効率は高い
  • 2026年Fusion発表のJoule×Microsoft 365 Copilot統合は利用可能、Expense Automation AgentはEarly Adopter Careで2026年中GA予定。経費精算のAI自動化は計画フェーズから実装フェーズへ
  • Concur Expense Standardは初期費用無料・月額5万円台〜(50ユーザー単位)が目安。2026年1月以降はPMCパートナー再販モデルへ移行
  • 段階導入の定石はフェーズ1(Expense・3〜6カ月)→フェーズ2(Travel・6〜12カ月)→フェーズ3(Invoice・12カ月以降)。フェーズ1の立ち上げ品質がプロジェクト全体の成否を決める
  • 効果パターンは業務効率化型(学研:8割省略化)・標準化型(味の素:1件20分→5分)・グループ統一型(村田:国内30社展開)の3類型。自社課題に近い型で投資対効果をイメージする
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

XでフォローフォローするMicrosoftMVP

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

SAP Concur(コンカー)は、経費精算・出張管理・請求書処理という3つの間接業務をクラウドで統合管理するプラットフォームで、国内経費精算市場では2014年度以来12年連続でシェアNo.1(ITR 2026レポート)を維持しています。
2025年度のベンダー別売上金額シェアは42.8%、SaaS型経費精算市場では45.1%を占めており、グローバル展開企業やSAPエコシステム利用企業の標準選択肢として定着しています。
2026年3月のFusion 2026ではJoule AI Agent統合とMicrosoft 365 Copilot連携が発表され、経費精算は「入力フォームを電子化する」から「AIエージェントに任せる」フェーズへ移行しつつあります。

本記事では、SAP Concurの3コアソリューションと業務フロー自動化の範囲、2026年最新のAI機能、楽楽精算・マネーフォワード クラウド経費との判断軸、Standard/Professionalの料金とPMC再販モデル、国内導入事例の効果パターン、段階導入のフェーズ設計までを実装視点で整理します。

SAP Concurとは

Sap Concurとは
出典:SAP Concur

SAP Concur(コンカー)は、経費精算・出張管理・請求書処理という3つの間接業務をクラウドで統合管理するプラットフォームです。1993年創業の米国Concur Technologies社が開発したサービスで、2014年にSAPグループが買収して以降、SAPエコシステムを構成する主要SaaSの一つとして位置づけられています。日本国内では株式会社コンカーが運営しています。

中核を成すのは「Concur Expense(経費精算)」「Concur Travel(出張管理)」「Concur Invoice(請求書管理)」の3ソリューションです。これらは単独でも導入できますが、組み合わせることで「出張稟議→現地支出→領収書→請求書→仕訳」までを一気通貫で扱えるのが他システムにない特徴です。

Concurが解決する3つの業務領域

Concurが解決する3つの業務領域

紙の領収書を毎月一枚ずつExcelに転記する、出張前の稟議をメールでやり取りする、請求書をPDFで受け取って手作業で会計ソフトに打ち直す——こうした作業に経理担当者が丸1日以上費やすケースは珍しくありません。電子帳簿保存法・インボイス制度の運用が本格化した2024年以降、こうした間接業務の負荷はさらに増しています。SAP Concurはこの3領域を1つの基盤に集約し、それぞれを次の方向で自動化します。

  • 経費精算(Concur Expense)
    法人カード・キャッシュレス決済・交通系ICカードの利用データを自動取り込み、領収書はモバイルアプリのOCRで電子化し、規定違反は自動アラートで承認者の目視チェックを減らす。手入力工数と二重申請の検知を中心に効く。

  • 出張管理(Concur Travel)
    出張前の稟議申請から航空券・ホテル・新幹線の予約、現地での精算までをワンストップで完結させる。会社の出張規定に準拠した選択肢のみから予約できるため、コストガバナンスとトラベラー・トラッキング(出張中の社員所在把握)を同時に実現する。

  • 請求書処理(Concur Invoice)
    取引先から届く紙・PDF請求書をAI-OCRで電子化し、購買発注(PO)データや過去取引と突合してから承認フローに乗せる。請求書紛失リスクの抑制と月次決算の早期化に効く。


3領域に共通するのは、クラウド側のアップデートで法改正に追随する設計です。電子帳簿保存法のスキャナ保存ソフト法的要件認証を取得しており、社内で運用ルールを毎回再構築する負担が小さくなります。インボイス制度については製品ごとに対応状況が異なり、Concur Expenseでは登録番号チェックが実装済みですが、Concur Invoiceは開発対応中の機能もあるため、利用製品ごとに事前確認が必要です。

国内12年連続シェアNo.1の数字の中身

国内12年連続シェアNo.1の数字の中身

国内の経費精算SaaS市場における存在感は、ITRが発行する「ITR Market View:予算・経費・サブスクリプション管理市場2026」レポートが定量的に示しています。同レポートでは、Concur Travel & Expenseが2014年度から12年連続でベンダー別売上金額シェアNo.1を獲得し、2025年度のベンダーシェアは42.8%、SaaS型経費精算市場では45.1%を占めるとされています。グローバル全体では、SAP Concur公式によるとユーザー数は9,200万人超に達しています。

「12年連続」という数字の中身を実務的に翻訳すると、競合がここまで継続して同じ製品で40%超のシェアを維持できる市場は珍しく、特にSAPエコシステムを既に持つ企業群が継続契約していることが寄与しています。逆に言えば、新規参入の中小特化型SaaS(楽楽精算・マネーフォワード クラウド経費)が伸びている領域とConcurの主戦場は明確に分かれており、自社がどの陣営に属するかが選定の起点になります。具体的な選定軸は後述の「Concurか他経費精算SaaSか」のセクションで整理します。


AI Agent Hub1

Concurの3コアソリューションと業務フロー自動化

コアソリューションの関係
出典:SAP Concur公式

3製品は独立して契約できますが、互いに連携する設計です。Travelで予約した出張データがExpenseに自動連携されたり、Invoiceで処理した請求書がSAP FIに自動仕訳されたりと、製品間でデータが流れることで効果が増幅します。本セクションでは各製品の機能詳細を1箇所に集約します。料金・他社比較・導入事例は後続のセクションで扱うため、ここでは触れません。

Concur Expense(経費精算)

concur expense
出典:SAP Concur|Concur Expense

Concur Expenseは、立替経費の申請から承認・精算・会計連携までを自動化する中核製品です。中小企業向けの「Standard」と中堅〜大企業向けの「Professional」の2エディションがあり、規模・要件で選び分けます。

  • 法人カード・キャッシュレス決済連携
    法人カードやキャッシュレス決済の利用データを自動取り込みし、経費明細を自動生成する。手入力を介さないため二重申請も検知しやすい。

  • モバイル領収書OCR(ExpenseIt)
    専用アプリで領収書を撮影すると、日付・金額・カテゴリを自動抽出し電子データとして保存・申請できる。紙の保管が不要になり、電帳法スキャナ保存要件も標準で満たす。

  • 交通系ICカード自動連携(ICCI)
    SuicaやPASMOなどの交通系ICカード利用履歴を最短翌日に自動取り込み。営業担当の交通費精算で発生していた打鍵作業がほぼ消える。

  • 規定違反の自動チェック
    会社の経費規定を事前設定し、違反申請に自動アラートを表示する。承認者の目視チェック工数を減らしつつ、不正やルール逸脱を未然に防ぐ。


個別機能の実装は国内勢でも近い水準のものがありますが、Concur Expenseは法人カードプロバイダ・OTA・SAP基幹システムとの接続実績が多く、グローバル前提で多通貨・多言語・税法対応が標準装備されている点が差別化要素です。

Concur Travel(出張管理)

concur travel
出典:SAP Concur|Concur Travel

Concur Travelは、出張前の稟議申請から航空券・ホテル・新幹線の予約、現地での精算までをワンストップで完結させるソリューションです。出張者は会社の出張規定(クラス・上限・出張先制限)に準拠した選択肢からプランを予約でき、管理側は出張コストの可視化とトラベラー・トラッキングによる安全管理を同時に実現できます。

実務的に最も効くのは、予約時に確定したデータがConcur Expenseに自動連携されて出張帰社後の精算入力がほぼゼロになる点です。出張前の稟議→予約→現地利用→帰社後精算という4ステップが、稟議と承認の2回だけで完結する形に圧縮されます。グローバル企業では航空会社・OTA・出張代理店との既存契約を維持しつつ、Concur Travelをハブとして利用するパターンが多く見られます。2026年3月のFusion 2026では、American Express Global Business Travelとの強化連携や、インドのCleartrip経由でのインド国内航空券拡充も発表されました。

Concur Invoice(請求書管理)

concur invoiceのサービス画像
出典:SAP Concur|Concur Invoice

Concur Invoiceは、取引先から届く請求書を電子データとして取り込み、承認ワークフロー・支払処理・会計連携までをデジタル化するソリューションです。紙やPDFで届く請求書をAI-OCRが読み取り、購買発注(PO)データや過去取引と突合してから承認フローに乗せる構造で、月次決算の早期化と請求書紛失リスクの抑制を同時に狙えます。

インボイス制度対応については登録番号チェック等の機能が製品・契約形態ごとに実装状況が異なります。Concur Expenseでは登録番号チェックが実装済みである一方、Concur Invoiceでは開発対応中の機能もあるため、自社の利用製品ごとに対応状況を事前に確認する必要があります。


2026年のConcur:Joule Agent統合で経費精算はAIに任せる方向へ

2026年のConcur Joule Agent統合の3段階

SAP Concurは、SAP Business AIの一環としてAI機能の実装を急速に進めています。2026年初頭から段階的に提供が始まった機能群に加え、2026年3月のSAP Concur Fusion 2026ではSAP Jouleを中核とした新Agent群と外部連携が発表されました。重要なのは、Concurが「申請UIをモバイル化する」フェーズから「経費業務そのものをAIエージェントに任せる」フェーズへ移行しつつあるという点です。AI機能は提供状況で「利用可能」「Early Adopter Care(先行提供)」「提供予定」の3段階に分かれており、日本での提供時期が未定の機能も含まれます。

既に利用可能なAI機能

既に利用可能なAI機能

  • Joule × Microsoft 365 Copilot統合
    Joule(SAPのビジネスAIコパイロット)とMicrosoft 365 Copilotの統合により、Teams・Outlook・Excel内から経費報告書の作成・提出、領収書のアップロード、出張予約、社内ポリシー照会までを完結できる。日常的なMicrosoft環境から離れずに経費業務を済ませられるため、現場ユーザーの起動コストが下がる。

  • 領収書分析エージェント(ExpenseIt拡張)
    ExpenseItに地図情報・ベンダーDB・旅行日程の文脈情報を組み合わせ、欠落フィールドの自動入力と経費タイプの推測、異常検出を行う。手入力時の「カテゴリ選び間違え」が減り、規定違反の事前検出にもつながる。

  • AI生成領収書チェッカー
    AI不正検知サービスVerifyの拡張機能。生成AIで作成された偽造領収書をメタデータとパターン分析で検出し、監査担当者に自動でフラグを立てる。ChatGPT等で領収書画像を生成できる現実への対応策として実装された。

  • 事前支出プランナー(Pre-Spend Planner)
    出張計画の詳細と企業ポリシーから、航空券・ホテル・日当の予想コストを自動推定する。渡航勧告(外務省情報など)と組み合わせて、出張前のコスト判断と安全確認を支援する。SAP Helpによると初期はExpense単独利用の顧客向けに提供されており、Travel/Request併用顧客は対応状況に制限があるため、自社契約での提供条件を確認する必要がある。


これら4機能の中で、現場ユーザーが起動コストを最も下げられるのはJoule × Microsoft 365 Copilot統合です。Teams/Outlookを業務基盤としている日本企業は多く、「経費精算アプリを開く」というアクションそのものを消せるインパクトは大きいといえます。

SAP Early Adopter Careで先行提供中

SAP Early Adopter Careで先行提供中

  • Expense Automation Agent
    経費報告書を自動作成・入力するJoule Agent。従業員はレビューと承認のみで済むため、申請者側の手入力工数が大幅に削減される。2026年中のGA(一般提供)が予定されている。

  • Expense Pre-Submit Audit Agent
    提出前に領収書の内容を検証し、矛盾や規定違反を自動検出するJoule Agent。提出後の差し戻し・監査工数を減らし、承認サイクルを短縮できる。こちらも2026年中GA予定。


Early Adopter Careは、SAPと協業で先行検証する企業向けの早期提供プログラムです。本格運用を待たずに自社の経費業務での効果を検証できる枠組みで、Joule Agent活用に踏み出したい企業はGA前にここから入る選択肢があります。

拡張連携(提供開始・提供予定)

拡張連携

  • SAP Sales Cloud × Joule(Booking Agent連携が発表、一般提供は2026年Q2予定)
    Fusion 2026の発表で、JouleがSAP Sales Cloud内のBooking Agentと連携する形で利用できるようになることが示された。営業担当が顧客訪問の予定をSAP Sales Cloudに登録すると、Jouleがその文脈を読み取り、移動・宿泊の候補を提案して予約まで完結させるフローが想定されている。SAP Concur USの発表では、一般提供は2026年Q2が予定されている。

  • Visaカード連携(2026年Q3にEarly Adopter Care提供予定)
    Visaカード利用時のリアルタイム取引データをConcur Expense上に経費として自動作成する連携。提供開始は2026年Q3にEarly Adopter Careとして予定されている。


Sales CloudのBooking Agent連携が一般提供されれば、「営業がCRMに顧客訪問予定を入力した瞬間に移動経費の見積もり・予約までAIに任せる」業務フローが視野に入ります。Visaの取引データ自動経費化と組み合わさると、申請者の入力作業がさらに削減される設計です。導入企業のロードマップでは、2026年Q2/Q3の提供時期を確認する価値があります。


Concurか他経費精算SaaSか:規模・拠点・既存ERPで決まる判断軸

Concurか他経費精算SaaSか:規模・拠点・既存ERPで決まる判断軸

経費精算SaaSの選定では、SAP Concurのほかに楽楽精算(ラクス)とマネーフォワード クラウド経費が候補に挙がるのが定石です。「うちの会社にConcurが合うのか」は最も詰まる論点ですが、判断ロジックは3変数(規模・拠点・既存ERP)でほぼ決まります。

楽楽精算・マネーフォワード クラウド経費との比較

楽楽精算・マネーフォワード クラウド経費との比較

3製品の特性を整理しました。

観点 SAP Concur 楽楽精算 マネーフォワード クラウド経費
主な対象 中堅〜大企業、グローバル展開企業 中堅企業(国内中心) 中小企業・スタートアップ
国内導入実績 大手中心、海外拠点を持つ日系企業に強い 国内累計導入社数20,000社超(2025年9月時点) MFクラウド経済圏を背景に成長
多通貨・多言語 150カ国超・29言語・ISO登録通貨対応 日本語中心(一部多言語対応) 日本語中心
ERP・会計連携 S/4HANA・BTPとネイティブ連携 主要会計ソフトとCSV/API連携 MFクラウド会計と自動連携
OCR 標準実装(ExpenseIt) オプション機能 標準実装
料金感 月額5万円台〜(50ユーザー単位)、Professionalは個別見積 初期10万円+月額3万円〜が目安 基本料金2,480円/月〜+プラン超過分500円/名の段階課金
AI機能 Joule Agent統合、Verify不正検知、Microsoft 365 Copilot連携 OCR・自動仕訳の段階的拡張 MFクラウド連携の自動仕訳


この比較から見えるのは、3製品は同じ「経費精算SaaS」というカテゴリでも、想定する企業規模とグローバル要件の有無で明確に役割が分かれているという点です。価格帯は対象規模と機能網羅性に比例しており、安いものが悪いわけではなく、合う規模の製品を選ばないとオーバースペック/アンダースペックになります。

4ケースで決まる選定軸

4ケースで決まる選定軸

AI総合研究所がSAP導入支援の現場で見ている範囲では、以下の4ケースが選定の決め手になります。

  • 海外拠点が1拠点でもある場合
    為替換算・多通貨・現地税法対応の自前運用は驚くほどコストがかかる。Concurの150カ国対応は標準機能のため、海外拠点を持つ時点でConcurが第一候補になる。

  • 従業員50〜300名・国内のみ・既存会計ソフト中心
    楽楽精算かマネーフォワード クラウド経費が現実的。Concurの強み(グローバル・SAP連携)が効かず、ライセンス料の差がそのまま運用コストに乗ってしまう。

  • SAP S/4HANA Cloud・SuccessFactorsを既に利用
    追加コネクタ開発が不要なConcurが圧倒的に有利。SAP BTP経由の連携も視野に入るため、基幹システム連携のSI費用込みで考えるとTCO(総保有コスト)で他選択肢を上回るケースが多い。

  • AIエージェント前提で経費業務を再設計したい
    ConcurのJoule Agent統合は2026年から本格化しており、Microsoft 365 Copilot経由の連携が利用可能。AI起点で業務を再設計する場合、AIロードマップが明確なConcurに優位がある。


4ケースの判定で2つ以上が当てはまるならConcurが第一候補、1つも当てはまらないなら国内特化型SaaSの方がコスト対効果が高い、というのが実装現場の感覚です。

「将来海外展開するから先行投資」が外れる理由

将来海外展開するから先行投資が外れる理由

選定でよくある誤りが、「将来海外展開する可能性があるから今からConcurにしておこう」という先行投資ロジックです。海外展開が現実視野に入ってから移行する方が全体最適になることが多く、その理由は3点あります。

第一に、現場の習熟コストです。海外展開がまだない時点でConcurを入れても、現場が使うのは国内向け基本機能のみで、多通貨・多言語といった主力機能には触れません。海外展開のタイミングで「機能はあったけど誰も使い方を知らない」状態になり、結局再教育コストが発生します。第二に、ライセンス費用の累積です。使わない機能のために2〜3年余分にライセンスを払うと、海外展開時の純粋な比較では差額分が浮きません。第三に、SAP製品はバージョンアップで機能差が大きく変わるため、3年後に導入する場合の方が成熟した機能を使える可能性が高いという点です。

導入支援の現場感覚としては、海外展開計画が「具体的な売上目標と進出国が決まった段階」になってから移行する方が、現場の習熟コストとライセンス費用の両面で合理的です。


AI研修

料金体系とPMC再販モデル

料金体系とPMC再販モデル

SAP Concurの料金は、企業規模・利用ソリューション・契約形態によって変動します。ここではConcur Expenseを中心に、Standard/Professionalの違い、2026年1月以降の販売体制変更、ライセンス料以外のコスト構造を整理します。

Concur Expense Standard と Professional の違い

Concur Expense Standard と Professional の違い

Concur Expenseには中小企業向けの「Standard」と、中堅・大企業向けの「Professional」の2エディションがあります。

項目 Concur Expense Standard Concur Expense Professional
対象企業規模 中小企業(〜数百名規模) 中堅・大企業(数百名〜数万名規模)
月額費用 50,000円台〜(50ユーザー単位、目安) 個別見積り
初期費用 無料 個別見積り
課金モデル ユーザー数ベース ユーザー数またはレポート数ベース
経費規定の柔軟性 パッケージ化された標準フロー 複数階層の承認・部門別ルールに対応
外部システム連携 CSVエクスポート・標準API中心 カスタムインテグレーション可能
導入期間の目安 数週間〜2カ月 半年〜1年


Standardは初期費用無料で導入でき、公式サイトでは月額5万円台〜(50ユーザー単位)が目安として案内されています(2026年5月時点)。Professionalは要件に応じた個別見積となり、複雑な承認階層・外部システム連携・独自レポート要件がある企業向けです。

実務的な選択基準としては、従業員数だけでなく「経費規定の複雑さ」と「他システム連携の必要性」で判断するのが現実的です。300名規模でも標準フローで運用できる企業はStandard、100名規模でも複雑な部門別承認や独自連携が必要な企業はProfessionalが向く、というケースが珍しくありません。

2026年1月〜のPMCパートナー再販体制

2026年1月〜のPMCパートナー再販体制

2026年1月以降、Concur Expense Standardの販売はPMC(Partner Managed Cloud)パートナーを通じた再販モデルへ移行しました。従来のSAP Concur直販から、認定パートナーが導入支援・販売・サポートを一貫して提供する体制に変わっています。

PMCパートナーは導入支援ノウハウを持ち、自社業務のフィット&ギャップ分析から運用支援まで一貫してサービスを提供します。実際の価格やプラン構成はPMCパートナーの提案内容と自社要件に依存するため、Web上の固定価格表で判断するのではなく、自社規模・要件を整理した上でPMCパートナーまたは公式サイト経由で見積もりを取得する流れが現実的です。複数パートナーから相見積もりを取ることで、価格だけでなく導入支援内容の比較もできます。

初期構築費用とTCOの読み解き

初期構築費用とTCOの読み解き

ライセンス料だけでなく、初年度TCO(総保有コスト)では初期構築費用の比率が大きくなりやすいため、見積取得時は内訳まで確認することが重要です。主な内訳は以下のとおりです。

  • 初期設定費用
    経費規定設定、承認フロー設計、勘定科目マッピング、部門マスタ移行など。Standardはパッケージ標準フローで進めれば抑えられるが、自社独自ルールが多いほど工数が増える。

  • 外部システム連携費用
    会計ソフト・人事システム・法人カードAPI・SAP S/4HANAなどとの連携設定。連携先が多いほど積み上がる。

  • ユーザー教育費用
    管理者・承認者・一般ユーザーそれぞれ向けのトレーニング。フェーズ1立ち上げ時に集中投資する設計が定着率を高める。


Concur TravelやConcur Invoiceを組み合わせる場合は、それぞれライセンスと初期構築費用が追加で発生します。フェーズ別の費用見通しを立てるためには、後述の段階導入のフェーズ設計と費用配分を併せて検討することを推奨します。


導入事例から見る効果パターン

導入事例から見る効果パターン

実際にSAP Concurを導入した国内企業の成果を3件紹介します。いずれもSAP Concur公式サイトに掲載されている事例で、効果の出方は3類型に分けられます。

業務効率化型:学研プロダクツサポート

学研プロダクツサポート
参考/出典:導入事例・株式会社学研プロダクツサポート

学研プロダクツサポートは2023年にSAP Concurを導入し、経費精算と請求書処理の電子化、法令対応、ペーパーレス化を実現しました。代表的な成果は、外部委託チェック業務の作業量を約40%削減、経費精算業務の8割以上を省略化、報告業務の自動化により他部門の月間工数を20時間削減した点です。「自社の経費精算工数が大きく、まず工数削減効果を狙いたい」企業にとっての参照モデルになります。

標準化型:味の素フィナンシャル・ソリューションズ

味の素
参考/出典:導入事例・味の素フィナンシャル・ソリューションズ

味の素フィナンシャル・ソリューションズは、Concur Invoiceをグループ9社へ一斉導入し、請求書処理の標準化とインボイス制度対応を同時に実現しました。1件あたり約20分かかっていた処理を約5分に短縮し、BPO委託料の大幅削減も達成しています。「グループ会社をまたいで請求書処理プロセスを統一したい」「インボイス制度対応をグループ統一で進めたい」企業向けの参照モデルです。

グループ統一型:村田製作所

村田製作所
参考/出典:導入事例・村田製作所

村田製作所は2024年にSAP Concurを導入し、本体と国内29のグループ会社でConcur Expense・Invoice・Travelの3ソリューションを同時展開しました。国内30社の経費精算プロセスを一本化することで、経費規定・承認フロー・データ集計を統一しています。Concur Travelによる出張予約のガバナンスも導入し、購買コントロールと出張コストの可視化を両立した好例です。「グループ全社で経費・出張・請求書のプロセスを一本化したい」企業向けの参照モデルです。


3類型に共通するのは、Concur単機能導入ではなく、複数製品を組み合わせて段階展開している点です。投資対効果は単一拠点・単一機能では出にくく、複数拠点・複数機能の組み合わせで効果が増幅します。自社の課題に近い類型を起点に、効果規模をイメージしてから段階導入のフェーズ計画に進むのが現実的です。


プロジェクト立ち上げと段階導入のフェーズ設計

プロジェクト立ち上げと段階導入のフェーズ設計

「全部入りで一気に導入」は失敗パターンの代表例です。Concurは多機能ゆえに初期設定が重く、社内定着には段階的アプローチが必須になります。実装現場で機能している3フェーズ設計と、フェーズ1で詰まりやすいポイントを整理します。

フェーズ1:Expenseで経費精算電子化(3〜6カ月)

フェーズ1:Expenseで経費精算電子化

Concur Expense Standardから着手し、法人カード連携・モバイルOCR・規定違反チェックの3機能を中心に運用を立ち上げます。導入対象部門はまず本社経理+営業部門など「経費発生量が多く効果が見えやすい部署」から開始し、運用が安定したら他部門に横展開する設計が定着率を高めます。

フェーズ1のゴールは「現場ユーザーが日常的にConcurで経費申請する状態」を作ることで、ここを軽視してフェーズ2に進むと「Travelを入れたけど結局Excelに戻った」という連鎖崩壊につながります。フェーズ1の品質がプロジェクト全体の成否を決める、というのが現場感覚です。

フェーズ2:Travelで出張プロセス統合(6〜12カ月)

フェーズ2:Travelで出張プロセス統合

フェーズ1の運用が安定したら、出張頻度が高い部門からConcur Travelを追加導入し、出張稟議→予約→精算のサイクルを統合します。このタイミングで会社の出張規定(クラス・上限・出張先制限)も見直しに入るのが定石です。古い出張規定のままシステムに乗せると規定違反アラートが大量発生して現場が疲弊します。

フェーズ2の効果は予約データのExpense自動連携で増幅されるため、フェーズ1完了後の早期着手が望ましいですが、フェーズ1で得た現場ナレッジを取り込む期間を3カ月程度確保すると失敗が減ります。

フェーズ3:Invoiceで請求書処理電子化(12カ月以降)

フェーズ3:Invoiceで請求書処理電子化

Concur Invoiceの導入はAP(買掛金)部門の運用変更を伴うため、最も難易度が高いフェーズです。フェーズ1・2で経理現場が経費業務の電子化に十分慣れた段階で着手する方が定着しやすく、組織的にも「電子化を当たり前」と受け止める素地が作られています。

請求書処理は取引先からの紙・PDF送付フォーマットが千差万別で、AI-OCRの読み取り精度や承認フローの設計が品質を決めます。取引先10社程度のパイロット運用から始めて、フォーマットのバリエーションを把握しながら段階的に対象取引先を増やす流れが現実的です。会計仕訳の連携先となるSAP FI(財務会計モジュール)のマッピング設計も、このフェーズで詰める必要があります。

フェーズ1で詰まりやすいポイントと対処法

フェーズ1で詰まりやすいポイントと対処法

フェーズ1で躓くと後続フェーズが止まるため、立ち上げ時の詰まりポイントを先回りで押さえておくことが重要です。

  • 経費規定の設計が現行業務とズレる
    現行の暗黙ルールをそのままシステム化すると規定違反アラートが乱発する。導入を機に経費規定を見直し、グローバル標準フローに業務を寄せる視点が必要。

  • 承認フローが複雑すぎて運用が回らない
    階層を増やすほど承認時間が伸び、現場の不満につながる。標準フローは2〜3階層に抑え、例外時のみエスカレーションする設計が定着しやすい。

  • マスタデータの整備が後回しになる
    部門マスタ・勘定科目マッピング・社員情報の整備に時間がかかると、Go-live後の運用に支障が出る。フェーズ1のキックオフ時点でマスタ整備の責任者と期限を切ることが必須。


これら3点をフェーズ1のキックオフ時点で「対処計画を含めて」プロジェクト計画書に明記しておくと、立ち上げ後の手戻りが大幅に減ります。PMCパートナーのフィット&ギャップ分析を活用すると、自社固有の詰まりポイントもこの段階で洗い出せます。


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Concur×AI Agent Hubで「Concurでも残る人手」を自動化

Concurで経費・出張・請求書のデジタル化が進んでも、「申請→確認→承認→仕訳→支払」という一連のフロー自体は依然として人が回しているケースが大半です。Concur Expense・Invoice・Travelが整っても、最後の仕訳判定や例外承認、社内システムへの連携には経理担当者の手作業が残ります。Joule Agentで自動化される範囲は2026年中GA予定のものも多く、現時点で「すぐ自動化したい」企業にはギャップがあるのが実情です。

ここで効いてくるのが、AI総合研究所が提供するAI Agent Hubです。SAP Concurと直接連携し、経費精算・請求書処理・承認フローをAIエージェントが自律実行するエンタープライズAI基盤として設計されており、Concurで収集された経費データにAIが直接アクセスして業務を一気通貫で完結させる構造になっています。

  • 領収書OCRから仕訳までAIエージェントが一括処理
    AI-OCR Agentが領収書・請求書を自動読み取りし、経費仕分けAgentが勘定科目を判定。Concur上の申請データと突合してから仕訳まで自動で完了する。Concur標準のOCRよりも上流の「フローの設計」自体をAIに委ねられる点が違い。

  • 承認フローはTeamsで完結、スマホからも即決裁
    フロー判定Agentが申請内容を社内規定と照合し、問題なければ自動承認。例外時のみTeams通知で担当者に判断を求めるHuman-in-the-Loop設計で、スピードとガバナンスを両立する。

  • 経費データは自社テナント内で管理
    自社テナント内でのデータ保持を前提に設計されており、経費データや承認履歴が外部に出ない構成にできる。監査ログ要件にも対応しやすい。


「Concurを入れた上で、さらに経理担当者の月次工数を半減させたい」「Joule Agent統合のGAを待つ前に自社テナント内でAI自動化を進めたい」という場合に、AI Agent Hubが選択肢になります。資料では、Concur連携からAIエージェント実行までの具体的なフローと、自社テナント内構築の仕組みをご確認いただけます。

Concurの経費データをAIが業務に直結

AI Agent Hub

経費精算の完全自動化へ

SAP Concurと直接連携し、領収書読み取りから仕訳・承認までをAIエージェントが自動実行。自社テナント内で完結するセキュアな経費自動化基盤です。


まとめ

SAP Concurは、ERP世界最大手のSAPグループが提供する経費精算・出張管理・請求書処理を統合するクラウドプラットフォームです。本記事の要点を3つに絞ります。

自社にConcurが合うかは、規模・拠点・既存ERPの3変数で決まる。 海外拠点あり/従業員300名以上/SAP S/4HANA既導入/AIエージェント前提のいずれかに当てはまる企業ならConcurが第一候補です。当てはまらない場合、楽楽精算やマネーフォワード クラウド経費のほうがコスト対効果は高くなります。

2026年Fusion 2026でJoule Agent統合が発表され、経費精算のAI自動化は計画から実装フェーズへ。 Microsoft 365 Copilot連携は既に利用可能、Expense Automation AgentとExpense Pre-Submit Audit AgentはEarly Adopter Careで先行提供されており、2026年中GA予定です。AIロードマップの明確さがConcurの新たな差別化要素になっています。

段階導入はフェーズ1(Expense)→フェーズ2(Travel)→フェーズ3(Invoice)の順が定石で、フェーズ1の立ち上げ品質がプロジェクト全体の成否を決める。 経費規定設計・承認フロー・マスタ整備の3点を立ち上げ時点で押さえておくと、後続フェーズの手戻りが減ります。導入計画を立てる際は、SAP導入の全体像を踏まえたうえで、PMCパートナーを通じてフィット&ギャップ分析を依頼するのが第一歩です。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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