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SAP Jouleとは?ビジネス向けAI Copilotの機能・使い方・料金を解説

この記事のポイント

  • SAPクラウド導入済みでAI活用が進んでいないなら、Jouleの有効化が最優先。基本AI機能(Base AI)は対象製品のentitlementに含まれ、その範囲内で利用可能
  • ChatGPTとの決定的な違いは、自社SAPデータとリアルタイム連携しグラウンディング技術でハルシネーションを低減する点。テナント分離と既存権限を前提に動作し、第三者LLMの学習には使われない
  • 2025年12月にAgent Builder GAで独自エージェント構築が可能に。30以上の業務特化エージェントも順次GA。まずRISE with SAPの契約内容でJoule entitlementの有無を確認するのが第一歩
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。


SAP Joule(ジュール)は、SAPのクラウドソリューションに横断的に組み込まれた生成AIアシスタントです。自然言語で対話するだけで、複雑なSAPシステムから必要な情報を引き出し、業務を実行できます。

「ChatGPTを社員が個別に使っているが、社内データと連携できない」「SAPの機能を十分に活用できていない」——こうした課題を抱える企業にとって、Jouleはセキュアなビジネスデータ連携で解決策を提供します。
本記事では、ChatGPTとの違い、部門別ユースケース、Jouleエージェントの拡大やAgent Builder、導入方法・料金まで体系的に解説します。

SAP Jouleとは

SAP Joule とは
出典:SAP Joule

SAP Joule(ジュール)とは、SAPが提供する各種クラウドソリューションに横断的に組み込まれた、自然言語で対話できる生成AIアシスタント(Copilot)です。

「SAPは導入したものの、機能の一部しか使いこなせていない」「ChatGPTを社員が個人的に使い始めているが、社内データと安全に連携できない」——こうした状況に心当たりがある企業にとって、JouleはセキュアにビジネスデータへアクセスできるAIの選択肢です。

ユーザーは「○○を教えて」「○○をして」と話しかけるだけで、複雑なSAPシステムから必要な情報を引き出したり、定型業務を実行したりできます。トランザクションコードやメニュー構造を覚える必要がなくなり、SAP操作のハードルが大幅に下がります。

Jouleには大きく2つの機能区分があります。Jouleスキルは、伝票やマスターの照会・更新などの従来の手動操作を会話ベースに置き換える機能です。Jouleエージェントは、会計・調達・人事など複雑な業務プロセスをAIが自律的に判断・実行する、より高度な機能です。2026年4月時点で30以上のエージェントがリリースされています(ベータ含む)。

ChatGPTとの違い

ChatGPTとの違い

JouleはChatGPTのような汎用的な大規模言語モデル(LLM)の能力を活用していますが、決定的な違いがあります。SAPアプリケーション内のリアルタイムなビジネスデータと連携して回答を生成する点です。

以下の表で両者の特性を整理しました。

比較軸 SAP Joule ChatGPT
データソース 自社のSAPシステム内のリアルタイムデータ インターネット上の一般情報
業務連携 SAPのトランザクション実行・レポート生成が可能 汎用的な質疑応答・文章生成
セキュリティ テナント分離・既存権限で動作、第三者LLM学習に不使用 パブリッククラウド上で処理
信頼性 グラウンディング技術でハルシネーションを低減 一般情報に基づくため不正確な回答の可能性あり

Jouleは自社の売上データ、人事情報、サプライチェーンの状況といった信頼できる社内データに基づいて応答するため、ビジネスの現場でそのまま活用できる精度の高いアウトプットが可能です。


AI Agent Hub1

SAP Jouleの部門別ユースケース

Jouleは「要約」「分類」「生成」「実行」といった多様なタスクに対応します。部門ごとの典型的なユースケースを以下の表にまとめました。

部門 指示の例 Jouleが提供する価値
人事(SuccessFactors) 「この職務要件に合う候補者を社内からリストアップし、面接質問案を作成して」 採用プロセスの迅速化と公平性確保
営業(Sales Cloud) 「A社の購買履歴を要約し、アップセルの提案メール案を作成して」 営業活動の高度化と効率化
購買(Ariba) 「納期遅延リスクがある発注を特定し、督促メール案を作成して」 サプライチェーンリスクの早期検知
開発・エンジニアリング 「販売オーダーを取得するABAPコードのサンプルを生成して」 開発工数の削減と品質向上
財務(S/4HANA Cloud) 「第3四半期の地域別売上トップ5を棒グラフで表示して」 専門家でなくても迅速なデータ分析が可能

このように、Jouleは人事・営業・購買・開発・財務といった幅広い部門の日常業務に溶け込み、具体的なアクションを支援します。

開発者向けJoule(Joule for Developers)

Joule for Developersは、開発環境に応じて2つの経路で提供されています。

  • ABAP向け(ABAP AI capabilities)
    Eclipse ABAP Development Tools(ADT)に統合されており、ABAPコードの生成・リファクタリング・単体テスト作成・コード説明を自然言語で支援します。利用にはライセンスのアクティベーションやサブスクリプションが前提となります。

  • Java/JavaScript/低コード向け(SAP Build Code)
    SAP Build Code環境に統合されており、Java・JavaScript・SQLでのコード生成に加え、ビジネスルールの自動化やUIの生成にも対応しています。


提供形態・対象環境により料金条件が異なるため、自社の開発環境に応じて公式の開発者向けガイドで確認してください。


SAP Joule導入のメリットと注意点

SAP Joule導入のメリットと注意点

導入のメリット

Joule導入で得られる主な効果を整理します。

  • 全従業員の生産性向上
    レポート作成や情報検索などの定型業務を自動化し、従業員が付加価値の高い仕事に集中できる時間を創出する。

  • SAPソリューションの活用度向上
    専門家でなくても高度な機能を使えるようになり、IT投資のROI(投資対効果)を最大化する。従来は機能の10%程度しか活用できていなかった企業でも、活用範囲が大幅に拡大する。

  • データに基づく迅速な意思決定
    経営層から現場まで、誰もが必要なデータに即座にアクセスできる環境を実現する。

導入時の注意点

AIを業務に導入する際には、運用面での準備も不可欠です。

  • AI出力の正確性確認
    Jouleは高い精度を誇るが、最終的な意思決定の前に出力情報を人間が確認するプロセスは依然として重要。

  • 従業員へのAI活用トレーニング
    効果的なプロンプト(指示)の出し方など、従業員向けのトレーニングやガイドラインの整備が求められる。

  • 機密情報の取り扱いルール策定
    AIとの対話でどの範囲の情報を扱うべきか、社内ルールを明確にしておく必要がある。


SAP Jouleの技術基盤

Jouleの利点は優れたAIモデルだけでなく、SAPのビジネスデータと安全に連携する独自のアーキテクチャにあります。

SAP Business AIの中核としてのJoule

Jouleは、SAPのAI戦略「SAP Business AI」の中核をなす存在です。SAP Business AIはJouleのようなAIアシスタントだけでなく、請求書読み取りなどのAI部品や開発者向けのAI基盤まで含む包括的なAIサービスの総称で、2026年時点で400以上のAI活用シナリオを提供しています。

SAP BTPとGenerative AI Hub

SAP BTP
出典:SAP Business Technology Platform

Jouleの頭脳はSAP BTP上で稼働しています。特にGenerative AI Hub機能により、OpenAI(ChatGPT)、Meta(Llama)、Cohereなど複数のLLMベンダーへのアクセスが可能です。タスクに最適なAIエンジンを選択して利用できる柔軟性を確保しています。

グラウンディング技術

Jouleがビジネスで信頼できる理由は、グラウンディング(Grounding)技術にあります。ユーザーの質問を受け取ると、JouleはまずSAPシステム内の関連データを検索し、その事実情報に基づいて回答を生成します。この仕組みにより、AIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」のリスクを大幅に低減しています。

Microsoft Copilotとの連携

SAPはJouleを他の主要AIツールとも連携させています。Microsoft Teams上でCopilotに質問すると、JouleがバックグラウンドでSAPシステムからデータを取得して回答する機能が提供されています。SAP ConcurのFusion 2026でもJoule × Microsoft 365 Copilot統合が発表されており、経費報告書の作成・提出や出張予約をMicrosoftツール上から行えるようになります。使い慣れたツールからSAPの能力を引き出せる点が特徴です。


AI研修

SAP Jouleの2026年最新機能

SAP Jouleの2026年最新機能

2026年に入り、Jouleは大幅な機能強化を遂げています。

Joule Studio Agent Builder

Joule Studio内のskill builderは2025年7月に、agent builderは2025年12月にそれぞれ一般提供(GA)を開始しています。企業は自然言語でエージェントの目標・役割を定義し、最新のAIモデルを選択して独自のAIエージェントを構築できます。

複数のエージェントが連携するマルチエージェント機能も実装されており、Jouleがユーザーのニーズを理解して適切なエージェントを適切な順序で起動します。なお、2026年Q1はSAP Buildユーザー向けにカスタムエージェントの無料実行枠が提供されています(プロモーション期間)。

業務特化エージェントの拡大

SAPは2025年のSAP Connectで14の新Jouleエージェントを発表し、2026年に入り順次GA化が進んでいます。以下は主要なエージェントとその提供時期です。

エージェント名 業務領域 提供時期
Cash Management Agent 財務・資金管理 Q1 2026 GA
Bid Analysis Agent 調達・購買 Q1 2026 GA
Production Planning and Operations Agent サプライチェーン Q1 2026 GA
Change Record Management Agent ビジネス変革 Q2 2026 GA予定
Supplier Onboarding Agent 調達・購買 Q2 2026 GA予定


これらのエージェントは特定の業務プロセスに特化しており、単独で動作するだけでなく複数のエージェントが連携するマルチエージェント構成にも対応します。2026年前半には、外部のエージェントからJouleエージェントを呼び出す機能のリリースも予定されています。

SAP-RPT-1(独自LLM)

2026年1月のSAP TechEd Japanで、SAPはリレーショナルデータ(テーブル構造)に特化した独自の基盤モデル「SAP-RPT-1」(Relational Pre-trained Transformer)を発表しました。配送遅延予測、請求書マッチング推奨、受注入力フィールド予測などのビジネスシナリオ向けに設計されており、事前学習不要で汎用的に使用できます。Small/Largeの2種類が用意されており、SAP RPT Playgroundで体験可能です。

SAP AI Agent Hub(LeanIX)とJoule Deep Research

SAP AI Agent Hubは、SAP LeanIX上でJouleエージェントのライフサイクルを一元管理するガバナンスツールです。どのエージェントがどの業務領域に関わっているかを可視化でき、大規模なエージェント展開時の統制に役立ちます。さらにSAP Signavioには「エージェントマイニング」機能が追加され、エージェントの動作を分析・最適化できます。

Joule Deep Research(ベータ)は外部Webリソースに加えSAP内部データも活用し、より深い洞察を提供する機能です。また、Joule with SAP Signavioが2026年3月にGAとなり、自然言語でビジネスプロセスの分析・管理が可能になっています。


SAP Jouleの導入方法と料金

提供状況と有効化の手順

Jouleは独立した製品ではなく、対象となるSAPクラウドソリューションへ段階的に統合されています。S/4HANA Cloud、SuccessFactors、Ariba、SAP Analytics Cloudなど主要製品で利用可能ですが、すべてのクラウド製品ですぐに使えるわけではありません。自社の利用製品が対象かどうかはSAPの公式ロードマップで確認が必要です。

RISE with SAPを利用している企業では、契約パッケージに応じてJoule entitlementが含まれます。ただし、RISE Private Tailored Option(PTO)やCDCなど一部のパッケージにはJouleやAI Unitのentitlementが含まれないため、契約内容の確認が必要です。有効化の手順は製品ごとに異なり、BTP cockpitでの設定、Joule booster の実行、製品別の統合設定など複数の経路があります。公式の導入ガイドで自社製品に該当する手順を確認してください。

料金体系

SAP Jouleの料金体系

SAPはJouleの料金を、Base AIとPremium AIの2層で構成しています。

  • Base AI(対象製品のentitlementに含まれる)
    対象クラウド製品のサブスクリプションに含まれるJoule entitlementの範囲内で、Jouleスキル(会話型のデータ照会・更新)が利用可能。entitlementの範囲は製品ごとに異なり、超過利用にはAI Unitsの追加購入が必要となる。

  • Premium AI(有償)
    SAPは財務管理、支出管理、サプライチェーン管理、人材管理、カスタマーエクスペリエンスなど各分野向けのプレミアムAIパッケージを提供しています。高度なエージェント機能や大量のAI処理にはAI Units課金が適用されます。Agent Builderについては、Q1 2026はSAP Buildユーザー向けに無料実行枠のプロモーションが提供されています。

  • 開発者向けAI機能
    ABAP AI capabilities(Eclipse ADT向け)やSAP Build Code向けJouleなど、提供形態・対象環境によりライセンス要件が異なります。一部の機能はフリートライアルとして提供されていますが、本格利用にはサブスクリプションやライセンスのアクティベーションが必要です。


具体的な料金やentitlementの範囲は、利用する製品やエージェントの種類により異なるため、SAPまたは導入パートナーへの見積もり依頼が必要です。


SAP Jouleに関するFAQ

SAP Jouleについてよくある質問をまとめました。

Q1. SAP Jouleは日本語に対応していますか?

はい、日本語を含む複数の言語に対応しています。自然な日本語で質問や指示を出すことが可能です。

Q2. データセキュリティは安全ですか?

Jouleはテナント分離と既存のSAP権限モデルを前提に動作し、顧客データが第三者LLMの学習に使われることはありません。ただし、SAPはJouleの継続改善のためにサービス利用データを収集・処理する場合があるため、詳細はSAPのデータプライバシーガイドを確認してください。Jouleの出力は最終的に人間が確認するプロセスを推奨します。

Q3. オンプレミス版のSAP ERPでも使えますか?

いいえ。現在JouleはSAPの最新クラウドソリューション向けに提供されており、旧来のオンプレミス版SAP ERP(ECC 6.0など)では利用できません。


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SAP環境を超えた全社AI自動化へ

JouleはSAPクラウド内で自然言語による業務支援を実現しますが、実際の企業では経費精算・請求書処理・承認フローといった業務がSAP、Microsoft 365、Salesforceなど複数のシステムにまたがっています。これらを横断してAIが自動実行する仕組みが、次の段階として求められています。

AI Agent Hubは、SAP ConcurやDynamics 365、Salesforceと連携し、複数システムにまたがるバックオフィス業務をAIエージェントが自動実行するエンタープライズAI基盤です。Fabric OneLakeでデータを仮想統合し、Teamsを統一的な入口として9種類の業務特化Agentが経費・請求書・承認を一気通貫で処理します。自社Azureテナント内で完結するため、Jouleと同等のデータセキュリティを維持できます。

AI総合研究所は、SAP × Microsoft環境での全社AI自動化を設計段階から支援しています。資料で、AI Agent Hubのアーキテクチャと導入フローをご確認ください。

SAP環境を超えた全社AI業務自動化

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複数システム横断のAIエージェント

SAP Concur・Dynamics 365・Salesforceを横断し、経費精算・請求書処理・承認フローをAIエージェントが自動実行。自社テナント完結のセキュアなAI基盤です。

まとめ

SAP Jouleは、SAPのクラウドソリューションに横断的に組み込まれた生成AIアシスタントであり、自然言語でSAPシステムを操作できるビジネス向けCopilotです。本記事の要点を3つに絞ります。

ChatGPTとの決定的な違いは、自社SAPデータとリアルタイムに連携しグラウンディング技術でハルシネーションを低減する点。 テナント分離と既存権限を前提に動作し、第三者LLMの学習にはデータが使われないため、社員がChatGPTを個別に使うよりも業務精度・セキュリティの両面で有利です。

2025年後半〜2026年にかけてエージェント基盤が急速に整備。 Agent Builder GA(2025年12月)、30以上の業務特化エージェント、独自LLM「SAP-RPT-1」、AI Agent Hubによるガバナンス機能と、財務・調達・サプライチェーン・人事の各領域でGA化が順次進行中です。

まず着手すべきは、自社のSAP契約でJoule entitlementの有無を確認することです。 基本AI機能は対象製品のentitlementに含まれますが、契約パッケージにより対象範囲が異なります(RISE PTOやCDCは含まれない場合あり)。製品ごとに有効化手順も異なるため、SAP管理者とともに公式の導入ガイドを確認し、段階的にエージェント活用へ拡張するのが現実的です。SAP導入の全体像もあわせて押さえてください。


SAP Business AIの全体像を理解したい場合は、SAP Business AIの解説記事もあわせてご覧ください。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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