AI総合研究所

SAP GUIとは?Fioriとの違いから使い方、インストール方法まで解説

この記事のポイント

  • SAP GUIは、SAPの基幹システムに接続し業務処理を行うためのデスクトップアプリケーションであり、長年にわたりSAPの主要な操作画面として利用されてきた。
  • SAP GUIは、専門的な設定や開発、一部の高度な業務処理において依然として必須のツールであり、IT管理者や開発者にとって重要な役割を果たしている。
  • SAP GUIの操作は、トランザクションコードを用いた直接的な画面呼び出しや、複数セッションの並行処理など、独特の作法が存在する。
  • SAP FioriはWebブラウザベースのモダンなUIであり、役割起点のシンプルな操作性を提供する一方、SAP GUIは機能起点の多機能画面として専門的な利用に適している。
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

XでフォローフォローするMicrosoftMVP

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

SAPの基幹システム(ERP)に長年関わっている方にとって、「SAP GUI」は日々の業務に欠かせない、馴染み深いツールでしょう。しかし、SAP S/4HANAやクラウドへの移行が進む中で、新しくSAPに触れる方にとっては「SAP GUIとは何か?」「最新のFioriとは何が違うのか?」といった疑問も増えています。
この記事では、SAP GUIを初めて知る方から、実際にこれから利用する方までを対象に、その基本的な役割や操作方法、Fioriとの決定的な違い、そして今なお専門家にとって必須ツールであり続ける理由までを、体系的に解説します。

SAP GUIとは?~SAPの伝統的な操作画面~

SAP GUI
出典:SAP GUI

SAP GUIとは、SAPの基幹システム(AS ABAPサーバー)に接続し、様々な業務処理を行うための、クライアントPCにインストールして使用するフロントエンドソフトウェアです。GUIは「Graphical User Interface」の略で、その名の通り、ユーザーが直観的に理解しやすいグラフィカルな画面を通じてSAPシステムを操作することを可能にします。

1990年代から長きにわたり、SAPの操作画面として標準的に利用されてきた、まさにSAPの「顔」とも言える存在です。

SAP GUIの役割:SAPシステムへの「窓口」

SAPのシステム本体は、専門のサーバー上で稼働しています。一般のユーザーがそのサーバーに直接アクセスすることはできません。そこで、ユーザーのPCにSAP GUIをインストールし、それを「窓口」としてサーバー上のSAPシステムに接続します。

ユーザーがGUIの画面上で行った操作(データ入力やボタンクリックなど)は、ネットワークを通じてサーバーに送られ、処理結果が再びGUIの画面に表示される、という仕組みで成り立っています。

なぜ今もGUIの知識が必要なのか?

SAP S/4HANAの登場により、モダンなWebベースのUIである「SAP Fiori」が標準となりました。しかし、それでもなおSAP GUIの知識が重要である理由は、システムの裏側で行われる専門的な設定(カスタマイズ)や開発、そして一部の高度な業務処理において、依然としてSAP GUIが必須のツールだからです。

一般のビジネスユーザーはFioriを、IT管理者や開発者、パワーユーザーはGUIを、というように、役割に応じた使い分けが現在の主流となっています。

ここで出てくるSAP S/4HANAや、SAP Fioriについて個別で詳しく解説していますので、気になる方は以下も併せてご覧ください。

▼SAP S/4HANA関連記事▼
SAP HANAとは?料金体系・S/4HANAとの違い・導入メリットを解説

▼SAP Fiori解説記事▼
SAP Fioriとは?S/4HANA時代の新UI/UXを機能やメリットと共に徹底解説

SAP GUIの基本操作と画面構成

SAP GUIの操作は、一般的なWebアプリケーションとは異なる独特の作法があります。ここでは、ログインから基本的な画面の見方、そして最も重要な「トランザクションコード」の使い方まで、基本操作を解説します。

SAP Logonからのシステム接続

SAP GUIを起動すると、まず「SAP Logon」という小さなウィンドウが表示されます。ここには、接続可能なSAPシステム(開発機、検証機、本番機など)の一覧が登録されています。ユーザーは、接続したいシステムを選択してログイン画面に進み、ユーザーIDとパスワードを入力してシステムに接続します。

主要な画面要素:メニューバー、コマンドフィールド、ステータスバー

SAP GUIの画面は、主に以下の要素で構成されています。これらの役割を覚えることが、操作をマスターする第一歩です。

画面要素
画面要素
画面要素

  • メニューバー: 画面の最上部にあり、「ファイル」「編集」といった操作メニューが格納されています。

  • 標準ツールバー: 保存や印刷など、よく使われる機能のアイコンが並んでいます。

  • コマンドフィールド: 画面左上にある入力ボックスで、後述する「トランザクションコード」を直接入力するための重要なエリアです。

  • アプリケーションツールバー: 現在開いている画面に固有の操作ボタン(例:「登録」「変更」「照会」)が表示されます。

  • ステータスバー: 画面の最下部にあり、システムからのメッセージ(成功、エラーなど)や、接続先のシステム情報が表示されます。

操作の核となる「トランザクションコード(T-Code)」とは

SAP GUIの操作における最も特徴的な概念が「トランザクションコード(T-Code)」です。これは、特定の業務機能(画面)を直接呼び出すための英数字コードです。

例えば、「仕入先マスタ登録」画面を開きたい場合、メニューをたどっていく代わりに、コマンドフィールドにトランザクションコード「FK01」と入力してEnterキーを押すだけで、一発で目的の画面にたどり着けます。

複数業務を並行処理する「セッション」の概念

SAP GUIでは、「セッション」と呼ばれる複数の画面(ウィンドウ)を同時に開いて、並行して作業を進めることができます。例えば、あるセッションで受注伝票を登録しながら、別のセッションで在庫状況を照会する、といった使い方が可能です。

これにより、作業を中断することなく、関連情報を参照しながら効率的に業務を進めることができます。

SAP Fioriとの決定的な違いとは?

SAP S/4HANAの登場以降、新しいUIである「SAP Fiori」が注目されています。ここでは、従来のSAP GUIとSAP Fioriが何が違うのか、その思想から技術、ターゲットユーザーまでを比較表で明確にします。

比較軸 SAP GUI SAP Fiori
提供形態 デスクトップアプリケーション(PCへのインストール必須) Webブラウザベース(インストール不要)
UI/UX思想 機能起点(トランザクションベース):何でもできる多機能画面 役割起点(ロールベース):あなたに必要な機能だけのシンプル画面
操作性 専門的・高機能:全ての機能にアクセスできるが、習熟が必要 直感的・シンプル:モダンなデザインで、トレーニングなしでも操作可能
デバイス 主にPC PC、タブレット、スマートフォン(レスポンシブデザイン)
ターゲット パワーユーザー、開発者、IT管理者 全てのビジネスユーザー

端的に言えば、SAP GUIは「プロ向けの多機能な操縦室」、SAP Fioriは「一般向けの分かりやすい運転席」とイメージすると、その違いが理解しやすいでしょう。

▼SAP Fioriの詳細ついてはこちらをご覧ください▼
SAP Fioriとは?S/4HANA時代の新UI/UXを機能やメリットと共に徹底解説

SAP GUIの将来性:なぜ今も使われ続けるのか?

Fioriが主流となりつつある中で、「SAP GUIはもう不要になるのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。しかし、今後も特定の専門的な役割において、SAP GUIは必須ツールであり続けるでしょう。その主な理由は次の通りです。

理由1:バックエンド設定(カスタマイズ)での必須ツール

SAPシステムの細かな動作を定義する「カスタマイズ(コンフィグレーション)」と呼ばれる設定作業は、現在もそのほとんどがSAP GUIを通じて行われます。

システムの導入や保守を担うIT管理者やコンサルタントにとって、GUIは不可欠な作業環境です。

理由2:開発者(ABAPer)にとっての標準環境

SAPのABAP開発は現在、Eclipseベースの ABAP Development Tools(ADT)が標準とされています。しかし、多くの企業には依然としてGUIベースで開発された既存のABAP資産が残存しています。

そのため、SAP GUI上のABAP Workbenchは保守モードとなっているものの、これら既存プログラムの修正や移行対応において引き続き利用が不可欠なのです。

理由3:ヘビーユーザーによる高速な定型業務処理

経理部門や購買部門など、毎日大量の定型業務を高速で処理する必要がある「ヘビーユーザー」にとっては、キーボードショートカットやトランザクションコードを駆使できるSAP GUIの方が、Fioriよりも効率的に作業できる場合があります。

SAP GUIのインストールと接続設定

実際にSAP GUIをPCで利用するための手順を解説します。SAP GUIソフトウェアの入手方法から、インストール、そしてSAP Logonでのシステム接続設定までをステップごとに説明します。

SAP GUIソフトウェアの入手方法

SAP GUIのインストーラーは、一般には公開されていません。通常、企業のIT部門やシステム管理者が、SAP社から提供されたインストールパッケージを管理しており、そこから入手する必要があります。個人で学習目的で利用したい場合は、SAPが提供する学習者向けのトライアル環境などに含まれている場合があります。

Windows版のインストール手順

インストーラーを入手した後の手順は、一般的なWindowsアプリケーションのインストールと同様です。

  1. インストーラーを起動します。
  2. インストールするコンポーネントを選択します。(通常はデフォルトで問題ありません)
  3. インストール先のフォルダを指定し、インストールを実行します。
  4. 完了後、デスクトップやスタートメニューに「SAP Logon」のアイコンが作成されます。

SAP Logonでの接続(エントリ)設定方法

インストールが完了したら、次はSAP Logonに接続先のシステム情報を登録します。

  1. 「SAP Logon」を起動します。
  2. 「新規作成」ボタンを押し、接続エディタを開きます。
  3. システム管理者から提供された接続情報(アプリケーションサーバ名、インスタンス番号、システムIDなど)を入力します。
  4. 「完了」ボタンを押すと、SAP Logonの一覧に新しい接続先(エントリ)が追加されます。

FAQ:SAP GUIに関するよくある質問

SAP GUIに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. SAP GUIの読み方は?

A. 「エスエイピー ジーユーアイ」と読むのが一般的です。「サップグイ」などとは読みません。

Q2. MacやLinuxでも使えますか?(SAP GUI for Javaについて)

A. はい、使えます。主流であるWindows版に加えて、MacやLinux向けには「SAP GUI for Java」というJavaベースのバージョンが提供されています。基本的な機能はWindows版とほぼ同じですが、一部の機能や見た目が異なる場合があります。

Q3. 「GUIスクリプティング」とは何ですか?

A. GUIスクリプティングは、SAP GUI上の一連の操作を記録し、自動で再生する機能です。VBScriptなどを用いて、大量のデータ入力や定型的なレポート作成といった反復作業を自動化するために利用されます。RPA(Robotic Process Automation)ツールと連携して使われることもあります。

まとめ:役割を理解し、Fioriと使い分けることが重要

本記事では、SAP GUIの基本から、Fioriとの違い、そしてその将来性や具体的な使い方までを網羅的に解説しました。

SAP S/4HANAの時代において、エンドユーザー向けのUIの主役がSAP Fioriであることは間違いありません。しかし、SAP GUIが過去の遺物になったわけではなく、システムの根幹を支える設定、開発、高度な業務処理においては、依然として不可欠なプロフェッショナルツールです。

これからのSAP活用においては、GUIとFiori、それぞれの思想と役割を正しく理解し、目的に応じて適切に使い分けることが、企業全体の生産性を最大化する鍵となるでしょう。

AI活用のノウハウ集「AI総合研究所」サービスご紹介資料

「AI総合研究所 サービス紹介資料」は、AI導入のノウハウがないというお客様にも使いやすい最先端のAI導入ノウハウを知れる資料です。

資料ダウンロード
監修者

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

関連記事

AI導入の最初の窓口

お悩み・課題に合わせて活用方法をご案内いたします
お気軽にお問合せください

AI総合研究所 Bottom banner

ご相談
お問い合わせは
こちら!