この記事のポイント
出張コストの可視化と規定遵守を両立させたいなら、OBTとExpense自動連携が最短ルート
グローバル出張が多い企業ではRisk Messagingと150ヵ国対応が決め手。国内中心ならビズバンスも選択肢に
2026年にComplete提携(Amex GBT)とJoule AIが発表され、予約から精算までのAI支援が段階的に展開中
料金は従業員数・出張件数・TMC連携有無・ソリューション構成で個別見積り
導入事例では約2千万円のコスト削減や航空券単価18%減の実績。出張データの可視化が削減施策の起点

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
出張は事業成長に不可欠ですが、「出張費の高止まり」「規定外手配の常態化」「海外出張者の安否確認が困難」といった課題を抱える企業は少なくありません。
Concur Travelは、SAP Concurプラットフォーム上で出張の手配から管理・精算連携までを担うクラウドソリューションです。
本記事では、Concur Travelの主要機能・2026年の新機能(Joule AI・Complete提携・Virtual Card)・導入事例・他のBTMとの比較・料金体系まで体系的に解説します。
経費精算側を知りたい方はConcur Expenseもあわせてご覧ください。
Concur Travelとは

Concur Travelは、SAP Concurプラットフォーム上で出張の手配と管理を担うクラウドソリューションです。
SAP Concurは全世界で1億人以上が利用する出張・経費管理プラットフォームです。Concur Travelの最大の特徴は、経費精算を担うConcur Expenseとデータが完全に連携している点にあります。出張の事前申請から航空券・宿泊先の手配、出張後の経費精算まで、分断されがちなプロセス全体をシームレスに自動化できます。
2026年3月には、American Express Global Business Travel(Amex GBT)との共同開発ソリューション「Complete by SAP Concur」にJoule AIの統合が発表され、予約から精算までAIが支援する体制が整いつつあります。
SAP Concurには「Expense」「Travel」「Invoice」の3つの主要ソリューションがあり、本記事では出張管理を担う「Travel」を詳しく解説します。請求書管理のConcur Invoiceもあわせてご覧ください。
Concur Travelの主要機能

Concur Travelは、出張管理における「コスト・規定違反」「手作業の非効率」「従業員の安全確保」の3つの課題を解決する機能を備えています。
オンライン予約機能(OBT)

法人向けオンライン予約ツール(Online Booking Tool)として、コストと規定遵守の課題を解決します。
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出張規定に準拠した検索・表示
自社の出張規定(利用可能な航空会社、宿泊費上限など)をシステムに設定すると、従業員の予約時に規定内の選択肢が優先表示される。迷うことなく規定内の手配が可能になる。
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規定外予約へのアラートと承認
規定外の予約を行おうとした場合、本人と承認者にアラートが表示される。理由入力の必須化など、柔軟な承認プロセスを設定できる。
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複数GDS・包括契約料金の一括検索
複数のGDS(グローバル流通システム)と自社の包括契約料金を横断検索し、最適な選択肢を提示する。航空券・ホテル・レンタカーを一画面で比較でき、手配にかかる時間を削減できる。
OBTのポイントは、従業員が規定に沿った手配を「自然に」行える設計にある点です。ルールを知らなくても、表示される選択肢がすでに規定内に絞られているため、規定違反率の低下とコスト削減が同時に進みます。
申請・精算プロセス連携

出張前後の手作業をなくし、プロセス全体を効率化します。
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出張申請と予約の自動連携
出張申請が承認されると、日程・目的地などの情報が予約画面に自動で引き継がれ、スムーズに手配を進められる。
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Concur Expenseへの予約データ自動連携
Concur Travelで予約した航空券やホテルのデータがConcur Expenseに自動連携される。帰国後の手入力が不要になり、経費精算の手間が大幅に削減される。
出張の手配と精算がデータで直接つながるため、「予約内容を経費精算に転記する」という作業がなくなります。出張者・承認者・経理部門のそれぞれの負荷を軽減できる仕組みです。
危機管理機能

従業員の安全を守るための高度な危機管理機能を提供します。
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出張者の所在把握
Concur Risk Messagingにより、予約情報・旅程データを基に出張者の所在を管理画面のマップ上に表示する。どの国のどの都市に従業員がいるかをリアルタイムで可視化できる。
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安否確認・緊急連絡
有事の際には、特定地域にいる出張者をリストアップし、安否確認や緊急連絡を行える。提携する危機管理サービスと連携し、世界中のリスク情報を収集して影響を受ける出張者に自動で注意喚起する。
テロ・自然災害・感染症といった緊急事態が発生した際、「該当地域に自社の出張者が何名いるか」を即座に把握できるかどうかは、安全配慮義務(Duty of Care)の観点から企業にとって重大な課題です。SAP Concurが提供するRisk Messagingのような危機管理ソリューションと連携することで、この課題に対処できます。
SAP Concurの2026年主要アップデート

SAP Concur Fusion 2026(2026年3月開催)で発表された主なアップデートを整理します。Concur Travel固有の更新に加え、Expense側を含むSAP Concur全体の更新も含まれます。なお、以下の機能には日本では未提供のものが含まれます。
以下のテーブルで、2026年に発表・段階展開が進む主な機能をまとめました。
| 機能 | 概要 | 提供状況 | 対象 |
|---|---|---|---|
| Joule AI統合 | Complete内にSAPの生成AI「Joule」を組み込み、出張手配の問合せ対応を自動化 | 2026年Q2予定 | Travel |
| 経費自動化エージェント | 経費報告書の作成・入力を自動処理するJouleエージェント | Early Adopter Care経由、GA は2026年後半予定 | Expense |
| 経費事前監査エージェント | 提出前に領収書を検証し不一致を検出するJouleエージェント | Early Adopter Care経由、GA は2026年後半予定 | Expense |
| American Express Virtual Card | Concur Expense内でバーチャルカードを作成・管理し、Concur Travelでも利用可能 | 米国の一部AmEx法人顧客に先行提供中、Q3 2026に対象顧客へ順次拡大予定 | Expense / Travel |
| Egencia連携 | Amex GBTのEgencia予約データをConcur Expenseに自動連携 | 2026年4月GA | Expense |
| Microsoft 365 Copilot連携 | Microsoftアプリ内から経費報告書の作成・旅行予約が可能 | 発表済み | 全体 |
特にComplete by SAP Concur & Amex GBTは、予約・サービス・決済・精算を一体化する共同開発ソリューションです。SAP JouleがAmex GBTの問合せデータとサプライヤーマーケットプレイスデータで学習し、出張者の質問に回答する仕組みが開発されています。ライブの旅行カウンセラーへの自動引き継ぎ機能もパイロット中で、AI対応と人的サポートを組み合わせた支援が計画されています。
SAPのAI戦略全体を把握したい方はSAP Business AIの解説記事も参考になります。
Concur Travelの導入事例

実際にConcur Travelを導入した企業の成果を3件紹介します。
出張データ可視化で約2千万円のコスト削減:横河電機

参考/出典:導入事例・横河電機株式会社
出張者の所在把握と災害時の行動管理を目的にConcur Travelを導入し、関連部署とのシームレスな連携体制を構築しました。
以下が主な導入成果です。
- 移動手段・滞在先の集中手配により約2千万円のコスト削減
- Intelligenceを活用したデータ分析が可能に
- 個人立替の削減と法人カード利用の促進
アフターコロナの海外出張管理を効率化:東京応化工業

参考/出典:導入事例・東京応化工業株式会社
アフターコロナを見据えた海外出張管理にConcur Travelを導入し、法人カードや複合機による領収書読み取り機能との連携で入力レスを実現しました。
以下が主な導入成果です。
- 旅費規程に準拠した入力と入力ミス防止の仕組みを構築
- 経費実績データの可視化によるコスト最適化
- 承認者・管理部門の業務負荷軽減
航空券単価18%減と海外出張の一元管理:オリンパス

参考/出典:導入事例・オリンパス株式会社
経費精算と航空券手配を一元化するためにSAP Concurを導入し、ベストプラクティスに合わせた運用見直しで業務負荷とコストの削減を実現しました。
以下が主な導入成果です。
- 航空券単価が導入前と比べ18%減少
- 海外出張の一元管理が可能に
- 安全面とコスト面の双方を担保
3社に共通するのは、出張データの可視化がコスト削減施策の起点になっている点です。「どの路線にいくらかかっているか」「規定外予約がどの程度発生しているか」が見えるようになると、航空会社との包括契約見直しや宿泊ランクの適正化といった具体的な施策に落とし込めます。
Concur Travelと他の出張管理システム(BTM)の比較

出張管理システム(BTM)は、Concur Travel以外にも複数の選択肢があります。ここでは、国内でよく比較される代表的なBTMとの違いを整理します。
以下のテーブルで、Concur Travelとビズバンス・AI Travelの主な違いをまとめました。
| 項目 | Concur Travel | ビズバンス | AI Travel |
|---|---|---|---|
| 提供元 | SAP Concur | JTBビジネストラベルソリューションズ | AIトラベル株式会社 |
| 主な対象 | 中堅〜大企業(グローバル) | 中堅〜大企業(国内中心) | 中小〜中堅企業 |
| 海外出張 | 150ヵ国以上で利用可能・多通貨 | JTBネットワーク経由で対応 | 対応あり |
| 経費精算連携 | Concur Expense自動連携 | 自社ワークフロー内蔵 | 外部サービス連携 |
| 危機管理 | Risk Messagingと連携可能 | 搭載 | なし |
| AI機能 | Joule(2026年Q2〜) | ー | AIによる最適提案 |
| 料金 | 個別見積り | 個別見積り | 要問合せ |
| 特徴 | Expense一体型・グローバル統合 | JTBの旅行コンテンツ・国内ネットワーク | 最短5分予約・シンプルUI |
この比較で押さえるべきは、3サービスが「得意領域」で住み分けている点です。グローバル出張が多く経費精算まで一気通貫で管理したい企業にはConcur Travelが強い選択肢です。国内出張が中心でJTBの旅行コンテンツを活かしたい場合はビズバンスが候補に上がります。出張件数が少なくまずは手軽にBTMを導入したい場合は、AI Travelのようなシンプルなサービスが向いています。
導入判断で詰まる論点

出張管理システムの選定で実際に判断が難しくなるのは、以下の3つのポイントです。
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海外出張の比率がどの程度か
海外出張が全体の3割を超える場合、多言語・多通貨・危機管理機能の有無が選定の決め手になる。Concur Travelは150ヵ国以上で利用可能なグローバル対応力を持ち、Risk Messagingなどの危機管理ソリューションとも連携できるため、グローバル比率が高い企業との相性が良い。
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経費精算システムとの連携方式
すでにConcur Expenseを導入済みであれば、Concur Travelとのデータ自動連携は最大のメリットになる。一方、他社の経費精算システムを使い続ける場合はAPI連携の可否を確認する必要がある。
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旅行代理店(TMC)との関係
既存のTMC契約がJTBグループの場合、ビズバンスとの親和性が高い。TMCを切り替える予定がない場合は、現行のTMCがConcur Travelと接続可能かどうかを事前に確認すべきである。
判断に迷った場合は、「海外出張比率」と「Concur Expense導入有無」の2軸で絞り込むのが最も効率的です。両方に該当する企業であれば、Concur Travelが第一候補になるケースが多いです。
Concur Travel導入のメリットと注意点

Concur Travelの導入で得られる効果と、事前に把握しておくべき注意点を整理します。
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出張コストの可視化と削減
全従業員の予約が一元管理され、出張費の全体像がリアルタイムに可視化される。費用傾向の分析により、航空会社の統一やホテルランクの制限といったコスト削減施策を立案できる。
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出張規定の遵守によるガバナンス強化
規定超過の予約には即座にアラートが表示され、ルール違反を未然に防止する。監査対応時の照合作業も削減され、コンプライアンス体制が強化される。
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出張者と管理部門の生産性向上
申請から手配・精算までの手間が大幅に自動化され、出張者は本来の業務に集中できる。承認者や経理部門の負荷も軽減される。
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従業員の安全確保(Duty of Care)
出張者の所在把握と有事の迅速なコミュニケーションにより、安全配慮義務を高いレベルで果たせる。テロ・自然災害・感染症発生時に該当地域の出張者を即座にリストアップし、安否確認・避難指示を実行できる。
導入前に確認すべき注意点
メリットが多い一方で、導入前に確認しておくべきポイントもあります。
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中小企業にはオーバースペックになる場合がある
Concur Travelはグローバル展開する中堅〜大企業向けに設計されている。従業員50名以下で国内出張のみの企業の場合、機能を持て余す可能性がある。出張件数が月間10件未満なら、まずはシンプルなBTMから始めるのも一案である。
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初期設定と規定登録に時間がかかる
出張規定・承認ルート・TMC接続などの初期設定は、企業の規模や規定の複雑さに応じて数週間〜数ヵ月を要する。導入パートナーの支援を受けながら段階的に進めるのが現実的である。
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既存の旅行代理店(TMC)との調整が必要
Concur Travelは複数のGDS・TMCと接続可能だが、すべてのTMCが対応しているわけではない。現在利用中のTMCがConcur Travel対応済みかどうか、導入検討の初期段階で確認すべきである。
月間の出張件数が50件を超えているにもかかわらず、Excel管理やメール申請で運用を続けている場合、規定違反の見落としやコスト超過が発生している可能性があります。出張管理の「見えていないコスト」を可視化するだけでも、年間で数百万円単位の改善が見込めるケースは少なくありません。
まずは現在の出張件数と年間出張費を整理し、BTM導入による削減効果を試算するのが第一歩です。Concur Travelの公式サイトから資料を請求し、導入パートナー経由でPoC(概念実証)を依頼する流れが一般的です。
Concur Travelの料金体系

Concur Travelの料金は、企業の利用状況に応じた個別見積りが基本です。
以下のテーブルで、料金を決定する主な要素を整理しました。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 利用従業員数 | 出張手配を行うユーザー数。規模に応じた従量課金 |
| 月間出張件数 | 予約トランザクション数。利用規模に応じて条件が変わる |
| TMC接続 | 旅行代理店との接続有無。TMC経由の手配にはTMC側の費用も加算 |
| ソリューション構成 | Expense・Invoiceとの組み合わせにより契約条件が異なる |
| 危機管理オプション | Risk Messagingなどの付加サービス。契約内容により含まれるかが異なる |
Concur TravelはConcur Expenseとセットで導入されるケースが多く、Travel単体での料金が公開されていないのが実情です。正確な費用は、公式サイトまたは導入パートナー(NTTデータ、富士ソフト等)経由で見積りを取得する必要があります。
見積りを依頼する際は、利用予定のユーザー数・月間出張件数・連携予定のTMC名・Expense/Invoiceの導入有無を整理しておくと、正確な提案を受けやすくなります。経費精算の自動化と組み合わせた全体最適の観点で検討するのが効果的です。
出張管理のデータをAIが業務に活かす仕組み
Concur Travelが出張の手配と管理を効率化した後に残るのは、申請書の作成・承認ルートの確認・精算データの突合といった定型的な後処理です。出張申請Agentがこれらの工程を自動処理することで、出張者と経理担当者の双方の負担を軽減できます。
AI Agent Hubは、SAP Concurと連携し、出張申請Agentが規定に基づく申請処理を自動化し、フロー判定Agentが承認ルートを自動決定するエンタープライズAI基盤です。Concur ExpenseとのデータをTeams上で一元的に扱えるため、出張にまつわる業務フロー全体を見渡した最適化が可能です。
AI総合研究所では、SAP Concur環境における出張管理・経費精算のAI自動化を支援しています。無料の資料で全体像をご確認ください。
出張管理データをAI業務自動化に活用
申請から精算までAIエージェントが支援
出張申請Agentが規定に基づく申請処理を自動化し、経費精算との連携まで一気通貫で実行。自社テナント内で完結するAI基盤の詳細を無料資料でご確認いただけます。
まとめ
Concur Travelは、出張の手配から管理・精算連携までを自動化するSAP Concurの出張管理ソリューションです。
本記事のポイントを整理します。
- オンライン予約機能(OBT)で出張規定に準拠した手配を実現し、コスト削減とガバナンス強化を同時に達成
- Concur Expenseとのデータ連携で申請から精算までの手作業を大幅に削減
- 危機管理機能により出張者の所在把握と有事の安否確認を迅速に実行
- 2026年にJoule AI・Complete提携・Virtual Card・Egencia連携が発表され、出張管理のAI化が段階的に展開中
- 導入事例では約2千万円のコスト削減や航空券単価18%減を実現
- BTM選定は「海外出張比率」と「Concur Expense導入有無」の2軸で判断するのが効率的
出張管理をExcelやメールベースで運用しているなら、まず現在の年間出張費と月間出張件数を整理し、BTM導入による削減効果を試算してみてください。公式サイトから資料を請求し、導入パートナー経由で自社の出張規定に合ったPoC(概念実証)を依頼するのが次の一歩です。







