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SAP BTPとは?DXの鍵「Keep the Core Clean」を支える技術基盤を徹底解説

この記事のポイント

  • SAP BTPは、SAPおよび非SAPのアプリケーションを横断して統合・拡張・自動化・データ&AIを提供するマルチクラウドのテクノロジープラットフォームである。
  • SAPの拡張戦略「Keep the Core Clean」の中核を担い、Side-by-Side拡張によりアドオン開発の課題を解決する。
  • アプリケーション開発、プロセス自動化、統合、データと分析、人工知能の5つの主要機能領域を提供する。
  • 2026年にはJoule Agent Builder GA、SAP Build Code強化、BTP ABAP Environment 2602リリースなど進化が加速している。
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

SAP BTP(Business Technology Platform)は、SAPおよび非SAPのアプリケーションを横断して統合・拡張・自動化・AI活用を実現するマルチクラウドのテクノロジープラットフォームです。
SAP S/4HANAの拡張戦略「Keep the Core Clean」の中核を担い、アドオン開発の課題を解決します。
本記事では、SAP BTPの基本概念から5つの主要機能、2026年最新動向、業務シーン別の活用事例まで体系的に解説します。

SAP BTPとは

SAP BTPとは
出典:SAP BTP

SAP BTP(Business Technology Platform)は、SAPおよび非SAPのアプリケーションを横断して統合・拡張・自動化・データ&AIを提供するマルチクラウドのテクノロジープラットフォームです。SAP S/4HANAを含む各種業務システムの価値を高めるための技術基盤として位置づけられています。

SAP BTPの基本概要

SAP BTPは、アプリケーションの開発、データの分析、システムの連携、AIの活用といった、DXに不可欠なさまざまな機能を「サービス」として提供するマルチクラウド対応の統合プラットフォームです。

PaaS(Platform as a Service)としての性質も持ち合わせており、企業はサーバーなどのインフラを自社で管理する必要がありません。必要な機能を必要なだけ、迅速に利用開始できるのが大きな特徴です。

SAP BTPの全体像
出典:SAP BTP

SCPからの進化

SAP BTPは以前「SCP(SAP Cloud Platform)」と呼ばれていました(2021年1月に正式にリブランディング)。SCPは主にアプリケーション開発とシステム連携の機能を提供するPaaSでした。

その後、データ分析やAI、業務自動化といった機能が統合され、より包括的なプラットフォームへと進化したのが現在のSAP BTPです。単なる開発基盤から、企業のビジネスプロセス全体を支援するテクノロジー基盤へと役割を拡大しています。

SAP BTPが実現するインテリジェントエンタープライズ

SAPはデータに基づいたインテリジェントな経営を実現する企業像を「インテリジェントエンタープライズ」と提唱しています。

SAP BTPはこの構想を実現するための技術的な中核を担います。S/4HANAが持つ経営データと、BTPが提供する最新のデジタル技術(AI、分析、自動化など)を組み合わせることで、企業はよりスマートで迅速な意思決定が可能になります。


SAP BTPが重要な理由

SAPが推進する拡張戦略の中核概念「Keep the Core Clean」を理解することが、BTPの価値を捉えるうえで不可欠です。

アドオン開発が抱える課題

これまで多くの企業では、SAP ERPの標準機能でカバーできない業務要件を満たすため、ERPの内部プログラムを直接改修する「アドオン開発」を行ってきました。

しかし、アドオン開発はシステムの構造を複雑化させ、ブラックボックス化する温床となっていました。特にバージョンアップ時には膨大な数のアドオンの検証・修正が必要となり、多大なコストと時間の負担が発生します。SAP S/4HANAへの移行を阻む2027年問題の一因とも言われています。

Side-by-Side拡張によるコアシステムの保全

SAP BTPはこの課題を解決するために「Keep the Core Clean(コアをきれいに保つ)」というアプローチを提唱しています。ERPのコア機能(S/4HANA)への改修は最小限にとどめ、追加機能は外部のプラットフォームであるSAP BTP上で開発するという考え方です。

この開発手法は「Side-by-Side拡張」と呼ばれます。ERP本体と追加機能が疎結合になるため、ERPのバージョンアップが追加機能への影響を最小化し、スムーズに実施できるようになります。

なお、S/4HANA Cloudでは本体側に用意されたAPIや拡張ポイントを利用する「In-App拡張」という手法もあり、要件に応じて使い分けることが推奨されています。

In-App拡張とSide-by-Side拡張

アップグレードの迅速化とTCO削減

「Keep the Core Clean」を実践することで、企業は常に最新のS/4HANAのイノベーションを享受し続けることができます。アップグレードにかかるコストや期間を削減できるため、システムの総所有コスト(TCO)の削減にも貢献します。


SAP BTP導入のメリット

SAP BTPを戦略的に活用することで、企業は以下のようなメリットを得られます。

ビジネス変化への俊敏性向上

ローコード開発や豊富な連携テンプレートを活用することで、市場や顧客のニーズに応える新しいサービスやアプリケーションを迅速に市場投入できます。従来の開発では数ヶ月かかるシステム改修も、BTPなら数週間で実装可能な場合が多く、競争優位性の確保につながります。

システム運用の柔軟性と安定性の両立

「Keep the Core Clean」により、基幹システムの安定性を維持しながらビジネス要件に応じた柔軟な機能拡張が可能です。新しい機能はBTP側に追加されるため、S/4HANAへのバージョンアップ時の検証・修正コストが大幅に削減されます。

データドリブンな意思決定の促進

社内外にサイロ化していたデータをBTP上で統合・分析することで、これまで見えなかったインサイト(洞察)を得られます。分析機能とAI機能を組み合わせることで、需要予測や異常検知といった高度な分析も実現できます。

既存IT資産の価値最大化

SAPシステムだけでなく、他社システムやオンプレミスシステムもBTPをハブとして連携させることで、既存のIT資産を活かしながらDXを推進できます。全システムの更新ではなく段階的にDXを進められるため、投資効率が大幅に向上します。


SAP BTPの主要機能

SAP BTPの機能
参照:SAP BTP

SAP BTPは5つの主要な機能領域で構成されています。以下にそれぞれの概要を紹介します。

アプリケーション開発(SAP Build Apps)

プログラミングの専門家でなくても、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で業務アプリケーションを開発できるローコード/ノーコード開発ツールです。現場の業務担当者が自ら必要なアプリを作成し、業務改善をスピーディに進めることを可能にします。

プロセス自動化(SAP Build Process Automation)

請求書処理やデータ入力といった定型的な手作業を自動化するRPA機能や、申請・承認などのワークフローを管理する機能を提供します。業務の効率化とヒューマンエラーの削減に貢献します。

統合(SAP Integration Suite)

SAPシステムと他社のクラウドサービス(Salesforce、Microsoft 365など)、自社のオンプレミスシステムなど、社内外に散在するさまざまなシステムをスムーズに連携させるサービスです。事前に用意された多数の連携テンプレートにより、開発コストを抑えながら迅速なシステム連携を実現します。

データと分析(SAP Analytics Cloud、SAP Datasphere)

社内外のさまざまなデータを収集・統合し、ビジネスの意思決定に役立つ形に分析・可視化するサービスです。経営状況をリアルタイムで把握するダッシュボードの作成や、AIを活用した需要予測などが可能です。

人工知能(SAP Business AI)

SAP Business AIとして提供されるビジネス向けAI機能群です。請求書からのデータ自動抽出や顧客問い合わせメールの自動分類など、ビジネス用途に特化したAIモデルをサービスとして提供します。AI Foundation上のGenerative AI Hubにより、複数のLLMベンダーへのアクセスも一元管理できます。


SAP BTPの活用事例

実際の業務シーンでSAP BTPがどのように活用されるかを具体例で紹介します。

営業部門の見積もりアプリ開発

顧客管理にSalesforce、基幹システムにS/4HANAを利用している企業では、BTPの統合機能で見積もり情報や在庫情報をリアルタイムに連携させ、営業担当者が外出先で使うモバイル見積もりアプリをBTPのローコード開発で作成できます。

製造部門の予知保全ダッシュボード

工場の機械に取り付けたIoTセンサーから稼働データを収集し、BTPに集約します。分析機能で故障の予兆を検知し、結果をダッシュボードで可視化することで、計画外の生産停止を事前に防ぐことができます。

経理部門の請求書処理自動化

取引先から受け取ったPDF形式の請求書をBTPのAIサービスで読み取りデータ化し、S/4HANAへの転記作業をRPAで自動化することで、経理部門の入力作業を大幅に削減できます。

人事部門の申請・承認モバイルアプリ

従業員が行う経費精算や休暇申請などをスマートフォンから簡単に行えるFiori風のモバイルアプリをBTPで開発できます。上長もスマホから承認でき、申請から承認までのリードタイムを短縮できます。


SAP BTPの2026年最新動向

2026年に入り、SAP BTPはAI・開発者体験の面で大幅な強化が行われています。

  • Joule Agent Builder GA
    Joule Studio Agent Builderが一般提供を開始。MCP(Model Context Protocol)サーバー統合やマルチエージェント連携に対応し、企業が自社の業務に特化したAIエージェントを構築できる。

  • SAP Build Code強化
    SAP Build Code内でJouleを活用したフリースタイルUI5アプリの生成が可能に。また、SAP Build Extensibility WizardがSAP SuccessFactorsにも対応し、プロセス作成やUI拡張の範囲が拡大した。

  • BTP ABAP Environment 2602
    Collaborative Draft(複数開発者によるドラフト共同編集)やAIベースのRecommendations機能が導入され、開発者の生産性が向上した。

  • Edge Integration Cell強化
    SAP HANAをデータベースおよびデータストアとしてサポートし、PostgreSQLやRedisの代替としてデータ永続化レイヤーを統合できるようになった。


SAP BTPに関するFAQ

SAP BTPについてよくある質問をまとめました。

Q1. SAP FioriとSAP BTPの違いは何ですか?

SAP Fioriはユーザーインターフェース(UI/UX)の設計思想であり、ユーザーが直接触れる画面そのものを指します。一方、SAP BTPはそうしたFioriアプリを開発したり、裏側でデータを連携させたりするための技術基盤(プラットフォーム)です。FioriアプリをBTP上で開発することも多く、両者は密接に関係しています。

Q2. SAP BTPの料金体系はどのようになっていますか?

SAP BTPは、利用するサービスや量に応じた従量課金制や、定額のサブスクリプションなど、複数の契約モデルがあります。また、一部のサービスを無期限で試せる「Free Tier」プランも用意されています。これは期間限定の「Trial」とは異なり、本番アカウントで開始してそのまま有償プランへスムーズに移行できるのが特徴です。

Q3. SAP BTPを使いこなすにはどのようなスキルが必要ですか?

目的によります。ローコード開発ツールのSAP Buildなどは業務部門のユーザーも活用できます。一方、高度なシステム連携やプロフェッショナルなアプリ開発を行うには、クラウド技術やAPI、JavaScriptなどのプログラミング知識が必要になります。


まとめ

SAP BTPは、SAPのアプリケーションを横断して統合・拡張・自動化・AI活用を実現するマルチクラウドのテクノロジープラットフォームです。

本記事のポイントを整理します。

  • 「Keep the Core Clean」の中核を担い、Side-by-Side拡張でアドオン開発の課題を解決しアップグレードを迅速化
  • アプリケーション開発、プロセス自動化、統合、データと分析、AIの5つの主要機能領域を提供
  • 2026年にはJoule Agent Builder GA、SAP Build Code強化、BTP ABAP Environment 2602など進化が加速
  • Free Tierプランにより機能検証からスムーズに本番利用へ移行可能



SAP Business AIの詳細はSAP Business AIの解説記事を、RISE with SAPによる包括的な導入についてはRISE with SAPの解説記事もあわせてご覧ください。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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