この記事のポイント
2025年再編後の「RISE with SAP=変革プログラム/SAP Cloud ERP Private=実体クラウドサービス」の呼び分けを社内議論で揃える必要がある
ECC 2027年問題の対応では、RISE(Cloud ERP Private)かGROW(Public Edition)かはFit-to-Standard率とアドオン資産量で判断するのが現実的
FUEはサブスク契約で、契約期間やFUE増減条件は個別見積もりで確認すべき。ユーザー数×ロール×Advanced/Core/Self-Service/Developer構成比を見積もり前に固めるべき
2025年5月発表のCloud ERP Privateパッケージで、SAP LeanIX・SAP Signavio・SAP BuildなどがCloud ERP Privateパッケージに含まれる形で整理された
2026年Sapphireで発表されたJoule Assistants・Anthropic統合により、RISE顧客は初年度3アシスタント有効化・GROW顧客は全アクセスとなりAI活用前提が変わった

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
RISE with SAPは、2025年春のパッケージ再編で「企業がオンプレミスSAPからクラウドへ移行するための包括的な変革プログラム」を指す呼び名へと位置づけが変わりました。
実体のクラウドサービスは「SAP Cloud ERP Private」と呼ばれ、S/4HANA Cloud Private Edition・SAP Build・Signavioなどを束ねた一体パッケージとして提供されます。
本記事では、最新のパッケージ構成・FUEライセンスと料金体系・GROW with SAPやオンプレとの違い・2026年のJoule/Anthropic統合動向・2027年問題への対応軸まで、2026年6月時点の情報で整理します。
目次
RISE with SAPとは?2025年再編で変革プログラム名に位置づけが変わった
SAP Business Suite Packagesでの位置づけ
S/4HANA Cloud Private Editionの役割
従来オンプレSAP・GROW with SAP・IaaS構成との違い
2027年問題とTransition Optionによる移行猶予
SAP Cloud ERP Privateパッケージの構成要素
2026年最新動向:Joule・Anthropic・Autonomous Enterprise
RISE with SAPとは?2025年再編で変革プログラム名に位置づけが変わった
RISE with SAPは、SAPが2021年に提供開始した、オンプレミスSAP ERPからクラウドへの移行と業務変革を一体で支援する包括オファリングです。
2025年4月のパッケージ再編で位置づけが変わり、現在は「RISE with SAP」は変革ジャーニーそのものを表す名称、実体のクラウドサービスは「SAP Cloud ERP Private」と呼ばれています。
本セクションでは、RISE with SAPの基本定義と、SAP Cloud ERP Privateとの呼称関係、そしてSAP Business Suite Packagesの中での位置づけを整理します。

変革プログラム名と実体サービスの呼び分け
2025年春以降、SAP公式は「RISE with SAP」と「SAP Cloud ERP Private」を以下のように使い分けています。

| 名称 | 意味 |
|---|---|
| RISE with SAP | オンプレミスSAP ERPからクラウドへ移行し、Intelligent Enterpriseを実現する変革ジャーニー全体を指す呼び名 |
| SAP Cloud ERP Private | 上記ジャーニーの中核となるクラウドサービスのパッケージ名(S/4HANA Cloud Private Editionを核とする一連の提供物) |
かつて「RISE with SAPに含まれるサブスクリプション」と呼ばれていたサービス群は、現在「SAP Cloud ERP Privateパッケージ」と再ラベリングされています。
混乱しやすいポイントですが、契約・見積もりの場面で「RISE with SAP」と「SAP Cloud ERP Private」がどちらも登場する場合、ベンダー側がどちらの意味で使っているかを必ず確認することが大切です。本記事では原則として「SAP Cloud ERP Private」を実体サービス、「RISE with SAP」を変革プログラム全体として使い分けます。
SAP Business Suite Packagesでの位置づけ
2025年再編の上位枠組みとして、SAPは「SAP Business Suite Packages」を導入しました。

以下の表で、Business Suite Packagesに含まれる2系統の整理を示しました。
| 系統 | 中核となるエディション | 想定顧客 | 旧称 |
|---|---|---|---|
| SAP Cloud ERP Private | S/4HANA Cloud Private Edition | 大企業・カスタマイズ重視・既存ECC資産あり | RISE with SAP |
| SAP Cloud ERP(Public Edition) | S/4HANA Cloud Public Edition | 中堅・SaaS型志向・標準業務優先 | GROW with SAP |
「RISE with SAP」と「GROW with SAP」は今もキャンペーン名・ジャーニー名として併用されていますが、契約上の中核は「SAP Cloud ERP Private」と「SAP Cloud ERP」に整理されました。SAP公式の購入ガイドでもこの整理が反映されています。
S/4HANA Cloud Private Editionの役割
SAP Cloud ERP Privateの中核を担うのが、SAP S/4HANA Cloud Private Editionです。

SAPが示すCloud ERP中心の製品アーキテクチャ。S/4HANAの3 flavorsとBTP基盤の関係を整理(出典:SAP RISE with SAP Pricing & Packaging)

半円の中央にCloud ERPが置かれ、その外側に業務領域(spend management・supply chain・HR・CRM等)が並ぶ構成です。基盤として SAP Business Technology Platform(BTP)が置かれ、SAP S/4HANA は public edition・private edition・on-premise の3 flavors で提供されると整理されています。本記事で扱うCloud ERP Privateは、この3 flavorsの中央に位置するクラウドオファリングです。
S/4HANA Cloud Private Editionは、SAPがマネージドサービスとして運用するプライベートクラウド上のS/4HANAで、AWS・Microsoft Azure・Google Cloudの3大ハイパースケーラーから稼働基盤を選択できる設計になっています。
オンプレミスのS/4HANAやECCと同等のカスタマイズ自由度を保ちつつ、インフラ運用・OS/DBパッチ適用・モニタリング・障害対応・バックアップなど、運用面の責任をSAP側に移管できる点が大きな違いです。
すでに数十年単位でECCを運用してきた大企業にとっては、業務アドオンや拡張プログラム(ABAPコード)を持ち込みつつクラウドの恩恵を受けられる現実解として位置づけられています。
従来オンプレSAP・GROW with SAP・IaaS構成との違い
RISE with SAP(Cloud ERP Private)を理解するうえで重要なのが、混同しやすい他形態との明確な切り分けです。
判断を早めるため、まず「どれを選ぶべきか」を一発で見渡せる選定早見表を示し、そのあとオンプレSAP・GROW with SAP・IaaSの3形態について個別に整理します。
4形態の選定早見表
ERP更改で候補に上がる4形態を、判断軸ごとに横並びで整理しました。

| 観点 | RISE with SAP(Cloud ERP Private) | GROW with SAP(Cloud ERP Public) | SAP on IaaS(AWS/Azure等) | 他ERP SaaS(Dynamics 365 BC・NetSuite等) |
|---|---|---|---|---|
| 主な対象 | 大企業・ECC資産あり | 中堅・標準業務志向 | 自社で運用設計を握りたい大企業 | 中小〜中堅・スコープ限定 |
| 運用責任 | SAP(マネージド) | SAP(マネージド/SaaS) | 自社・SIer | ベンダー(SaaS) |
| カスタマイズ | 高(アドオン・ABAP・BTP拡張可) | 低(標準範囲+限定拡張) | 高(オンプレ同等) | 低〜中(業界別SaaS有) |
| 稼働開始の目安 | 6か月〜2年 | 最短4週 | 個別設計(自社判断) | 数週間〜数か月 |
| バージョンアップ | 計画的・SAPと協議(FPS適用) | 自動適用(年2回) | 自社判断 | ベンダー側で自動適用 |
| ライセンス | サブスク(FUE) | サブスク(FUE) | 永続 or サブスク選択 | サブスク |
| 2027年問題対応 | ○ 条件該当時はTransition Option(2033まで)も検討可 | ○ グリーンフィールド前提なら | △ オンプレ更新と同じ作業負荷 | × SAP資産の移行はゼロからやり直し |
横並びで眺めると、**自社業務の「標準化度」と「既存ECC資産の量」、そして「2027年問題の制約」**の3軸でほぼ判断が決まることが分かります。
ECC資産が多くカスタム業務が業界要件で必須ならRISE(Cloud ERP Private)、標準業務に寄せられる中堅企業はGROW、運用設計を自社で握りたい場合はIaaSで持ち込み、スコープが限定的なら他ERP SaaSと整理するのが実務的です。
ここから先は、RISE/Cloud ERP Privateと他形態それぞれの違いを順に深掘りします。
オンプレミスSAPとの違い
長年運用されてきたECCやオンプレS/4HANAと比較した場合、最大の違いは「インフラ運用責任の所在」です。

| 項目 | オンプレミスSAP | SAP Cloud ERP Private |
|---|---|---|
| 稼働基盤 | 自社データセンター or 自社契約のIaaS | SAP管理のハイパースケーラー(AWS/Azure/GCP) |
| インフラ運用 | 自社/SIer | SAP(マネージドサービス) |
| OS・DBパッチ | 自社/SIer | SAP |
| バージョンアップ | 自社判断 | SAPと協議の上で定期実施(FPS適用) |
| カスタマイズ | 自由 | 可能だがClean Core推奨 |
| ライセンス | 永続ライセンス+保守 | サブスクリプション(FUE) |
運用負荷の軽減と最新機能の継続提供という2つの効果が大きく、ECC保守終了に伴うコスト構造の見直しを進める企業の多くが、移行先としてCloud ERP Privateを検討しています。
GROW with SAPとの違い
GROW with SAP(実体は「SAP Cloud ERP」、旧S/4HANA Cloud Public Edition)は、中堅企業向けのSaaS型ERPです。

以下の表で、Cloud ERP PrivateとPublic Editionの差分を整理しました。
| 項目 | SAP Cloud ERP Private(RISE) | SAP Cloud ERP Public(GROW) |
|---|---|---|
| 想定企業規模 | 大企業(数千〜数万ユーザー) | 中堅企業(数百〜数千ユーザー) |
| 実装方針 | 既存資産持ち込み可(ブラウンフィールド可) | グリーンフィールド前提 |
| カスタマイズ | アドオン・拡張ABAP可 | 標準機能の範囲内(拡張制限あり) |
| バージョンアップ | 計画的(FPS適用、企業側選択肢あり) | 自動適用(年2回) |
| 稼働開始まで | 6か月〜2年 | 最短4週 |
| 業務適合 | カスタム業務要件をフィットしやすい | 標準業務に業務を寄せる |
判断軸を実務的に整理すると、「自社の業務がSAP標準にどれだけFitするか(Fit-to-Standard率)」と「既存アドオン資産をどう扱うか」の2点で決まります。Fitが高くアドオンが少なければGROW、Fitが低くアドオン資産が多いならRISEを軸に検討するのが現実的です。
IaaS構成との違い
「SAP on AWS」「SAP on Azure」と呼ばれる構成は、自社が直接AWS/Azureと契約してその上でSAP S/4HANAやECCを動かす方式です。SAP Cloud ERP Privateとは責任分界点が大きく異なります。

| 項目 | SAP on AWS/Azure(IaaS) | SAP Cloud ERP Private |
|---|---|---|
| IaaS契約 | 自社 | SAP |
| OS/DB管理 | 自社/SIer | SAP |
| SAPライセンス | 永続 or サブスクから選択 | サブスク(FUE) |
| 運用責任 | 自社/SIer | SAP(マネージドサービス) |
| クラウド最適化ツール | 自社調達 | パッケージ同梱(LeanIX/Signavio/Build等) |
IaaS構成は「自社で運用設計を細かく握りたい」「特定リージョン要件がある」「既存IaaSと統合する基盤を作りたい」場合に有効です。一方で、運用負荷をSAPに任せたい・AI拡張までパッケージで進めたい組織にとっては、Cloud ERP Privateの方が実務的負担が軽くなります。
【関連記事】
製造業向けERP比較13選|2026年AIエージェント対応の選定軸・費用を解説
2027年問題とTransition Optionによる移行猶予
SAP Cloud ERP Privateの検討を加速させている最大の外部要因が、ECC 6.0の保守終了——いわゆる「2027年問題」です。ECCを運用中の企業にとっては、構成や料金よりも先に「いつまでに何をすべきか」を整理することが重要になります。
本セクションでは、ECC保守期限の整理、SAPが2025年3月に発表したTransition Option、そして現実的な移行タイムラインの考え方を順に整理します。

ECC 6.0保守期限の整理
SAP ECC 6.0のメインストリーム保守期限は以下のとおりです。

| 区分 | 期限 | 条件 |
|---|---|---|
| メインストリーム保守 | 2027年12月31日 | SAP Business Suite 7コアアプリケーションの対象EHP(自社環境はPAM/SAP Noteで確認) |
| 延長保守 | 2030年12月31日 | EHP 6〜8対象、保守費用2%上乗せ |
| Transition Option | 2033年末まで延長可能 | 2030年末までのprivate edition移行コミット必須・SAP HANAのみ・最低2TB・Max Success Plan併用必須など追加条件あり |
「2027年問題」と呼ばれているのはメインストリーム保守の終了タイミングですが、延長保守を選択すれば2030年までは公式サポートが継続します。実務的には2030年12月31日が、ほとんどの企業にとって「猶予の最終ライン」と認識すべき期日です。
Transition Optionの条件
2025年3月、SAPは「数百のSAP ERPシステムを抱える最大規模・最複雑なランドスケープ」向けに、保守を2033年まで延長できるTransition Optionを発表し、2025年8月の追加アップデートで具体的な要件と料金構造を提示しました。

条件は以下のとおりです。
-
対象顧客
数百のSAP ERPシステムを含む最大規模・複雑なランドスケープを抱える企業(典型的には多国籍大企業)
-
購入可能時期
2028年以降
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利用期間
2031〜2033年
-
対象製品
SAP ERP Central Component on SAP HANA(SAP ECC on HANA)を中心とした対象製品。具体的な対象範囲はSAP Note 3591251で確認する
-
システム規模要件
Transition Optionで契約するシステムは最低2TBが必要
-
前提条件
利用前に「2030年末までにSAP ERP, private editionに移行」が必須。あわせて、SAP HANAへの移行や旧Javaなど非対応技術の除外といった技術的準備(mitigation coverage)も求められる
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対応データベース
SAP HANAのみ(旧Oracle DB・DB2は対象外)
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必須プラン
2031〜2033年のTransition Option利用は、追加の変革サービスを含むMax Success Plan(2026年1月一般提供予定)との併用が必須
-
料金扱い(契約時期で異なる)
2025年末までに契約済みの早期採用者は2031年に1:1移行で同等条件(uplift無し)/2026年加入顧客は2031年切替時に標準20% uplift/2027年以降のupliftは未公表で、2028年の購入可能時期近くに公表予定
つまりTransition Optionは「2030年に間に合わなくても2033年まで延ばせる救済オプション」ではなく、「2030年までにprivate editionへ移行することを前提に、その後SAP ECC on HANAを中心とした対象製品を2033年まで残せる選択肢」です。早期に契約コミットするほど移行時のupliftを抑えやすい設計で、SAPは大規模企業の移行プロジェクトが2030年に間に合わない現実を踏まえ、移行と運用の両立を可能にする仕組みとして用意しています。
移行タイムラインの考え方
ECC保守期限を踏まえると、現実的なタイムライン設計は以下のようになります。

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2026〜2027年
Fit-to-Standard評価、移行方針決定、ベンダー選定。Signavio・LeanIXで現状ランドスケープを可視化。
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2027〜2029年
パイロット部門・主要事業の移行実装。並行してアドオン整理。
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2029〜2030年
残り事業の移行・カットオーバー。延長保守の費用を払いつつ並行運用。
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2030年以降
Cloud ERP Private本番運用、Joule・SAP Build等のAI拡張への投資。
大企業ほどスコープが広く、移行期間も長くなります。AI総研の支援現場でも、大企業では2〜3年以上、グローバル展開を伴う場合はさらに長期化するケースが目立ちます。2026年時点でまだ意思決定が固まっていない企業は、Transition Optionの活用も視野に「2030年→2033年」の2段階構えで検討を進めるのが現実的です。
【関連記事】
PLM・ERP統合をAIで加速|主要製品の比較と国内事例を解説
SAP Cloud ERP Privateパッケージの構成要素
ここからは、移行先となるSAP Cloud ERP Privateパッケージそのものの中身を分解します。
SAP Cloud ERP Privateは、S/4HANA Cloud Private Editionに加え、変革ツールやAI拡張までを束ねた複合パッケージです。SAP公式発表によれば、構成は大きく3層に整理されています。
本セクションでは、ビジネスアプリケーション層・変革ツール層・クラウド最適化拡張層の3層に含まれるサービスを順に整理します。

ビジネスアプリケーション層
業務処理の中核を担うアプリケーション群です。

S/4HANA Cloud Private Editionが提供する業務モジュール群の俯瞰図(出典:SAP RISE with SAP Pricing & Packaging)

カバーする業務領域は、Procurement(調達)・Supply Chain(サプライチェーン)・Manufacturing(生産)・Sales(販売)・Service(サービス)・Finance(財務)・R&D(研究開発)・Asset Management(資産管理)・Human Resources(人事)の9領域。基幹業務のほぼ全体をパッケージでカバーする位置づけです。各領域に細かい機能サブセット(Cross-topic/Industry-specific等)が紐づく形で、業界ソリューションも同じポートフォリオの中に組み込まれます。
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SAP S/4HANA Cloud Private Edition
財務会計・管理会計・販売・購買・在庫・生産・サービスなどの基幹業務を担うERP本体。アドオン・カスタムABAPの持ち込みが可能。
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SAP Business Network Supplier Portal
購買取引のサプライヤー連携をクラウド経由で標準化するネットワークサービス。発注・出荷・請求・支払の双方向データ連携を扱う。
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SAP Enterprise Service Management
保守・修繕・サービス契約の管理を統合的に扱うサービスアプリケーション。
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SAP Taulia
売掛金・買掛金のキャッシュフロー最適化(サプライチェーンファイナンス)を担うソリューション。
これら4本はSAPが「業務処理の中核」と位置づけているサービス群で、Cloud ERP Private契約に含まれる場合が多い構成です。ただし契約条件・地域・契約規模によって同梱範囲が変わるため、実際の契約時には個別確認が必要です。
変革ツール・サービス層
オンプレからクラウドへの移行を実装段階で支える「進め方」のためのツール群です。

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SAP LeanIX
エンタープライズアーキテクチャ管理(EAM)ツール。既存システムランドスケープの可視化、移行ロードマップ策定、依存関係分析を支援。2024年にSAPが買収した製品。
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SAP Signavio
プロセスマイニング・ビジネスプロセス管理(BPM)ツール。現状の業務プロセスを可視化し、S/4HANA標準とのギャップを明らかにする「Fit-to-Standard」評価で多用される。
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エキスパートサポートとオンボーディング
SAP側のコンサルタントによる初期立ち上げ支援・運用フェーズ移行支援。
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カスタマイズロードマップ策定
個社固有の業務要件を整理し、標準機能・拡張機能・サードパーティ製品の3層に整理する設計プロセス。
2025年5月発表のSAP Cloud ERP Privateパッケージでは、SAP LeanIX・SAP Signavioが変革ツール層として明示的に含まれる形で整理されました。実際の同梱範囲は契約条件で確認する必要がありますが、PoC段階のコスト最適化として実務的に大きい選択肢です。
クラウド最適化・拡張サービス層
S/4HANAの周辺で、AI活用・データ統合・拡張開発を支えるサービスです。

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SAP Build
AI活用アプリケーション開発と業務プロセス自動化のためのプラットフォーム。コードファースト・ローコード・生成AI機能を備え、Joule統合のフロントエンドにもなる。
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SAP HANA Cloud
S/4HANAのデータを高速分析するインメモリデータベース。データレイク・データウェアハウス用途にも対応。
-
SAP Master Data Governance
マスターデータ(取引先・品目・勘定科目等)の中央管理・品質統制。複数システム間の整合性を保つ役割。
クラウド最適化層は、データ基盤・AIエージェント時代の業務再設計を視野に入れた拡張ラインです。とくにSAP Buildは2026年以降のJoule統合・SAP Business AI Platform連携の中核となる位置づけで、後段の「2026年最新動向」セクションで詳しく扱います。
FUEライセンスと料金体系
SAP Cloud ERP Privateのライセンスは、SAP独自のカウント方式「FUE(Full Usage Equivalent)」を採用しています。
本セクションでは、FUEの仕組み・ユーザータイプ・契約条件・コスト目安を順に整理します。

FUEの数え方と契約上の特徴
FUEは、ユーザーが実際にシステムをどれだけ利用するか(権限の重さ)に応じて、複数のユーザータイプを1つの「換算ユーザー数」に集約するライセンス方式です。
オンプレミス時代の「Named User」のように個別ユーザーごとにライセンスを買うのではなく、組織全体のFUE合計を契約します。これにより、契約期間中にユーザータイプの構成比を調整しても、契約FUE枠の中であれば追加料金が発生しません。
契約期間中のFUE増減条件は個別契約で規定されるため、初回見積もり時に「自社の業務範囲と利用者ロールを過剰見積もりしすぎない」設計が重要です。SI各社の解説では「期間中の増は柔軟、減は契約更新タイミングが原則」と紹介されるケースが多いですが、実際の運用ルールは契約書で確認することを推奨します。
ユーザータイプとFUE換算
FUE換算は、ユーザー権限の重さに応じて4つのカテゴリに分かれます。
| ユーザータイプ | 想定ロール | FUE換算 |
|---|---|---|
| Advanced Use | 経理財務責任者・購買管理者など、システム全機能を操作する権限保有者 | 1人 = 1 FUE |
| Core Use | 経費登録・伝票入力など特定業務を担当する一般ユーザー | 5人 = 1 FUE |
| Self-Service Use | 経費精算申請・休暇申請のみを行う従業員 | 30人 = 1 FUE |
| Developer Access | カスタム拡張・ABAP開発・SAP BTPでの拡張実装を担う開発者 | 1人 = 2 FUE |
Developer Accessは他3区分とは異なり、1ユーザーあたりの重みが2 FUEと最も大きい点に注意が必要です(SAP公式 RISE with SAP Pricing & Packaging資料)。
例として、Advanced 10人・Core 100人・Self-Service 1,500人・Developer 4人の組織の場合、合計FUE = 10 + 20 + 50 + 8 = 88 FUEとなります。
実務上は、Self-Serviceで吸収できる業務範囲をどこまで広げられるかでFUE合計が大きく変動するため、見積もり前の業務分析が極めて重要です。

Advanced/Core/Self-Service 3区分のSolution Capabilities詳細範囲(出典:SAP RISE with SAP Pricing & Packaging)

3区分で実際に許可される業務範囲は、SAP公式が機能カテゴリ別に詳細列挙しています。例えばAdvanced Useは購買・販売・在庫・生産・財務・人事を横断する Enterprise Management 機能をフル操作可能、Core Useは Goods Movement・Inventory Management・Production Control など中核業務に絞られ、Self-Service Useは Employee Self-Service の限定範囲のみが対象です。なお本図はEnterprise Management Use Rightsの3区分で、Developer Accessは別途のライセンス区分として規定されている点に留意してください。
コスト目安と契約条件
SAP公式の購入ガイド・Cloud ERP Privateの料金ページはいずれも個別見積もり導線で、標準価格レンジは公開されていません。導入支援費用は移行スコープ・既存システム規模・SIerの実装能力で大きく変動するため、複数社からの相見積もりを前提に検討する必要があります。

契約条件の典型は以下のとおりです。
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契約期間
契約期間は個別見積もりで確認
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支払い
年払い/半期払いをベンダーと協議
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FUEの増減
具体的な増減タイミングと条件は個別契約で規定(一般的には増が柔軟・減が更新タイミング中心と紹介されるが、見積もり時に契約条件で確認)
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アドオン機能
SAP Master Data Governance・SAP Business Data Cloudなど一部はパッケージ標準外で追加契約
契約後に「Self-Serviceで吸収できる業務をAdvancedで見積もってしまっていた」と気づくケースは多く、見直しタイミングが限られるFUEでは初期設計の精度がそのままコストに直結します。SAP公式の購入ガイドとSI各社の事例ブログを比較しつつ、見積もり提示前に「業務ロール×ユーザー数×ユーザータイプ」の3軸マッピングを完成させることを推奨します。
RISE with SAPのメリットと注意点
ここまでで違い・2027年問題・パッケージ構成・料金を見てきました。本セクションでは、採用後の運用視点でメリットと注意点を整理します。

運用負荷軽減と標準化のメリット
SAP Cloud ERP Privateを採用する最大のメリットは、ERP運用に必要なリソースを自社からSAPに移管できる点です。

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インフラ・OS・DB運用の代替
パッチ適用・障害対応・バックアップ・モニタリングをSAP側が担う。情シス部門の運用工数を削減し、業務支援に振り向けられる。
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継続的なバージョンアップ提供
FPS(Feature Pack Stack)単位で年複数回の新機能リリース。最新のAI機能・業界特化機能を契約期間中に取り込める。
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マルチクラウド対応
AWS・Azure・Google Cloudから稼働基盤を選べる。既存のクラウド戦略(例:Microsoft Azureを情報系基盤として採用済み)に合わせやすい。
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AI機能の同梱
SAP Build・Jouleアシスタントが標準パッケージで利用可能。AIエージェント基盤を別途調達するコストを抑えられる。
運用負荷軽減のメリットは大規模ECCを抱える企業ほど効果が大きく、年間の運用工数・データセンター費用・SI委託費の合計で見直すと、初年度の追加投資が中期で回収されるケースが多くなります。
アドオン制約とClean Core回避策
一方で、自由度の高いオンプレECCに慣れた組織にとって、Cloud ERP Privateには明確な制約があります。

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Clean Core推奨
SAPはコアシステムを「クリーン」に保つことを推奨。本体への直接的なABAP改修ではなく、SAP BTP(Business Technology Platform)・SAP Buildを使った外部拡張が原則。
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既存アドオンの再評価が必要
オンプレECC時代のアドオン資産は、移行プロジェクトで「廃止・標準化・外部実装に再配置」の3択を選別する必要がある。
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FPS適用の影響範囲
SAP側の定期アップデートで自社改修が動かなくなるリスクを抑えるため、Clean Core設計が現実的な前提となる。
回避策は、Signavioを使ってFit-to-Standard評価を初期段階で行い、業務をSAP標準にどこまで寄せられるかをデータドリブンに整理することです。標準化できない領域はSAP BTP・SAP Buildで外部拡張する設計に切り出す——この設計判断が、Cloud ERP Private成功の分岐点になります。
ベンダー依存と契約上の柔軟性
サブスクリプション契約と運用責任の移管によって、ベンダー依存度はオンプレ時代より上がります。

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契約期間中のFUE増減条件
ライセンス枠の増減タイミング・条件は契約で個別規定されるため、見積もり時の精度がコスト構造に直結する。
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ハイパースケーラー選定の見直し
AWS・Azure・GCPいずれを選んでも、契約後のクロスクラウド移行はSAP側との再調整が必要。
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撤退時のデータ持ち出し
契約終了後のデータエクスポート手順・期間・コストを契約時に確認しておく必要がある。
これらは「クラウドサブスク全般に共通する課題」ですが、ERPは業務の中枢を握るため撤退・移行を簡単に決定できない構造です。契約期間中の柔軟性を高めるには、SAP BTPで構築した拡張部分のポータビリティを高める設計と、FUE構成を継続的に見直す運用ルールが有効です。
2026年最新動向:Joule・Anthropic・Autonomous Enterprise
2025年再編後、SAPはCloud ERP PrivateにAIエージェント機能を急速に組み込んでいます。
本セクションでは、2026年2月のFPS01リリース、5月のSAP Sapphire 2026発表、そしてAnthropic Claudeとの統合を順に整理します。

FPS01のAIエージェント機能
SAP Cloud ERP Private 2025 FPS01は2026年2月にリリースされ、AI・データ・コア機能の3領域で大きな拡張が入りました。AI領域のポイントを以下にまとめます。

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R&D向け変更記録管理エージェント
製品設計の変更が他工程に与える影響を自律的に分析し、次のアクションを提案する。
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Joule統合の深化
従来「数分」かかっていたタスクが、対話型ショートカットで「わずか5秒」で完了するケースが報告された。
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業界特化型データ製品
小売・資産管理・サービス領域向けに、業務領域に最適化されたデータ製品を提供。データ前処理工程を短縮する役割。
FPS01のメッセージは「アシスタントからエージェントへの進化」で、ユーザーが対話的に質問するだけでなく、業務上のボトルネックを自律的に解消する方向にシフトしています。
Autonomous Enterpriseビジョン
2026年5月のSAP Sapphireでは、SAP CEOクリスチャン・クラインが「Autonomous Enterprise」というビジョンを打ち出しました。

主な発表は以下です。
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Joule Studio
ノーコード・プロコード・AIフレームワークを用いたエージェント・アプリ構築環境。
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Joule Assistants
50以上のドメイン特化アシスタント(財務・調達・サプライチェーン・人事・顧客体験)と、200以上の専門エージェントをオーケストレーション。
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Joule Work
デスクトップ・モバイル・音声に対応する新UI。ビジネス成果を自然言語で記述すると、必要なワークフロー・データ・エージェントが自動的に呼び出される。
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SAP Knowledge Graph
ビジネスエンティティ・プロセス・データ関係性の構造化マップ。AIエージェントが業務文脈を理解する基盤。
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€100M パートナー基金
Joule Studioを使ってAIアシスタント・エージェントを構築するパートナーへの投資枠。
Cloud ERP Private(RISE)契約者にとっての具体的な恩恵は「初年度に3つのJoule Assistantが有効化される」点です。Cloud ERP Public(GROW)契約者はオンボーディング時に全アシスタントへアクセスできる設計で、Public優先の打ち出しになっています。
加えてSapphire 2026の発表では、ECC・オンプレS/4HANA顧客の移行を支援するエージェント駆動の移行・モダナイゼーションツール群も同時に打ち出されました。システム分析・コード修復・構成・テストの工程をAIエージェントが自動化することで、ERP移行工数を35%以上削減できるとしています(35%という数値の算出根拠は公式リリースには示されていないため、社内のビジネスケース策定時は別途SI/SAPに根拠資料を確認することを推奨します)。クラウドERPへの移行コミットメントが利用条件となっており、RISE with SAPへの移行プロジェクトと直接接続する位置づけです。
Anthropic統合とMicrosoft連携
Sapphire 2026で大きな話題を集めたのが、Anthropicとの拡張パートナーシップです。

AnthropicのClaudeシリーズが、JouleとSAP Business AI Platform内部のreasoning層に採用される予定で、HR・調達・サプライチェーン領域のJouleエージェントを動かす推論モデルとして使われます。
加えてMicrosoftとの連携も強化され、Microsoft 365 CopilotとSAP Jouleが相互接続される設計が発表されました。RISE環境・GROW環境のSAPデータをMicrosoft 365側のワークフローから扱える構成です。
Anthropic・AWS・Google Cloud・Microsoft・NVIDIA・Palantir・Cohere等の戦略パートナーが横並びに名前を連ねており、特定ベンダー縛りではなくマルチAIプロバイダー戦略を選んでいるのがSAPの方針です。
AI総研の支援現場でも、SAP導入の検討フェーズで「2027年問題への対応」だけでなく「Joule+Anthropic統合を想定したAIエージェント基盤の整備」を同時に議論するケースが増えています。Cloud ERP Privateを単なるERP移行ではなく、AIエージェント時代の業務基盤として位置づけ直す視点が今後ますます重要になります。
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RISE with SAPが向く企業・向かない企業と導入ステップ
採用前の判断視点として、向いている企業・向いていない企業を整理し、そのあと導入ステップを示します。

向いている企業のパターン
以下のいずれかに該当する企業は、SAP Cloud ERP Privateが第一候補になりやすい状況です。
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既存のECCをグローバル展開している大企業
複数国・複数子会社で標準化されたERPを運用中。クラウドへの集約と運用負荷軽減の両方を必要とする組織。
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業務カスタマイズが業界要件で必須
化学・製薬・金融・自動車部品など、業界固有のプロセスを長年作り込み、Public Editionの標準範囲に収まらない企業。
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AIエージェント基盤を視野に入れた基盤更新
Joule+Anthropic統合を活かしたい、Microsoft 365 Copilotと連携した業務自動化を進めたい組織。
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2027年問題への対応が必須
ECC 6.0を運用中で、2030年延長保守までに移行を完了させる現実的な計画が必要な組織。
共通するのは「業務固有性が高く、ECC資産を持ち、AI活用を見据えている」プロファイルです。
向いていない企業のパターン
逆に以下に該当する場合、Cloud ERP Private以外の選択肢を優先したほうが合理的です。
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業務がSAP標準に高くFitする中堅企業
GROW with SAP(Public Edition)の方が短期間・低コストで稼働できる。
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会計・販売管理のみのスコープ
基幹業務の一部だけが対象なら、Microsoft Dynamics 365 Business CentralやNetSuiteなど別系統SaaS ERPも有力。
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少人数・少拠点で短期間に稼働させたい
RISE/Cloud ERP Privateの導入期間(6か月〜2年)が見合わない場合、SaaS型ERPやクラウド会計が現実的。
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業務要件が変化激しく定型化しづらい
頻繁な仕様変更を要する組織は、ERP標準化との相性が悪く、ローコード/ノーコード基盤との組み合わせを優先するべき。
「とりあえずSAPを入れたい」ではなく、自社業務の標準化度・規模・AI基盤要件を整理してから選定する姿勢が、結果的にコスト構造を最適化します。
Fit-to-Standard評価とアドオン整理
向き判定が済んだら、次に必須となるのが「Fit-to-Standard」評価です。これは、自社の業務プロセスをSAPの標準機能でどれだけカバーできるかを定量化する工程です。

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Signavioで現状プロセスを可視化
業務ログ・操作ログから現状のプロセスマップを生成。
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SAP標準機能とのギャップ分析
標準で実現可能な範囲・アドオンが必要な範囲・廃止可能な業務を3分類。
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アドオン残存の判断
標準で代替可能なものは廃止、廃止できないものはSAP BTP・SAP Buildで外部実装、特定業界要件はサードパーティ製品で補完。
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FUE構成試算へ反映
業務範囲と利用者ロールをユーザータイプ(Advanced/Core/Self-Service/Developer)にマッピングし、FUE合計を試算。
Fit-to-Standard率は公式に標準値が公開されているわけではなく、SI各社が実務目安として用いる指標です。一般的には率が低いほど標準化と外部実装の設計工数がふくらみ、移行プロジェクトが長期化しがちな傾向があります。逆に率が高いほど標準業務に寄せやすく、スピード優先の導入がしやすくなります。
導入検討の4ステップ
実務的な検討プロセスは、概ね4段階に整理できます。

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現状評価フェーズ
ECC/オンプレS/4HANAの利用状況、アドオン棚卸し、業務プロセス可視化、Fit-to-Standard率の試算。
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ライセンス見積もりフェーズ
ユーザータイプ別の人数試算、Advanced/Core/Self-Service/Developerの構成比決定、FUE合計の確定、SAP・パートナー経由での見積もり取得。
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ベンダー選定フェーズ
SAP直接契約・SIerパートナー経由・ハイパースケーラー連携の3経路を比較。実装能力・運用支援・業界知見・コミット度合いで判断。
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移行実装フェーズ
Signavio/LeanIXで具体的な移行ロードマップ策定、パイロット部門選定、データ移行・カットオーバー、本番運用。
SI各社の見積もり額・移行支援の質には大きな差があるため、複数社からの相見積もりと、可能であれば過去類似案件の実績を確認することを推奨します。SAP公式・SI公式のいずれにも掲載されているコイズミ照明・住友精化・古河電工グループなどの導入事例は、社内コンセンサスを得るうえでも参考になります。
なお、ここまで整理した導入ステップは「Cloud ERP Privateそのものの移行プロジェクト」を対象としていますが、現場が実際に直面する負荷はそれだけにとどまりません。経費精算・請求書処理・承認フローといった日常業務は移行プロジェクト中も走り続けるため、本体移行と並行して周辺業務をAIエージェントで自動化する設計を進めておくと、移行期間中の現場負荷を構造的に下げられます。次のセクションでは、その並走設計の考え方を整理します。
SAP移行と並走してAIエージェント基盤を整えるなら
ECC→Cloud ERP Privateの移行期間(6か月〜2年)が走る間も、経費精算・請求書処理・承認フローといった日常業務は止まりません。むしろ移行プロジェクトで現場の余裕が削られる時期だからこそ、AIエージェントによる業務自動化を並行で進めておく価値が高まります。
このレイヤーを担うのが、自社のAzureテナント内に構築するエンタープライズAIエージェント基盤です。AI総合研究所のAI Agent Hubは、Teamsから呼び出せる経費申請Agent・請求書受領Agent・自動入力Agentを組み合わせて、SAP Concur・freee会計・Dynamics 365などへの基幹システム連携を実現します。
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SAPデータを基幹系の外に出さず業務自動化
Azure Managed Applicationsとして顧客テナント内で動作。Cloud ERP Privateの基幹データはテナント外に流出しない設計で、ガバナンス要件と両立します。
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TeamsチャットからSAP業務を呼び出す
請求書受領・経費仕分け・承認フロー判定をAIエージェントが処理し、結果をTeamsで通知。Cloud ERP Privateと並行する日常業務の負荷を構造的に下げます。
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どこで構築したAgentも管理は1つのダッシュボード
n8n・Copilot Studio・Microsoft Foundryで構築した複数Agentを統合管理。実行ログ・権限・セキュリティスキャンを一元化し、シャドーAIの乱立を防ぎます。
AI総合研究所の専任チームが、SAP移行プロジェクトと並行するAIエージェント基盤の設計から運用まで伴走します。AI Agent HubのLPで、自社の経理・調達・人事業務にどう適用できるかをご確認ください。
SAPデータをAIで業務自動化に直結
Cloud ERP Private導入と並走する設計
経費精算・請求書処理・承認フローをAIエージェントが自動実行。自社Azureテナント内で動作し、SAP Concur・freee会計・Dynamics 365などへの基幹システム連携も含めて設計します。
まとめ:RISE with SAP導入判断で押さえるべき要点
本記事では、2025年のパッケージ再編後のRISE with SAP(SAP Cloud ERP Private)について、違い・2027年問題対応・構成要素・料金(FUE)・メリット注意点・2026年最新動向・向き不向き・導入ステップまで、2026年6月時点の情報で整理しました。要点を改めて整理します。
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2025年再編で「RISE with SAP」は変革プログラム名、「SAP Cloud ERP Private」が実体クラウドサービスとなり、契約・社内議論の場面で呼び分けが必要になった
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4形態(RISE/GROW/IaaS/他ERP SaaS)の選定軸は、自社業務の標準化度・既存ECC資産の量・2027年問題の制約の3軸でほぼ判断できる
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ECC 2027年問題への対応は2030年延長保守+Transition Option(2033年)の2段階構え。Fit-to-Standard率とアドオン資産量の評価が選定の最重要軸
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SAP Cloud ERP Privateパッケージは3層(ビジネスアプリ/変革ツール/クラウド最適化)で構成され、SAP LeanIX・SAP Signavio・SAP Buildなどが含まれる形で整理された
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FUE方式は柔軟だが、契約期間中の増減条件は個別契約で規定される。Advanced/Core/Self-Service/Developer構成比の事前設計がコスト構造に直結する
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2026年はFPS01のAIエージェント機能と Sapphire 2026のAutonomous Enterprise ビジョンが大きな転換点。Anthropic Claude統合・Microsoft 365 Copilot連携で、Cloud ERP PrivateはERPからAIエージェント基盤へと位置づけが拡張中
RISE with SAP(Cloud ERP Private)は、単なるオンプレ→クラウド移行ではなく、AIエージェント時代の業務基盤として位置づけ直す段階に入っています。2027年問題への対応を「最終期限のための移行」と捉えるのではなく、Joule・Anthropic統合を含むAI基盤への投資の起点と捉え直すことで、移行プロジェクトの社内合意形成が進めやすくなります。
まずは現状のECC利用範囲・アドオン資産・業務プロセスを棚卸しし、Fit-to-Standard率を試算するところから着手することが、最も実用的な第一歩になります。








