この記事のポイント
GitHub Copilot Enterpriseは、大規模開発組織向けのAIペアプログラマー最上位プラン
Businessプランの全機能に加え、組織ナレッジ連携や高度なセキュリティ機能を提供
GitHub Enterprise Cloud契約が前提で、ユーザーあたり月額$39(2025年12月時点のGitHub公式情報)
組織全体の生産性向上、セキュリティ強化、開発標準化、AI支援のカスタマイズが主なメリット
導入には計画的な準備、ポリシー設定、開発者トレーニング、効果測定が重要

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
「GitHub Copilotを全社導入したいが、セキュリティや管理機能は十分か?」「組織独自の開発スタイルに合わせてAIを最適化できないか?」
大規模な開発組織では、単に個々の開発者の生産性を上げるだけでなく、組織全体のガバナンス、セキュリティ、そしてナレッジ共有が重要な課題となります。
その解決策としてGitHubが提供するのが、最上位プラン「GitHub Copilot Enterprise」です。
本記事では、このエンタープライズ向けAIコーディング支援の全貌を徹底的に解説します。
Copilot Businessとの違い、組織ナレッジ連携、高度なセキュリティ機能、料金体系、導入・運用のポイントまで、詳しくご紹介します。
目次
GitHub Copilot Enterpriseの主要機能と特長
GitHub.com全体でのCopilot統合とエージェント機能
Copilot Spaces・カスタムモデルによる組織ナレッジ活用
GitHub Copilot Enterpriseの料金体系
GitHub Copilot EnterpriseとBusinessの違い
GitHub Copilot Enterpriseを導入するメリット
GitHub Copilot Enterpriseとは?
GitHub Copilot Enterpriseは、GitHubが提供するAIペアプログラマー「GitHub Copilot」のエンタープライズ向け最上位プランです。
大規模な開発組織における生産性向上だけでなく、セキュリティやガバナンス、組織ナレッジの活用を重視したい企業向けに設計されています。
Copilotの基本的なコード補完やチャットに加えて、GitHub Enterprise Cloudとの深い統合、組織のコード・ドキュメントを活用するためのコンテキスト機能(Copilot Spaces)、高度なポリシー管理や監査ログなど、エンタープライズ向けの機能が提供されます。
GitHub Copilot Enterpriseの主要機能と特長

Copilot Enterpriseは、Copilot Businessの機能をすべて含みつつ、次のような「エンタープライズならでは」の強みを持っています。
- GitHub.com全体への深い統合
PRやIssue、コード閲覧画面など、GitHubのUIのどこからでもCopilot Chatやエージェントを呼び出せる
- 組織ナレッジの再利用
Copilot Spacesやカスタムモデルを使い、コード・ドキュメント・議事録などを横断して参照できる
- エンタープライズ向けガバナンス
Enterpriseレベルのポリシー/監査ログ/利用レポートで、組織全体の利用状況を可視化・制御できる
- プレミアムリクエストと最新モデルへのアクセス
Businessより多いプレミアムリクエスト上限と、新機能・新モデルへの早期アクセスが可能
- GitHub Advanced Security(GHAS)などとの連携
CodeQLやSecret scanningと組み合わせて、「書く」「レビューする」「守る」を同じ基盤で回せる
ここからは、Enterpriseで差が出やすい代表的なポイントをピックアップします。
GitHub.com全体でのCopilot統合とエージェント機能
Businessでも「Copilot in GitHub.com」を有効化すれば、PR要約などの機能は利用できますが、Enterpriseでは、GitHub.com全体にCopilotが埋め込まれた状態で使えることを前提に設計されています。
- PR画面での要約・レビュー案の生成
- Issueやディスカッションからのタスク抽出
- リポジトリを指定して「このバグを直してPRを作って」といったエージェントタスクの実行
といった「GitHubを触っているその場でCopilotに任せる」ワークフローをつくりやすいのが、Enterpriseの大きな違いです。
Copilot Spaces・カスタムモデルによる組織ナレッジ活用
Copilot Spacesは、リポジトリ・コード・ドキュメント・画像・ファイルアップロードなど、プロジェクトに関わる情報をまとめておける「AI向けコンテキストハブ」です。
Enterpriseではこれを組織単位のポリシーや監査ログと組み合わせて運用できます。
- プロジェクトごとにSpaceを作り、設計資料・ADR・仕様書・APIドキュメントを集約
- 新人や異動メンバーが「まずここを見ればだいたい分かる」状態をつくる
- Limited Public Betaの**カスタムモデル(自社コードでチューニングされたモデル)**と組み合わせて、「自社特化Copilot」として振る舞わせる
「GitHub=コード置き場」から、「コードとナレッジをまとめたAI対応の基盤」に変えていけるのがEnterpriseの狙いです。
エンタープライズレベルのガバナンスと監査
Enterpriseでは、組織全体をまたいだポリシー設定と監査ログが使えます。
- Copilotの有効/無効や利用できる機能・モデルを、Enterprise/Org単位で制御
- 提案にパブリックコードが一致した場合の挙動(ブロック/警告)をポリシーで統一
- ライセンス配布状況・利用状況・プレミアムリクエスト消費量をレポートで可視化
「誰が、どの範囲で、どのモデルを使っているか」をEnterpriseの1つのコントロールプレーンで管理できるため、監査や内部統制の要求が強い組織ほど、Enterpriseのメリットが大きくなります。
GitHub Advanced Securityとの連携
GitHub Advanced Security(GHAS)は別ライセンスですが、GHEC+GHAS+Copilot Enterpriseを組み合わせることで、開発~レビュー~セキュリティ対応までをGitHub上で一気通貫にできます。
- CodeQLによるcode scanningで脆弱性を検出
- Copilotの自動修正(autofix)で修正案を生成し、そのままPR化
- Secret scanningや依存関係スキャンの結果も踏まえて、Copilotにリファクタリングや修正を依頼
「Copilotで書き、GHASで検査し、またCopilotで直す」というループをEnterpriseのポリシーとレポートで管理できるため、セキュア開発のプロセスを標準化したい組織と相性が良い構成です。
GitHub Copilot Enterpriseの料金体系

GitHub Copilot Enterpriseの料金は、2025年12月時点でユーザーあたり月額$39 USDです。
組織で利用するためには、別途 GitHub Enterprise Cloud(GHEC)*の契約が必要で、GHECの目安価格はユーザーあたり月額$21 USDと案内されています(ユーザー数や契約条件によって変動する場合があります)。
GHEC上でEnterpriseアカウントを持つ組織が、そのテナント内でCopilot Enterpriseライセンスを割り当てる形です。
一方で、セルフホスト型のGitHub Enterprise Server(GHES)単体では、現時点でGitHub Copilotを利用できません。
基本料金と「増分コスト」の考え方

すでに GHEC を利用している組織では、Copilot Enterprise を追加したときの主な増分コストは、次のように整理できます。
- GitHub Copilot Enterprise のライセンス料:$39 × 対象ユーザー数 / 月
これから GHEC を導入する場合は、GitHub 側のライセンスと Copilot 側のライセンスをセットで考える必要があります。料金イメージは次のとおりです。
- GitHub Enterprise Cloud(Enterprise プラン):$21 × 対象ユーザー数 / 月
- GitHub Copilot Enterprise:$39 × 対象ユーザー数 / 月
この組み合わせを前提にすると、「GitHub Enterprise Cloud+GitHub Copilot Enterprise」をセットで利用する実質的なコスト感は、1ユーザーあたり月額およそ$60 USDというイメージになります。
このほかに、高性能モデルを使ったプレミアムリクエストに対する従量課金が変動費として上乗せされます(詳細は後述の「プレミアムリクエストの扱いと上限」で解説します)。
プレミアムリクエストの扱いと上限(ユーザーごと)
2025年12月時点では、Copilot Enterpriseにはユーザーごと月1,000件のプレミアムリクエスト枠が含まれています。
この上限を超えてプレミアムモデルを利用した分については、1リクエストあたり$0.04の従量課金が発生します。
プレミアムモデルの利用状況を把握し、コストをコントロールするために、例えば次のような点をモニタリングしておくと安心です。
- どのチーム・メンバーが、どのモデルをどの程度利用しているか
- プレミアムリクエストの上限付近まで到達しているユーザーがいないか
- included models で十分なユースケースと、プレミアムモデルが有効なユースケースの切り分け
こうした情報を踏まえて、利用ルールや教育コンテンツ、モデル選択ポリシーを整備しておくと、「気付いたらプレミアムリクエスト超過でコストがふくらんでいた」という事態を避けやすくなります。
オンプレ/クラウド移行パターン
オンプレミス(GHESなど)を前提としている企業は、クラウド移行の進め方も合わせて検討する必要があります。
代表的なパターンとして、次のようなアプローチが考えられます。
- データ所在地付きGitHub Enterprise Cloudへの移行
- 一部システムのみクラウドへ移行し、段階的にCopilotを導入
完全オンプレミスから一足飛びにクラウドへ切り替えるのではなく、これらの選択肢を比較検討しながら、段階的に**「GHEC+Copilot Enterprise」構成へシフトしていく**ケースが現実的です。
GitHub Copilot EnterpriseとBusinessの違い

Copilot BusinessとCopilot Enterpriseは、「どこまでGitHubプラットフォーム全体にCopilotを組み込むか」「どこまでガバナンスを効かせたいか」で選び分けるのが基本的な考え方です。
まずは、主要な違いを俯瞰できるようにシンプルな比較表で整理し、そのあとに項目ごとのポイントを補足します。
| 比較項目 | Copilot Business | Copilot Enterprise |
|---|---|---|
| 料金 (USD/ユーザー・月) | $19 | $39 |
| 前提GitHubプラン | GitHub Free / Team / Enterprise Cloud | GitHub Enterprise Cloud のみ |
| プレミアムリクエスト上限/月 | 300件/ユーザー | 1,000件/ユーザー |
| コンテキスト機能 | Copilot Spaces などのコンテキスト機能を利用可能 | Spaces+ポリシー+監査ログと組み合わせ、組織単位で運用しやすい |
| GitHub.comでのCopilot統合 | 「Copilot in GitHub.com」を有効化して利用 | GitHub.com全体での深い統合とエージェント利用が前提 |
| ガバナンス/監査 | 組織単位での基本的な管理 | Enterprise全体での詳細なポリシー/監査ログ/レポート |
| サポート | 標準サポート | GitHub Enterpriseサポート(契約内容に基づく) |
※いずれのプランでも、IDEでのコード補完/Copilot Chat、IP Indemnity などの「Copilotの基本機能」は共通です。
料金とプレミアムリクエスト上限の違い
Copilot Businessは月額$19/ユーザー、Copilot Enterpriseは月額$39/ユーザーが目安です(いずれも2025年12月時点)。Enterpriseのほうが高機能な分、料金も高く設定されています。
プレミアムリクエストの月次上限は次のとおりです。
- Business:ユーザーごと月300件
- Enterprise:ユーザーごと月1,000件
「included models(GPT-5 mini / GPT-4.1 / GPT-4o など)」中心で利用し、主な用途がコード補完や軽いチャットである場合は、多くのケースでBusinessでも十分です。
代表的なユースケースは次のようなものです。
- included models中心での日常的なペアプロ
- 単一プロジェクトや小規模チームでの利用
一方で、Enterpriseのほうが向いているのは、次のようなケースです。
- Anthropic / Google などの上位モデルを日常的に使いたい
- コードレビューやエージェントなど、重めのタスクをプレミアムモデル前提で回したい
料金差だけでなく、プレミアムリクエストをどの程度使い込む前提かという観点でプランを選ぶのが現実的です。
GitHubプラットフォームとの統合度の違い
どちらのプランでも「Copilot in GitHub.com」を有効にすれば、PR要約などの機能は使えますが、Enterpriseのほうが「GitHub全体にCopilotが埋め込まれている」感覚に近くなります。
- PR画面/Issue/コードビューなど、さまざまな画面からCopilotを起動
- リポジトリやSpacesをまたいだコンテキストを前提にした会話
- 将来的なエージェント機能との連携を見据えたワークフロー設計
といった点で、「GitHubを開いている限り常にCopilotが隣にいる」状態を作り込めるのがEnterpriseです。
ガバナンス・監査・レポーティングの違い
ガバナンス面では、次のような違いがあります。
-
Business
- 組織単位での基本的な有効/無効設定
- パブリックコード一致提案の制御など、標準的なセキュリティ設定
-
Enterprise
- Enterprise全体をまたいだポリシー設計と適用
- 利用状況/プレミアムリクエスト消費量を含む詳細レポート
- 監査ログと組み合わせた内部統制・コンプライアンス対応
特に、複数のOrgや数百〜数千人規模の開発組織では、「誰が・どのモデルを・どれだけ使っているか」を横断的に把握できるかどうかが大きなポイントになります。
この観点では、Enterpriseプランのメリットが顕著です。
どちらのプランを選ぶべきかの目安
最後に、ざっくりとした選び分けの目安を整理します。
#### Businessが向いているケース
- 数十人規模までの開発チーム
- GitHub Free / Team / Enterprise Cloud のいずれかを利用中
- IDE内のコード補完とチャットが主目的
- プレミアムモデルは「たまに使えれば良い」程度
Enterpriseが向いているケース
- GitHub Enterprise Cloud をすでに利用している、または導入予定
- 数百〜数千人規模の開発組織で、Orgをまたいだ統制が必要
- Spacesやカスタムモデルを使って、組織ナレッジをAI経由で再利用したい
- プレミアムモデルを前提としたコードレビュー/エージェント利用を本格的に行いたい
- セキュリティ・コンプライアンス・監査要件が厳しく、統合レポートが必要
要するに、
「まずCopilotを試したい・IDE中心で使いたい」なら Business
「GitHubプラットフォーム全体にCopilotを組み込み、組織レベルで最適化したい」なら Enterprise
というイメージで捉えておくと、プラン選定の議論が進めやすくなります。
GitHub Copilot Enterpriseを導入するメリット

Copilot Enterpriseを導入した場合に期待できるメリットを、開発生産性・セキュリティ・標準化・開発者体験の4つの観点から整理します。
単なる「個人の生産性向上ツール」としての導入にとどまらず、組織全体の開発プロセスをどう変えていくかという視点が、Enterpriseプランでは特に重要になります。
組織全体の開発者生産性の向上
Copilot Enterpriseを適切に運用すると、開発者一人ひとりの作業効率だけでなく、チーム全体のスループット向上が期待できます。
具体的には、次のような形で効果が現れやすくなります。
- 繰り返しの実装や定型的なコードの自動生成による作業時間の削減
- 既存コードやドキュメントを踏まえた提案による調査・キャッチアップ時間の短縮
- PR要約やコードレビュー支援によるレビュー工数の削減
こうした積み重ねにより、**「同じ人数でもこなせるチケット数が増える」「レビュー待ちのボトルネックが減る」**といった形で、プロジェクト全体のリードタイム短縮につながるケースが多く見られます。
特に、複数チーム・複数サービスが並行して動いているような大規模組織ほど、恩恵が出やすい領域です。
エンタープライズレベルのセキュリティとコンプライアンス遵守
セキュリティとコンプライアンスの観点からメリットを整理します。
Copilot Enterpriseでは、前述のとおり、
- Business / Enterpriseプランのコードやプロンプトがモデルのトレーニングに使われない
- 提案内容とパブリックコードの一致を検出してブロックする機能
- 詳細な監査ログと権限管理
といった機能により、生成AI利用に伴うリスクを組織としてコントロールしやすくなります。
これにより、金融・公共・医療など、規制の厳しい業種でも、適切なガバナンスのもとでCopilotの活用を検討しやすくなります。
組織内での一貫した開発標準と品質の維持
開発標準・品質の観点からCopilot Enterpriseの役割を説明します。
Copilot EnterpriseとSpacesを組み合わせることで、組織独自のルールやベストプラクティスを**「AIを通じて」自然に開発者に浸透させる**ことができます。
- コーディング規約や設計ガイドラインをドキュメントとしてSpaceにまとめる
- 代表的な実装例やサンプルコードを含めておき、Copilotが提案できるようにする
- PR要約やコードレビューで、標準からの乖離があれば早期に検知
これにより、メンバーのスキルや経験値に依存しすぎることなく、コードベース全体の一貫性と品質を維持しやすくなる点がメリットです。
組織独自のニーズに合わせたAI支援のカスタマイズ
「汎用モデルをどう組織固有の環境に合わせるか」という観点を解説します。
汎用の大規模モデルだけでは、どうしても「その企業ならではの技術スタック」や「社内ツールの仕様」までは理解しきれません。Copilot Enterpriseでは、
- Spacesを通じて、自社のコード・ドキュメント・設計資料をコンテキストとして追加
- Copilot coding agentやカスタムエージェントで特定のタスクに最適化したワークフローを構築
- リポジトリ単位のカスタムインストラクションで、プロジェクトごとの前提条件を明示
といった形で、組織独自のニーズに合わせてAI支援を段階的に最適化できます。
開発者の満足度向上とイノベーション促進
開発者体験(Developer Experience)とイノベーションへの影響を整理します。
反復的な作業や調査にかかる時間を削減できれば、開発者はより創造的な業務に時間を割けるようになります。具体的には、
- 技術検証やPoCのスピードアップ
- 新しいライブラリ・フレームワークのキャッチアップ支援
- ドキュメント整備やリファクタリングといった「後回しになりがちな作業」の後押し
といった効果が期待できます。結果として、「面倒な作業を減らし、やりたい仕事に集中できる環境」を整えることが、採用・定着や社内のイノベーションにもつながっていきます。
GitHub Copilot Enterprise導入・運用のポイントと注意点
Copilot Enterpriseを導入・運用する際のステップと注意点を、実務で使いやすい形で整理します。
単にライセンスを購入するだけでは、期待した効果が得られないことも少なくありません。導入目的の明確化、ポリシー設計、トレーニング、効果測定といったプロセスをセットで考えることが重要です。

導入計画と準備:何から始めるべきか
導入に向けた最初のステップを説明します。
Copilot Enterprise導入を検討する際は、次のような流れで計画を立てるとスムーズです。

-
目的の明確化
生産性向上、レビュー時間の削減、品質向上、人材育成など、Copilot導入で達成したいゴールを明確に言語化します。
-
ステークホルダーとの合意形成
開発部門だけでなく、情報システム部門、セキュリティ・法務、経営層など、関係者に対してCopilotの仕組みやリスク・メリットを説明し、合意を得ます。
-
パイロット導入の設計
まずは一部チーム/一部プロジェクトで試験導入し、効果と課題を検証します。その結果をもとに、全社展開の方針を固めます。
-
技術・運用前提の確認
GitHub Enterprise Cloudの契約状況や、SSO・ID管理、権限設計など、前提となるインフラ・運用ルールを整理します。
シート割り当てとポリシー設定のベストプラクティス
ライセンス配布とポリシー設計の実務的なポイントを解説します。
Copilot Enterpriseのライセンス(シート)は、次のような方針で割り当てるケースが多いです。
- まずはアーキテクト・リードエンジニア・テックリードに優先的に配布し、活用ノウハウを蓄積
- 生産性向上とナレッジ共有の観点から、レビュー担当者や教育担当者にも配布
- 利用状況を見ながら、順次対象範囲を拡大
あわせて、組織ポリシーとして次のような項目を検討します。
- コードスニペットの収集・ログに関する設定
- パブリックコード一致提案のブロック設定
- 特定リポジトリや組織単位でのCopilot利用可否
- プレミアムモデルの利用可否や推奨モデル
これらの設定は、Enterprise/Organizationの管理者がGitHubの管理画面から制御できます。「誰が、どの範囲で、どのモデルを使えるか」を明確化しておくことが、トラブル防止につながります。
開発者へのトレーニングとオンボーディング
Copilot Enterpriseを活かすには、開発者が次のようなポイントを理解している必要があります。
- どのようなプロンプトを書けばよい提案が返ってくるか
- どのような場面でCopilotを使うと効果的か
- どのようなリスクに注意すべきか
代表的な取り組み例としては、次のようなものがあります。
- 社内向けハンズオンや勉強会の実施
- ベストプラクティス集やFAQの整備
- 成功事例・失敗事例の共有会の開催
「まずは小さく試し、良い使い方を組織内で共有していく」ことが、長期的な定着につながります。
利用状況のモニタリングと効果測定
Copilot Enterpriseでは、GitHubの監査ログや利用レポートを通じて、次のような情報を把握できます。
- ライセンスの利用率
- プレミアムリクエストの消費状況
- 機能ごとの利用傾向
これに加えて、社内アンケートやインタビューなどを組み合わせると、次のような観点で改善のヒントを得られます。
- どのチームで特に効果が高いのか
- どこで活用が進んでいないのか
- 追加トレーニングやポリシー変更が必要な領域はどこか
こうした定性情報に、チケット処理速度やレビューリードタイムなどの定量指標を組み合わせることで、ROI(投資対効果)をより具体的に評価しやすくなります。
AI生成コードの確認・検証の重要性、著作権リスクへの配慮
Copilotが生成するコードは便利ですが、次のようなリスクがゼロになるわけではありません。
- バグやセキュリティ上の問題を含んでいる可能性
- 既存ライブラリやライセンスとの整合性の問題
- 要件に対する理解不足や仕様誤解に基づく実装
そのため、組織としては次のような前提を共有しておくことが重要です。
- AI生成コードも必ずレビュー・テストの対象とする
- ライセンスや著作権に関する社内ガイドラインを整備する
- 開発者が最終的な責任を負うことを明示する
AIはあくまで「強力な支援ツール」であり、最終的な判断と責任は人間にあります。この前提を踏まえたうえで、Copilot Enterpriseを業務フローに組み込むことが求められます。
よくある質問(FAQ)
GitHub Copilot Enterpriseの導入を検討する際によく挙がる質問と、その考え方を簡潔にまとめます。
Q1. まずはBusinessから始めて、後からEnterpriseに切り替えることはできますか?
多くの組織では、最初はCopilot Businessで小規模導入し、利用状況や効果を見ながらEnterpriseを検討するというステップを踏んでいます。
GitHub Enterprise Cloudの契約状況や組織構造にもよりますが、将来的にEnterpriseへ移行する前提で段階的に展開することは一般的です。
Q2. GitHub Enterprise Server(オンプレミス環境)だけを使っています。Copilot Enterpriseは利用できますか?
現時点では、GitHub CopilotはGitHub Enterprise Server単体では利用できず、GitHub Enterprise Cloudが前提となります。
データ所在地要件などがある場合は、データ所在地付きGHECなど、クラウドへの移行・併用構成を検討する必要があります。
Q3. Copilot Enterpriseを導入すれば、すぐに生産性が上がりますか?
ツールを導入しただけで自動的に生産性が上がるわけではありません。目的設定・ポリシー設計・トレーニング・効果測定といったプロセスを伴うことで、はじめて組織的な成果につながります。
特に初期フェーズでは、パイロット導入と社内コミュニケーションが重要です。
まとめ
GitHub Copilot Enterpriseは、単なるAIコーディングアシスタントを超えて、大規模開発組織の開発プロセス全体を支援するエンタープライズプラットフォームとして位置づけられています。Copilot Businessの堅牢な機能を土台に、Copilot Spacesによるナレッジ活用、高度なセキュリティとガバナンス、PR要約やコードレビュー支援、Copilot coding agentなどを組み合わせることで、組織全体の開発体験を継続的に改善できます。
一方で、料金やプレミアムリクエストの仕組み、GitHub Enterprise Cloud前提という要件など、検討すべきポイントも多く存在します。導入目的とガバナンス要件を明確にしたうえで、段階的な展開と継続的な効果測定を行うことが、Copilot Enterpriseを活かしきるための鍵になります。
AI総合研究所では、GitHub Copilotの導入支援、請求代行、研修の企画・実施、社内ガイドライン策定支援などを一気通貫でサポートしています。
自社の開発体制に合わせたCopilot Enterprise活用を検討されている企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。










