AI総合研究所

SHARE

X(twiiter)にポストFacebookに投稿はてなブックマークに登録URLをコピー

GitHub Enterprise Cloudとは?Server版との違いや料金、導入メリットを解説

この記事のポイント

  • GitHub Enterprise Cloudは、インフラ管理不要でSAML SSOや監査ログなどの高度なセキュリティ機能を利用できる、エンタープライズ向けフルマネージド開発プラットフォーム
  • Enterprise Serverと異なりハードウェア管理が不要で、Data Residencyオプションにより特定のリージョンにデータを保存する構成も選択可能
  • IPアロウリストやリポジトリルールセットによる厳格なガバナンスと、GitHub ActionsによるCI/CD自動化を両立し、大規模組織の生産性を向上
  • 金融や自動車業界などの規制が厳しい領域でも採用が進んでおり、マルチOrganization管理やインナーソースの推進基盤として機能する
  • Enterpriseプラン(月額約21ドル/ユーザー)の契約によりCloudとServerの両方が利用可能となり、CopilotやAdvanced Securityなどの追加機能とも柔軟に連携
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

XでフォローフォローするMicrosoftMVP

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。


ソフトウェア開発において、セキュリティと効率性の両立は企業の至上命題となっています。GitHub Enterprise Cloudは、インフラ管理をGitHubに任せつつ、SAML SSOや監査ログといったエンタープライズ級のガバナンス機能をクラウド上で提供するプラットフォームです。

本記事では、GitHub Enterprise Cloudの主要機能からServer版との違い、最新の料金体系、そしてAI活用を見据えた将来展望まで、2025年12月時点の情報を基に体系的に解説します。

GitHub Enterprise Cloudとは?

GitHub Enterprise Cloudは、GitHubが提供するエンタープライズ向けのクラウド型開発プラットフォームです。
GitHub Enterpriseプランで利用できる2つのデプロイ形態のうち、「GitHubがクラウド上でホスティングする形態」にあたります。

GitHub Enterprise Cloudの概要

GitHub Enterprise Cloudでは、GitHub.com上に Enterpriseアカウント を持ち、複数のOrganization(組織)やリポジトリ、ポリシーを一元管理できます。
インフラ運用はGitHub側が担うため、利用企業はインフラ構築やパッチ適用といった管理負荷を抑えつつ、エンタープライズレベルのセキュリティとガバナンスを備えた開発基盤を利用できます。

また、Enterprise Managed Users(いわゆる「Enterprise with managed users」) を利用する場合は、「GitHub Enterprise Cloud with data residency」オプションにより、特定リージョン(EU/米国/オーストラリアなど)にデータを保存する構成も選択できます(詳細は後述の「データレジデンシーへの対応」を参照してください)。


GitHub Enterprise Cloudの主要機能

ここでは、GitHub Enterprise Cloudを検討する際に押さえておきたい、代表的な機能・特徴を整理します。

単なるリポジトリホスティングにとどまらず、「セキュリティ」「ガバナンス」「コラボレーション」までカバーしている点が特徴です。

GitHub Enterprise Cloudの主要機能

1. クラウドベースのコードホスティング

まず前提として、GitHub Enterprise Cloudはクラウド上で提供されるフルマネージドなGitサービスです。
開発チームはインターネット接続さえあれば、場所やデバイスを問わず同じ開発環境にアクセスできます。

具体的には次のようなメリットがあります。

  • GitHub.comベースのUI・APIをそのまま利用できる
  • サーバーの設計・構築・パッチ適用・スケーリングをGitHub側に任せられる
  • アップタイムSLAやセキュリティ標準への準拠がサービスとして提供される


オンプレミスにGitサーバーを構築する場合と比べて、初期立ち上げや将来の拡張にかかる運用コストを抑えやすくなります。

2. エンタープライズレベルのセキュリティ機能

大規模組織でGitHubを使う際に重要になるのが、認証・認可やログ管理といったセキュリティ機能です。
Enterprise Cloudでは、組織全体のセキュリティポリシーに沿った管理がしやすくなっています。

代表的な機能は次の通りです。

  • SAML SSO / OIDC連携
    既存のIdP(Azure AD/Microsoft Entra ID、Okta、OneLoginなど)と連携し、シングルサインオンを実現できます。

  • IPアロウリスト
    許可されたIPアドレスからのみGitHubにアクセスさせることで、不正アクセスのリスクを低減できます。

  • 監査ログ / 監査ログAPI
    誰がいつどのリポジトリにアクセスしたか、設定変更を行ったかを記録・取得できます。

  • リポジトリルールセット / ブランチ保護ルール
    強制レビューやStatus Check必須化など、ガバナンス強化に役立つルールを組織全体に適用できます。

オプション:GitHub Advanced Security


加えて、オプションとして GitHub Advanced Security を有効化することで、アプリケーションセキュリティに踏み込んだ対策も可能です。

2025年時点では、Advanced Security 関連のライセンスは主に次のように整理されています。

  • GitHub Code Security
    コードスキャン(CodeQL による静的解析)、依存関係スキャン(脆弱ライブラリ検知)など、コードとサプライチェーンのセキュリティ機能を提供。

  • GitHub Secret Protection
    アクセストークンや API キーなどのシークレット検出、トークン保護(token protection)などの機能を提供。

  • 両方の機能をまとめて利用できる GitHub Advanced Security license
    上記の機能セットを一括で契約する形態で、Docsでは「GitHub Advanced Security license that includes all features」として案内されています。


これらをCI/CDパイプラインやPull Requestレビューと組み合わせることで、開発フローの中でセキュリティチェックを自動化できます。

3. プロジェクト管理機能

GitHub Enterprise Cloudには、タスク管理や進捗可視化のための機能も組み込まれています。
日々の開発タスクをGitHub上に集約することで、別ツールとの行き来を減らすことができます。

主な機能は次の通りです。

  • Issues(イシュー)
    バグ・機能要望・調査タスクなどをチケットとして管理できます。ラベルやマイルストーンを組み合わせることで、プロジェクト単位の整理もしやすくなります。
  • Projects(プロジェクトボード)
    カンバン形式やスプレッドシート形式でタスクの進行状況を可視化できます。列やフィールドをカスタマイズして、スクラムやカンバンなど自社の開発プロセスに合わせることも可能です。
  • 外部ツール連携
    JiraやAzure DevOpsなどのALMツールと連携する公式アプリ・Marketplaceアプリが多数提供されています。


既存のタスク管理ツールがある場合でも、GitHub Enterprise Cloudを「ソースコードとレビューのハブ」として位置づけ、最低限のリンクだけ貼る、といった運用も可能です。

4. チーム開発を支えるコラボレーション機能

チームでの共同開発を効率化するためのコラボレーション機能もGitHub Enterprise Cloudの大きな強みです。
コードの変更点だけでなく、議論や意思決定の履歴もGitHub上に残せます。

代表的な機能は次の通りです。

  • Pull Request(プルリクエスト)とコードレビュー
    変更内容を差分として共有し、レビュワーをアサインしてレビュー・承認のプロセスを回せます。

  • コードオーナー(CODEOWNERS)
    特定ディレクトリやファイルに責任を持つチームやメンバーを定義し、自動的にレビュワーをアサインできます。

  • Discussions(ディスカッション)
    Q&Aや設計議論、アイデア共有など、Issueにするほどではないトピックをスレッド形式で整理できます。

  • インナーソースの推進
    組織内でのオープンソース的な開発スタイルを実現し、チームをまたいだコラボレーションを後押しします。


こうした機能を組み合わせることで、「誰が・いつ・なぜこの変更を行ったのか」を後から追いやすくなり、ナレッジ共有やオンボーディングにも役立ちます。

5. スケーラブルなクラウド環境

GitHub Enterprise Cloudは、数名のチームから数千名規模のグローバル組織までスケールさせやすい設計になっています。
ユーザーやリポジトリが増えても、クラウド側でのスケールアウトにより安定したパフォーマンスを維持しやすい点が特徴です。

世界中の開発者がGitHubを利用しており、GitHubの発表によると2025年時点でも開発者数は1億5,000万人以上に達しています。

大規模な利用実績に裏打ちされたプラットフォームを活用できることは、エンタープライズにとっても安心材料と言えるでしょう。


GitHub Enterprise Cloudの料金

GitHub Enterprise Cloudの料金

GitHub Enterprise Cloudの料金イメージ

GitHub Enterprise Cloudは、GitHub Enterpriseプランの一形態として提供されており、1ユーザーあたり月額 21ドル(USドル建て)が目安です(年額換算では 252ドル、2025年12月時点)。

この Enterprise ライセンスで、Enterprise Cloud / Enterprise Server のいずれか、または両方を利用できます。

  • Enterpriseプランには、一般的に最小ユーザー数(最小シート数)が設定されます。
    具体的な条件は、地域や契約形態、販売パートナーによって異なるため、詳細は GitHub または販売パートナーに確認する必要があります。

  • GitHub Advanced SecurityGitHub Copilot Business / GitHub Copilot Enterprise などの追加サービスは、Enterprise本体とは別ライセンス・別課金となります。


【関連記事】
▶︎Github Copilotの料金プラン一覧!個人・法人プランの違いと選び方を解説


GitHub Enterprise Cloudと通常プランの違い

GitHub Enterprise Cloudと通常プランの違い

GitHubには、個人・小規模チーム向けの Free / Team と、エンタープライズ向けの Enterprise(Enterprise Cloud / Enterprise Server) があります。
ここでは、GitHub Enterprise Cloudと通常プランの違いを整理します。

プランごとの主な違い

まずは、セキュリティ・管理機能・サポート・スケーリングなどの観点から違いを比較します。

項目 GitHub Enterprise Cloud 通常プラン(Free / Team)
セキュリティ SAML SSO、IPアロウリスト、監査ログ、リポジトリルールセット、Advanced Security(別途契約)など 2要素認証、プライベートリポジトリ、簡易なブランチ保護ルールなど
ユーザー管理 Enterpriseアカウントで複数Organizationを一元管理、Managed Users、SCIMプロビジョニング 各Organizationごとのメンバー・チーム管理(Teamプラン以上)
サポート体制 エンタープライズ向けサポート、優先度に応じた対応、アカウント担当が付く場合あり Webフォームやコミュニティベースのサポートが中心
スケーラビリティ 数千人規模・マルチOrganization前提の設計、データレジデンシーオプション 主に1つのOrganization内の小〜中規模チームを想定
CI/CD・リソース 追加のGitHub Actions分数、セルフホストランナーの柔軟な利用、GitHub Packagesの拡張 Free/Team相当のActions分数・ストレージ(プランに応じた上限)
コンプライアンス 監査証跡、コンプライアンスレポート、各種認証(SOC、ISOなど)への対応 コンプライアンス要求が比較的緩やかなチームを想定
価格(目安) Enterprise: $21 / ユーザー / 月(2025年12月時点) Free: $0 / 月、Team: $4 / ユーザー / 月(2025年12月時点)


Enterpriseプランを契約すると、Enterprise CloudとEnterprise Serverの両方にアクセスする権利 が得られます。
実際にどちらを使うかは、セキュリティ要件や運用ポリシーに応じて選択するイメージです。


GitHub Enterprise CloudとGitHub Enterprise Serverの比較

GitHub Enterpriseは、「どこにホスティングするか」によって Enterprise CloudEnterprise Server の2形態に分かれます。
ここでは、その違いと選択の考え方を整理します。

GitHub Enterprise CloudとGitHub Enterprise Serverの比較


両者は機能的に近い部分も多いですが、「誰がインフラを持つか」「どこまで自社でコントロールしたいか」という観点で選択が分かれます。

項目 GitHub Enterprise Cloud GitHub Enterprise Server
ホスティング場所 GitHub がクラウド上でホスト(主に GitHub.com) 自社データセンター or 自社管理のクラウド環境にセルフホスト
運用管理 インフラ/アップデートは GitHub が管理 OS・ミドルウェア・GitHub本体の運用・アップグレードを企業側が担当
ネットワーク要件 インターネット経由が前提(IP許可リストやSSOでアクセス制御) 社内ネットワーク内や VPN/専用線のみからのアクセスが可能
データレジデンシー data residency オプションで一部リージョンを指定可能 物理配置を含め、自社ポリシーに沿ってデータ保管場所を設計・運用
カスタマイズ性 GitHub標準機能+Marketplaceアプリ/GitHub Apps で拡張 OS・ネットワーク・周辺ミドルウェアまで柔軟にカスタマイズ可能
アップデート頻度 継続的に新機能が展開され、ユーザー側でのアップグレード作業は不要 バージョンごとに計画的なアップグレードとメンテナンスが必要
主なユースケース クラウド前提・グローバル拠点・スピード重視の開発組織 金融・公共など、厳格なネットワーク分離/オンプレ要件がある組織

ホスティング場所と運用モデルの違い

GitHub Enterprise Cloud

標準構成では GitHub.com 上に Enterpriseアカウントを作成し、Enterprise Cloud with data residency を選ぶ場合は、専用サブドメイン(「SUBDOMAIN.ghe.com」)でホストされます。

いずれの場合も、インフラ運用やアップグレードは GitHub 側が担うため、利用企業は Organization やリポジトリ、ポリシー設定に集中できます。

GitHub Enterprise Server

自社データセンターやプライベートクラウド上にインストールするセルフホスト型です。
OSやネットワーク、バックアップ、アップグレード計画などを自社(または SIer)が管理する代わりに、インフラレベルまで含めて細かい制御が可能です。


ネットワークとデータレジデンシー

GitHub Enterprise Cloud

ネットワーク面では、Enterprise Cloud は基本的にインターネット経由でアクセスしますが、IP許可リスト(IP allowlist)SAML/OIDC ベースの SSO、SCIM プロビジョニング などを組み合わせることで、企業のゼロトラスト戦略に沿った制御ができます。
IP許可リストは GitHub Enterprise Cloud のエンタープライズ機能として提供されています。

データ所在地が重要なケースでは、GitHub Enterprise Cloud with data residency を利用すると、EU/US/AU などのリージョンを選択して、リポジトリや Issue、Pull Request などの主要データをそのリージョン内に保存できます。

この構成は Enterprise Managed Users(管理ユーザー) を前提としており、専用ドメイン「SUBDOMAIN.ghe.com」上で動作します。

GitHub Enterprise Server

物理サーバーの設置場所やネットワークトポロジーを含めて完全に自社側で決められるため、「社内閉域ネットワークからのみアクセスさせたい」「特定の DC からデータを出せない」といった要件に適しています。


カスタマイズ性とアップデート

GitHub Enterprise Cloud

カスタマイズ性という観点では、Enterprise Cloud は GitHub が提供する機能セット+Marketplace アプリ/GitHub Apps による拡張が中心です。

GitHub Actions や GitHub Advanced Security などのマネージド機能を組み合わせることで、コード管理〜CI/CD〜セキュリティまでをクラウド上で完結させやすいのが特徴です。

GitHub Enterprise Server

OS レベルの設定やネットワーク構成、ストレージ/バックアップ戦略を含めて細かく設計でき、pre-receive フックなどサーバー側フックも利用できます。

その反面、アップグレードやメンテナンスは自社で計画・実行する必要があります。

想定ユースケースとハイブリッド構成

一般的な整理としては、次のような棲み分けになります。

  • GitHub Enterprise Cloud が向いているケース

    • クラウド前提でグローバルに開発する企業
    • リモートワーク/拠点分散が前提の組織
    • インフラ運用コストを抑え、GitHub Copilot や Advanced Security などの新機能を早めに使いたい場合

  • GitHub Enterprise Server が向いているケース

    • 金融・公共・医療など、厳格なネットワーク分離やオンプレ要件がある組織
    • 物理的な保管場所やログ保管ポリシーまで含めて自社でコントロールしたい場合


GitHub Enterprise のライセンスは、Cloud と Server の両方を使える前提(ハイブリッド/Cloud-only/Server-only) になっており、実際には「標準は Enterprise Cloud、一部の高機密プロジェクトのみ Enterprise Server で運用」というハイブリッド構成も公式に想定されています。


GitHub Enterprise Cloudの導入と設定

GitHub Enterprise Cloudの導入は、クラウドサービスであることもあり、比較的短いステップで完了します。

ここでは、評価開始〜本番利用を見据えた一般的な流れを紹介します。

GitHub Enterprise Cloudの導入と設定

1. GitHub Enterprise Cloudの申し込み

最初のステップは、GitHub Enterpriseのトライアルまたは本契約の申し込みです。
公式サイトの料金ページから「Enterprise」を選択し、必要事項を入力すると、管理用のEnterpriseアカウントを作成できます。

  • 30日間の無料トライアル(ユーザー数に上限あり)
  • パートナーやリセラー経由での見積もり・契約も可能


評価の時点でどこまで本番に近い構成にするかを決めておくと、あとからの移行がスムーズになります。

2. EnterpriseアカウントとOrganizationの作成

申し込み後、GitHub Enterprise Cloud上に Enterpriseアカウント が作成されます。
この配下に1つ以上のOrganization(組織)を作成し、リポジトリやチームを紐づけていきます。

  • 事業部ごと・プロダクトごとにOrganizationを分ける運用も一般的です。
  • 既存のGitHub Organizationがある場合は、Enterpriseアカウント配下に移行することで一元管理しやすくなります。


この段階で、「Enterprise with personal accounts」か「Enterprise with managed users」かの選択も行います。
Active Directoryと連携したい、IDを企業側で完全に管理したい場合は、後者の検討余地が大きくなります。

3. ユーザーの招待とアクセス管理

次に、開発者や関係者をGitHub Enterprise Cloudに招待します。
アカウント発行の方法とアクセス権限の設計がポイントです。

  • メンバーをEnterpriseアカウントに招待し、所属するOrganization・チームを割り当てる
  • SAML SSOやSCIM連携を有効化し、IdP側のグループとGitHubのチームをマッピングする
  • 外部パートナーは「外部コラボレーター」として限定的な権限を付与する


初期段階から「どのロールの人がどこまで見えるべきか」をざっくり決めておくと、後からの権限トラブルを減らしやすくなります。

4. セキュリティとコンプライアンス設定

ユーザー招待と並行して、セキュリティ・コンプライアンス関連の設定を行います。
ここを疎かにすると、後からの是正コストが大きくなりがちです。

  • 2要素認証(2FA)の必須化
  • SAML SSO / OIDCの有効化、SCIMによる自動プロビジョニング
  • IPアロウリスト(許可IPの設定)
  • 監査ログと監査ログAPIの活用(SIEM連携など)
  • 必要に応じて、GitHub Advanced Security(Code Security / Secret Protection)の有効化


コンプライアンス要件が厳しい組織では、監査ログの保管期間やエクスポート先の設計も早めに検討しておくと安心です。

5. GitHub ActionsによるCI/CDパイプラインの構築

GitHub Enterprise Cloudでは、GitHub Actions を使ってビルド・テスト・デプロイの自動化が可能です。
既存のCIツールがある場合でも、段階的に移行するパターンがよく見られます。

  • 小さなサービスや新規プロジェクトから、Actionsベースのパイプラインを試す
  • セルフホストランナーを使い、自社ネットワーク内の環境にデプロイする
  • テスト自動化やLint、セキュリティスキャンをPull Requestに組み込む


Enterpriseプランでは、Actionsの無料分数やストレージ枠がTeamよりも多く割り当てられるため、中長期的な自動化基盤として活用しやすくなります。

6. エンタープライズ機能の活用

基本的な開発フローが回るようになったら、徐々にエンタープライズ向け機能を活用していきます。

  • リポジトリルールセット で、組織横断のブランチ保護・レビュー要件を統一
  • ポリシー(例:外部コラボレーターの制限、プライベートフォークの禁止)で情報の流出リスクを抑制
  • GitHub Connect を利用して、Enterprise CloudとEnterprise Serverを連携(ハイブリッド構成)
  • GitHub Advanced Security によるセキュリティ・品質チェックの標準化


これらを段階的に導入することで、「PoCだけGitHub」「本番は従来の環境」という状態からの脱却を目指せます。

7. サポートとパートナーの活用

Enterprise契約では、GitHubのエンタープライズサポートを利用できます。
重大なインシデントや仕様の確認、ベストプラクティスの相談などは、公式サポートやパートナーと連携しながら進めると安心です。

  • サポートポータルからの問い合わせ
  • アカウント担当を通じたアーキテクチャ・ロードマップの相談
  • 認定パートナーによる導入支援・ワークショップ


特に社内のGitHub管理者(Enterprise Admin / Org Owner)は、サポート窓口とのコミュニケーションを日常的に取れる体制を整えておくと運用が安定します。


GitHub Enterprise Cloudの活用事例

ここでは、GitHub Enterprise Cloudを活用している企業の事例として、Spotify、freee、J-QuAD DYNAMICSの3社を簡単に紹介します。
それぞれのケースから、自社での活用イメージを膨らませるヒントが得られます。

Spotify

Spotifyは、音楽ストリーミングサービスを展開するグローバル企業です。
GitHub Enterprise Cloudを活用し、大規模な分散開発チームでも共通の開発基盤を維持しています。

  • 開発チームやパートナー企業とのコラボレーションを、GitHub上のPull Requestとレビューを軸に標準化
  • インナーソース文化を取り入れ、社内の複数チームが同じコードベースに貢献できる体制を構築
  • GitHubのサポートやパートナーと連携しながら、開発プロセスの継続的な改善を実施


大規模サービスであっても、開発基盤をGitHub Enterprise Cloudに集約することで、変更管理とコラボレーションを両立している例と言えます。

freee

freee株式会社は、クラウド会計・人事労務サービスを提供する国内SaaS企業です。
GitHub Enterprise Cloudにより、セキュリティと柔軟な権限管理を両立した開発環境を構築しています。

  • ロールやチーム単位での権限管理により、機密度に応じたリポジトリアクセスを制御
  • オープンソースの脆弱性可視化や自動アップデートにより、依存パッケージのセキュリティリスクを低減
  • 外部コラボレーターへのアクセス制限を明確にし、外部パートナーとの連携もGitHub上で完結


金融・会計領域のプロダクトでありながら、クラウド型のGitHub Enterprise Cloudを選択している点は、多くのSaaS企業にとって参考になります。

J-QuAD DYNAMICS

J-QuAD DYNAMICSは、自動運転技術のソフトウェアを開発する企業です。
複数の自動車部品メーカーが出資し、高度な自動運転ECUソフトウェアの開発を進めています。

  • GitHub Enterprise Cloudを採用し、分散したパートナー企業との共同開発を効率化
  • Pull Requestベースのコードレビューとブランチ保護ルールにより、レビュー完了までの時間を短縮
  • SAML認証とAD連携でアカウント管理コストを削減しつつ、セキュリティポリシーを担保


自動車・自動運転といった規制・安全要求の高い領域でも、クラウド型の開発プラットフォームとしてEnterprise Cloudが活用されている事例です。


GitHub Enterprise Cloudの将来展望

最後に、GitHub Enterprise Cloudが今後どのように進化していくのかを、「AI活用」「データレジデンシー」「エンタープライズ機能」の3つの観点から整理します。

具体的なロードマップは公式アナウンスに依存しますが、方向性を把握しておくと中長期の投資判断がしやすくなります。

GitHub Enterprise Cloudの将来展望

AIを活用した開発支援

GitHubは、GitHub Copilotを中心に「AIによる開発支援」を継続的に強化しています。
Enterprise Cloudと組み合わせることで、組織レベルでAI支援の恩恵を受けやすくなります。

  • GitHub Copilot Business / Copilot Enterprise
    IDEやGitHub.com上のチャット、コードレビュー、エージェント機能など、多様なAI支援機能を組織単位で利用できます(別ライセンス)。

  • プレミアムリクエストとモデル選択
    高度なモデルや長文コンテキストを使う処理は「プレミアムリクエスト」としてカウントされ、上限や追加購入の仕組みが用意されています。

  • GitHub Spark(パブリックプレビュー)
    自然言語からアプリケーションを構築することを目指した新しい環境で、2025年時点では Copilot Pro+ / Copilot Enterprise 利用者向けのパブリックプレビューとして提供されています。
    プロトタイピングやPoCでの活用が期待されますが、提供範囲や仕様は今後変更される可能性があります。最新情報は公式ドキュメントやブログの更新を確認してください。

AI機能は導入しやすい一方で、コストやコンプライアンスの観点も重要です。Enterprise Cloudのポリシー設定やレポート機能と組み合わせて、どこまでAIに任せるかを組織として整理しておく必要があります。

データレジデンシーへの対応

各国・地域でデータ保護規制が強化される中、データレジデンシー(データ所在地の指定) はエンタープライズにとって重要なテーマです。
GitHub Enterprise Cloudもこの領域の機能強化を続けています。

データレジデンシーは、「クラウドかオンプレか」の二択を少し和らげる存在でもあります。
Enterprise Cloud with data residencyが自社要件を満たすかどうかを確認したうえで、Serverとの比較検討を行うとよいでしょう。

エンタープライズ向け新機能の展望

GitHub Enterprise Cloudは、エンタープライズ向け機能の拡充を継続的に行っています。
具体的な機能名や時期は変化しますが、次のような方向性が見込まれます。

  • 管理機能・ポリシーの粒度向上
    組織・チーム・リポジトリ単位で、より細かいガバナンス設定が可能になる傾向があります。

  • 監査・レポーティングの強化
    セキュリティイベントやコンプライアンスに関する情報を、より使いやすい形で取得・可視化できるようになることが期待されます。

  • 他のMicrosoftサービスとの連携
    AzureやMicrosoft 365のCopilotと連携し、ソースコードだけでなくドキュメント・ナレッジ・業務プロセスまで跨った自動化が進む可能性があります。


これらの動きは、GitHub単体というよりも「Microsoft全体のAI・開発者戦略」の一部として位置づけられています。
Enterprise Cloudを導入する際は、AzureやMicrosoft 365との関係も含めてアーキテクチャを検討しておくと、後からの拡張がスムーズになります。


GitHub Enterprise Cloudに関するFAQ

最後に、導入前によく聞かれる疑問をQ&A形式で整理します。
詳細は必ず公式ドキュメントで確認してください。

Q1. GitHub Enterprise Cloudを使うには、最低何ユーザーから契約が必要ですか?

GitHub Enterpriseプランには、契約時に一定の最小ユーザー数(シート数)の条件が設定されるのが一般的です。
具体的な最小ユーザー数や条件は、契約形態や販売パートナー、地域によって異なるため、必ずGitHubもしくは販売パートナーに確認してください。

また、コミュニティ記事やベンダーの比較記事などでは、「数十名規模以上の開発組織では、GitHub TeamよりもGitHub Enterpriseの方が適しているケースが多い」といった目安が紹介されることがありますが、公式Docsで人数のしきい値が明示されているわけではありません

Q2. GitHub Enterprise Cloudを契約すれば、GitHub Enterprise Serverも使えますか?

はい。GitHub Enterpriseプランを契約すると、Enterprise CloudとEnterprise Serverの両方にアクセスする権利 が付与されます。
実際にどちらを使うかは、自社のポリシーやプロジェクトの要件に応じて選択します。

Q3. GitHub Enterprise CloudとGitHub Copilotの料金は別ですか?

はい。GitHubのホスティングプラン(Free / Team / Enterprise)と、GitHub Copilot(Free / Pro / Pro+ / Business / Enterprise)は 別のライセンス体系 です。
Enterprise Cloud上でCopilotを利用する場合は、Copilot BusinessまたはCopilot Enterpriseのライセンス を別途購入する必要があります。

Q4. すでにTeamプランでGitHubを使っています。Enterprise Cloudへの移行は難しいですか?

技術的には、既存のOrganizationをEnterpriseアカウント配下に移行することで、比較的スムーズに移行できます。
ただし、権限モデルやセキュリティポリシー、CI/CD構成などを見直す必要があるため、PoC環境での検証と段階的な移行をおすすめします。

Q5. GitHub Enterprise Cloudと他の開発プラットフォーム(GitLabなど)を併用することはありますか?

あります。
例えば、コアとなるアプリケーション開発はGitHub Enterprise Cloudを利用しつつ、一部の既存プロジェクトや特定ドメインでは他のプラットフォームを維持するケースもあります。
ただし、ツールが増えるほど管理コストやコンテキストスイッチが増えるため、どこかのタイミングで標準化を検討する企業が多い印象です。

AI導入でお悩みの方へ

AI総合研究所サービス紹介

AI総合研究所が最適なAI選定をサポート

どのAIツールを選べばいいかわからない、導入コストが心配など、AI導入に関するあらゆるお悩みを専門家が解決します。


まとめ

本記事では、GitHub Enterprise Cloudとは何か から始めて、主要機能、通常プランとの違い、価格の目安、Enterprise Serverとの比較、導入ステップ、活用事例、将来展望、FAQまでを一通り整理しました。

ポイントを改めてまとめると、次の通りです。

  • GitHub Enterprise Cloudは、Enterpriseアカウントによる一元管理と、SAML SSO・監査ログ・リポジトリルールセットなどの機能を備えた クラウド型のエンタープライズ向け開発基盤 です。
  • Enterpriseプランを契約することで、Enterprise CloudとEnterprise Serverの両方を選択でき、自社のセキュリティ要件や運用ポリシーに合わせたデプロイモデルを選べます。
  • 価格は2025年12月時点で、Teamが$4 / ユーザー / 月、Enterpriseが$21 / ユーザー / 月が目安ですが、詳細は公式料金ページを必ず確認する必要があります。
  • GitHub Advanced SecurityやGitHub Copilot Business / Enterpriseなどの追加サービスを組み合わせることで、セキュリティや生産性を一段引き上げることが可能です。
  • データレジデンシーやAI機能など、今後も変化していく領域については、公式ドキュメントやブログのアップデートを前提に、中長期のアーキテクチャを検討することが重要です。


itHub Enterprise Cloudは、「とりあえずリポジトリを置く場所」ではなく、組織の開発プロセスやコラボレーションの在り方を支えるプラットフォームです。
自社の現状と数年先の姿をイメージしながら、どのような構成で活用するかを検討してみてください。

監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

AI導入の最初の窓口

お悩み・課題に合わせて活用方法をご案内いたします
お気軽にお問合せください

AI総合研究所 Bottom banner

ご相談
お問い合わせは
こちら!