この記事のポイント
- GoogleのAIを活用した情報整理ツール「Notebook LM」を詳細に解説
- 様々な形式の文書をAIが効率的に整理・分類し、迅速な情報アクセスを実現
- Notebook LMは無料で利用可能だが、将来的に有料化の可能性あり
- 研究、学習、ビジネスでのプロジェクト管理など、幅広い活用シーンを提供
- 安全性とプライバシーに配慮したデータ保護と透明性の確保について説明
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
NotebookLMは、文書やデータをAIが効率的に整理・分類し、迅速な情報アクセスを実現するGoogleの革新的なツールです。Gemini 1.5 Proを活用した高度な処理能力により、様々なファイル形式や多言語に対応しています。
文書のアップロードから自動要約、質問応答、ノートブック管理まで包括的な機能を提供し、チームでの情報共有や共同編集も可能です。現在は無料で利用でき、セキュリティにも配慮した設計となっています。
本記事では、NotebookLMの基本機能から具体的な使用方法、活用事例まで詳しく解説します。また、導入手順やベストプラクティスについても説明いたします。
研究、学習、ビジネスなど、様々な場面での情報整理に革新をもたらすツールとして注目を集めていますので、ぜひご覧ください。
目次
NotebookLMとは
Notebook LMとは
NotebookLM(ノートブックLM)は、Googleが提供するAIを活用した情報整理ツールです。アップロードされたドキュメントをもとに、AIが情報を整理・分類するため、効率的な検索や管理が可能となります。
また、回答の生成にはインターネット上のデータや外部の情報が含まれないため、ハルシネーションの発生を大幅に抑えることができます。
Gemini 1.5 Proをモデルに使用しており、その高度な回答精度も特徴です。マルチモーダル機能を活用して、YouTubeや音声ファイルもアップデートできるのはかなりの利点ですね🙌
NotebookLMの主要機能
NotebookLMは多岐にわたる機能を備えており、文書管理からチーム協働まで幅広いニーズに対応します。
以下では、主要な機能について詳しく解説していきます。
1.文書のアップロードと解析
- 機能: Googleドキュメント、Googleスライド、PDF、テキストファイル、ウェブページのURL、YouTubeの字幕付き動画など、さまざまな形式のドキュメントをアップロード可能。これにより、異なるソースを一元管理できます。
- 特徴: 複数のソースをまとめて解析し、効率的に情報を整理できる点が強み。
文書のアップロードと解析
2.AIによる自動要約と補足説明
- 機能: アップロードされたドキュメントをAIが自動で解析し、要点を短時間で抽出し要約。また、必要に応じて補足情報や説明を提示。
- 特徴: 膨大なドキュメントでも要点を効率よく把握できるため、情報整理にかかる時間を大幅に削減。
AIによる自動要約と補足説明
3.質問応答機能
- 機能: アップロードされたドキュメントに基づいてAIに質問し、背景や文脈を踏まえた回答を生成。さらにインライン引用機能を使用して、参照元の該当箇所に直接アクセス可能。
- 特徴: ファクトチェックが簡単に行えるため、正確な情報を迅速に確認でき、回答の信頼性が向上。
質問応答機能
4.ノートブックの作成と管理
- 機能: ドキュメントや引用を整理し、メモを作成可能。複数のドキュメントを一括管理でき、階層的に情報をグループ化して整理可能。
- 特徴: 情報の効率的な管理と整理が可能で、プロジェクトや研究の進行を支援。
ノートブックの作成と管理
5.チームでの共有と共同編集
- 機能: ノートやメモをチームメンバーと共有し、リアルタイムで共同編集。編集権限や閲覧権限を設定可能。
- 特徴: チームでの情報共有とコラボレーションがスムーズに行えるため、プロジェクト管理に最適。
チームでの共有と共同編集
NotebookLMの使い方
NotebookLMを実際に使用する際の具体的な手順を、初期設定から実践的な活用方法まで詳しく解説します。
初めての方でも簡単に始められるよう、ステップバイステップで説明していきます。
STEP1:公式サイトにアクセス
まずは以下のURLからNotebookLMの公式サイトにアクセスします。
URL:NoteBook LM
STEP2:「Try NotebookLM」をクリック
公式サイトのトップページの真ん中/右上にある「Try NotebookLM」をクリックします。
「Try NotebookLM」をクリック
STEP3:Googleアカウントでログイン
次に、Googleアカウントでログインします。Googleアカウントを利用して簡単にアカウントが作成され、すぐにホーム画面に移動します。
ノートブックの作成方法
STEP1:新しいノートブックを作成
ホーム画面で「新しいノートブック」をクリックします。
STEP2:アップロード元を選択
新規ノートブック作成画面で、ノートブックの情報源を「アップロード元」の中から選択します。例えば、「ウェブページのURL」を選択し、利用したいウェブサイトのURLを入力します。
アップロード元を選択
STEP3:ウェブサイトリンクの挿入
選択したウェブページのリンクを貼り付け、「挿入」をクリックします。
ウェブサイトリンクの挿入
STEP4:AIに質問
NotebookLMが挿入したウェブサイトの情報をもとに概要を生成します。画面上に表示された「質問の候補」から選択するか、「入力を開始します」の欄に質問を入力します。
今回は「コロナ禍がDX推進に与えた影響と今後の展望」について聞いてみましょう。
AIに質問
STEP5:ピン留め
AIからの回答が生成されます。重要な情報があれば、その情報の横にある「ピンのマーク」をクリックしてメモとして保存します。
メモとして保存
STEP6:メモの追加
メモの追加
ピン留めした情報がメモとして記録されます。さらにメモを追加したい場合は、左のメニューにある「+マーク」をクリックしてSTEP 2の「アップロード元」を選び、情報を追加できます。
STEP7:ノートブックの名前を変更
ノートブックのタイトルは上部の「Untitled notebook」をクリックして変更可能です。
サポートされるソース
NotebookLMでは、以下の種類のソースをサポートしています。
- Google ドキュメント
- Google スライド
- PDF、テキスト、マークダウンファイル
- ウェブの URL
- コピーして貼り付けたテキスト
- 公開されているYouTubeのURL(字幕付き)
- 音声ファイル(MP3、WAVなど)
各ソースには最大500,000語を含めることができ、ファイルのサイズは200 MBまでサポートされています。また、1つのノートブックには最大50個のソースを含めることが可能です。
Notebook LMを実際に使ってみた
実際のビジネスシーンを想定した具体的な活用例を紹介します。契約書の分析から社内ナレッジベースの構築まで、実践的な使用方法を詳しく解説していきます。
1.契約書の自動解析と要約
ここでは、フランス産香水を日本国内で販売するための販売契約書の例を作成し、NotebookLMで解析してみましょう。
契約書の自動解析と要約1
書類をアップロードした時点で概要が作成されるので、一目でどのような文書かが明瞭になります。
契約書の自動解析と要約2
このように、 Notebook LMに契約書をアップロードし、重要な条項や期限、リスクなどを瞬時に要約・抽出することは可能です。インライン引用機能で関連法規や規約にリンクしながら、スムーズな契約書の確認をすることが出来ます。
ポイント: 法務部門や営業担当者が多くの契約書を迅速に処理できるため、時間の節約と精度の向上に繋がります。
2.製品の技術文書レビューと引用機能
社内専用チャットボットの構築/カスタマイズ/デプロイ/スケーリングに関する基本的なガイドとして3つの技術文書をアップロードしました。
これらの主要なポイントを把握するために、要約をクエリとして入力しました。
製品の技術文書レビューと引用機能
インライン引用機能で技術標準も示すため、誤った理解を避ける効果もありそうです。
ポイント: 製造業や技術職の方でも、大量の技術情報を効率的に把握し、製品開発や改善に活用できます。
3. 営業資料作成の効率化
Notebook LMに営業資料をインポートしてみます。今回は製品カタログ・顧客提案書データ・導入事例・市場調査レポートをアップロードしました。
まずは「AI導入を考えている会社にはどのような製品を提案すれば良いか」と投げてみます。
営業資料作成の効率化
自社資料のみを学習しているので、アップロードしている資料に依拠した回答を得ることが出来ます。
ポイント: 営業チームが顧客ニーズに合わせた効果的な提案書を迅速に作成できます。
4. 社内ナレッジベースの自動生成
続けて同じ資料を用いて社内ナレッジベースを作成してみます。
今回は新入社員向けということで、各資料を適切に要約する事がタスクになります。
社内ナレッジベースの自動生成
新入社員がスムーズに業務を理解し、必要な知識を習得できるようなナレッジベースを構築することが出来ました。
ポイント: 社内での知識共有や社員教育が効率化にも便利です。
5. 市場調査レポートの要約とトレンド分析
今回は異なる3つの市場調査レポートをアップロードしました。
まずは、複数ドキュメントの一括管理機能を使って、異なるレポートを比較し、要点をまとめます。
市場調査レポートの要約
次に、今後の展望を比較・検討してみましょう。
トレンド分析
このように、NoteBookLMはアップロードされた資料の要点を把握・出力することが可能です。効率的に考察をすることが出来るので、積極的に活用していきたいですね。
ポイント: 経営層やマーケティング担当者にとっても、迅速に市場動向を把握し、戦略立案に活用することが出来ます。
NotebookLMの活用事例
NotebookLMは様々な場面で活用できる便利なツールです。個人での使用から企業での活用まで、具体的なユースケースを交えて紹介します。
個人ユーザー向け
- 研究や学習のサポート
話題のGoogleのNotebookLMを活用することで、複数の医学研究論文を効率的にレビューし、構造化データとして整理することが可能に!以下のような表が簡単に手に入ります。
— 限界助教|ChatGPT/Claudeで論文作成と科研費申請 (@genkAIjokyo) June 9, 2024
これにより、研究者は膨大な時間と労力を節約でき、より効率的に研究を進めていくことが可能になります… pic.twitter.com/cYAEiByyIv
NotebookLMは、研究論文やレポートの要約を自動で行い、さらに深い理解を助ける質問応答機能も備えています。情報を整理しやすく、学習効率を向上させます。
- 日常的な情報管理
海外の英語ポッドキャストで情報収集する時はNotebookLMがおすすめ。
— 矢野 哲平 | 耳で学ぶChatGPT (@robothink_jp) October 11, 2024
YoutubeでRSS配信している番組ならリンクを渡すだけで要約してくれます。
GeminiでもYoutube要約はできますがソースだけを参照するNotebookLMの方が精度が高い。
他のメディアでは聴けない話しが聴けるのでおすすめです。… pic.twitter.com/KwBnIK7CKU
日常生活でも、メモや読書記録などを一元管理し、必要に応じてAIが要約や整理をサポートします。
ビジネスシーン
- プロジェクト管理
ハルシネーションの発生が少ない、自分だけのAIを作れると話題のGoogleのNotebookLMを使って、「生産性向上 FAQボット」を作ってみた。
— 藤田 博之(ヒロロ) / 介護ITコンシェルジュ (@fujiemon0903) June 8, 2024
どこのソースなのか明示してくれることによる安心感が半端ない。
報酬改定の資料とか読み込みに時間がかかる&参考書的に定期的に使う場合に用いると良さそうです pic.twitter.com/NLAnPzUXON
ビジネスでは、契約書やプロジェクト資料を簡単に整理でき、効率的なナレッジ共有が可能です。AIの力でFAQや要約を自動生成し、業務の効率化に貢献します。
- 業務効率化
GoogleのNotebookLMは、
— 戸村涼子@スモールビジネス応援デジタル税理士 (@RtomuraTaxacc) July 25, 2024
ドキュメントを横断して検索・要約できる。
結果は、「この部分だよ」とソースも示してくれる。
法律や役所の文書など
関連するデータを一覧にして
横断検索すると便利かも。
試しにe-Govの所得税法関係を
やってみた。
精度に少し疑義はあるものの
ざっとした確認に便利🙂 pic.twitter.com/rSk1BiaR8t
NotebookLMは、特に法律文書や契約書などの長い文書を素早く要約し、必要な箇所をピックアップすることで、業務のスピードアップを実現します。
Notebook LM利用時のよくある質問
NotebookLMはどこで利用できますか?
NotebookLM は、Gemini API が利用可能な 180 以上の地域のすべてのユーザー(18 歳以上)が利用できます。
Geminiについて詳しく知りたい方には、以下の記事もおすすめです。ご参照ください。
NotebookLM にはデスクトップ パソコンとモバイル デバイスのどちらからアクセスすればよいですか?
モバイルもサポートされていますが、現時点の NotebookLM はデスクトップ パソコンでの表示に適しています。
NotebookLM 内にあるデータのプライバシーについてはどうですか?
NotebookLM は、ユーザーのデータを使ってトレーニングすることはありません。
NotebookLM 内にあるデータのプライバシーについてはどうですか?
NotebookLM は、ユーザーのデータを使ってトレーニングすることはありません。詳しくはこちらをご覧ください。
NotebookLMのアプリはありますか?
現時点では専用のアプリはありませんが、一部のブラウザでは、ショートカットをウェブアプリとしてインストールできる場合があります。
NotebookLMの今後の展望
NotebookLMの現状の課題と将来的な可能性について考察します。テクノロジーの進化に伴う機能拡張や新たな活用方法の展望を探ります。
NotebookLMの今後の展望
現状の課題
対応ファイル形式の制限
NotebookLMは現時点で多くのファイル形式に対応していますが、すべての形式に対応しているわけではありません。
例えば、特定の企業が使用するカスタムフォーマットや、専門分野で利用される特定のファイル形式には対応していないため、用途が限定されるケースがあります。
また、現在サポートされているファイルサイズやトークン数の上限により、大規模なプロジェクトには適していない場合があります。
AIの精度と限界
NotebookLMはGemini1.5Proを活用しており、文書の自動解析や要約生成に優れていますが、複雑な内容や高度な専門知識が必要な場面では、AIの限界が露呈することがあります。
特に、法的文書や医療関係の論文など、微妙なニュアンスや複雑な理論を正確に理解・解釈することが求められる文書に対して、AIの回答が不十分な場合もあります。
また、ハルシネーションの問題が完全には解決されていない点も注意が必要です。
将来的な可能性
利用シーンの拡大
今後、ビジネスシーンだけでなく、教育、医療、研究、政府機関など、さまざまな分野での活用が期待されています。
情報共有、プロジェクト管理、レポート作成において、業務効率化を図るためのツールとしても需要が拡大するでしょう。
有料プランの導入と追加機能
現在は無料で利用できますが、将来的に有料プランが導入される可能性があります。有料プランでは、より大規模なデータセットに対応した機能や、専用のセキュリティオプションの提供が考えられます。
また、企業向けには、カスタマイズ可能なダッシュボードやAPI連携、さらに高度なレポート機能が追加される可能性があります。
また、すでにGoogleドキュメントやGoogleスライドなど、他のGoogleツールとのシームレスな連携を実現していますが、今後はGoogle Workspace全体やその他のGoogleサービス(Google AnalyticsやGoogle Cloudなど)との統合が進む可能性があります。
まとめ
NotebookLMは、Googleが提供するAIを活用した強力なノートブックツールで、ビジネスや教育、研究における情報整理や効率化に大きな力を発揮します。
文書のアップロードと自動解析、質問応答機能、ノートブックの作成・共有機能など、多彩な機能を備え、特に大量の情報を扱う場面での作業時間を大幅に削減します。
また、Gemini 1.5 Proを搭載していることで、自然言語処理において高精度な解析と要約が可能です。
今後は、対応ファイル形式の拡大や有料プランの導入により、さらなる機能拡張が期待され、ビジネス、教育、医療分野において幅広い活用が見込まれます。
NotebookLMは、AI技術の進化とともに、情報管理の未来を支える重要なツールとなるでしょう。