この記事のポイント
ChatGPT ヘルスケアは、通常のチャットとは分離された専用スペースで、健康・医療に関する対話やデータを安全に管理する機能
会話データはモデル学習に利用されず、専用メモリと暗号化によって保護される厳格なプライバシー設計を採用
電子健康記録(EHR)やAppleヘルスケアなどのウェルネスアプリと連携し、検査結果の解説や生活習慣の可視化が可能
診断や治療を行うものではなく、受診前の質問整理や検査値の理解補助など、医療従事者によるケアを補完する役割に特化
WebとiOS向けに順次展開されているが、EHR連携など一部機能は米国限定であり、利用には待機リストへの登録が必要な場合がある

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
健康相談や検査結果の確認など、「とりあえず ChatGPT に聞いてから医師に行く」という使い方はすでに一般的になりつつあります。
こうした実態を踏まえて OpenAI が提供を始めたのが「ChatGPT ヘルスケア」です。
本記事では、ChatGPT ヘルスケアの目的や具体的な機能、プライバシー保護の仕組み、そして「何ができて何ができないのか」という実用上の境界線までを、公式情報に基づき体系的に解説します。
目次
ChatGPT ヘルスケアで何ができる?代表的なユースケース
Apple ヘルスケア・Function・MyFitnessPal などのウェルネスアプリ
ChatGPT ヘルスケアとは?
ChatGPT ヘルスケアは、ChatGPTの中に用意された「健康・ウェルネス専用の体験ゾーン」です。
通常のチャットとは別枠のスペースとして設計されており、健康に関する会話・ファイル・接続したアプリの情報が、他のチャットとは分離して管理されます。
Introducing ChatGPT Health — a dedicated space for health conversations in ChatGPT. You can securely connect medical records and wellness apps so responses are grounded in your own health information.
— OpenAI (@OpenAI) January 7, 2026
Designed to help you navigate medical care, not replace it.
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この専用スペースでは、次のようなことを目指しています。
- 自分の検査結果や診療メモ、ウェアラブルのデータなどをまとめて眺められるようにする
- 医師の診察前に「何を聞くか」「どこが不安か」を整理できるようにする
- 日々の生活習慣や体調の変化を、個別のアプリだけでなく「全体像」として把握しやすくする
重要なのは、ChatGPT ヘルスケアが医療従事者の代わりではなく、「準備と理解を手助けするアシスタント」だと明示されている点です。
診断や治療の指示を行うのではなく、あくまで医師との対話を補強したり、自分の状況整理を助けたりする役割に徹する設計になっています。
ChatGPT ヘルスケアで何ができる?代表的なユースケース
このセクションでは、公式情報から読み取れる「想定ユースケース」を整理します。
いずれも、最終判断は医療従事者に委ねつつ、その前段階の理解や準備をサポートするイメージです。

日常の健康管理・ウェルネス相談に使う
日々の「気になってはいるけれど、すぐに受診するほどでもない」ようなテーマに対して、ChatGPTヘルスケアは説明や整理を手伝います。
- 睡眠時間や運動量の傾向を踏まえた生活習慣の見直し
- 食事記録アプリのログをもとにした栄養バランスの確認
- ストレスや気分の変化に関する一般的なセルフケアの情報整理
すでに、健康やウェルネスはChatGPTの主要な利用分野のひとつであり、世界中で毎週数億人が関連する質問を投げかけているとされています。
ChatGPT ヘルスケアでは、こうした会話を専用スペースに隔離し、プライバシーを強化したうえで継続的に扱えるのが特徴です。
検査結果や診察準備を整理する
電子健康記録や検査結果を連携すると、ChatGPTヘルスケアはそれらを読み解くための補助を行います。
- 「この血液検査の項目は何を意味しているのか」を一般的な言葉で説明する
- 経年の検査結果を俯瞰し、「上がりつつある項目」「安定している項目」を整理する
- 今度の診察時に医師へ確認しておくとよい質問案をリストアップする
こうした用途は、医師の説明を置き換えるものではなく、「説明を理解し、疑問点を整理するための事前練習」に近い役割と捉えるとイメージしやすいです。
保険プランや医療利用傾向の理解を助ける
ChatGPT ヘルスケアは、医療利用の履歴などをもとに、保険プランの比較や自己負担のイメージ整理も手伝えるように設計されています。
- 過去数年の受診履歴を俯瞰し、「どのような診療をどのくらい利用しているか」を把握する
- 複数の保険プランの特徴を並べて、利用傾向に合う選択肢を比較検討する
ここでも、最終的な契約や金融判断は必ず人間側で行う前提で、複雑な条件や数字を理解しやすい形に整理する役割が想定されています。
ChatGPT ヘルスケアでは「できないこと」
一方で、ChatGPT ヘルスケアには明確な「限界」も設定されています。代表的なものは次の通りです。
- 診断や治療方針の決定を行うこと
- 救急医療の判断や、緊急時の具体的な指示を出すこと
- 個々の医療機関・保険会社の規約に依存するような、最終的な契約判断を下すこと
前述の通り、ChatGPTヘルスケアは、医療ケアを補完するために設計されており、診断・治療を目的としたサービスではないと明言されています。
「気になる点を整理し、医師に聞きたいことを準備する」「説明を理解しやすくかみ砕く」といった、前後のプロセスを支える使い方が前提です。
ChatGPT ヘルスケアで連携できる情報・アプリの種類
ChatGPT ヘルスケアの特徴のひとつは、電子健康記録 (EHR: Electronic Health Record) やウェルネスアプリと接続し、個人のデータに基づいた会話ができることです。

連携できる電子健康記録(EHR)と医療記録
電子健康記録や診療記録を ChatGPT ヘルスケアに接続すると、検査結果や受診概要、臨床履歴などをもとに会話ができるようになります。
- 検査結果の値の意味を、一般的な言葉で説明してもらう
- 過去の診療内容を時系列で整理し、「どのタイミングで何が行われたか」を俯瞰する
- 受診前に「どの検査結果について質問すべきか」を整理する
なお、電子健康記録との連携機能や、一部のアプリ連携は米国のみで提供されていると明記されています。
また、医療記録へのアクセスは18歳以上のユーザーに限定されており、設定画面からいつでも接続を解除できます。
Apple ヘルスケア・Function・MyFitnessPal などのウェルネスアプリ
ChatGPT ヘルスケアでは、医療機関の記録だけでなく、一般的なウェルネスアプリも接続できます。公式情報で挙げられている例を整理すると、次のようになります。
まず、代表的なアプリと用途を表にまとめます。
ヘルスケアで例示されている代表的なウェルネスアプリ
| 種類 | 具体例 | 主な用途のイメージ | 備考 |
|---|---|---|---|
| 電子健康記録 | 医療記録 | 検査結果・受診概要・臨床履歴の確認 | 18歳以上のユーザー向け |
| 活動量・バイタル | Apple ヘルスケア | ムーブ・睡眠・アクティビティのパターン把握 | 同期には iOS が必要 |
| 栄養・食事 | Function / MyFitnessPal / Weight Watchers | 血液検査結果に基づく栄養アドバイス、マクロ管理、食事プラン | GLP-1 薬剤利用者向けのガイダンスなども想定 |
| ライフスタイル | AllTrails / Instacart / Peloton | ハイキング候補探し、買い物リスト作成、ワークアウト提案 | 健康的な行動を取りやすくする支援 |
これらのアプリを接続すると、次のような会話がしやすくなります。
- 「最近の睡眠パターンを踏まえて、生活習慣のポイントを整理してほしい」
- 「食事記録と血液検査結果を組み合わせて、栄養面で気をつけるべき点を教えてほしい」
- 「GLP-1 の薬を使いながら筋力を維持する 1 週間の食事プランを考えてほしい」
連携時のデータ範囲とユーザーコントロール
アプリ連携においては、次のようなルールや考え方が強調されています。
- アプリが利用できるのは「必要最小限のデータ」に限定される
- ChatGPT とすでに接続済みのアプリであっても、ヘルスケア用の健康データにアクセスするには明示的な許可が必要
- ヘルスケア対応アプリは、OpenAI のプライバシー・セキュリティ要件に加え、「ヘルスケア組み込み向けの追加審査」を受ける
- アプリ接続時には、収集される可能性のあるデータの種類が事前に案内される
- ユーザーはいつでもアプリの接続を解除でき、解除すると即座にアクセス権が失われる
ChatGPT ヘルスケアの始め方と提供範囲
ここでは、2026年1月時点で公表されている「提供状況」と「利用開始後の基本的な流れ」を整理します。
現時点の提供状況と順番待ちリスト
ChatGPT ヘルスケアは、リリース直後は少人数の初期ユーザーから順次展開する形で提供が始まっています。
- まずは少人数の初期ユーザー向けに提供
- 利用状況をみながら体験を改善
- 数週間以内に Web 版と iOS のすべてのユーザーへ拡大予定
利用を希望するユーザー向けには、「順番待ちリスト(ウェイトリスト)」が用意されており、利用可能になり次第アクセスできるよう登録できます。

利用開始後の基本的な画面構成
利用可能になった場合、ChatGPT のサイドバーに「ヘルスケア」という項目が追加されます。

参考:OpenAI
- 左側のナビゲーションに「新しいチャット」「チャットを検索」「ライブラリ」「ヘルスケア」「Codex」「GPT」などが並ぶ
- ヘルスケアを選択すると、健康に関するプロンプト例や、医療記録の接続、検査結果の理解などのオプションが表示される
ここから、電子カルテやウェルネスアプリの接続、ファイルのアップロード、健康に関するチャットの開始などを行います。
利用できる環境・地域の制約
ChatGPT ヘルスケアは Web と iOS 向けに順次展開されていますが、すべての機能が全世界で同じ条件で提供されているわけではありません。
2026年1月時点で公式に明示されている主な制約は次のとおりです。
- 電子健康記録(EHR)の連携および一部のアプリは、米国のみで利用可能です。
- Apple ヘルスケアの接続には iOS が必要です。
- 医療記録連携は、米国の消費者向けにリアルタイムで接続された健康データネットワークである b.well との提携を前提としています。
日本を含む他地域のユーザーは、現時点では順番待ちリストへの登録が中心であり、実際に利用できる機能や連携範囲は今後の提供状況に左右されます。
ChatGPT ヘルスケアのプライバシー・セキュリティ設計
健康情報は、個人データの中でも最も機微な部類に入ります。
そのため ChatGPTヘルスケアは、ChatGPT全体でのセキュリティ・プライバシー基盤の上に、さらに追加の保護レイヤーを重ねる形で設計されています。

ChatGPT内の「ヘルスケア専用スペース」とメモリ
ヘルスケアは ChatGPT内の専用スペースとして提供され、次のような特徴があります。
- ヘルスケアでの会話・ファイル・接続したアプリ情報は、他のチャットとは分離して保存される
- ヘルスケア専用のメモリがあり、健康に関する文脈はこのスペース内に限定して保持される
- 通常のチャット履歴一覧にはヘルスケアの会話も表示されるが、情報自体はヘルスケアの領域にとどまる
必要に応じて、最近の生活環境や活動状況など、ヘルスケア以外の会話から一部の文脈を参照する場合がありますが、ヘルスケアで保存された健康情報がメインのチャット側にコピーされることはないとされています。
暗号化とデータ分離による保護
ChatGPT 全体では、会話やファイルが保存時・転送時の両方で暗号化されるセキュリティアーキテクチャが用意されています。
ChatGPT ヘルスケアでは、これに加えて次のような追加保護が導入されています。
- 健康データ専用に設計された暗号化・分離の仕組み
- 他の用途のデータとは区分された形での管理
- ヘルスケアの会話が、基盤モデルの学習には利用されないという方針
一般的な ChatGPTの利用時にも、一定期間後にチャットを削除できる仕組みや、一時的なチャットモードなどが用意されていますが、ヘルスケアではより踏み込んだ分離と暗号化を前提にした構成になっています。
多要素認証とデータコントロール機能
アカウントへの不正アクセスを防ぐため、ChatGPT 自体が多要素認証 (MFA) に対応しています。
ヘルスケア利用時も、MFA を有効化しておくことで、健康データへのアクセスリスクを下げられます。
また、ChatGPT 全体として次のようなデータコントロール機能が案内されています。
- 一定期間内にチャットを OpenAI のシステムから削除できる機能
- チャットの内容をモデル学習に利用しないための設定
- ヘルスケア専用メモリの確認・削除機能
ChatGPT ヘルスケアの品質・安全性はどう担保されているか?
ChatGPT ヘルスケアは、「モデルの賢さ」だけでなく、医療現場の感覚を反映した品質評価を重視して設計されています。
その中心にあるのが、世界各地の医師との協働と、「HealthBench」と呼ばれる評価フレームワークです。
世界各地の医師ネットワークとの協働
OpenAIは、60か国・多数の専門分野をカバーする260名以上の医師と2年以上にわたって協働し、健康に関する回答の品質向上に取り組んできたと説明しています。
この医師ネットワークは、次のような観点でモデルの出力にフィードバックを行っています。
- どのような回答が利用者にとって有益か
- どういった表現やアドバイスが有害になりうるか
- 受診を促す際の緊急度の伝え方や、過度な単純化を避けるためのバランス
累計 60 万回以上のフィードバックが、モデルの振る舞いに反映されており、単に医学的に正しいだけでなく、「現場感覚として安全かどうか」を重視したチューニングが行われています。
HealthBench による医療的観点からの評価
「HealthBench」は、医師が実際の臨床現場で回答の品質を評価する感覚を、ベンチマークとして形式化したフレームワークです。
- 試験問題のような一問一答型ではなく、臨床現場に近いケースに基づいて評価する
- 「正解・不正解」だけでなく、安全性・明確さ・適切な受診勧奨・個別状況への配慮など複数軸で見る
- 医師が作成した評価基準に基づき、モデルの応答を体系的にチェックする
このアプローチにより、「教科書的に正しい答えを返すか」だけではなく、実際の利用シーンでどれだけ安全かつ有用に振る舞えるかを評価しやすくしています。
「医師を補完するツール」としての設計思想
ChatGPT ヘルスケアは、一貫して「医療従事者を支援するツールであり、代替ではない」と位置づけられています。
- 検査結果をわかりやすく説明する
- 受診前に質問を整理する
- ウェアラブルやアプリのデータを解釈し、患者が理解しやすい形で整理する
といったタスクを通じて、医療者と患者のコミュニケーションをスムーズにすることが目的です。
そのため、ChatGPT ヘルスケアを利用する際も、
- 緊急性の高い症状がある場合は、必ず医療機関や救急サービスを優先する
- 不安な点や判断が必要な点は、最終的に医師・専門職に確認する
といった基本姿勢を崩さないことが重要です。
まとめ・FAQ:ChatGPT ヘルスケアをどう使いこなすか
本記事では、ChatGPT ヘルスケアの基本コンセプトと、既存のChatGPTとの違い、プライバシー保護や暗号化の仕組みを整理しました。
また、電子健康記録やApple ヘルスケア、各種ウェルネスアプリとの連携によって、検査結果の理解や診察前の準備、生活習慣の見直しを支援するユースケースを紹介しました。
現時点では提供地域や連携サービスに制約がありますが、「診療の代替ではなく、情報整理と対話のパートナー」として位置づけることで、医師とのコミュニケーションやセルフマネジメントの質を高めやすくなります。利用可能になったタイミングで、自分のニーズとプライバシーポリシーを確認しつつ、無理のない範囲から試してみることをおすすめします。





