この記事のポイント
Azure Storage Discoveryは、Azure Blob StorageとData Lake Storage資産を可視化・分析するフルマネージドサービス
容量、アクティビティ、構成、セキュリティ情報を単一の管理画面で把握し、コスト最適化やガバナンス強化を実現
Copilot in Azureと統合し、自然言語の質問で「アクセス頻度の低い大容量アカウント」などを抽出可能
Freeプラン(履歴15日)とStandardプラン(履歴18ヶ月, 詳細分析)があり、2025年9月30日までは全機能が無料
タグ付け戦略、RBACの活用、ワークスペースの階層設計が効果を最大化する鍵

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
「クラウド上のストレージコストが、どの部門でどれだけ発生しているのか分からない」「セキュリティ設定が全社で統一されているか不安…」
増え続けるAzureストレージ資産の管理に、多くの企業が課題を抱えています。その解決策としてMicrosoftが提供するのが「Azure Storage Discovery」です。
本記事では、このAzure Storage Discoveryについて、その全貌を徹底的に解説します。
サービスの基本機能、Free/Standardプランの違いと料金、始め方、そしてコスト最適化やセキュリティ強化に繋がる具体的な活用シーンまで、詳しくご紹介します。
目次
Azure Blob StorageとAzure Data Lake Storageとは?
Azure Storage Discoveryのプランの違いと利用料金
Azure Storage Discoveryの実践的な使い方
Azure Storage Discovery活用のベストプラクティス
ビジネス課題別の具体的なAzure Storage Discovery活用シーン
Azure Storage Discoveryとは?

Azure Storage Discovery
Azure Storage Discoveryとは、組織全体のAzure Blob StorageとAzure Data Lake Storage資産を可視化するフルマネージドサービスです。2025年10月に一般提供(GA)が開始され、現在は正式なサービスとして利用可能になりました。
単一の管理画面を通じて、データ資産が時間とともにどのように変化したかを分析し、コストの最適化、セキュリティの強化、運用効率の向上を実現します。このサービスは、企業がクラウド上に保存するデータが分散する中で増大する、管理の複雑性という課題に対応するために設計されています。
Azure Storage Discoveryは、単なるデータ監視ツールに留まりません。その本質は、企業のデータガバナンスを支援するプラットフォームです。例えば、「現在のストレージ容量はいくつか」という運用上の問いに答えるだけでなく、「過去の利用傾向とセキュリティのベストプララティスに基づき、コストとリスクを削減するためにどのような変更を行うべきか」という経営層や管理者の意思決定を支援する洞察を提供します。
Azure Blob StorageとAzure Data Lake Storageとは?

Azure Data Lake Storage
Azure Storage Discoveryを理解するためには、まずその分析対象となる2つの主要なストレージサービス、Azure Blob StorageとAzure Data Lake Storageについて把握することが重要です。ここでは、それぞれのサービスの基本的な役割と特徴をご説明します。
Azure Blob Storage
Azure Blob Storageは、Microsoftが提供するクラウドベースのオブジェクトストレージサービスです。テキスト、画像、動画、ログファイル、バックアップデータといった、特定のデータモデルを持たない非構造化データを格納するために最適化されています。
データはBLOB(Binary Large Object)と呼ばれる単位で管理され、それらはコンテナという入れ物の中に格納されます。
主な用途としては、Webサイトの画像やドキュメントをブラウザに直接配信したり、動画のストリーミング配信を行ったり、あるいはシステムのバックアップやアーカイブデータを保存したりするケースが挙げられます。
ペタバイト規模のスケーラビリティ、高い可用性、そしてアクセス頻度に応じてコストを最適化できる階層型ストレージといった特徴を持っています。
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Azure Data Lake Storage
Azure Data Lake Storageは、特にビッグデータ分析のために設計された、スケーラブルでコスト効率の高いクラウドストレージソリューションです。
Azure Data Lake Storageは、先述したAzure Blob Storageを基盤として構築されています。Azure Blob Storageの持つ低コストでスケーラブルな特徴はそのままに、ビッグデータ分析に必要な機能を備えています。
特に重要な追加機能が階層型名前空間です。従来のAzure Blob Storageがフラットな構造でオブジェクトを管理するのに対し、Azure Data Lake Storageはファイルやフォルダといった階層構造をサポートします。
一般的な分散処理フレームワークは、ディレクトリ単位でのデータ処理に最適化されているため、Azure Data Lake Storageの階層構造は、分析パフォーマンスを向上させる上で重要な機能となっています。
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以下に、Azure Blob StorageとAzure Data Lake Storageの主な違いをまとめた表を示します。
| 特徴 | Azure Blob Storage | Azure Data Lake Storage |
|---|---|---|
| 主な用途 | 汎用的なオブジェクトストレージ | ビッグデータ分析 |
| 名前空間 | フラット | 階層構造(ディレクトリ) |
| 最適化の対象 | 大容量オブジェクトの格納と取得 | 高スループットの分析クエリ |
| 分析パフォーマンス | 標準 | 並列分析処理に最適化 |
| 基盤技術 | ベースとなるオブジェクトストレージ | Azure Blob Storage上に構築 |
Azure Storage Discoveryの主な機能
Azure Storage Discoveryは、組織のストレージ資産を多角的に分析し、実用的な洞察を得るための機能を複数提供します。ここでは、その中核となる機能をご説明します。
Azureポータル上の対話型レポート
サービスの中心的な機能として、事前構築された対話型のレポート群をAzureポータルから直接利用できます。これらのレポートは、高レベルの集計値から個別のリソースへとドリルダウンできる一貫した情報パターンを持っています。
提供される主なレポートカテゴリは以下の通りです。
- 容量:ストレージのサイズ、オブジェクト数、コンテナ数などの推移を、サブスクリプション、リージョン、冗長性タイプといった様々な切り口で可視化します。
- アクティビティ:トランザクション数、イングレス(データの流入量)、エグレス(データの流出量)といったメトリックを通じて、データがどのようにアクセスされ、利用されているかを把握できます。
- エラー:失敗した操作やエラーコードを集計し、システム上の潜在的な問題を特定するのに役立ちます。
- 構成とセキュリティ:パブリックネットワークアクセスが許可されているか、暗号化設定は適切かといった構成情報を一覧表示し、セキュリティ上のベストプラクティスから逸脱しているリソースを特定します。
- 従量課金:容量とアクティビティのメトリックを関連付け、コストがどのような要因で発生しているかを理解するのに役立ちます。
Copilot in Azureとの統合
Copilot in Azureとの統合により、ストレージ資産に関する質問を自然言語で投げかけるだけで、データに基づいた洞察を即座に得ることができます。これにより、複雑なクエリ言語を習得していないユーザーでも、ファイナンス部門やプロダクト責任者といったビジネス関係者が簡単にレポートにアクセス可能になります。
例えば、以下のような複雑な分析ニーズにも対応可能です。
「過去1か月間のストレージサイズの傾向をリージョン別に表示してください」
「アクセス頻度が少なく、かつサイズが1 TiBを超えるストレージアカウントを一覧化してください」
「共有アクセスキーが有効になっているストレージアカウントはいくつありますか」
Copilotはこれらの質問に対して、グラフや表形式で分かりやすく回答を生成します。この機能により、従来はKustoクエリ言語などの専門知識が必要だった分析が、組織全体で民主化されます。
柔軟なスコープ設定と組織全体の可視性
Azure Storage Discoveryは、単一のワークスペースで、最大100万のストレージアカウントを、複数のサブスクリプションやリージョンにまたがって分析できるスケーラビリティを備えています。この広範な分析を管理しやすくするために、ワークスペースルートとスコープという2つの概念が用いられます。
-
ワークスペースルート
分析対象となるストレージアカウントが含まれるサブスクリプションやリソースグループを指定し、分析の全体的な境界を定義します。
-
スコープ
ワークスペースルート内で、さらに特定の条件に基づいてリソースをグループ化する機能です。通常、Azureリソースタグ(例:Department: Marketing)を用いてフィルタリングを行い、部門別、プロジェクト別、環境別といった特定の切り口でのレポート作成を可能にします。
履歴データの保持
ワークスペースを作成すると、ワークスペース作成時点より過去15日間の履歴データが自動的にバックフィルされます。
その後の保持期間は、選択したプランに依存します。Freeプランでは15日間、Standardプランでは最大18か月間、分析情報が保持されます。これにより、季節性のあるビジネスサイクルの分析や、長期的な成長トレンドの予測が可能になります。
Azure Storage Discoveryのプランの違いと利用料金
ここでは、Azure Storage Discoveryの利用料金についてご説明します。
Azure Storage Discoveryは、ワークスペースごとに、Freeプランと従量課金制のStandardプランの2つのプランが提供されています。
FreeプランとStandardプランの違い
FreeプランとStandardプランの違いを以下の表に示します。
| 分析可能な情報 | Freeプラン | Standardプラン |
|---|---|---|
| 容量 | • 傾向 • ディストリビューション • 上位のストレージ アカウント |
• 傾向 • ディストリビューション • 上位のストレージ アカウント |
| トランザクション | 対象外 | • 傾向 • ディストリビューション • 上位のストレージ アカウント |
| 構成 | 対象外 | • リソース構成 • セキュリティ構成 |
| 履歴 | • バックフィル¹: 15日間 • リテンション²: 15日間 |
• バックフィル¹: 15日間 • リテンション²: 18ヶ月間 |
注釈:¹ バックフィル:ワークスペース作成前の履歴データを追加できる期間です。 ² リテンション:分析情報を保持する期間です。
Standardプランの価格
Standardプランの総コストは、ワークスペースの構成(分析対象のストレージアカウント数とオブジェクト数)によって決まります。
2025年10月1日より正式な料金課金が開始されます。それまでは、FreeプランおよびStandardプランともに無料で利用可能です(2025年9月30日まで)。
詳細な価格体系は、Microsoft Azureの公式料金ページで公開されていますが、基本的には以下のような階層的な価格設定となります:
分析されたストレージアカウント
分析対象のストレージアカウント数に応じた段階的な価格設定があり、数が多いほど単価が低下します。
分析された総オブジェクト数
分析対象となるBlobオブジェクトの総数に応じた価格設定があり、こちらも数量が増えるほど単価が低下する設計となっています。
注記:記事執筆時点(2025年11月時点)での正確な価格情報については、Azure Storage Discovery公式料金ページをご確認ください。料金は地域ごとに異なる場合があります。
利用可能リージョン
Azure Storage Discoveryは複数の地域で利用可能です。主要なリージョンには以下が含まれます:
- 北米(East US2、West US2、South Central US など)
- ヨーロッパ(複数のEUリージョン)
- アジア太平洋(Japan East を含む)
- その他の地域
最新の地域可用性情報およびリージョン別の価格詳細については、Azure Storage Discovery公式料金ページおよびAzureグローバルインフラストラクチャページをご確認ください。
Azure Storage Discoveryの始め方
それでは、実際にAzure Storage Discoveryを開始する手順をご説明します。
- Azureポータルにアクセス
まずはAzureポータルにアクセスし、「ストレージ検出ワークスペース」と検索します。

Azureポータルにアクセス
- ワークスペースの作成
ストレージ検出ワークスペースに移動したら、「作成」をクリックします。

ワークスペースの作成
- ワークスペースルートの設定
分析対象となるサブスクリプションやリソースグループを指定します。
ワークスペースを作成した後にワークスペースルートを変更することはできないため注意しましょう。

ワークスペースルートの設定
- スコープの設定
分析対象となるタグを指定したスコープを追加しましょう。

スコープの設定
上記のステップに沿ってワークスペースを作成することで、Azure Storage Discoveryの利用を開始できます!
Azure Storage Discoveryの実践的な使い方
上記の始め方を踏まえ、ここではAzure Storage Discoveryの実践的な使い方を解説します。
ワークスペースのサイドバーから「レポート」をクリックすると、以下のように各項目ごとの分析情報を確認・検索することができます。

レポート
以下のように、各項目の上位アイテムを絞り込んで確認することも可能です。

トップ10アイテムの絞り込み
また、Azureポータルの上部バーからCopilot in Azureを呼び出すことで、対話形式で分析情報を確認できます。

Copilot in Azureとの対話
レポートだけでは比較検討が難しいデータも、Copilot in Azureを使用することで以下のように可視化することができます。

ストレージの増加傾向を分析
Azure Storage Discovery活用のベストプラクティス
Azure Storage Discoveryを効果的に活用するためには、いくつかのベストプラクティスが存在します。ここでは、サービスの効果を最大化するためのコツをご説明します。
ワークスペースの階層を計画する
単一のワークスペースとデフォルトのスコープだけを利用するのではなく、組織のレポート要件を考慮して階層を設計することが重要です。
例えば、組織全体の概要を把握するためのワークスペースを一つ用意し、それとは別に、特定の事業部門、重要なアプリケーションといった環境ごとに、専用のワークスペースやスコープを作成するといった設計が考えられます。
タグ付け戦略を徹底する
スコープ機能の有効性は、リソースタグの品質に直接的に依存します。
Department(部門)、Project(プロジェクト)、Owner(所有者)といったキーに対して、組織全体で一貫したタグ付けポリシーを適用することが、高品質なレポートを作成するための重要な前提条件となります。
RBAC(ロールベースアクセス制御)を活用する
サービスをデプロイするために必要な権限(ストレージリソースに対するReader権限)と、生成されたレポートにアクセスするために必要な権限(ワークスペースリソース自体に対するReader権限)は異なります。
この違いを利用して、財務担当者やセキュリティ監査役といった関係者に、基盤となるストレージアカウントへのアクセス権を付与することなく、安全にレポートへのアクセスを提供できます。
ビジネス課題別の具体的なAzure Storage Discovery活用シーン
このセクションでは、Azure Storage Discoveryが、具体的なビジネス課題の解決にどのように貢献するか、3つの主要な活用シーンをご紹介します!
コスト最適化
組織のコスト削減は多くの企業にとって重要な課題です。Azure Storage Discoveryは利用状況やアクセス履歴などのデータに基づき、無駄なコストの原因を可視化して具体的な削減策の立案と実行を支援します。
例えば、プロジェクト終了後に放置された未使用のストレージアカウントやコンテナはタグや利用状況で容易に特定でき、優先度を付けたクリーンアップやライフサイクルポリシーの適用により即時のコスト削減が可能です。
セキュリティとコンプライアンスの強化
大規模なストレージ環境では、一貫したセキュリティポリシーの適用が難しく、設定ミスや公開設定の見落としが情報漏えいの原因になります。Azure Storage Discoveryはセキュリティ監査を効率化し、これらのリスクを低減します。
セキュリティレポートやCopilotへの自然言語クエリにより、インターネットから誰でもアクセス可能な状態にあるストレージアカウントやコンテナを検出して一覧化できます。検出結果を基に優先度の高い対処やアクセス制御の修正を行うことで、情報漏えいを未然に防止します。
容量計画と成長予測
将来のストレージ需要を正確に予測し、予算を計画することは組織運営において重要な責務です。
アプリケーションや事業部門のタグでレポートをフィルタリングすることで、どのワークロードがデータ増加の主要因かを特定でき、部門別で精度の高い将来予測と予算配分が可能になります。
Azure Storage Discovery運用上の注意点と制限事項
Azure Storage Discoveryは有用なサービスですが、効果的に利用するためには、いくつかの運用上の特性と制限事項を理解しておく必要があります。ここでは、主な注意点をご説明します。
データ更新の遅延
Azure Storage Discoveryはリアルタイムの監視ツールではありません。分析情報は定期的に集計されるため、ストレージアカウントの新規作成や構成変更といった環境の変化がレポートに反映されるまでには、最大で24時間程度のタイムラグが発生する可能性があります。
この特性から、Azure Storage Discoveryは戦略的な傾向分析には適していますが、即時性が求められるアラート用途には向いていません。
リソースの制限
大規模な環境で利用する際には、以下のサービス上限に注意が必要です。
- サブスクリプションごと、リージョンごとのワークスペース数:10
- ワークスペースごとのワークスペースルート数:100
- ワークスペースごとのスコープ数:10
- スコープごとのタグ数:5
これらの上限は、Azureサポートにリクエストすることで引き上げ可能ですが、事前の計画が必要です。
料金プランのダウングレード
ワークスペースの料金プランをStandardからFreeにダウングレードした場合、過去15日間を超える履歴データは削除されます。復元することができないため、慎重に検討が必要です。
コスト削減を目的としたダウングレードは、18か月間のトレンド分析データが失われることを意味するため、十分な検討を行った上で実施してください。
【無料DL】AI業務自動化ガイド(220P)
Microsoft環境でのAI活用を徹底解説
Microsoft環境でのAI業務自動化・AIエージェント活用の完全ガイドです。Azure OpenAI、AI Agent Hub、n8nを活用した業務効率化の実践方法を詳しく解説します。
まとめ
本記事では、Azure Storage Discoveryの基本的な機能や利用方法、具体的な活用例をご紹介しました。
Azure Storage Discoveryは、2025年10月に一般提供が開始された、Azure Blob StorageやAzure Data Lake Storageの資産を可視化し、コスト最適化、セキュリティ強化、運用効率向上を支援するフルマネージドサービスです。
主な機能として、容量やアクティビティの分析、セキュリティ構成の可視化、Copilot in Azureとの統合による自然言語クエリ対応などが挙げられます。
さらに、タグ付け戦略やRBACの活用、ワークスペースの階層設計といったベストプラクティスを通じて、効果的にサービスを活用することが可能です。また、2025年9月30日までの無料試用期間を活用して、FreeプランとStandardプランのプラン比較検討を行うことをお勧めします。
Azure Storage Discoveryを活用することで、組織全体のストレージ資産を効率的に管理し、ビジネス課題の解決に役立てることが可能です。ぜひ本記事を参考に、Azure Storage Discoveryを導入してみてください!










