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エージェンティックワークフローとは?仕組みやメリット、活用事例を解説

この記事のポイント

  • エージェントワークフローは、AIエージェントが目標達成のために自律的に計画・実行するプロセス
  • ルールベースのRPAとは異なり、LLMの推論能力を活かして非定型業務や知的業務を自動化
  • 「計画→行動→観察→修正」のループで動作し、APIを通じて外部ツールと連携して能力を拡張
  • 生産性向上、非定型業務の自動化、未来予測、プロセス品質向上などのメリットをもたらす
  • GitHubの「Agentic Workflows」は、自然言語で開発プロセスを自動化する先進事例として注目
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

XでフォローフォローするMicrosoftMVP

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。


「AIにもっと仕事を丸投げしたい」「単純な自動化ではなく、考えて動くAIが欲しい」
そんなニーズに応えるのが、AIが自律的にタスクを遂行する「エージェントワークフロー」という新しい概念です。しかし、従来の自動化と何が違い、どのようにビジネスを変えるのか、まだよく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、この「エージェントワークフロー」について、その基本から先進事例までを徹底的に解説します。
エージェントワークフローの仕組み、RPAとの違い、ビジネスにもたらすメリット、そしてGitHubが公開した具体的な活用事例まで、詳しくご紹介します。

目次

エージェントワークフロー(エージェンティックワークフロー)とは?

従来の自動化(RPA)との違い

なぜ今エージェントワークフローが注目されるのか?2つの背景

【技術的背景】大規模言語モデル(LLM)の進化

【ビジネス背景】DX推進と複雑化する業務への対応

エージェントワークフローの仕組み

中核を担う「LLM(大規模言語モデル)」の役割

外部ツールと連携する「API」

タスクを計画・実行する「プランニング」と「実行ループ」

【発展】エージェントの思考パターン(デザインパターン)

エージェントワークフロー導入で得られるメリット

生産性の次元を変える「知的労働」への集中

ルールベースを超えた「非定型業務」の自動化

過去分析から「未来予測」へ繋がる意思決定

属人化を防ぎ「プロセス品質」を向上させる

タイムゾーンの壁を越えた「24時間稼働」の実現

【先進事例】GitHubの「Agentic Workflows」

従来(YAML形式)との比較

安全性を担保する「コンパイル方式」

エージェントワークフローの活用事例

カスタマーサポート

採用・人事(候補者スクリーニングと面接日程調整の自動化)

エージェントワークフローの導入・構築の始め方

1.OSSフレームワークを活用する(LangChain, CrewAIなど)

2.ノーコード・ローコードプラットフォームを利用する

エージェントワークフローの課題と今後の展望

乗り越えるべき課題(ハルシネーション、コスト、セキュリティ)

マルチエージェントへの進化と今後の可能性

まとめ

エージェントワークフロー(エージェンティックワークフロー)とは?

エージェントワークフローとは、「AIエージェントが与えられた目標に対し、自律的に計画を立て、タスクを分解・実行する一連のプロセス」を指します。
人間がすべての手順を細かく指示する必要はなく、「最終的なゴール」を伝えるだけで、AIがそこまでの道のりを自ら構築してくれます。

aiエージェントの目標達成プロセス
AIエージェントの目標達成プロセス


この自律性は、AIエージェントが状況を判断し、次に取るべき行動を最適化できる点にあります。これまで人間にしかできなかったような、柔軟な判断が求められる業務の自動化が可能になります。

従来の自動化(RPA)との違い

エージェントワークフローとしばしば比較されるのが「RPA (Robotic Process Automation)」です。RPAも業務を自動化する強力なツールですが、その性質は大きく異なります。

RPAは「決められたルールを正確に繰り返す」のが得意な一方、エージェントワークフローは「状況に応じて最適な行動を選択する」のが得意です。

両者の違いを以下の表にまとめました。

比較項目 エージェントワークフロー RPA (Robotic Process Automation)
自律性 高い(自ら判断・計画) 低い(ルールベースで動作)
柔軟性 高い(予期せぬ変化に対応可能) 低い(決められた手順から逸脱できない)
判断能力 あり(文脈や状況を理解) なし(事前定義されたルールのみ)
得意なタスク 非定型業務、調査、分析、要約 定型業務、データ入力、転記


このように、RPAが交通整理された道路を走る路線バスだとすれば、エージェントワークフローは目的地を入力すれば最適なルートを自分で見つけて走行する自動運転車のような存在と言えるでしょう。

AI Agent Hub1


なぜ今エージェントワークフローが注目されるのか?2つの背景

エージェントワークフローが急速に注目を集めている背景には、技術の劇的な進化と、ビジネス環境の変化という2つの大きな要因があります。
ここでは、その両側面から理由を解説します。

【技術的背景】大規模言語モデル(LLM)の進化

最大の要因は、ChatGPTなどに代表される「LLM (大規模言語モデル)」の驚異的な進化です。近年のLLMは、単に自然な文章を生成するだけでなく、非常に高いレベルで人間の意図を理解し、論理的な推論を行えるようになりました。

この「推論能力」が、AIエージェントが自らタスクを計画し、実行するためのエンジンとして機能します。LLMの進化がなければ、エージェントワークフローの実現は困難だったでしょう。

【ビジネス背景】DX推進と複雑化する業務への対応

多くの企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、自動化のニーズはますます高まっています。しかし、単純なデータ入力のような定型業務の自動化だけでは、生産性向上に限界が見え始めていました。

市場調査、競合分析、レポート作成といった、より複雑で判断を伴う業務を効率化する必要性が高まっています。エージェントワークフローは、こうした高度な知的業務を自動化する解決策として、大きな期待が寄せられているのです。


エージェントワークフローの仕組み

AIエージェントは、まるで魔法のように自律的にタスクを実行しているように見えますが、その裏側にはいくつかの重要な技術要素が組み合わさっています。

ここでは、その仕組みを分かりやすく分解して解説します。

中核を担う「LLM(大規模言語モデル)」の役割

前述の通り、エージェントワークフローの「脳」にあたるのがLLMです。LLMは、与えられた目標や指示(プロンプト)を解釈し、タスクを達成するための計画を立案する役割を担います。

この計画の精度が、ワークフロー全体の成果を大きく左右します。

外部ツールと連携する「API」

AIエージェントは、LLMの知識だけではタスクを完結できません。例えば、Webで最新情報を検索したり、特定のファイルを読み書きしたり、他のサービスとデータをやり取りしたりする必要があります。そのために使われるのが「API (Application Programming Interface)」です。

エージェントは、必要に応じて様々なツールのAPIを呼び出すことで、自身の能力を拡張し、現実世界のデータにアクセスしたり、操作したりすることができます。

【関連記事】
▶︎生成AIのAPIとは?主要なAPI一覧や使い方、選定のポイントを徹底解説

タスクを計画・実行する「プランニング」と「実行ループ」

エージェントは、一度立てた計画をただ実行するだけではありません。「計画 → 行動 → 結果の観察 → 計画の修正」というループを繰り返すことで、タスクの精度を高めていきます。

「ReActフレームワーク」の概念図
「ReActフレームワーク」の概念図


この思考と行動のサイクルにより、途中で予期せぬエラーが発生しても、自ら解決策を見つけ出してタスクを続行しようと試みます。

【発展】エージェントの思考パターン(デザインパターン)

より高度なエージェントを構築するために、いくつかの思考パターン(デザインパターン)が提唱されています。例えば、AI研究の第一人者であるアンドリュー・エン氏は、以下の4つを挙げています。

能力 説明
Reflection (内省) 自身の生成した結果を自己評価し、改善点を見つけて修正する能力。
Tool Use (ツールの使用) APIなどを通じて外部ツールを使いこなし、自身の能力を拡張する能力。
Planning (計画) 複雑なタスクを小さなステップに分解し、計画的に実行する能力。
Multi-agent collaboration (マルチエージェント連携) 複数のAIエージェントが協力し、それぞれの専門性を活かしてタスクを分担する能力。


これらのパターンを組み合わせることで、より強力で信頼性の高いエージェントワークフローを設計することが可能になります。


エージェントワークフロー導入で得られるメリット

エージェントワークフローをビジネスに導入することは、単に「業務が少し楽になる」といった次元の話ではありません。それは、業務の進め方、ひいては人間の働き方そのものを変革するポテンシャルを秘めています。

ここでは、導入によって得られる本質的なメリットを、具体的な変化とともに解説します。

生産性の次元を変える「知的労働」への集中

情報収集やデータ整理といった「作業」に忙殺され、本来やるべき「思考」の時間が取れない、というのは多くの知識労働者が抱える課題です。エージェントワークフローは、この構造を根本から変えます。

例えば、これまでマーケターが数日かけて行っていた競合分析や市場レポート作成をAIエージェントに任せることで、人間はAIが提示した分析結果を基に「では、次にどんな戦略を打つべきか」という、より付加価値の高い意思決定に時間と能力を集中できるようになります。

ルールベースを超えた「非定型業務」の自動化

従来のRPAが得意としてきたのは、あくまで「決められた手順」を繰り返す定型業務でした。しかし、実際のビジネスでは、顧客からの問い合わせメールのように、一件一件内容が異なる「非定型業務」が数多く存在します。

エージェントワークフローは、LLMの文脈理解能力を活かすことで、こうした曖昧さを含むテキスト情報を解釈し、内容に応じた適切なアクション(担当者への振り分け、回答案の生成など)を自動で行うことができます。
これは、自動化の領域を大きく広げる重要な一歩です。

過去分析から「未来予測」へ繋がる意思決定

ビジネスにおける意思決定の質は、情報の鮮度と深さに大きく依存します。AIエージェントは、24時間365日、市場のニュース、SNSのトレンド、社内の販売データといった膨大な情報を休むことなく監視・分析できます。

これにより、人間は過去のデータをまとめたレポートを待つのではなく、変化の「兆候」をリアルタイムで掴み、「次の一手」を先回りして打つ、プロアクティブな意思決定が可能になります。

属人化を防ぎ「プロセス品質」を向上させる

複雑な業務プロセスは、担当者の経験やスキルに依存する「属人化」に陥りがちで、これがミスや品質のばらつきの原因となります。

エージェントワークフローは、熟練者の知見やベストプラクティスを組み込んだ「実行役」として、常に一貫した最高品質のプロセスを再現します。これにより、担当者が変わっても業務品質が低下するのを防ぎ、組織全体の業務レベルを底上げします。

タイムゾーンの壁を越えた「24時間稼働」の実現

グローバルに展開するビジネスにとって、タイムゾーンの壁は常に課題となります。エージェントワークフローは、人間の労働時間に縛られることなく、24時間体制でビジネスを動かし続けます。

例えば、深夜に海外の顧客から発生した緊急サポート案件を即座に検知して初期対応を行ったり、システム異常をリアルタイムで監視・報告したりすることで、機会損失を防ぎ、事業の継続性を高めます。


【先進事例】GitHubの「Agentic Workflows」

エージェントワークフローの可能性を具体的に示す最も注目すべき事例が、GitHub Nextが開発を進める「Agentic Workflows」です。

「Agentic Workflows」の最大の特徴は、ソフトウェア開発の自動化プロセス(CI/CD)を、自然言語で記述できる点にあります。開発者は、自動化したい内容をMarkdown形式のファイルに、まるで人にお願いするように書くだけでよくなります。

GitHub Agentic Workflowsの概要
出典: GitHub Next

例えば、「コードが更新されたら、関連するドキュメントも更新してプルリクエストを作成して」といった指示をAIエージェントが解釈し、必要な一連のコマンドを自動で実行してくれます。

従来(YAML形式)との比較

これまでのGitHub Actionsでは、自動化のルールを「YAML」という厳密な書式で記述する必要がありました。以下の比較を見ると、「Agentic Workflows」がいかに直感的かが分かります。

▼従来のYAML形式(一部抜粋)

- name: Create Pull Request
  uses: peter-evans/create-pull-request@v4
  with:
    token: ${{ secrets.GITHUB_TOKEN }}
    commit-message: Update documentation
    title: '[AI] Update documentation based on recent changes'
    body: 'This PR was auto-generated by an agentic workflow to update documentation.'
    branch: ai-doc-updates
▼Agentic Workflowsの自然言語形式
code
Markdown
# Documentation Updater

You are a technical writer.
Your job is to improve the documentation in this repository.

Steps:
1. Review recent changes.
2. Update any outdated docs.
3. Open a PR with the updates.

▼Agentic Workflowsの自然言語形式

# Documentation Updater

You are a technical writer.
Your job is to improve the documentation in this repository.

Steps:
1. Review recent changes.
2. Update any outdated docs.
3. Open a PR with the updates.


専門的な構文を知らなくても、やりたいことを箇条書きにするだけでワークフローを定義できるため、非エンジニアでも開発プロセスの自動化に参加しやすくなる可能性があります。

安全性を担保する「コンパイル方式」

AIがリポジトリ内のコードを直接変更することには、当然ながらリスクが伴います。意図しない変更や、セキュリティ上の問題を引き起こす可能性はゼロではありません。

GitHubの「Agentic Workflows」は、この懸念に対応するために「コンパイル方式」という賢明なアプローチを採用しています。

これは、自然言語で書かれた指示を、AIエージェントが実行する前に、一度、人間がレビューできる従来のYAML形式のファイルに変換(コンパイル)するという仕組みです。AIの思考プロセスが「ブラックボックス」になるのではなく、実行されるすべてのステップが明確なコードとして可視化されます。

この方式により、開発者は以下のメリットを得られます。

  • 事前のレビューと監査:
    AIがどのような操作を行おうとしているかを、実行前に正確に把握し、承認できます。これにより、企業のセキュリティポリシーや開発ルールに準拠していることを確認できます。

  • 意図しない動作の防止:
    もしAIが指示を誤解して危険なコマンドを生成したとしても、コンパイルされたYAMLファイルを確認する段階でそれを発見し、修正することが可能です。

  • 再現性とデバッグの容易さ:
    万が一問題が発生した場合でも、実行されたのは標準的なYAMLファイルであるため、原因の特定やデバッグが従来通り行えます。


このように、コンパイル方式はAIの強力な自律性と、人間による統制・管理を両立させるための重要な仕組みなのです。

「Agentic Workflows」は、開発現場における、これまで手作業に頼らざるを得なかった「少し頭を使う定型作業」を自動化するのに非常に有効です。

【関連記事】
▶︎GitHub Actionsの構築「エージェンティックワークフロー(Agentic Workflows)」とは?仕組みと使い方を解説


エージェントワークフローの活用事例

エージェントワークフローの活躍の場は、ソフトウェア開発に限りません。ここでは、様々なビジネス領域での具体的な活用事例を紹介し、その汎用性の高さを示します。

### マーケティング
マーケティング部門では、時間のかかる市場調査や競合分析といった業務を自動化できます。AIエージェントは、膨大な情報収集からレポート作成までを一貫して実行し、戦略立案に必要なインサイトを迅速に提供します。

ゴール設定:
「競合製品Aに関する最新の市場動向とユーザーレビューを調査し、サマリーレポートを作成して」

ワークフローの動き:

  1. AIエージェントがWeb検索ツールを使い、ニュース記事やSNS、レビューサイトから関連情報を収集する。
  2. 収集したテキストデータから、製品の評判、長所・短所、顧客の要望などを抽出・分析する。
  3. 分析結果を基に、要点をまとめたレポート(グラフ付き)を自動生成する。

カスタマーサポート

日々大量の問い合わせが寄せられるカスタマーサポートでは、内容の分析と一次対応の迅速化が課題です。エージェントワークフローは、このプロセスを知的に自動化し、顧客満足度の向上とオペレーターの負担軽減に貢献します。

ゴール設定:
「顧客からの問い合わせメールを分析し、緊急度を判断して適切な担当部署に割り振り、一次回答案を作成して」

ワークフローの動き:

  1. 受信したメールの文面をAIエージェントが解析し、「クレーム」「技術的な質問」「料金に関する問い合わせ」などを分類する。
  2. 内容に応じて緊急度を3段階(高・中・低)で評価する。
  3. 社内データベースや過去のFAQを参照し、最適な一次回答のドラフトを作成する。
  4. 分類と緊急度、回答案をCRMシステムに自動で入力し、担当チームに通知する。

採用・人事(候補者スクリーニングと面接日程調整の自動化)

採用プロセスにおける履歴書の確認や面接調整は、担当者の大きな負担となります。AIエージェントは、これらの定型業務を代行し、人事担当者が候補者との対話といった本質的な業務に集中できる環境を作ります。

ゴール設定:
「応募者の履歴書を募集要項と照合し、基準を満たす候補者をリストアップ。候補者と面接官の空き時間を調整して面接をセットして」

ワークフローの動き:

  1. AIエージェントが応募者の履歴書データ(PDFなど)を読み取り、スキルや経験年数などの情報を構造化データとして抽出する。
  2. 募集要項の必須・歓迎スキルと照合し、候補者をスコアリングする。
  3. スコアが基準値を超えた候補者に対し、面接候補日を記載したメールを自動で送信する。
  4. 候補者からの返信を基に、面接官のスケジュール管理ツール(Google Calendarなど)のAPIと連携し、面接を自動で設定する。


これらの事例が示すように、エージェントワークフローは部門を問わず、人間の判断や情報収集を伴う複雑なタスクを自動化する強力なフレームワークです。

自然言語の理解力とツール利用能力を組み合わせることで、これまで人の手に頼らざるを得なかった領域に、新たな効率化と革新の可能性をもたらします。


エージェントワークフローの導入・構築の始め方

エージェントワークフローの概念に触れ、「実際に試してみたい」と考えた方もいるでしょう。ここでは、技術者向けと非技術者向け、2つのアプローチを紹介します。

1.OSSフレームワークを活用する(LangChain, CrewAIなど)

プログラミングの知識がある方向けのアプローチです。「LangChain」や「CrewAI」といったオープンソース(OSS)のフレームワークを利用することで、比較的容易に独自のAIエージェントを構築できます。

主要なエージェント開発フレームワーク

  • LangChain
    エージェント開発のデファクトスタンダード。豊富なツール連携と柔軟なカスタマイズ性が特徴です。

  • CrewAI
    複数のAIエージェントが協調してタスクをこなす「マルチエージェント・システム」の構築に特化しています。

これらのフレームワークは、LLMとの連携、ツールの使用、メモリ管理といった、エージェント開発に必要な機能を提供してくれます。まずは簡単なタスク(例:特定のテーマについてWebで調べて要約するエージェント)から作ってみるのがおすすめです。

2.ノーコード・ローコードプラットフォームを利用する

プログラミング経験がなくても、エージェントワークフローに近い体験ができるサービスも登場しています。「Zapier」や「Make」といったiPaaS(Integration Platform as a Service)ツールに加え、オープンソースで高機能な「**n8n」なども、ChatGPTをはじめとするAI機能をワークフローに組み込むことが可能です。

主要なiPaaS・自動化プラットフォーム

  • Zapier:
    最も代表的なiPaaS。圧倒的な数のアプリ連携が特徴で、手軽に自動化を始められます。

  • Make:
    視覚的なフローチャート形式で、より複雑な分岐やロジックを含むワークフローも構築しやすいプラットフォームです。

  • n8n:
    オープンソースであり、自身のサーバーで運用(セルフホスティング)することも可能な、柔軟性と拡張性の高さが魅力です。


これらのツールを使えば、「Gmailで特定のキーワードを含むメールを受信したら、その内容をAIに要約させてSlackに通知する」といった簡単なワークフローを、画面上の操作だけで直感的に構築することが可能です。

まずはこうしたツールで「AIによる自動化」を体験してみるのも良いでしょう。

【関連記事】
▶︎AIワークフローツールの選び方とおすすめ6選


エージェントワークフローの課題と今後の展望

エージェントワークフローは大きな可能性を秘めていますが、まだ発展途上の技術であり、いくつかの課題も存在します。ここでは、現状の課題と、それを乗り越えた先にある未来像について考察し、技術を客観的に評価します。

乗り越えるべき課題(ハルシネーション、コスト、セキュリティ)

エージェントワークフローを本格的にビジネス導入する上で、クリアすべきいくつかの技術的・運用的課題があります。

  • ハルシネーション(幻覚):
    LLMが事実に基づかない、もっともらしい嘘の情報を生成してしまう問題です。特に正確性が求められる業務において、AIエージェントが誤った判断を下すリスクは無視できません。

  • コスト:
    高性能なLLMのAPIは、その思考の複雑さに応じて利用料が高額になる傾向があります。複雑なワークフローを頻繁に実行すると、想定以上のランニングコストが発生する可能性があります。

  • セキュリティ:
    外部のAPIと連携したり、機密情報を含む社内データにアクセスさせたりする場合、厳格なセキュリティ管理と権限設定が不可欠です。不正な操作や情報漏洩のリスクを徹底的に管理する必要があります。


これらの課題を解決するため、生成結果のファクトチェックを行う仕組みや、コストを監視・制限する機能、安全なサンドボックス環境での実行といった研究開発が活発に進められています。

マルチエージェントへの進化と今後の可能性

今後の大きなトレンドとして注目されているのが、複数のAIエージェントが協調して動作する「マルチエージェント・システム」です。

これは、単一の万能なエージェントではなく、それぞれが専門的な役割を持つエージェントたちがチームを組んで、より複雑なタスクに取り組むという考え方です。

例えば、以下のようなチームプレイが考えられます。

  • リサーチャーエージェント: 最新の市場データを収集・分析する。
  • ライターエージェント: 分析結果を基に、レポートのドラフトを作成する。
  • 校閲エージェント: ドラフトの事実確認と文章校正を行う。
  • プロジェクトマネージャーエージェント: 各エージェントの進捗を管理し、全体のワークフローを調整する。

将来的には、企業内に様々な専門性を持つAIエージェントからなる「仮想的な組織」が構築され、人間とAIがより密接に連携しながら、これまで以上に複雑で創造的なプロジェクトを遂行していく未来が訪れるかもしれません。

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まとめ

この記事では、AIが自律的にタスクを遂行する「エージェントワークフロー」について、その仕組みから具体的な事例までを解説しました。

最後に、本記事の要点をまとめます。

  • エージェントワークフローは、AIが自ら計画・実行する自律的な自動化プロセスである。
  • RPAが定型業務を得意とするのに対し、エージェントワークフローは非定型業務や知的業務を得意とする。
  • LLMの進化が、その実現を技術的に可能にした。
  • GitHubの「Agentic Workflows」は、自然言語で開発プロセスを自動化する先進的な事例である。
  • ビジネスの様々な領域で活用が期待される一方、コストやセキュリティといった課題も存在する。

エージェントワークフローは、私たちの働き方を根本から変えるポテンシャルを秘めた技術です。この新しい自動化の波を理解し、いかに活用していくかが、今後のビジネスにおける競争力を左右する重要な鍵となるでしょう。

監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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