この記事のポイント
Agent Builderは、ノーコード/ローコードでAIエージェントのワークフローを視覚的に構築できるOpenAIのツール
テンプレートからの開始やドラッグ&ドロップでのノード配置により、複雑なワークフローも直感的に作成可能
トレースグレーディング機能でエージェントのパフォーマンスを評価・改善し、継続的な品質向上ができる
プロンプトインジェクションやデータ漏洩などのリスクに対する8つの具体的なセキュリティ対策が推奨されている
ChatKit(推奨)またはAgents SDK(高度)を使って、作成したワークフローを本番環境に簡単にデプロイできる

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
「AIエージェントを作りたいけど、プログラミングが難しそう…」「複雑なワークフローをコードなしで構築できたらいいのに」
OpenAIは、こうした課題を解決する革新的なツール「Agent Builder」を発表しました。これは、ドラッグ&ドロップの直感的な操作だけで、高度なAIエージェントのワークフローを構築できる、ビジュアル開発環境です。
本記事では、この「Agent Builder」について、公式発表された情報に基づき、その全貌を徹底的に解説します。
基本概念から実際の構築手順、セキュリティ対策、そして本番環境へのデプロイ方法まで、実務で使える情報を網羅的にお届けします。
目次
Agent Builderとは?
Agent Builderは、OpenAIが提供するビジュアルエージェント構築ツールです。
従来、AIエージェントを構築するには、複雑なコーディングやAPIの深い理解が必要でした。しかし、Agent Builderを使えば、ドラッグ&ドロップの直感的な操作だけで、多段階のエージェントワークフローを視覚的に組み立てることができます。
プログラミングの専門知識がなくても、テンプレートから始めて各ステップのノードを配置し、入力と出力を定義し、実際のデータを使ってプレビューするだけで、実用的なAIエージェントを構築できます。完成したワークフローは、ChatKitを使って自社サイトに組み込んだり、SDKコードをダウンロードして独自に実行したりすることが可能です。

Agent Builderのイメージ
エージェントとワークフローの基本概念
Agent Builderを効果的に使うには、まず「エージェント」と「ワークフロー」という2つの中核概念を理解することが重要です。
エージェントとは
エージェントとは、特定のタスクや目的を持ったAIの実行単位です。例えば、「顧客からの質問に答える」「データベースから情報を検索する」「文章を要約する」といった、個別の役割を担います。
ワークフローとは
ワークフローは、複数のエージェント、ツール、そして制御フロー(条件分岐やループなど)を組み合わせた、タスク処理全体の設計図です。
ワークフローには以下の要素が含まれます:
- エージェント: タスクを実行するAIの実行単位
- ツール: エージェントが利用する外部機能(データベース検索、API呼び出しなど)
- 制御フロー: タスクの実行順序や条件分岐のロジック
例えば、カスタマーサポートのワークフローであれば、「質問を受け取るエージェント」→「FAQを検索するツール」→「回答を生成するエージェント」→「必要に応じて人間にエスカレーションする制御フロー」といった複数の要素が連携して動作します。
このように、ワークフローは単一のエージェントでは実現できない、複雑で多段階のタスク処理を可能にします。
ノードによる構築の基礎
Agent Builderの中心的な機能が、「ノード」を組み合わせてワークフローを構築する仕組みです。
ノードとは
ノードは、ワークフロー内の各ステップを表すビジュアル要素です。それぞれのノードは特定の機能を持ち、データの入力を受け取り、処理を行い、出力を次のノードに渡します。
ノードの接続(型付きエッジ)
ノード同士を線で結ぶことで、データの流れを定義します。この接続線は「エッジ」と呼ばれ、**型付き(typed)**されています。
つまり、各エッジは特定のデータ型(文字列、数値、オブジェクトなど)を持ち、ノード間で受け渡されるデータの整合性が保証されます。これにより、実行前にデータの不整合を発見し、エラーを防ぐことができます。
データコントラクト(契約)の概念
ノードをクリックすると、その入力と出力を設定できます。ここで重要なのが「データコントラクト(契約)」の概念です。
上流のノードが出力するデータ型と、下流のノードが期待する入力データ型が一致していることを、視覚的に確認できます。これにより、下流のノードが期待するプロパティを確実に受け取れることが保証されます。
このように、Agent Builderは「パーツを組み合わせる」感覚で、複雑なAIワークフローを直感的に構築できる環境を提供しています。
Agent Builderの使い方(ステップバイステップ)
ここからは、実際にAgent Builderを使ってワークフローを構築し、デプロイするまでの具体的な手順を解説します。
事前申請
Agent Builderを使い始めるには、いくつかの事前準備が必要です。ここでは、アクセス要件とセットアップ手順を説明します。
必要なもの:
- OpenAIアカウント:
Agent Builderを利用するには、OpenAIアカウントが必要です。 OpenAI APIの利用者であれば、追加の申請なしでAgent Builderにアクセスできます。
- 支払い方法の登録:
Agent Builderは無料で使えますが、ワークフローを実行(Run)すると使用したモデルとツールに応じて料金が発生します。
そのため、事前にクレジットカードなどの支払い方法をOpenAI APIアカウントに登録しておく必要があります
アクセス方法:
- OpenAI Platformにサインイン
- 支払い方法を登録(未登録の場合)
- Agent Builderにアクセス

Agent Builderのトップページ
ステップ1:ワークフローの設計
ワークフローの設計は、Agent Builderを使う上で最も創造的で重要なステップです。ここでは、解決したい課題を分析し、どのようなエージェントとツールを組み合わせれば効果的かを考え、それを視覚的に構築していきます。
テンプレートの選択 or ゼロからの構築
Agent Builderを開くと、まず選択を迫られるのが「テンプレートから始めるか」「ゼロから構築するか」です。
- テンプレートから始める:
一般的なユースケース(カスタマーサポート、データ分析、コンテンツ生成など)に対応したテンプレートが用意されています。
テンプレートを選択すると、基本的なワークフローが自動で配置され、ノードがどのように連携するかを学ぶのに最適です。

- ゼロから構築:
完全にオリジナルのワークフローを作りたい場合は、空のキャンバスから始めることもできます。自由度が高い反面、ワークフロー設計の知識が求められます。

初めて使う場合は、テンプレートから始めることで、ノードの組み合わせ方やデータの流れ方を具体的に理解できます。
慣れてきたら、ゼロから独自のワークフローを構築することで、自社の業務プロセスに完全に最適化されたエージェントシステムを作ることができます。
ノードの配置と接続
ワークフローキャンバス上で、左側のパネルから必要なノードをドラッグ&ドロップで配置します。

基本的な操作:
- 左側のノードパレットから、使いたいノードを選択
- ノードの出力ポート(右側)から、次のノードの入力ポート(左側)へ線を引いて接続
- 接続が完了すると、型付きエッジが形成される
利用可能なノードタイプ
Agent Builderには、様々な用途に対応した多様なノードが用意されています。
- コアノード(Core Nodes)
ワークフローの基本となるノードです。全てのワークフローには、これらのノードが含まれます。
| ノードタイプ | 用途 | 主な機能 |
|---|---|---|
| Startノード | ワークフローの入力定義 | ユーザー入力を受け取り、会話履歴に追加。グローバル変数も定義可能 |
| Agentノード | AIモデルを使った推論・応答生成 | GPT-5などのモデルを指定し、プロンプトに基づいて回答を生成。各エージェントは明確なスコープを持つべき |
| Noteノード | コメント・注釈 | フロー内で何も実行しない。他の開発者への説明やメモとして使用 |
- ツールノード(Tool Nodes)
エージェントに外部サービスやデータソースへのアクセス能力を与えます。
| ノードタイプ | 用途 | 主な機能 |
|---|---|---|
| File Searchノード | ベクターストア検索 | OpenAIプラットフォームで作成したベクターストアからデータを検索。ベクターストアIDとクエリを指定 |
| Guardrailsノード | 入力検証・セキュリティ | PII(個人識別情報)、ジェイルブレイク、ハルシネーション、その他の不正使用を検出 |
| MCPノード | 外部ツール・サービス連携 | サードパーティのツールやサービスを呼び出し。Gmail、Zapierなどのコネクタや独自サーバーに接続 |
ロジックノード(Logic Nodes)
カスタムロジックを記述し、制御フローを定義します。
| ノードタイプ | 用途 | 主な機能 |
|---|---|---|
| If/elseノード | 条件分岐 | CEL(Common Expression Language)を使用してカスタム式を作成。分類された入力の処理方法を定義 |
| Whileノード | ループ処理 | カスタム条件に基づいてループを実行。CELを使用して条件式を定義 |
| Human Approvalノード | 人間による承認 | エンドユーザーに承認を求める。エージェントが作成した内容を人間がレビューしてから実行する場合に使用 |
データノード(Data Nodes)
ワークフロー内のデータを定義・操作します。
| ノードタイプ | 用途 | 主な機能 |
|---|---|---|
| Transformノード | データ変換 | 出力の形を変更(例:オブジェクト→配列)。スキーマに準拠させたり、エージェントが理解しやすい形に整形 |
| Set Stateノード | グローバル変数定義 | ワークフロー全体で使用するグローバル変数を定義。エージェントの出力を新しい変数として保存 |
入力・出力の設定
各ノードをクリックすると、右側のパネルにそのノードの設定画面が表示されます。
設定できる項目の例:
- 入力フィールド: このノードが受け取るデータの定義
- 出力フィールド: このノードが次のノードに渡すデータの定義
- パラメータ: ノード固有の動作設定(例:使用するモデル、プロンプトテンプレート、条件式など)
ここで重要なのは、型の整合性です。上流ノードの出力型と、下流ノードの入力型が一致していない場合、警告が表示されます。
ステップ2:プレビューとデバッグ
ワークフローの設計が一通り完了したら、実際に動作を確認します。
プレビュー機能の使い方
画面上部の「Preview」ボタンをクリックすると、プレビューモードに入ります。
プレビュー機能でできること:
- インタラクティブな実行: 実際にテキストを入力したり、ファイルをアップロードしたりして、エージェントの応答を確認
- サンプルファイルの添付: PDFや画像などのファイルを添付し、ファイル処理のワークフローをテスト
- 各ノードの実行状態の観察: ワークフローの実行中に、各ノードがどのように動作しているか、どんなデータを受け渡しているかを視覚的に追跡
デバッグのポイント
プレビュー機能を使うことで、以下のような問題を早期に発見できます:
- エージェントの応答が意図したものと異なる
- ノード間のデータ型が一致していない
- 条件分岐が期待通りに動作していない
- 外部ツールとの連携でエラーが発生している
問題が見つかった場合は、該当するノードの設定を見直したり、プロンプトを調整したりして、再度プレビューで確認します。このサイクルを繰り返すことで、ワークフローの品質を高めていきます。
ステップ3:ワークフローの公開
ワークフローのテストが完了し、満足のいく動作が確認できたら、次は「公開(Publish)」します。
自動保存機能
Agent Builderは、作業内容を自動的に保存します。そのため、作業中にデータが失われる心配はありません。いつでも中断し、後から作業を再開できます。
バージョン管理
「Publish」ボタンをクリックすると、現在のワークフローの状態が新しいメジャーバージョンとして保存されます。
公開することで得られるメリット:
- スナップショットとしての保存: 現在のワークフローの状態が、特定のバージョンとして固定されます
- ID とバージョンの付与: 公開されたワークフローには一意のIDが割り当てられ、バージョン番号が付与されます
- 本番環境での利用: このIDを使って、ChatKitやAgents SDKで実際にワークフローをデプロイできます
- 変更履歴の管理: 後から新しいバージョンを作成したり、古いバージョンを指定したりすることができます
公開(Publish)の手順
- 画面上部の「Publish」ボタンをクリック
- ワークフローの名前を設定
- 「確認」をクリックして公開完了
- ワークフローIDが発行される
このワークフローIDが、次のデプロイステップで重要になります。
ステップ4:デプロイ方法
作成したワークフローを実際のプロダクトに組み込む方法は、大きく分けて2つあります。
Agent Builderの上部ナビゲーションにある「Code」をクリックすると、これらの実装オプションが表示されます。
オプション1:ChatKitでのデプロイ(推奨)
ChatKitは、OpenAIが提供する、チャット体験を簡単に組み込むためのフレームワークです。
ChatKitを使うメリット:
- 最も簡単な実装方法: ワークフローIDを渡すだけで、自社アプリケーションにエージェントを組み込めます
- 初心者に最適: コーディングの知識が少なくても実装可能
- 迅速な展開: すぐに動作するチャット体験を構築できます
- 保守が容易: OpenAIがインフラを管理してくれます
実装手順:
- ChatKitのクイックスタートガイドに従う
- 公開したワークフローのIDをChatKitに渡す
- 自社のWebサイトやアプリケーションにChatKitコンポーネントを埋め込む
オプション2:高度な統合(Advanced Integration)
より細かい制御や、独自のインフラでの運用が必要な場合は、この方法を選択します。
高度な統合の特徴:
- 完全なカスタマイズ性: ワークフローのコードをコピーし、どこでも実行可能
- 自社インフラでの運用: ChatKitを自社のインフラ上で実行できます
- Agents SDKの活用: Agents SDKを使って、エージェントのチャット体験を構築し、高度にカスタマイズできます
- セキュリティ要件: 厳格なデータ管理要件がある場合に適しています
実装手順:
- Agent Builderの「Code」タブからワークフローコードをコピー
- 自社の開発環境に配置
- Agents SDKをインストール
- カスタムのチャット体験を構築
- 自社のインフラ上にデプロイ
2つの方法の比較
| 項目 | ChatKit | 高度な統合 |
|---|---|---|
| 実装の難易度 | 簡単(初心者向け) | 高度な技術が必要 |
| カスタマイズ性 | 制限あり | 完全に自由 |
| インフラ管理 | OpenAI管理 | 自社管理可能 |
| 開発速度 | 非常に速い | 時間がかかる |
| コスト | 低コスト | 開発コストが高い |
| セキュリティ | OpenAI基準 | 自社基準で管理可能 |
| 推奨対象 | 初心者、迅速な展開が必要なケース | 高度なカスタマイズが必要なケース |
多くの場合、まずはChatKitで素早くプロトタイプを作成し、必要に応じて後から高度な統合に移行するアプローチが効果的です。
トレースグレーディングと評価機能
構築したエージェントが本当に期待通りに動作しているかを確認し、継続的に改善していくために、Agent Builderには強力な評価機能が組み込まれています。
トレースグレーディングとは
トレースグレーディングは、エージェントの実行ログ(トレース)に対して、構造化されたスコアやラベルを付与するプロセスです。
トレースとは、エージェントが実行した一連の動作の記録であり、以下のような情報が含まれます:
- 各ノードでの意思決定
- ツールの呼び出し
- 推論ステップ
- 最終的な出力
これらのトレースに対して、「正確性」「品質」「期待値への適合度」といった観点から評価を行うことで、エージェントがどこで良い判断をし、どこで間違いを犯したのかを特定できます。
トレースグレーディングの手順
ステップ1:ダッシュボードでトレースを選択
Agent Builderのダッシュボードで「Logs > Traces」に移動します。ここには、Agent Builderで作成した全てのワークフローの実行ログが表示されます。
評価したいワークフローを選択すると、そのワークフローの過去の実行トレース一覧が表示されます。
ステップ2:トレースの検査
個別のトレースを開くと、ワークフロー全体の実行内容を詳細に確認できます。
確認できる情報:
- 各ノードの実行時刻
- ノードに渡されたデータ
- ノードから出力されたデータ
- エラーや警告
- 実行にかかった時間
ステップ3:グレーダーの作成と実行
評価基準(グレーダー)を作成します。グレーダーとは、トレースを評価するための基準やルールのことです。
グレーダーの例:
- 「回答が質問に適切に答えているか」(0-10点)
- 「使用された情報源が正確か」(True/False)
- 「応答時間が5秒以内か」(True/False)
- 「不適切な表現が含まれていないか」(True/False)
作成したグレーダーをトレースに対して実行すると、各トレースにスコアが付与されます。
ステップ4:パフォーマンスの分析
複数のトレースを評価することで、エージェントの全体的な傾向や、改善が必要なポイントを特定できます。
例えば:
- 「特定の種類の質問では精度が低い」
- 「あるノードで頻繁にエラーが発生している」
- 「応答時間が想定より長い」
といった問題を発見し、ワークフローの該当部分を改善することができます。
評価ダッシュボード(Evals)
より体系的かつ大規模な評価を行いたい場合は、**評価ダッシュボード(Evals)**を使用します。
「Grade all」機能
トレースグレーディング画面で「Grade all」を選択すると、評価ダッシュボードに移動します。
ここでは、選択した複数のトレース(またはトレースセット)に対して、一括で評価を実行できます。
テスト基準の追加・編集
評価ダッシュボードでは、独自の評価基準を定義し、それに基づいてエージェントを評価できます。
カスタム評価基準の例:
- ビジネス固有のKPI(顧客満足度、解決率など)
- コンプライアンス基準(個人情報保護、規約遵守など)
- パフォーマンス基準(応答時間、リソース使用量など)
実行(Run)の設定
評価の対象を細かく指定できます。
設定可能な項目:
- 使用するモデル: GPT-5、GPT-5-miniなど、特定のモデルでの実行のみを評価
- 日付範囲: 特定期間のトレースのみを評価(例:先週のみ、最新1000件のみ)
- ツール呼び出しの有無: 特定のツールを使用したトレースのみを評価
- エラーの有無: エラーが発生したトレースのみを抽出して分析
これにより、「新しいモデルに切り替えた後のパフォーマンス変化」や「特定のツールが関与する場合のエラー率」といった、きめ細かい分析が可能になります。
大規模なエラー識別
多数のトレースを評価することで、個別のエラーではなく、システム全体のパターンやトレンドを把握できます。
発見できる問題の例:
- 特定の条件下で頻発するエラーパターン
- 時間帯による性能の変動
- 特定のユーザー入力パターンに対する脆弱性
- 段階的に悪化している品質指標
これらの洞察により、AIアプリケーションの**レジリエンス(回復力)**を構築し、本番環境での信頼性を高めることができます。
Agent Builderの料金体系
Agent Builderの料金体系は、OpenAIの既存のAPI料金体系に含まれており、追加料金なしで利用できる点が大きな特徴です。
基本的な料金の考え方
Agent Builderを含むAgentKitの全てのツールは、標準のAPIモデル料金に含まれています。 つまり、Agent Builder自体の利用料は発生せず、ワークフロー内で使用するモデルやツールに応じた従量課金のみとなります。
ワークフロー実行時の料金
ワークフローを実行すると、使用したモデルとツールに応じて料金が発生します。
モデル使用料金(トークンベース)
ワークフロー内で使用するモデルに応じて、入力トークンと出力トークンの料金が発生します。
主要モデルの料金例(1Mトークンあたり):
| モデル | 入力 | 出力 |
|---|---|---|
| GPT-5 | $1.25 | $10.00 |
| GPT-5-mini | $0.25 | $2.00 |
| GPT-5-nano | $0.05 | $0.40 |
2025年10月時点の料金。最新情報はOpenAI公式サイトでご確認ください。
ツール使用料金
ワークフローで使用するツールによっても料金が発生します。
主要ツールの料金:
- File Search(ファイル検索): $2.50 / 1,000クエリ + ストレージ $0.10/GB/日(最初の1GBは無料)
- Computer Use: $3.00 / 1M入力トークン、$12.00 / 1M出力トークン
- Image Generation: 画像品質に応じて約$0.01(低)〜$0.17(高)/枚
ChatKitのホスティング料金
ChatKitを自社インフラでホスト(Self-hosted ChatKit)する場合、通常のモデルトークン料金のみが発生します。 OpenAIがホストするChatKitを使用する場合も、追加のホスティング料金は発生しません。
エンタープライズ向け機能
SSO(シングルサインオン)、RBAC(ロールベースのアクセス制御)、監査ログといったエンタープライズ向け制御機能も、追加料金なしで含まれています。
Agent Builderのセキュリティと安全性
AIエージェントを構築し運用する上で、セキュリティは最も重要な考慮事項の一つです。Agent Builderで構築するワークフローには、いくつかの固有のリスクが存在します。
エージェント構築に伴う主なリスク
リスク1:プロンプトインジェクション
プロンプトインジェクションは、最も一般的で危険な攻撃の一つです。
攻撃の仕組み:
信頼できないテキストやデータがAIシステムに入力された際、その中に含まれる悪意のある内容が、AIへの本来の指示を上書きしようとします。
攻撃の目的:
- 機密データの流出: 下流のツール呼び出しを通じて、本来アクセスできないはずのデータを外部に送信
- 意図しない動作の実行: 不正な返金処理、データの削除、権限のない操作など
- モデル動作の改変: エージェントの性格や応答スタイルを意図しない方向に変更
具体例:
データ検索エージェントが、本来は「顧客情報の要約」を返すべきところを、プロンプトインジェクションにより「生の顧客レコードをそのまま送信する」ように騙される可能性があります。
実際の例については、Codex internet access docsで詳しく解説されています。
リスク2:プライベートデータ漏洩
攻撃者の意図がなくても、エージェントが意図せず機密情報を漏らしてしまうリスクも存在します。
漏洩のパターン:
- 過剰な情報共有: モデルが、ユーザーの意図や期待を超えて、MCPツールに過剰なデータを送信してしまう
- コンテキストからの漏洩: 会話の文脈で、本来共有すべきでない情報が出力に含まれてしまう
- 意図しない推論: モデルが機密データから推論を行い、それを出力してしまう
制御の限界:
ガードレールを使うことで、コンテキストに含まれる情報をある程度制限できますが、モデルが接続されたMCPと何を共有するかを完全にコントロールすることはできません。
リスク軽減のための8つのベストプラクティス
1. 信頼できない変数をdeveloper messagesに使用しない
Developer messages(開発者メッセージ)は、ユーザーメッセージやアシスタントメッセージよりも優先順位が高いため、信頼できない入力をここに直接注入すると、攻撃者に最大の制御権を与えてしまいます。
対策:
- 信頼できない入力は、必ずユーザーメッセージを通じて渡す
- これにより、入力の影響力が制限され、モデルが開発者の指示を優先しやすくなる
特に重要な場面:
センシティブなツールや特権的なコンテキストに入力が渡されるワークフローでは、この対策が極めて重要です。
2. 構造化出力でデータフローを制約する
プロンプトインジェクションの多くは、モデルが予期しないテキストやコマンドを自由に生成し、それが下流に伝播することに依存しています。
対策:
ノード間で構造化出力を定義します。
構造化出力の例:
- Enum(列挙型): 「承認」「拒否」「保留」といった限定された選択肢のみを許可
- 固定スキーマ: JSON形式で、特定のフィールドのみを含むデータ構造を強制
- 必須フィールド名: 決められた名前のプロパティのみを受け付ける
これにより、攻撃者が指示やデータを密輸するために使える「フリーフォームチャネル」を排除できます。
効果:
予期しないコマンドや悪意のあるペイロードが、ノード間を流れることを防ぎます。
3. 明確なガイダンスと例でエージェントを誘導する
エージェントが意図しない動作をする原因は、攻撃だけではありません。
その他の原因:
- ハルシネーション(事実誤認): モデルが存在しない情報を生成
- 誤解: プロンプトの意図を正しく理解できていない
- 曖昧なユーザー入力: 複数の解釈が可能な入力
対策:
プロンプトを強化し、以下を提供します:
- 望ましいポリシーの明確なドキュメント: 「~してはいけない」「~の場合は~すべき」といったルールを明示
- 具体的な例: 良い例と悪い例の両方を示す
- エッジケースの予測: 意図しないシナリオを予測し、その場合の正しい行動を例示
効果:
エージェントが迷う場面を減らし、一貫した動作を実現できます。
4. GPT-5またはGPT-5-miniを使用する
これらの新しいモデルは、開発者の指示に従うことにおいて、より規律正しい性質を持っています。
GPT-5/GPT-5-miniの利点:
- 指示追従性の向上: 開発者が与えた指示を、ユーザーの入力よりも優先しやすい
- ジェイルブレイク耐性: モデルの制約を回避しようとする試みに対する耐性が強化
- 間接的プロンプトインジェクション耐性: 外部データに埋め込まれた悪意のある指示を無視しやすい
対策:
エージェントノードレベルで、使用するモデルをGPT-5またはGPT-5-miniに設定します。
推奨シーン:
特にリスクの高いワークフロー(金融取引、個人情報処理、権限管理など)では、これらのモデルを使用することで、よりレジリエントな(回復力のある)デフォルト姿勢を提供します。
5. ツール承認を常にオンにする
MCPツールを使用する際は、必ず**ツール承認(Tool Approval)**を有効にします。
対策:
Agent Builderでは、Human Approvalノードを使用します。
Human Approvalノードの機能:
- エージェントがツールを呼び出す前に、ユーザーに確認を求める
- ユーザーは操作内容をレビューし、承認または拒否できる
- 読み取り操作と書き込み操作の両方に適用可能
効果:
- 予期しない操作や悪意のある操作を人間がブロックできる
- ユーザーに透明性と制御権を提供
- 重大なエラーを未然に防ぐ最後の砦
推奨シーン:
- データベースへの書き込み
- 外部APIへのPOSTリクエスト
- 金銭が絡む操作
- 機密情報へのアクセス
6. ガードレールでユーザー入力を検証する
ガードレールノードを使って、受信する入力をサニタイズ(無害化)します。
ガードレールノードの機能:
- PII(個人識別情報)の編集:
氏名、住所、電話番号、クレジットカード番号などを自動で検出し、編集(マスキング)します。これにより、機密情報が不要に処理されることを防ぎます。
- ジェイルブレイク試行の検出:
悪意のある入力パターン(モデルの制約を回避しようとする試み)を検出し、ブロックします。
注意点:
ガードレールノード単体では完璧ではありませんが、効果的な第一の防御層として機能します。他の対策と組み合わせることで、セキュリティレベルを大幅に向上させられます。
7. トレースグレーダーとEvalsを実行する
モデルが何をしているかを理解できれば、ミスをより適切に捕捉し防ぐことができます。
対策:
- Evals(評価)を定期的に実行:
ワークフローのパフォーマンスを継続的に評価し、問題の兆候を早期に発見します。
- トレースグレーディングで詳細分析:
エージェントの意思決定、ツール呼び出し、推論ステップなどの特定部分にスコアや注釈を付け、エージェントがどこで上手くいき、どこで間違えたかを評価します。
効果:
- 異常な動作パターンの早期発見
- セキュリティインシデントの事後分析
- 継続的な改善サイクルの確立
8. 複数のテクニックを組み合わせる
単一の対策に頼るのではなく、これらのテクニックを多層的に組み合わせることで、プロンプトインジェクション、悪意のあるツール使用、予期しないエージェント動作のリスクを大幅に削減できます。
推奨される多層防御設計:
第1層:入力の検証
- ガードレールノードでPII編集とジェイルブレイク検出
- 信頼できないデータをユーザーメッセージ経由で渡す
第2層:データフローの制約
- 構造化出力で、ノード間を流れるデータを厳密に制限
- 外部入力からは、特定の構造化されたフィールド(enumや検証済みJSON)のみを抽出
第3層:モデルの選択
- GPT-5またはGPT-5-miniを使用し、指示追従性とジェイルブレイク耐性を向上
第4層:人間の介入
- Human Approvalノードで、重要な操作を人間が確認
第5層:継続的な監視
- トレースグレーディングとEvalsで、異常を検出し改善
設計原則:
信頼できないデータが、エージェントの動作に直接影響を与えないようにワークフローを設計します。各層が独立して機能し、一つの層が突破されても他の層が防御する、多重防御の考え方が重要です。
Agent Builderの実践的な活用例
Agent Builderは、業界や業務内容を問わず、様々なシーンで活用できます。ここでは、実際の企業が導入を進めている代表的なユースケースを、ワークフローの構成とともに紹介します。
これらの例を参考にすることで、自社のどの業務プロセスにAgent Builderを適用できるかのヒントが得られるはずです。
カスタマーサポートの自動化
顧客からの問い合わせ対応は、多くの企業にとって重要でありながらコストのかかる業務です。Agent Builderを使えば、よくある質問への自動応答から、複雑な問題の適切なエスカレーションまで、一連の対応フローを自動化できます。
サポート担当者は、AIでは対応できない高度な問題や、感情的なケアが必要な案件に集中できるようになり、顧客満足度と業務効率の両方を向上させることができます。
ワークフロー構成例:
- 顧客からの問い合わせを受付(ユーザー入力ノード)
- ガードレールノードでPII編集とジェイルブレイク検出
- 問い合わせ内容を分類(分類エージェント)
- FAQ検索エージェントが関連情報を検索(ツールノード)
- 回答生成エージェントが適切な返答を作成
- 回答の品質チェック(検証エージェント)
- 必要に応じて人間のサポート担当者にエスカレーション(条件分岐 + Human Approval)
期待できる効果:
- 24時間365日の自動対応が可能になり、タイムゾーンを超えた顧客サービスを実現
- よくある質問への即座の回答により、顧客の待ち時間を大幅に削減
- 人間のサポート担当者は複雑な問題に集中でき、専門性を活かせる
- 対応品質の標準化により、担当者による品質のばらつきを解消
社内ナレッジベースの検索・要約
企業内には、社内Wiki、ドキュメント管理システム、メール、チャット履歴など、膨大な情報が散在しています。従業員が必要な情報を見つけるために費やす時間は、生産性の大きな損失となっています。
Agent Builderを使えば、これらの散在する情報源を統合的に検索し、関連情報を自動で要約して提示するシステムを構築できます。特に新入社員のオンボーディングや、部門を横断したプロジェクトでの情報共有において、大きな効果を発揮します。
ワークフロー構成例:
- 従業員が社内情報について質問
- 質問を明確化・構造化(質問改善エージェント)
- 複数のデータソースを並列検索(ツールノード群)
- 社内Wiki
- ドキュメント管理システム
- 過去のメールアーカイブ
- 社内チャット履歴
- 検索結果を統合・ランキング
- 関連情報を要約して提示(要約エージェント)
- 必要に応じて詳細情報へのリンクを提供
期待できる効果:
- 情報検索時間を従来の数分の一に短縮し、本来の業務に集中できる
- 散在する情報への一元的なアクセスにより、情報の見落としを防止
- 新入社員のオンボーディング期間を大幅に短縮し、早期戦力化を実現
- 組織に蓄積された知識を効果的に活用し、ナレッジマネジメントを促進
データ分析とレポート生成
データ分析は多くの企業で重要性が認識されているものの、専門的なスキルを持つ人材の不足により、十分に活用されていないケースが少なくありません。
Agent Builderを使えば、非技術者でも自然言語で条件を指定するだけで、データの抽出から分析、可視化、レポート生成までを自動で実行できます。
これにより、データドリブンな意思決定を組織全体に浸透させることができます。
ワークフロー構成例:
- ユーザーが分析したいデータの条件を指定
- データベースから関連データを抽出(ツールノード)
- データの前処理・クレンジング
- 統計分析エージェントがデータを分析
- 可視化エージェントがグラフやチャートを生成
- レポート生成エージェントが分析結果をまとめて報告
- Human Approvalで最終確認
期待できる効果:
- 非技術者でもデータ分析が可能になり、データ活用の民主化を実現
- 定型レポートを完全自動化し、アナリストは高度な分析に集中できる
- リアルタイムに近いデータ分析により、意思決定のスピードが向上
- データに基づいた経営判断により、勘や経験に頼らない経営を推進
コンテンツ生成パイプライン
マーケティング部門やメディア企業では、大量のコンテンツを継続的に生成する必要がありますが、質を保ちながら量を確保することは大きな課題です。
Agent Builderを使えば、リサーチから執筆、編集、SEO最適化までの一連のプロセスを自動化し、クリエイターは創造的な部分に集中できるようになります。
ワークフロー構成例:
- トピックやキーワードを入力
- リサーチエージェントが関連情報を収集(Web検索ツール)
- 情報の信頼性を検証(ファクトチェックエージェント)
- 執筆エージェントが初稿を作成
- 編集エージェントが文体や構成を改善
- SEO最適化エージェントがメタデータを生成
- 最終校正と承認(Human Approval)
期待できる効果:
- コンテンツ制作の工数を大幅に削減し、制作スピードを数倍に向上
- 一貫した品質とトーンを維持し、ブランドイメージを強化
- 大量のコンテンツ生成が可能になり、SEO戦略を加速
- クリエイターは戦略立案やクリエイティブな部分に時間を使える
ChatGPT活用でお困りの方へ
まとめ
Agent Builderの登場は、AIエージェント開発の民主化における重要な一歩です。
従来、高度なプログラミング知識やAIの専門的な理解が必要だったエージェント構築が、ドラッグ&ドロップの直感的な操作だけで実現できるようになりました。
本記事で解説した主要なポイント:
- ビジュアル構築環境: ノードを組み合わせることで、複雑なワークフローを視覚的に設計
- ステップバイステップのプロセス: 設計→プレビュー→公開→デプロイの明確な流れ
- プレビューとデバッグ: リアルタイムでテストし、問題を早期に発見
- トレースグレーディング: エージェントのパフォーマンスを客観的に評価し、継続的に改善
- 8つのセキュリティ対策: 多層的な防御でリスクを軽減
- 柔軟なデプロイ: ChatKitで簡単に、またはAgents SDKで高度にカスタマイズ
しかし、Agent Builderは単なる「便利なツール」ではありません。これは、ビジネスプロセスの自動化、顧客体験の向上、そして組織の生産性を根本から変革する可能性を秘めたプラットフォームです。
カスタマーサポートの24時間対応、社内ナレッジの即座の検索、データ分析の自動化、コンテンツ生成の効率化——これらはすべて、Agent Builderによって実現可能になります。
ただし、その力を最大限に引き出すには、本記事で紹介したセキュリティのベストプラクティスを守り、継続的な評価と改善を行うことが不可欠です。AIエージェントは完璧ではありませんが、適切に設計し運用すれば、ビジネスに計り知れない価値をもたらします。
次のステップ:
- ChatKitクイックスタートで、最初のエージェントをデプロイしてみましょう
- 高度な統合ガイドで、Agents SDKを使ったカスタマイズ方法を学びましょう
- セキュリティガイドで、より詳細なセキュリティ対策を確認しましょう
AI総合研究所では、企業のAIエージェント導入を支援しています。Agent Builderを使った開発・導入支援・研修など、幅広いサービスを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。
















