この記事のポイント
GitHub Copilot Businessは、月額19ドルで利用できる組織向けのAIコーディング支援プラン
組織全体のポリシー管理や監査ログ、IP Indemnityなど、個人プランにはない高度な管理・セキュリティ機能を提供
コードスニペットの収集を無効化できるなど、プライバシー保護が強化されている(サービス提供や品質改善のための利用状況データなど、一部のテレメトリは引き続き送信される)
issueを割り当てるだけでAIが自律的にコードを実装する新機能「Copilot coding agent」を搭載
導入にはサブスクリプション購入、ポリシー設定、ユーザーへのアクセス権付与というステップが必要

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
「チームでGitHub Copilotを導入したいけど、個人プランとの違いは?」「組織で使う上で、セキュリティは大丈夫?」
AIコーディング支援ツールとして絶大な人気を誇るGitHub Copilotですが、法人での利用には、個人利用とは異なる管理・セキュリティ要件が求められます。そのニーズに応えるのが「GitHub Copilot Business」です。
本記事では、この法人向けプラン「GitHub Copilot Business」について、その全貌を徹底的に解説します。
料金体系、個人プランとの違い、導入方法、そして自律開発を可能にする新機能「Copilot coding agent」まで、詳しくご紹介します。
目次
1. 組織ポリシーとアクセス制御を前提にしたCopilot運用
2. Premium requests と連動したコスト・利用状況の可視化
3. データ保護とIP Indemnityで社内説明しやすい
4. Copilot coding agent をポリシーとセットで展開できる
GitHub Copilot Pro(個人プラン)に加入している場合の注意点
BusinessプランからEnterpriseプランへのアップグレード
GitHub Copilot Pro(個人向けプラン)とGitHub Copilot Businessの違い
GitHub Copilot BusinessとEnterpriseの違い
どのような組織にGitHub Copilot Businessが向いているか
開発者がGitHub Copilot Businessを使うときの基本フロー
3. Copilot coding agentでバックログや定型作業を任せる
GitHub Copilot Business導入前に確認しておきたいチェックリスト
GitHub Copilot Businessとは
GitHub Copilot Businessは、AIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」を組織単位で導入・管理するための法人向けプランです。
GitHub Free / GitHub TeamプランのOrganizationに加え、GitHub Enterprise Cloudを利用しているEnterpriseアカウントでも利用できます。
個人向けの**GitHub Copilot Pro / Pro+**と比べて、組織ポリシーの一元管理、監査ログ、IP補償 (IP Indemnity)、Copilot coding agentの集中管理など、エンタープライズ利用を想定した機能が追加されています。
GitHub Copilot Businessの主要機能

ここでは、Pro / Pro+ と共通の「コード補完・チャット」などはあえて詳しく触れず、Businessならではの強みに絞って整理します。
Businessプランの価値は、ざっくり言うと次の4つに集約できます。
- 組織ポリシーとアクセス制御を前提にしたCopilot運用
- Premium requests を含む「コストと利用状況」の見える化
- データ保護・IP Indemnity を押さえたエンタープライズ向け設計
- Copilot coding agent をポリシーとセットで展開できること
1. 組織ポリシーとアクセス制御を前提にしたCopilot運用
Businessプランでは、「誰が・どこで・どの機能まで使えるか」を組織側でコントロールできます。
代表的なポイントは次の通りです。
- ユーザー/チーム単位での Copilot利用の有効/無効
- IDE / CLI / GitHub Mobile など、主な利用環境ごとの制御
(GitHub.com 全体でのチャット統合や組織ナレッジ連携は Enterprise 側の強み) - 公開リポジトリと高い類似度を持つ提案を抑制する 「パブリックコード一致ブロック」ポリシー
- 特定のリポジトリ/パス/ファイル種別をコンテキストから外す コンテンツ除外設定
Pro / Pro+ が「各自の設定に依存する」個人利用であるのに対し、Business ではこれらを組織ポリシーとして強制できるのが大きな違いです。
2. Premium requests と連動したコスト・利用状況の可視化
Businessプランには、1ユーザーあたり月300回のプレミアムリクエスト枠が含まれます(2025年12月時点)。
加えて、管理者向けに次のようなコスト管理機能が提供されます。
- Copilot premium requests usage report(課金レポート種別名: Premium requests usage report)などのレポートで、ユーザー/チームごとの利用状況を可視化
- 「プレミアムリクエストを有料で使ってよいか」を 組織ポリシーで制御
- Enterprise / 組織アカウントの 「Budgets and alerts」設定から、プレミアムリクエストの月額予算上限を指定
これにより、
- 「どのチームがエージェントや高性能モデルを多用しているか」
- 「Businessのままでよいユーザー」と「Enterpriseに上げた方がコスパが良いユーザー」
をレポートから洗い出し、ライセンスと予算を定期的に見直す運用が可能になります。
3. データ保護とIP Indemnityで社内説明しやすい
Business / Enterprise では、コードやプロンプト、生成結果が基盤モデルの再学習に使われないことが、Trust Center やプランページ、DPA などで明示されています(Data excluded from training by default)。
※現在は Free / Pro / Pro+ を含め、GitHub Copilot 利用データは既定でトレーニングから除外される仕様ですが、
Business / Enterprise ではこれに加えて、契約・DPAレベルでの保証やエンタープライズ向けの安全措置が提供されます。
あわせて次のようなポイントが、法務・情報セキュリティ担当との調整をしやすくします。
- コードスニペットの収集を無効化できるなど、機密コード保護を意識した設計
- パブリックコード一致ブロックによる、意図しないコード流用リスクの低減
- **IP Indemnity(知的財産補償)**により、適切な利用範囲内で発生した知財クレームに対してGitHubの補償を受けられる
「技術的に便利」というだけでなく、コンプライアンス面を含めて社内合意を取りにいきやすいのが Business の特徴です。
4. Copilot coding agent をポリシーとセットで展開できる
Copilot coding agent 自体は、Pro / Pro+ / Business / Enterprise で共通のプレミアム機能ですが、
Businessではこれを**「組織ポリシー+予算管理」の枠組みの中で運用できる**のがポイントです。
具体的には、次のような設計ができます。
- どのリポジトリ/チームにエージェントを開放するかを管理者が制御
- Premium requests の予算とUsageレポートを用いて、エージェントを多用するチームを見える化
- まずは安全なリポジトリ(サンプルやサンドボックス)で試し、慣れてきたらクリティカルなシステムへ適用範囲を広げる
こうした運用により、
「とりあえず全員にエージェントを開放した結果、どこで何をしているか分からない」
という状態を避けつつ、PoC → 本番展開 → 全社スケールまでを段階的に進めやすくなります。
GitHub Copilot Businessの料金

2025年12月時点で、GitHub Copilot Businessは1ユーザーあたり月額19ドルのサブスクリプションとして提供されています。
課金はシート(ライセンス)単位で行われ、通常は1ユーザーあたり月額19ドルで請求されます。
組織の請求方法(GitHub経由か、Azureサブスクリプション経由か など)によっては、年間ベースでの契約・請求形態を選択できるケースもあります。
Businessプランには、次のような内容が含まれます。
- IDE(VS Code / Visual Studio / JetBrainsなど)でのCopilot提案・チャット
- GitHub MobileでのCopilot利用
- GitHub.com 上での一部の Copilot 機能(コードビュー補助や Spaces 連携など、提供範囲はアップデートにより変動)
- (Copilot Business / Enterprise 共通の)セキュリティ機能や IP Indemnity
- 月間300回分のプレミアムリクエスト枠(後述)
プレミアムリクエストと料金の仕組み
GitHub Copilotでは、標準的なコード補完やチャットとは別に、高性能モデルやエージェント機能の利用回数を「プレミアムリクエスト」としてカウントします。
Businessプランでは、1ユーザーあたり月300回分のプレミアムリクエストが含まれます。
プレミアムリクエストのポイントは次のとおりです。
- GitHub Copilot が「プレミアムリクエスト」として扱う 高性能モデル(Premium models)への問い合わせ
- Copilot coding agentや高度なcode reviewなど、一部のエージェント/レビュー機能の呼び出し
- プランごとに含まれる回数を超えた分は、1リクエストあたり0.04ドルで従量課金
- 未使用分のプレミアムリクエストは、翌月に繰り越しされない
また、管理者は管理者は Enterprise / Organization 単位で、「プレミアムリクエストの有料利用を許可するか(Premium request paid usage policy)」と、「Premium Request SKU に対する月次予算(Budgets & alerts)」を設定できます。
予算と使用状況レポートを組み合わせることで、予期しないコスト発生を抑えつつ、必要なチームだけに高性能モデルを開放する運用が可能です。
【関連記事】
▶︎GitHub Copilot のプレミアムリクエストとは?料金・消費の仕組みを徹底解説!
GitHub Copilot Pro(個人プラン)に加入している場合の注意点
既に個人で「GitHub Copilot Pro / Pro+」のサブスクリプションに加入しているユーザーに、組織から「Copilot Business」または「Copilot Enterprise」のシートが割り当てられた場合、そのままだと**個人プランと組織プランの両方が課金対象になる可能性があります。
このため、次のポイントを押さえておくと安心です。
- 開発者は中断なく、割り当てられた組織プランのCopilotを利用可能になる
- 組織のシート割り当て状況と、自身の個人プランの請求サイクルを確認したうえで、不要になった個人プランはユーザー側でキャンセルするのが基本
- 重複期間の扱いや返金・クレジットの有無は、GitHubの課金ポリシーやリージョンによって異なる可能性がある
実際のキャンセルタイミングや返金方法は、時期やリージョンによって変わる可能性があるため、最新の仕様はGitHubの「Copilotプラン管理/課金に関するヘルプページ」や請求画面で確認してください。
BusinessプランからEnterpriseプランへのアップグレード

GitHub Copilot Businessを利用している組織が、より高度な機能や広いプレミアムリクエスト枠を必要とする場合は、Copilot Enterpriseへのアップグレードを検討します。
アップグレード時の主なポイントは次のとおりです。
- 管理画面からプランを変更すると、対象ユーザーはすぐにEnterprise機能へアクセス可能
- 料金は一般的なライセンス製品と同様に、契約期間中の残り日数に応じた差額精算(案分)が行われますが、具体的な計算方法やタイミングは支払い方法やリージョンなどによって異なる場合があります。最新の挙動はGitHubのBilling関連ドキュメントで確認してください。
- 既存のポリシー設定やシート割り当ては基本的に引き継がれるため、追加セットアップは最小限
Enterpriseプランでは、GitHub.com上でのCopilot機能や組織ナレッジ連携、監査・ポリシー管理などがさらに拡張されており、大規模組織での全社展開を前提にした設計になっています。
これらを本格的に活用したくなったタイミングが、アップグレードの一つの目安になります。
ダウングレードする場合
逆に、Copilot EnterpriseからBusinessへダウングレードするケースもあります。この場合は、次の点を押さえておく必要があります。
- ダウングレードは手続きした時点で即時に適用される
- 契約期間の残り日数に応じた差額精算が行われますが、具体的な計算方法や返金・クレジットの扱いは支払い方法やリージョンなどによって異なる場合があります。詳細はGitHubのBilling関連ドキュメントを確認してください。
- GitHub.com上での一部の高度な機能(たとえば、Copilot Spaces を使った組織ナレッジとの連携など)は、Businessプラン適用後には利用できなくなる
大規模組織では、特定部門だけEnterpriseを維持し、他部門をBusinessに切り替えるなど、プランの組み合わせでコスト最適化を図るケースもあります。
GitHub Copilot Businessの導入方法

ここからは、GitHub Copilot Businessを組織で導入する際の具体的なステップを整理します。GitHub Enterprise Cloud環境の有無によって若干画面は異なりますが、大きな流れは共通です。
導入プロセスは、次の6ステップで考えると分かりやすくなります。
1. サブスクリプションの購入
最初に、組織としてCopilot Businessの契約を行います。
- GitHub.comにオーナーまたは課金管理者としてログインします。
- 組織の「Settings」→「Billing and plans」→「GitHub Copilot」から、Businessプランを選択します。
- 必要なシート数と支払い方法を指定し、サブスクリプションを確定します。
2. ポリシーの設定
次に、組織レベルでのCopilotポリシーを設定します。ここでの設定が、セキュリティとコスト管理の基盤になります。
- パブリックコード一致ブロックの有無
- 特定のファイルやリポジトリを提案対象から除外するかどうか
- Copilot coding agentやcode reviewなど、エージェント機能の有効/無効
- プレミアムリクエストの有料利用を許可するか、予算の上限値
大規模組織では、最初は限定的なチームのみ有効化し、運用実績を見ながら段階的に範囲を広げるアプローチがよく採用されています。
3. ユーザーへのアクセス権付与
ポリシーが決まったら、実際にCopilotを利用するユーザーやチームにシートを割り当てます。
- 組織の「People」または「Teams」タブから対象メンバーを選択
- 該当ユーザーに「GitHub Copilot Business」のライセンスを割り当て
- 必要に応じて、特定チームのみエージェント機能を許可するなど、チーム単位のポリシー調整を行う
この段階で、対象ユーザーのIDEやGitHub.comにCopilotが表示されるようになります。
4. IDEの設定
各開発者は、自身の開発環境でCopilotを有効化します。代表的な手順は次のとおりです。
- 利用中のIDE(VS Code / Visual Studio / JetBrainsなど)に、GitHub Copilot拡張機能をインストール
- GitHubアカウントでサインインし、組織アカウントを選択
- Copilot Chatやインライン補完が有効になっていることを確認
特にVS Codeでは、Copilot Chat、Copilot in the CLI、エージェント関連機能が統合されているため、最初の導入・検証環境として選ばれるケースが多く見られます。
5. 認証とアクティベーション
IDE側でサインインした後も、組織の設定によっては追加の認証ステップが要求される場合があります。
- SAML SSOや条件付きアクセスを利用している場合、組織側のセキュリティポリシーに従った認証
- Enterprise Cloud環境では、EnterpriseアカウントとOrganizationアカウントの紐付け確認
これらをクリアすると、開発者は日常的な開発フローの中でCopilotを利用できるようになります。
6. 利用開始とトレーニング
最後に、開発チームに対してCopilotの利用方法や注意点を周知します。典型的には、次のような内容を短い勉強会やナレッジ共有でカバーします。
- 補完結果をそのまま受け入れず、必ずレビュー・テストを行うこと
- セキュリティポリシーやライセンス遵守の観点から、生成コードの取り扱いに注意すること
- プレミアムリクエスト機能やCopilot coding agentの使いどころ
導入後も、定期的にUsageレポートを確認し、「使われていない部署がないか」「一部のチームに負荷やコストが偏っていないか」をチェックすると、運用の質を高めやすくなります。
GitHub Copilot Pro(個人向けプラン)とGitHub Copilot Businessの違い
ここでは、個人開発者向けのGitHub Copilot Pro / Pro+と、組織向けのGitHub Copilot Businessの違いを整理します。

一元管理と請求
Copilot Pro / Pro+では、各ユーザーが自分自身でサブスクリプション契約と支払いを行います。一方、Copilot for Businessでは、組織アカウントから一括してライセンスを購入・配布します。
- Pro / Pro+:個人クレジットカードでの支払いが中心
- Business:組織の請求先に集約し、経費として管理しやすい
ライセンスの付け外しや、部署異動に合わせたシート再割り当てがしやすい点も、Businessプランのメリットです。
アクセス制御とポリシー設定
Copilot Pro / Pro+では、個人ユーザーが各自で設定を行いますが、組織全体のポリシーを強制する仕組みはありません。
Copilot for Businessでは、次のようなアクセス制御が可能です。
- 組織内のどのユーザー/チームにCopilotを許可するか
- パブリックコード一致ブロックやファイル除外などのセキュリティポリシー
- coding agentやcode reviewなど、一部機能の有効/無効
セキュリティやコンプライアンス要件が厳しい業種では、この「組織側での強制力」を重視するケースが多く見られます。
データ利用とプライバシー
個人プランと法人プランでは、データの取り扱いにも違いがあります。詳細はGitHubのプライバシー説明に委ねられますが、概要としては次のように整理できます。
-
Business / Enterpriseでは、コードやプロンプト、生成結果を基盤モデルの学習に利用しないことがTrust CenterやDPAで明示されており、保持期間も用途ごとに明確に定義されています。
-
Pro / Pro+でも、プライベートリポジトリのコードやプロンプトは Data excluded from training by default として扱われ、基盤モデルの再学習には利用されません。
コードスニペットの収集や保持については、ユーザー側で一部の設定を変更できるようになっています。
-
一方で、ログの保持期間やGitHubが「データプロセッサ」として振る舞うか「データ管理者」として振る舞うかといった法的な立ち位置は、Business / Enterpriseと個人プランで異なります。
そのため、監査やコンプライアンス要件が厳しい企業ではBusiness / Enterpriseが前提になりやすいと言えるでしょう。
この違いは、機密性の高いコードベースを扱う企業にとって、プラン選択の重要な材料になります。
プレミアムリクエスト枠
プレミアムリクエスト枠にも、プランごとの差があります。
- Pro:月300回
- Pro+:月1,500回
- Business:月300回(組織管理・ポリシー制御付き)
Businessプランでは、プレミアムリクエストの有料利用や予算管理を組織側で制御できる点が、個人プランとの大きな違いです。
GitHub Copilot BusinessとEnterpriseの違い

法人向けには、GitHub Copilot for Business と GitHub Copilot Enterprise の2つのプランがあります。どちらも組織単位のライセンス管理やポリシー設定、IP Indemnity を備えていますが、
- GitHub.com との統合範囲
- プレミアムリクエスト枠
- 組織ナレッジ活用とガバナンスの深さ
といった観点で役割が分かれます。
主な違いは以下の通りです。
| 項目 | GitHub Copilot for Business | GitHub Copilot Enterprise |
|---|---|---|
| 料金 | $19 / ユーザー / 月 | $39 / ユーザー / 月 |
| プレミアムリクエスト枠 | 300回 / 月 / ユーザー | 1,000回 / 月 / ユーザー |
| GitHub.comでの機能 | IDE / CLI / Mobile 中心 + 一部の Copilot 機能 | GitHub.com 全体に統合された Copilot Chat や PR 要約 など |
| 組織ナレッジ活用 | プロジェクト単位の Copilot Spaces での文脈共有 | 組織横断のナレッジ検索・QA を前提としたインデックスと連携 |
| 想定規模 | 数十〜数百名規模の開発チーム | 数百〜数千名規模・複数事業部をまたぐエンタープライズ環境向け |
どちらのプランでも、インライン補完や IDE 上の Copilot Chat、Copilot coding agent、コードレビューなどの主要機能は共通です。
違いは主に、**「GitHub.com 全体への統合の深さ」と「プレミアムリクエスト枠・ガバナンスの厚み」**にあります。
GitHub.com連携とナレッジ活用
Business では IDE や CLI を起点に、日々の開発フローの生産性向上にフォーカスします。
代表的な特徴は次の通りです。
- 開発者の主戦場である IDE / CLI / GitHub Mobile での利用が中心
- Copilot Spaces を使った、チームやプロジェクト単位のコード・ドキュメントの文脈共有
- 組織レベルのポリシーやパブリックコード一致ブロックを前提とした、安全な補完
Enterprise は、GitHub.com 全体を「Copilot と会話しながら使う」体験を前提に設計されています。
- GitHub.com 上での Copilot Chat による PR / Issue / ドキュメント横断での質問・要約
- 組織コードベースやナレッジベースと連携した、社内向け QA・検索体験
- 複数組織・複数事業部をまたぐポリシーや監査ログの一元管理
IDE だけで完結するか、Web UI も含めた開発コラボレーション全体に Copilot を広げるかが、大きな分かれ目です。
プレミアムリクエスト枠とコスト設計
プレミアムリクエスト枠の違いは、「どこまでエージェント中心の開発スタイルに寄せるか」と直結します。
-
Business
1ユーザーあたり月300回のプレミアムリクエスト枠。
coding agent や高度なコードレビューを「日常的に使うが、常時フル回転ではない」チーム向けです。
-
Enterprise
1ユーザーあたり月1,000回のプレミアムリクエスト枠。
エージェントや高性能モデルをヘビーに回し続ける前提のチームでも余裕を持って使えます。
実務的には、まず Business で PoC や限定チームへのロールアウトを行い、
「毎月のプレミアムリクエスト利用が常に上限付近」という開発者が増えてきたら、そのチームだけ Enterprise へ引き上げる、というステップが現実的です。
どのような組織にGitHub Copilot Businessが向いているか
GitHub Copilot Businessは、単に「人数が多いから法人プラン」というよりも、開発体制やセキュリティ要件に一定以上の複雑さがある組織にフィットします。目安として、次のような観点で考えると整理しやすくなります。

規模・体制の目安
個人〜ごく小規模チーム(〜10名程度)
- プロダクトオーナーやリードエンジニアが個人で決裁しているような規模であれば、まずは Copilot Pro / Pro+ から始めるケースが多く見られます。
- コードベースも1〜2リポジトリに集約されており、「誰にどこまで使わせるか」を細かく分けるニーズが小さい場合です。
小〜中規模チーム(10〜200名程度)
- チームやプロダクト単位で役割が分かれ、組織としての開発標準やセキュリティポリシーが存在する場合は、Copilot for Business が起点になります。
- チームごとに利用可否を切り分けたり、リポジトリ単位でagentの利用範囲を調整したい組織がここに当てはまります。
大規模組織・マルチプロダクト体制(数百名〜)
- グループ会社や複数事業部をまたいでGitHubを利用しており、監査・レポーティング・ナレッジ連携まで含めて統合的に設計したい場合は、Copilot Enterpriseも含めて比較するのが自然です。
要件ベースでの向き・不向き
Copilot for Businessが特に向いているケース
- 個人情報・金融・製薬など、コードへのアクセスポリシーが明文化されている業種
- 複数プロジェクトでGitHubを利用しており、
「このリポジトリではCopilotを禁止」「このディレクトリだけはコンテキスト除外」など、コンテンツ除外やポリシー設定による細かい制御が必要な場合
(※コンテンツ除外は Copilot CLI や Copilot coding agent には適用されない点だけ注意) - PoCから本番まで、プレミアムリクエストの予算と利用状況を可視化してロールアウトしたい組織
Pro / Pro+でも十分なケース
- サイドプロジェクトや少人数スタートアップで、「まずは開発者個人の生産性を上げたい」という段階
- セキュリティポリシーが比較的シンプルで、「各自が責任を持って使う」前提でも問題ない規模
- 請求やライセンス管理も、ひとまずは個人払いで完結させたいフェーズ
このように、**「人数」「ポリシーの厳しさ」「請求のまとめ方」**の3軸で見ていくと、自社にとってBusinessが妥当かどうかを判断しやすくなります。
開発者がGitHub Copilot Businessを使うときの基本フロー
ここでは、すでに組織としてCopilot for Businessを導入済みで、開発者が日常的にどのように使っていくかをイメージしやすくするための基本フローを整理します。

1. IDEでのインライン補完をベースにする
まずは、もっともシンプルな使い方であるインライン補完からスタートします。
- コメントや関数シグネチャを書くだけで、ひな型コードやループ・条件分岐などを自動生成
- 既存コードを読みながら修正したい箇所にカーソルを置き、「こう書き換えたい」という意図をコメントで伝えるだけでも候補が提示されます
日々の開発の大半はこの「インライン補完+軽い手直し」でまかなえることが多く、新しいプランを導入しても最初の数週間はここに慣れるだけでも十分な価値があります。
2. Copilot Chatで仕様確認や設計の相談をする
次に、Copilot Chatを使ってコードレビュー前の相談や、簡易的な設計ディスカッションを行います。
- 既存コードブロックを選択して「この関数の役割と想定されるバグを教えて」と聞く
- 「このPR全体でやっていることを要約して」「影響範囲になりそうな箇所をリストアップして」といった質問を投げる
- 外部ライブラリの使い方や、既存コードベースとの整合性を確認してもらう
レビュー担当者の観点を補完する形でChatを使うと、 人間のレビュー時間を減らしつつ、見落としを減らすことにつながります。
3. Copilot coding agentでバックログや定型作業を任せる
ある程度チームとしての使い方が固まってきたら、Copilot coding agentの出番です。
- 軽微なバグ修正やリファクタリングのIssueを切り、agentにアサインする
- テストコードの追加や型付けの強化など、やりたいことをIssueに日本語で書いておき、PR作成までを自動化させる
- 人間は「PRレビュー+マージ」に専念し、agentには「実装と初期テスト」を担当させる
Businessプランでは、こうしたagent利用をリポジトリ単位のオプトアウトや、チームごとのライセンス/ポリシー設定で制御できるため、 最初は限定的なプロジェクトで試し、徐々に対象範囲を広げるといった段階的な導入がしやすくなります。
4. 使用状況をレポートで振り返り、ポリシーを微調整する
最後に、管理者側でCopilot premium requests usage reportや予算設定を使いながら、
「どのチームがどの機能をどれくらい使っているか」を定期的に見直します。
- エージェントや高性能モデルを多用しているチームに、追加のプレミアム枠やEnterpriseプランを検討
- ほとんど使われていないシートがないかを確認し、ライセンス数を最適化
- PoCフェーズでONにしていた機能を、本番フェーズでは一部制限する など
このサイクルを回すことで、**「なんとなく便利そうだから入れた」から「費用対効果が説明できる運用」**へと押し上げやすくなります。
GitHub Copilot Business導入前に確認しておきたいチェックリスト
最後に、GitHub Copilot Businessの導入を検討する際に、事前に整理しておくとスムーズなポイントをチェックリスト形式でまとめます。

-
対象範囲(どのチーム・どのプロジェクトから始めるか)が決まっているか
いきなり全社展開ではなく、「まずはこのプロダクトチーム」「このリポジトリ群」といったパイロット範囲を決めておくと、PoCの評価がしやすくなります。
-
セキュリティ・コンプライアンス要件を把握しているか
個人情報・医療・金融など、機密度の高いシステムに対しては、Copilotをどこまで使ってよいか、情報システム部門や法務とすり合わせ済みかを確認しておきます。
-
Copilotを禁止するリポジトリ/ディレクトリの方針を決めているか
サードパーティコードやライセンス上センシティブなコンポーネントを含むリポジトリなど、コンテキスト除外/利用禁止にしたい領域をあらかじめリストアップしておくと、ポリシー設定がスムーズです。
-
プレミアムリクエストの初期方針(有料利用 ON/OFF と予算上限)が決まっているか
導入直後は「超過課金はOFF/上限は低め」として様子を見るのか、特定チームだけ早期にエージェントを本格投入するのか、大まかなスタンスを決めておきます。
-
SSOやアカウント管理の運用イメージがあるか
(GitHub Enterprise Cloudを併用している場合)SAML SSO やEntra IDなど既存のIdPとどのように連携させるか、 退職者・異動者のCopilotライセンスをどう外すかといったアカウントライフサイクル管理もあらかじめ検討しておくと安心です。
-
「人間側の運用ルール(レビュー/著作権配慮)」を用意できているか
「生成コードは必ずレビューする」「ライセンス的にセンシティブな領域では使用を避ける」といったチーム内の基本ルールを、簡易なガイドラインでもよいので用意しておきます。
このチェックリストを一通り満たせていれば、Copilot for Business導入後のギャップはかなり小さくなります。
逆に、どれか1つでも大きく抜けている場合は、先に社内の関係者とすり合わせをしておくと、導入プロジェクト全体がスムーズに進みやすくなります。
GitHub Copilot for Businessの著作権対策
GitHub Copilot for Businessを導入する際は、生成コードの品質やセキュリティだけでなく、OSSライセンスや社内ポリシーとの付き合い方をどう設計するかも重要な論点になります。
このセクションでは、Copilot利用時に想定される著作権リスクと、それに対してGitHub Copilot for Businessで用意されている主な対策機能を整理します。
想定される著作権リスク
GitHub Copilotは、GitHub上の公開リポジトリを含む公開ソースコードや自然言語テキストを学習しているため、生成結果が既存のオープンソースコードと類似・近似する可能性があります。
その前提を踏まえると、法人利用では少なくとも次のようなリスクを意識しておく必要があります。

1. OSSライセンス違反のリスク
Copilotが提案したコードが、特定のオープンソースプロジェクトのコードと実質的に同一だった場合、その部分は元のライセンス(GPL / AGPL / MIT など)に従って扱う必要があります。
Suggestions matching public code(パブリックコード一致フィルタ)」をブロックにしておけば、GitHub上の公開コードと65語(おおよそ150文字)以上の一致・近似一致がある提案は非表示になりますが、それでも短いスニペットや設計レベルの類似まで完全に排除できるわけではありません。
2. 出典・ライセンスを特定しづらいリスク
ある生成コードが「どのリポジトリ・どの作者のコードに由来するか」を、完全に機械的に追跡することは困難です。
公開コード一致を「許可」にしている場合は、提案に対して「このリポジトリと一致しています」という参照リンクを表示できますが、それでも組織として最終的にライセンス適合性を判断する責任は残ります。
3. 社内ルールと外部ライセンスが混ざるリスク
企業内では、「このプロダクトではGPL系ライブラリ禁止」「このモジュールにはOSSを含めない」といったルールを設けているケースも多くあります。
Copilotの提案は、そうした社内ルールを自動で理解してくれるわけではないため、開発者が意図せず社内ポリシーに反するライセンスコードを取り込んでしまうリスクがあります。組織として、どの範囲でCopilotを使うか・どのようにレビューするかを、あらかじめ整理しておく必要があります。
GitHub側は「トレーニングデータに公開リポジトリが含まれていること」や、Business / Enterprise 向けの IP indemnity(知財補償)制度などを公式に説明していますが、最終的な著作権リスク管理は利用企業側のプロセス設計とセットで考える必要があります。
【関連記事】
Github Copilotの著作権問題は?考えうるリスクや安全に利用する方法を解説
Copilot for Businessにおける対策機能
GitHub Copilot Businessでは、こうしたリスクを軽減するための仕組みがいくつか用意されています。ここでは、IPまわりで押さえておきたい代表的な機能を整理します。

パブリックコード一致フィルタ(Suggestions matching public code)
組織または個人の設定で、「公開リポジトリと一致するコード提案を許可するかどうか」を選べます。
ブロックを有効にすると、Copilotは提案と前後のコンテキストをGitHub上の公開コードと照合し、一定以上の一致・近似一致が見つかった場合はその提案を表示しません。
逆に許可にした場合は、「どのリポジトリのどのファイルに似ているか」を参照リンク付きで確認したうえで採用可否を判断できます。

Suggestions matching public code(パブリックコード一致フィルタ)」
コンテンツ除外(Content exclusions)と組織ポリシー
Copilot Business / Enterprise の組織設定では、特定のリポジトリやパス、ファイルパターンを「Copilotのコンテキストから除外」できます。
除外されたファイルは、インライン補完や提案の元データとして使われず、IDE上でも補完が出なくなります。
あわせて、組織・チーム単位で
- 誰にCopilotライセンスを付与するか
- Chatやcode review、高性能モデルやエージェント機能をどこまで許可するか
といったポリシーも一括で管理できます。
IP Indemnity(知的財産補償)
Copilot Business / Enterpriseの顧客に対して、GitHubは「未改変の提案コード」が第三者の著作権侵害を主張された場合のIP補償(IP indemnification)を用意しています。
ただし、補償を受けるためには
- 公開コード一致フィルタを適切に設定していること
- GitHubが定める利用条件・契約に従っていること
などの要件があるため、実際のカバレッジはTrust Centerや契約条件を確認する必要があります。
組織でCopilotを利用する際は、これらの機能を前提にしつつ、
- 生成コードは必ずレビューし、ライセンスや品質を人間が確認する
- ライセンス的にセンシティブな領域では、Copilotの利用可否やコンテンツ除外ルールを事前に決めておく
- OSSライセンスと社内規程を理解した担当者が最終的な判断を行う
といった運用ルールも組み合わせることで、実務上のリスクをより下げやすくなります。
よくある質問(FAQ)
最後に、GitHub Copilot Businessに関して読者から寄せられることが多い質問をQ&A形式でまとめます。導入検討時の確認リストとしても活用できます。
Q1. BusinessとEnterprise、どちらを選ぶべきですか?
A. 中小〜中堅規模の開発組織で、「IDE中心の利用」と「基本的なガバナンス・セキュリティ」を重視する場合は、まずGitHub Copilot Businessから検討するのがおすすめです。
一方で、次のような要件がある場合は、Copilot Enterpriseを前提に検討したほうがよいケースが多くなります。
- GitHub.com上でのCopilot Chatやプルリクエスト要約を、本格的に全社展開したい
- 組織横断のナレッジベースとCopilotを連携させたい
- 部門をまたぐ詳細なポリシー制御や監査機能が必要
Q2. Copilot coding agentはBusinessプランだけでも十分使えますか?
A. はい。Copilot coding agent自体は、Businessプランでも利用可能です。小規模〜中規模チームで「バックログ整理や軽微な改修をAIに任せたい」といったユースケースであれば、Businessプラン+プレミアムリクエスト枠でも十分に試せるケースが多く見られます。
ただし、大規模組織で多数のエージェントセッションを同時に回す場合や、GitHub.com上での高度な連携を前提とする場合は、プレミアムリクエスト枠やレート制限の観点からEnterpriseプランが現実的になることがあります。
Q3. プレミアムリクエストのコストが心配です。どう管理すればよいですか?
A. GitHub Copilotでは、プレミアムリクエストの使用状況を確認できるUsageレポートや、支出上限額(予算)を設定する機能が提供されています。次のような運用が一つの目安になります。
- 最初は「プレミアムリクエストの有料利用をオフ」にして、含まれている枠内でPoCを実施
- 効果が確認できたチームから、限定的に有料利用を許可し、チーム単位で予算を設定
- 月次でUsageレポートを確認し、「どのチームがどの機能にどれくらい使っているか」を定点観測
こうした運用を取ることで、「いつの間にか高額請求になっていた」という事態を避けやすくなります。
まとめ
本記事では、GitHub Copilot Businessの概要から主要機能、料金体系、導入方法、Pro / Enterpriseとの違い、向いている組織像、実際の使い方のフロー、ユースケース、著作権対策までを整理しました。
あらためてポイントをまとめると、次のようになります。
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GitHub Copilot Businessは月額19ドル/ユーザーで、IDE・CLI・GitHub Mobile・GitHub.comをまたいだAIコーディング支援を組織単位で提供するプラン
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組織ポリシー管理、監査ログ、IP Indemnity、パブリックコード一致ブロックなど、法人向けのセキュリティ・ガバナンス機能が充実
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高性能モデルやCopilot coding agentなどに利用されるプレミアムリクエストは、Businessで月300回分を含み、超過分は従量課金となる
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BusinessとEnterpriseの違いは、主に「プレミアムリクエスト枠」「GitHub.comでの高度な機能」「組織ナレッジベース連携」などの範囲にある
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規模・要件・請求方法の3軸で見たとき、ポリシーや予算を組織として設計したいフェーズならBusiness、それをGitHub.comの深い統合や全社ガバナンスまで広げたいならEnterpriseが候補になる
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ユースケースとして、新規開発の立ち上げ、レガシーリファクタリング、テスト生成、バックログ削減など、ソフトウェア開発ライフサイクル全体で活用可能
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著作権リスクに対しては、パブリックコード一致ブロックやポリシー管理、IP Indemnityを活用しつつ、組織としてのレビュー・運用ルールを整備することが重要
- GitHub Copilot Businessは、単なる「補完ツール」ではなく、開発組織全体の生産性とガバナンスを同時に引き上げるためのプラットフォームとして位置付けられつつあります。
GitHub Copilot Businessの導入を検討している企業の方は、自社の開発プロセスやセキュリティ要件、予算感を踏まえた上で、Pro / Business / Enterpriseのどの組み合わせが最適かを検討してみてください。
導入や運用設計について具体的な相談が必要な場合は、AI総合研究所のお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。貴社の開発体制や事業フェーズに合わせたCopilot活用プランをご提案いたします。










