この記事のポイント
グローバル分散と単一桁ミリ秒の低遅延を両立しやすい、Azureのフルマネージド分散データベース
NoSQL APIを中心に、用途に応じてMongoDB、Cassandra、Gremlin、Tableなど複数APIを選択可能
5つの整合性レベルを使い分けることで、性能とデータ整合性のバランスを調整可能
パーティションキー設計と自動インデックスを軸に、スケーラブルな運用とコスト最適化を実現
料金はRU、ストレージ、バックアップ、リージョン、オプション機能で構成される従量課金

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
Azure Cosmos DBは、グローバル展開とミリ秒単位の応答を同時に求めるシステムで有力な選択肢です。
2026年時点では、従来のNoSQL用途に加えて、ベクトル検索やフルテキスト検索を組み合わせたAIアプリ基盤としての利用も進んでいます。
本記事では、Cosmos DBの基本、主要機能、ユースケース、料金の見方、導入手順を初心者向けに整理します。特に、整合性レベルの選び方、パーティション設計、Japan East基準の価格確認方法を実務で使える形で解説します。
目次
価格例(2026年2月時点:Japan Eastリージョン)
Azure Portal、PowerShell、CLIからアカウントとデータベース、コンテナを作成
Azure Cosmos DBとは
Azure Cosmos DBは、Microsoftが提供するフルマネージドの分散データベースサービスです。結論から言うと、世界中の複数リージョンで低遅延と高可用性を維持しながら、アプリの成長に合わせて柔軟にスケールできる点が最大の強みです。
Cosmos DBはNoSQL用途を中心に設計されており、ドキュメントデータ、キー値、グラフなどを扱うシステムで広く使われています。さらに、単一リージョン運用からマルチリージョン運用まで段階的に拡張しやすく、初期導入から大規模運用まで同じサービスで継続しやすい構成です。
公式情報として、概要と最新機能は次のページを起点に確認できます。
どのようなシステムに向いているか
ユーザー数やアクセス地域が増える前提のWebサービス、モバイルアプリ、IoT基盤などで特に効果を発揮します。最初は小さく始めて、アクセス増加に合わせてスループットやリージョンを段階的に増やせるため、将来の拡張を見込んだ設計と相性が良いサービスです。
Azure Cosmos DBの主な機能と特徴
ここでは、導入判断に直結する主要機能を整理します。実務では「API選定」「整合性」「パーティション設計」「検索要件」の4点を先に決めると、後戻りを減らしやすくなります。
複数APIを選べる柔軟性
Cosmos DBはNoSQL APIを中心に、MongoDB、Cassandra、Gremlin、Tableなど複数APIを提供しています。既存アプリが採用しているデータアクセス方式に合わせて選べるため、移行時の改修範囲を抑えやすい構成です。
APIごとに互換性や機能差があるため、新規開発では必要機能と運用方針を先に揃えてからAPIを確定するのが安全です。
グローバル分散と整合性レベル
Cosmos DBは複数リージョンへのレプリケーションに対応しており、可用性と遅延を両立しやすい設計です。一方で、整合性をどこまで厳密に求めるかで性能や体感速度が変わるため、用途に応じた設定が重要です。
整合性は5段階で選択でき、厳密性を上げるほど読み取りの一貫性は高くなりますが、遅延やコストへの影響が出る場合があります。決済や在庫のような厳密性が必要な処理と、フィード表示のような速度重視処理を分けて設計する考え方が有効です。
パーティション設計とスケーラビリティ
大規模運用で最も重要なのはパーティションキー設計です。アクセスが一部キーに偏るとスループット不足やレイテンシ増大につながるため、更新頻度とクエリパターンを見て分散しやすいキーを選ぶ必要があります。
2026年時点では、階層パーティションキーを含めた設計選択肢が拡充されているため、大量データの長期運用でもキー設計の自由度が上がっています。まずはホットパーティションを避ける設計を優先すると安定しやすくなります。
ベクトル検索と全文検索の活用
Cosmos DBは、従来のドキュメント検索に加えて、ベクトル検索とフルテキスト検索を組み合わせたハイブリッド検索を構成できます。これにより、FAQ検索や社内ナレッジ検索のようなAIアプリで、キーワード一致と意味検索の両方を使いやすくなります。
ただし、検索精度はデータ前処理とインデックス設計の影響が大きいため、PoC段階で評価指標を決めたうえで運用移行することが重要です。
Azure Cosmos DBの一般的なユースケース
Cosmos DBは、更新頻度が高く、レスポンス速度が重視されるワークロードで効果を発揮します。ここでは代表的な活用例を整理します。
ユーザー生成コンテンツや商品カタログ
SNS投稿、レビュー、プロフィール、商品カタログのように、スキーマ変更や項目追加が頻繁に発生するデータに向いています。スキーマ変更を最小限に抑えながら機能追加しやすいため、サービス改善のサイクルを速めやすくなります。
IoTテレメトリと時系列データ
IoTデバイスからの大量データ取り込みでは、書き込みスケーラビリティと読み取り速度の両立が求められます。Cosmos DBは高頻度書き込みを処理しやすく、リージョン分散と組み合わせることでグローバル拠点からの参照も安定させやすい構成です。
ゲームやモバイルのリアルタイム更新
プレイヤープロファイル、進行状況、ランキングのようなリアルタイム更新が必要なデータ管理にも適しています。アクセス急増時にスループットを調整しやすいため、イベント開催時のトラフィック変動に対応しやすい点がメリットです。
生成AIアプリの検索データストア
RAG構成では、検索対象データの更新性と応答速度が重要です。Cosmos DBのベクトル検索とフルテキスト検索を使い分けることで、問い合わせ種別に応じた検索品質を設計しやすくなります。
Azure Cosmos DBの料金体系
Cosmos DBの料金は、スループット、ストレージ、バックアップ、リージョン、オプション機能の組み合わせで決まります。見積もりでは「どのAPIを使うか」「何リージョンで運用するか」「ピーク時の処理量」を先に確定することが重要です。
料金体系の構成要素
料金は大きく分けて「スループット」と「保存・オプション機能」の2つの観点で構成されます。
- スループット料金
プロビジョニングスループット、自動スケーリング、サーバーレスのいずれを選ぶかで課金形態が変わります。
- データ保存・バックアップ料金
保存容量とバックアップ容量に応じて課金されます。データ量が増える運用では継続的な最適化が重要です。
- オプション機能料金
Dedicated Gatewayなどの追加機能を使う場合は、別途時間課金が発生します。
価格例(2026年2月時点:Japan Eastリージョン)
以下は、Japan Eastリージョンで確認した代表的な価格例です。為替レートや価格改定で変動するため、見積もり時は公式価格ページをあわせて確認してください。
| 項目 | 単位あたりの価格 | 補足 |
|---|---|---|
| AP2 Entry Price | 0.18 USD / 時間 | 自動スケーリングのエントリー価格 |
| AP3 Entry Price | 0.45 USD / 時間 | 自動スケーリングの上位帯エントリー価格 |
| 1M RUs | 0.285 USD / 100万RU | サーバーレス実行課金 |
| Data Stored | 0.2825 USD / GB / 月 | データ保存容量 |
| Backup Data Stored | 0.15 USD / GB / 月 | バックアップ保存容量 |
| D8s | 0.891 USD / 時間 | Dedicated Gateway(General Purpose) |
※価格は2026年2月22日取得、2026年2月時点、リージョンはJapan East、通貨はUSDの参考値です。日本リージョンで表示されない項目は米国価格条件を補助参照します。
コスト最適化の実務ポイント
スループットを保守的に大きく取りすぎると固定費が増えるため、まずは実トラフィックを計測し、段階的に最適化する進め方が有効です。特に読み取り中心か書き込み中心かで必要RUが変わるため、運用開始後のモニタリングが重要になります。
また、無料枠やFree Tierを併用すると、検証段階の初期コストを抑えやすくなります。小規模検証ではサーバーレスから開始し、本番要件が固まった段階でプロビジョニングや自動スケーリングへ切り替えると、無駄な固定費を減らしやすくなります。
Azure Cosmos DBの始め方
では、実際にAzure Cosmos DBの利用を始めてみましょう。
Azure Portal、PowerShell、CLIからアカウントとデータベース、コンテナを作成
では、まずAzure Cosmos DBのアカウントを以下作成していきましょう。
- Cosmos DBアカウントの作成
前提準備として、Azureアカウントの作成を行ってください。
アカウントは、Azure Portal・PowerShell・CLIから作成できますが、ここでは主にAzure Portalからの作成方法についてご紹介します。
PowerShell、CLIでコマンドを使用して、スクリプトでアカウントを作成するときはこちらをご参照ください。
- Azureポータルにログインし、赤枠部分をクリック。

Azureポータル画面
-
その後、「リソースの作成」をクリックします。

リソースの作成
-
①検索バーに「Cosmos DB」と入力し、②表示された候補から選択します。

Cosmos DBの選択
- [API オプションの選択] ページで、APIを選択します。ここでは[コア(SQL) - 推奨] セクション内の [作成] オプションをクリックします。SQLは、Azure Cosmos DBのデフォルトで、最も一般的なAPIです。
他にもMongoDB、Gremlin、Table、Cassandra 、PostgreSQLの API がありますので、自分の環境に合わせて選択ができます。

APIの選択
- [Azure Cosmos DB アカウントの作成] ページで、次の情報を入力し,上記の入力が完了したら、[レビュー+作成] を選択します。

入力画面
| 設定 | 値 | 説明 |
|---|---|---|
| サブスクリプション | サブスクリプション名 | この Azure Cosmos DB アカウントに使う Azure サブスクリプションを選びます。 |
| リソース グループ | リソース グループ名 | リソース グループを選択するか、[新規作成] を選択し、新しいリソース グループの一意の名前を入力します。 |
| アカウント名 | 一意の名前 | グローバルに一意である必要があります。名前はFQDNの一部として使用され、3~44文字の英小文字、数字、ハイフン(-)が使えます。 |
| 場所 | ユーザーに最も近いリージョン | データへのアクセスが高速になるよう、ユーザーに最も近い場所を選択します。 |
| 容量モード | プロビジョニング スループットまたはサーバーレス | プロビジョニング スループットモードかサーバーレスモードを選択します。 |
| Apply Azure Cosmos DB free tier discount | [適用] または [適用しない] | Free レベルを適用すると、最初の1000 RU/sと25 GBのストレージが無料で利用できます。 |
(参考:Microsoft)
- 指定した設定を確認したら[作成] を選択します。
データベース・コンテナの作成
Azure portal のデータ エクスプローラーを使用してデータベースとコンテナーを作成できます。
- ご使用の Azure Cosmos DB アカウント ページの左側のナビゲーションで [データ エクスプローラー] を選択します。
データエクスプローラー画面の外観はこのようになっています。

データエクスプローラー外観
① ナビゲーションパネル
左側には、Azure Cosmos DBアカウントの管理に関する項目があります。
② データ エクスプローラーのメインビュー
右側の大きな領域はデータ エクスプローラーのメインビューです。
③ アクションボタン
画面中央上部には、+ New Containerというボタンがあります。これをクリックすることで、新しいコンテナを追加できます。
-
③の[+ New Container]ボタンをクリックします。
-
右側に[New Container]ウィンドウが開きます。

New Containerウインドウ
以下の項目を入力してください。
- Database id(データベース ID)
- Database throughput (autoscale)(データベースのスループット)
- Database Max RU/s(データベースの最大 RU/秒)
- Container id(コンテナー ID)
- Indexing(インデックス化)
- Partition key(パーティションキー)
- 下の[OK] を選択します。
参考:Microsoft
ローカル開発用のAzure Cosmos DB Emulatorを利用可能
Azure Cosmos DB Emulatorは、ローカル環境でAzure Cosmos DBを模擬的に動作させるためのツールです。これを利用すると、インターネット接続がなくても、ローカルPCでCosmos DBの機能を試したり、アプリケーションをテストしたりすることができます。
EmulatorはWindowsおよびLinuxで動作し、クラウド上のCosmos DBに移行する前にアプリケーションの開発やデバッグを行うのに役立ちます。
詳しい使用方法は公式サイトをご確認ください。
無料試用版やFree Tierで機能を試せる
Azure Cosmos DBには、無料試用版やFree Tier(無料レベル)が用意されており、これを使って機能を試すこともできます。
Azure Cosmos DBには、以下の無料オプションが用意されています。
- 無料試用版
30日間、限られたリソースでAzure Cosmos DBを無料で試用でき、アプリケーションのテストに利用できます。
- Freeレベル
永続的に無料で利用でき、毎月1,000 RU/秒のスループットと25GBのストレージが提供されます。
最新の情報についてはマイクロソフトの公式サイトをご確認ください。
参考: 無料試用版 、 Freeレベル
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まとめ
本記事では、Azure Cosmos DBの基本、主要機能、ユースケース、料金の見方、導入手順を2026年時点の情報で整理しました。導入時に最も重要なのは、API選定、整合性レベル、パーティションキー、料金モードの4点を先に決めることです。
また、実運用ではトラフィック実績に合わせてスループットとリージョン構成を見直し続けることで、性能とコストのバランスを取りやすくなります。まずは小さな検証環境でクエリ特性を確認し、段階的に本番要件へ寄せる進め方をおすすめします。
Cosmos DBは、グローバル分散が必要な業務システムや、更新頻度の高いアプリケーションで特に効果を発揮します。公式ドキュメントで最新仕様を確認しながら、要件に合った設計で活用してください。











