この記事のポイント
- 画像生成AIなど最新のデザインAI技術が、デザインプロセスを革新
- AIツールにより、デザイナーの創造性が拡張され、生産性が向上
- ソフトバンク、ワークマン、バーガーキングなど、企業での具体的な活用事例を紹介
- AIデザインのメリットとデメリットを分析し、その活用の在り方を考察
- デザイナーとAIの共存が、最も生産的で価値ある方向性であることを強調
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
AIの著しい進化は、クリエイティブな分野にも革新的な影響をもたらしています。
特にデザイン業界では、従来の手作業に代わりAIを活用することで生産性が飛躍的に向上しており、新たなビジュアル表現の可能性を切り拓いています。
本記事では、画像生成AIを始めとするデザインAIツールの種類や、具体的な活用事例にスポットを当て、デザインプロセスがどのように変貌しているのかを詳しく解説していきます。
また、AIデザインツールの原理や、デザイナーの役割なども掘り下げて、AIが人間とどのように協力し、未来のデザイン業界を築いていくのかを検討します。
クリエイティブ作業の未来に向けて、デザイナーにとってのAI活用の実態とは、一体どのようなものなのか探究していきましょう。
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目次
【ソフトバンク】 画像生成AIを用いて法人向けイベント資料作成
【ワークマン】ロゴ制作において活用。"300万円→数千円"のコストカット
AIを活用したデザインとは
近年、AIを用いた効率的で生産的な技術がデザインの分野にも進出してきています。
「従来のデザインプロセスの中にある事務作業やルーチンワークといった業務を行うのはAI。
人間は、より創造的な部分に時間を使うことができるようになっていくんだ。」という認識が、今までの歴史の中でも何度も声高に叫ばれ、その夢をたくさんの人が見てきました。
その一方で、近年のデザインAIの勃興は、そういった過去に抱かれた期待を大きく上回る形で「実現していきつつある」と言うことができるのではないでしょうか。
もはや効率化や自動化の域に止まらず、AIこそが、「人間が予想だにもしない斬新なビジュアル表現」を行うことも夢ではない時代がやってきています。
デザインAIの近年の動向
一般的に、AIは自動化や文章生成などの分野で広く報道されていますが、冒頭で述べたように、近年では画像生成AIが注目を集めています。
元々、自然言語処理(NLP)技術として発展してきたAI技術が、ディープラーニングの進化に伴い、画像生成や処理にも応用されるようになったからです。
例えば、OpenAIのDALL-EやNVIDIAのStyleGANなどがその代表例です。
AIによりデザイナーの仕事は無くなる?
AIがデザイン業務を代替するという話に対しては、まだ行き過ぎた期待と言えます。
現実には、AIはデザイナーやクリエイティブチームの成員として、彼らのスキルや能力を拡張するツールとして最も有効です。
AIは創造的なプロセスにおいて新しい可能性を提供しますが、決定的な瞬間において人間の洞察力や最終的な判断が要求されることも多いです。
共存と協力の関係が最適なシナリオであり、未来のデザイン業界では、AIが個々のデザイナーの能力を高め、業務の効率化を促進する役割を担うことでしょう。
代表的なデザインAI
カテゴリー | サービス名 | 機能 |
---|---|---|
グラフィックデザイン | Midjourney | ・テキストから画像生成 ・画像から画像生成 ・画像の詳細設定 |
〃 | Dream Studio | ・テキストから画像生成 ・画像から画像生成 ・画像の詳細設定 |
UIデザイン | Galileo AI | ・テキストや画像からUIを生成 |
〃 | Uizard | ・テキストなどから、ワイヤフレーム、モックアップ、プロトタイプを生成 |
LPデザイン | STUDIO AI | ・Web制作に関わるデザインを全面的に支援 |
その他 | Adobe Firely | ・複数の機能においてAIで創作プロセスを支援 |
後ほど、デザインAIのツールをいくつかご紹介しますが、具体的なイメージを持ってもらうために事例を1つ取り上げようと思います。
例えば、Adobe Photoshopの「自動選択ツール」。このツールはAIを活用して、画像内の人物やオブジェクトをワンクリックで正確に選択できるようにしており、デザイナーの作業時間を大幅に短縮します。
つまり、写真の中の人物だけを切り抜いて別の背景に合成したい場合、従来は時間と労力を要しましたが、このツールを使えば瞬時に精度高く行えます。
これにより、デザイナーは創造的な部分に集中でき、より高品質なデザインを効率よく作成できます。
このような操作の実例が『Youtube』に公式アップロードされています。(動画00:14〜より)
従来は、人型を切り抜くにしても帽子をくり抜くにしても手作業を伴う時間がありましたが、AIが導入されたことによってワンクリックで作業が完結するようになっています。
デザインAIのメリットとデメリット
メリット
デザインAIのメリットとして、Midjourneyのような画像生成AIを活用することで、迅速に高品質なビジュアルコンテンツを作成できる点が挙げられます。
例えば、広告キャンペーン用のビジュアルを作成する際、Midjourneyに簡単なテキストプロンプトを入力するだけで、プロフェッショナルなデザインの画像が自動的に生成されます。
これにより、デザインのスキルがなくても、短時間で魅力的なビジュアルコンテンツを手に入れることができ、マーケティングのスピードと効果が向上します。
デメリット
一方、デメリットとしては、クリエイティブな判断力の低下や、デザインの多様性が失われる可能性があります。AIに依存しすぎると、独自性やオリジナリティが損なわれ、似通ったデザインが増える恐れがあります。
また、AIが学習するデータに偏りがある場合、その偏りがデザインにも反映されてしまうリスクがあります。
例えば、特定のスタイルや文化に偏ったデザインが生成されることがあり、グローバルな視点が欠ける可能性があります。
デザインAIの活用事例3選
デザインAIの実践的な利用事例を3つ紹介します。
まず、ロゴ生成AIツールは企業のブランドイメージに合わせたロゴを生成することができます。
ユーザーは好みのスタイル、カラー、アイコンを入力することで、数秒間で複数のロゴバリエーションを得ることが可能です。
また、ウェブデザインAIは、ユーザビリティと美的魅力を考慮したウェブサイトのレイアウトやUIコンポーネントを提案します。
さらに、AIアシスタントは、複雑なグラフィックデザインのプロジェクトにおける意思決定を支援し、デザイナーの時間を節約します。
【ソフトバンク】 画像生成AIを用いて法人向けイベント資料作成
ソフトバンク株式会社は、法人向けのイベント「SoftBank World 2023」におけるキービジュアルの制作に画像生成AIを活用しています。
今までのプロセスにおいては、広告代理店を介して制作を行っていた一方で、今回は完全に内製でビジュアル制作を実現しています。具体的にはAdobe Photoshopの機能である「生成塗りつぶし」と「生成拡張」を使っているそうです。
ソフトバンクの説明画像ソフトバンクより)
CEOの孫正義の原体験が反映されたデザインを構築するまでに、約1200枚のデザインが作成されたと言います。
原体験の部分は、CEOの固有の体験に根ざしつつ、プロトタイピングや試行錯誤の部分はAIを使って高速で回していく所作は、AIを道具として理想的に活用していると言えます。
ソフトバンクの事例2(ソフトバンクより)
【ワークマン】ロゴ制作において活用。"300万円→数千円"のコストカット
ワークマンの説明画像 (WORKMAN より)
株式会社ワークマンは、2024年2月に、新ブランド「Workman Kids」で子供服市場に参入しました
この新ブランドのロゴは内製で作成され、そのコストは約数千円。一般的に、この規模企業では、ロゴは外注するのが通例ですがChatGPTと画像生成AIを駆使することで、このコスト削減を実現しました。
【バーガーキング】画像生成AI黎明期の特殊性を生かした広告デザイン
バーガーキングとして知られる株式会社ビーケージャパンホールディングスは、商品広告で画像生成AIを活用し、話題を集めました。ハロウィンに乗じてフランスの広告代理店によって作成された広告は、とても不気味な表現になっています。
バーガーキングの説明画像 (Branding in asia より)
これは、画像生成AIが、フォトリアルで洗練された状態になる前の、まだまだ未発達だった段階の表現を広告にうまく取り入れている事例です。
まとめ
AIを活用したデザインツールは、デザインのプロセスを大幅に変えうる可能性を秘めていますが、同時にその利点と限界を理解する必要があります。
AIデザインツールは多種多様であり、デザインの革新やビジネスの可能性を拡張する一方で、創造的プロセスの中核となる人間の役割は不可欠です。
今後もAI技術の進化と共にデザイン手法も変わっていくことは間違いありませんが、デザイナーとAIの共存が最も生産的で、デザイン業界にとって最も価値のある方向性であると言えるでしょう。