この記事のポイント
BW/4HANAは2040年まで保守延長済み。大規模・複雑なDWHを長期運用する企業はBW/4HANA継続が合理的な選択肢
SAPの戦略的後継はSAP Business Data Cloud(Datasphere含む)。2026年1月からライセンスモデルも変更されており、新規構築ならBDCが推奨
BW環境の規模・クラウド戦略・運用体制の3軸で「継続」「段階移行」「フル移行」を判断。まずは現行BW環境の棚卸しから着手

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
SAP BW(Business Warehouse)は、SAPが提供するデータウェアハウス製品で、SAPシステムや外部システムのデータを統合し、分析・レポーティング基盤を提供します。
現行バージョンのSAP BW/4HANAは2040年まで保守が延長されていますが、SAPはSAP Datasphereを中核コンポーネントとするSAP Business Data Cloudを戦略的後継プラットフォームとして推進しています。
SAP 2027年問題に伴うS/4HANA移行と同時に、データ分析基盤をBW/4HANAで継続するかDatasphereへ移行するかの判断が迫られています。
本記事では、SAP BWの基本概念からBW/4HANAの機能、Datasphereとの違い、移行戦略、料金体系まで、2026年最新情報をもとに解説します。
目次
SAP BW、SAP BW on HANA、SAP BW/4HANAの違い
SAP DatasphereとSAP BW/4HANAの違い
SAP BW/4HANAとSAP Datasphereの比較
SAP Datasphereのライセンス変更とSAP Business Data Cloud
SAP BWとは

SAP BW(Business Warehouse)は、SAPシステムや外部システムのデータを統合し、分析・レポーティングのためのデータウェアハウス基盤を提供するSAP製品です。
1997年にリリースされたSAP BWは、長年にわたりSAPユーザー企業のデータ分析・経営レポーティングの中核を担ってきました。2015年にSAP HANA上で動作する SAP BW/4HANA として全面刷新され、現在はこのBW/4HANAが主流となっています。
SAP BWの基本的な役割
SAP BWは、次のような役割を担います。
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データ統合(ETL)
SAP ERP、S/4HANA、SuccessFactors、AribaなどのSAPシステムからデータを抽出し、Oracle、SQL Server、SalesforceなどSAP以外のシステムからもデータを取得します。データを変換・クレンジングし、統一形式でデータウェアハウスに格納します。
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データモデリング
InfoCube、DSO(Data Store Object)などの分析用データモデルを構築します。ディメンション・ファクトモデル(スタースキーマ)で分析しやすい構造を設計します。
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レポーティング・分析
BW Query Designer(Eclipse BW Modeling Tools)によるレポート作成、SAP Analysis for Officeによる多次元分析、SAP Analytics CloudやTableauなど外部BIツールへのデータ提供を行います。
このように、SAP BWは業務システム(ERP等)と分析・BIツールの間に立つデータ統合・変換レイヤーとして機能します。
SAP BW、SAP BW on HANA、SAP BW/4HANAの違い
SAP BWには、世代によって次のバリエーションがあります。
| 製品名 | 登場時期 | データベース | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SAP BW(クラシック) | 1997年 | Oracle、DB2、SQL Serverなど | 従来型データベース上で動作、現在はレガシー扱い |
| SAP BW on HANA | 2011年 | SAP HANA | HANAインメモリDBを活用、BW/4HANAへの移行パス |
| SAP BW/4HANA | 2015年 | SAP HANA(必須) | HANAネイティブ設計、現在の主流バージョン |
SAP BW/4HANAは、HANA専用に最適化されており、インメモリ処理による高速分析、データモデルの簡素化(従来の複雑なレイヤー構造を削減)、最新のデータ統合・分析機能を特徴とする現代の標準バージョンです。
SAP BWの位置付け
SAP BWは、SAPのデータ分析エコシステムにおいて次のように位置付けられます。
| 製品・サービス | 役割 |
|---|---|
| SAP S/4HANA、ERP等 | 業務データの発生源(トランザクション処理) |
| SAP BW/4HANA | データウェアハウス・統合基盤(オンプレミス/IaaS) |
| SAP Datasphere | クラウドネイティブデータ統合基盤(SaaS) |
| SAP Analytics Cloud | ビジュアル分析・ダッシュボード |
近年、SAPはSAP Datasphereをクラウド時代の戦略的データ基盤として推進しており、既存BW環境からの移行パスも提供されています。SAP 2027年問題に伴いS/4HANA Cloudへの移行を検討する企業にとって、データ分析基盤をBW/4HANAで継続するかDatasphereへ移行するかは、ERP移行と同時に判断すべき課題です。
SAP BW/4HANAへの進化
SAP BW/4HANAは、従来のSAP BWをHANA上で全面刷新したバージョンです。ここでは、BW/4HANAの特徴と進化のポイントを整理します。

SAP BW/4HANAの主な特徴
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SAP HANA専用設計
BW/4HANAは、SAP HANAデータベース上でのみ動作します。
インメモリ処理による高速集計・分析、列指向ストレージによる大規模データ処理、HANA独自の高度な分析関数(予測分析、時系列分析など)を備えており、億単位のレコードでもリアルタイムに集計できるパフォーマンスを実現します。
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データモデルの簡素化
従来のSAP BWは、PSA(Persistent Staging Area)、DSO、InfoCubeなど多層構造が複雑でした。
BW/4HANAでは、不要なレイヤーを削減し、aDSO(Advanced DSO)に統合することで、モデリングの簡素化により開発・保守コストを削減しています。
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リアルタイムデータ統合
従来のバッチ処理中心から、リアルタイムデータ統合へシフトしています。SDA(Smart Data Access)によるリアルタイムデータアクセス、SDI(Smart Data Integration)によるレプリケーション、データ仮想化による柔軟なデータ統合を実現します。
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最新の分析・レポーティング機能
SAP Analytics Cloudとのネイティブ連携、SAP BPC for BW/4HANA(embedded configuration)による計画・予算策定、Embedded Analyticsとの統合(S/4HANAから直接クエリ)など、包括的な分析機能を提供します。
SAP BW/4HANAの最新バージョン
2026年2月時点での最新バージョンは、SAP BW/4HANA 2023 Feature Pack 04(2025年2月25日リリース)です。データモデリング機能の強化、パフォーマンス最適化、SAP Datasphereとの統合機能拡張などが含まれています。
保守期限と今後のスケジュール

SAPは2020年2月に、SAP BW/4HANAの保守戦略をSAP S/4HANAと完全に整合させ、少なくとも2040年まで保守することを発表しました。
これにより、BW/4HANAはS/4HANAと同じ長期的な保守サイクルで運用できるようになり、既存BW/4HANA環境を利用している企業は長期的な運用計画を立てやすくなっています。
バージョン別の保守期限は以下のとおりです。
| バージョン | メインストリーム保守終了 |
|---|---|
| SAP BW 7.5 | 2027年12月31日 |
| SAP BW/4HANA 2021 | 2027年12月31日 |
| SAP BW/4HANA 2023 | 2030年12月31日 |
BW/4HANA 2021以前を利用している企業は、2027年末のメインストリーム保守終了を見据えて、BW/4HANA 2023へのアップグレードまたはDatasphereへの移行を検討する必要があります。
BW/4HANA 2023にアップグレードすれば2030年末までメインストリーム保守が継続するため、移行判断の時間的余裕が生まれます。
SAP BW/4HANAの主な機能
SAP BW/4HANAは、データ統合からモデリング、分析まで包括的な機能を提供します。ここでは、実務で押さえておくべき主要機能を整理します。
データ統合(ETL/ELT)
SAP BW/4HANAは、多様なデータソースからデータを統合します。対応データソースとデータ統合方式を以下に整理します。
対応データソースとしては、S/4HANA、ECC、SuccessFactors、Ariba、ConcurなどのSAPシステムからODP(Operational Data Provisioning)で接続できるほか、Oracle、SQL Server、MySQL、PostgreSQL、Snowflakeなどのデータベース、CSV、Excel、Parquet、AWS S3、Azure Blob Storageなどのファイル・クラウドストレージにも対応しています。
データ統合方式には以下の3つがあります。
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バッチロード
定期的(夜間、週次など)にデータを抽出・変換・ロード
-
リアルタイムレプリケーション(SDI)
データ変更をリアルタイムに反映
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データ仮想化(SDA)
データを移動せず、リモートテーブルとして参照
データモデリング
BW/4HANAでは、次のオブジェクトを使ってデータモデルを構築します。
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aDSO(Advanced Data Store Object)
データ格納の中核オブジェクトです。従来のDSO、PSAの役割を統合し、リアルタイムデータアクセスと更新が可能です。
-
InfoObject(マスタデータ・特性)
顧客、製品、組織などのディメンション定義を行い、階層構造(組織階層、製品カテゴリ階層など)を管理します。
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CompositeProvider
複数のaDSOやInfoObjectを仮想的に結合し、クエリ実行時にデータを統合します。物理的な統合は不要です。
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Open ODS View
外部データソースを仮想的にBWオブジェクトとして扱い、データ移動なしでクエリが可能です。
レポーティング・分析
BW/4HANAで作成したデータモデルを、各種ツールで分析します。以下が主な分析ツールです。
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BW Query Designer(Eclipse BW Modeling Tools)
BW/4HANA標準のクエリ設計ツールで、ディメンション・メジャーを組み合わせた多次元分析を行います。従来のBEx Query Designerに代わり、Eclipse上のBW Modeling Toolsで設計します。
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SAP Analysis for Office
Excel上でBWデータを多次元分析できるツールで、ピボットテーブル的な操作感で利用できます。
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SAP Analytics Cloud(SAC)
クラウドベースのビジュアル分析・ダッシュボードツールで、BW/4HANAとネイティブ連携します。
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外部BIツール(Tableau、Power BI等)
OData、ODBCなどの標準プロトコルで接続可能です。
Planning(統合計画)
BW/4HANA上でのPlanning機能は、SAP BPC for BW/4HANA(embedded configuration)として提供されます。BPC embeddedはBW/4HANAのインフラ上で動作し、トップダウン/ボトムアップ計画、シナリオプランニング、ワークフロー・承認機能などを備えています。
BW/4HANA単体にはPlanning機能は含まれておらず、計画・予算策定を行うにはBPC embeddedの追加ライセンスが必要です。
データライフサイクル管理
大量データを長期運用するための機能も提供されます。
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データエイジング(Data Aging)
古いデータをニアライン・ストレージに移動し、パフォーマンスを維持します。
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データアーカイブ
不要データを削除またはアーカイブします。
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パーティショニング
大規模テーブルを分割し、クエリパフォーマンスを最適化します。

SAP DatasphereとSAP BW/4HANAの違い
SAPは、クラウドネイティブなSAP Datasphereを戦略的データ基盤として推進しています。ここでは、BW/4HANAとDatasphereの違いと、両者の関係を整理します。

SAP BW/4HANAとSAP Datasphereの比較
| 観点 | SAP BW/4HANA | SAP Datasphere |
|---|---|---|
| 提供形態 | オンプレミス/IaaS(顧客管理) | SaaS(フルマネージド) |
| インフラ管理 | 顧客またはパートナーが担当 | SAPが管理(自動アップデート) |
| アーキテクチャ | 物理的なデータ集約(ETL中心) | データファブリック(仮想化中心) |
| 主な用途 | 大規模データウェアハウス・複雑なモデリング | クラウド統合・SAP/非SAPデータ統合 |
| SAP標準推奨度 | 既存環境の継続利用 | 新規構築・クラウド移行の推奨ソリューション |
アーキテクチャの違い
両者の設計思想は大きく異なります。SAP BW/4HANAはデータを物理的にBWに集約(ETL)する設計で、大量データの高速集計に最適化され、複雑なデータモデル・変換ロジックに対応します。
一方、SAP Datasphereはデータファブリックの考え方を採用し、データを移動せず仮想的に統合します。必要に応じてレプリケーション・キャッシュを行い、軽量で柔軟なデータ統合を実現します。
選択の基本的な考え方
BW/4HANAとDatasphereは排他的な選択肢ではなく、並行運用も可能です。大規模・複雑なDWHを長期運用する場合はBW/4HANA継続が合理的であり、クラウド移行を戦略的に推進する場合やSAP/非SAPデータの横断統合が必要な場合はDatasphereが適しています。移行パスの詳細は後述の「SAP BWの今後と移行戦略」で整理します。
SAP BW/4HANAの活用シーン
SAP BW/4HANAは、企業のさまざまなデータ分析課題に対応できます。ここでは、代表的な活用シーンを整理します。

全社統合レポーティング基盤
最も典型的なのが、全社の業務データを統合した経営レポート作成です。たとえば月次経営レポートでは、S/4HANAから財務・販売・購買データを抽出し、SuccessFactorsから人事データを統合し、外部データ(市場動向、為替レート等)を取り込みます。BW/4HANAで統合・集計し、経営ダッシュボード・定型レポートを生成します。
履歴データ分析・トレンド分析
BW/4HANAは、長期間の履歴データを蓄積し、トレンド分析する用途に適しています。過去10年分の売上データを保持し、季節性・トレンドの分析、前年同月比・過去平均との比較が可能です。業務システム(ERP等)では履歴データを長期保持しにくいため、BW側で蓄積・分析します。
大規模データの高速集計
億単位のレコードを高速集計する必要がある場合、BW/4HANAの強みが発揮されます。製造業での大量センサーデータ分析、小売業での全店舗POSデータ集計、金融業での大量取引データ分析などが代表的です。HANAのインメモリ処理により、従来は数時間かかっていた集計が数秒〜数分で完了します。
統合計画・予算策定
SAP BPC for BW/4HANA(embedded configuration)を使い、予算策定・需要計画を実施します。各部門からのボトムアップ予算入力、本社によるトップダウン調整、シナリオ分析(楽観・標準・悲観シナリオ)などを行い、実績データと計画データを一体管理して予実管理を実現します。
複雑なデータ変換・ビジネスロジック
業務ルールが複雑で、標準的なBIツールでは対応しきれない場合、BW/4HANAの柔軟性が活きます。複雑な配賦ロジック(間接費配賦、移転価格など)、複数通貨・単位の換算、業界特有の集計ルールなどに対応可能です。ABAPでカスタムロジックを実装し、精緻なデータ変換を実現できます。
SAP BWの今後と移行戦略
SAP BW/4HANAは2040年まで保守されますが、SAPの戦略的方向性はSAP Business Data Cloud(SAP Datasphere・SAP Analytics Cloudを含む統合データプラットフォーム)です。ここでは、今後の選択肢と移行戦略を整理します。

SAP BW/4HANAで継続運用する場合
BW/4HANAで継続運用するメリットとしては、既存のBW資産(データモデル、レポート、開発人材)を継続活用できること、2040年まで保守されるため長期運用計画が立てやすいこと、大規模・複雑なデータモデルに対応できることが挙げられます。
一方、検討ポイントとして、インフラ管理・運用を自社またはパートナーが担当する必要があること、最新のクラウド機能(Databricks統合、Snowflake連携など)は限定的であること、Feature Packによる機能強化は継続されるがDatasphereほど積極的ではないことがあります。
大規模なBW環境を長年運用し移行コストが大きい企業、オンプレミス継続またはIaaS(AWS、Azure)での運用を選択する企業、複雑なデータモデル・ビジネスロジックがあり簡単には移行できない企業に向いています。
SAP Datasphereへ移行する場合
SAP Datasphereへ移行するメリットとしては、フルマネージドSaaSで運用負荷を削減できること、最新のクラウド機能(Databricks、Snowflake、Microsoft Fabric連携)を活用できること、SAP標準のデータプロダクト・Intelligent Applicationsが利用可能であることが挙げられます。
移行パスには以下の選択肢があります。
-
SAP BW bridge経由の段階移行
SAP Datasphere上でBWランタイムを動作させるアドオン機能です。既存のBWデータモデル・クエリの一部を再利用でき、段階的にDatasphereネイティブ機能へ切り替えていきます。変換方式にはShell Conversion(メタデータのみ移行)とRemote Conversion(データとデータフローも含めた移行・同期)の2つがあり、2026年2月にBW bridge 2602がリリースされています。ただし、BW bridgeはODP互換のデータソースに限定され、主にDatasphereへの段階移行用のステージング環境として位置付けられています。すべてのBWオブジェクトがそのまま移行できるわけではないため、事前に移行対象の互換性を検証する必要があります。
-
フル再構築
Datasphereでゼロから再設計します。最も工数がかかりますが、最新のアーキテクチャを採用できます。
クラウド移行を戦略的に推進する企業、BW環境が比較的小規模・シンプルな企業、最新のクラウド機能・AI統合を優先する企業に向いています。
ハイブリッド運用という選択肢
すぐに全面移行せず、BW/4HANAとDatasphereを並行運用するアプローチもあります。既存の複雑なレポートはBW/4HANAで継続し、新規のクラウド統合・AI活用はDatasphereで実施し、段階的にDatasphereへシフトする方法です。
リスクを抑えた段階的移行が可能で、既存資産を活かしつつ最新技術も活用できるメリットがあります。ただし、2つのプラットフォームを運用する複雑さやデータ同期・整合性管理の負荷には注意が必要です。
移行判断のポイント

BW/4HANAで継続するか、Datasphereへ移行するかは、次の観点で判断します。
| 判断軸 | BW/4HANA継続 | Datasphere移行 |
|---|---|---|
| BW環境の規模・複雑さ | 大規模・複雑 | 小〜中規模 |
| クラウド戦略 | オンプレ継続 | クラウド移行 |
| 運用負荷の削減意向 | 中程度 | 高い |
| 最新クラウド機能の活用意向 | 中程度 | 高い |
| 移行投資の許容度 | 低い | 高い |
迷った場合の第一歩としては、現行BW環境のデータモデル数・カスタムロジック数・ユーザー数を棚卸しすることです。棚卸し結果をもとにSAPパートナーへ移行見積もりを依頼すれば、継続・段階移行・フル移行のいずれが適切かの判断材料が揃います。BW bridgeは段階移行の有力な選択肢ですが、ODP互換データソースに限られるため、自社のBW環境が対応範囲に収まるかの確認が前提になります。
SAP BWの2026年最新動向

SAP BWを取り巻く環境は、2026年に入り大きく変化しています。以下に主要な最新動向を整理します。
SAP Datasphereのライセンス変更とSAP Business Data Cloud
2026年1月より、SAP DatasphereおよびSAP Analytics Cloudは、BTPEA、CPEA、PAYGモデルでの新規サブスクリプションが廃止され、SAP Business Data Cloud(BDC)専用のサブスクリプションモデルに一本化されました。BDCは2025年2月に発表されたSAPのデータ戦略の中核製品で、Datasphere、SAP Analytics Cloud、データプロダクト、Intelligent Applicationsを統合的に提供します。
既存のBTPEA/CPEA契約は継続できますが、新規契約はBDCサブスクリプションモデルへの移行が求められます。これにより、SAP BWからの移行先はDatasphere単体ではなく、SAP Business Data Cloudという統合的なデータプラットフォームへと変わりつつあります。
BW Data Product Generator
BW Data Product Generatorは、既存のSAP BWおよびSAP BW/4HANAのクラシックなBWモデルを、SAP Business Data Cloud環境のデータプロダクトアーキテクチャに変換する移行ツールです。2025年からBDCおよびRISE契約のBW環境向けに提供されており、既存のビジネスロジックを保持しながらモダンなデータプロダクト構造への移行を支援します。データプロダクトの作成機能(Data Product Studio)は2026年上半期にGA予定です。
Jouleによるデータ分析のAI支援
SAP Business AIの進化に伴い、SAP Analytics CloudにJouleが統合されています。just ask機能により、自然言語でデータに質問し、BW/4HANAやDatasphereのデータに基づく分析結果を取得できます。2025年Q2から標準リリース顧客にも提供が開始されており、データ分析のAI支援は従来のBWレポーティングの在り方を変える可能性があります。
BDCパートナーエコシステムの拡大
SAP Business Data Cloudは、外部データプラットフォームとの連携を急速に拡大しています。
| パートナー | BDC Connect提供時期 |
|---|---|
| Databricks | 2025年10月GA |
| Snowflake | 2026年上半期予定 |
| Google BigQuery | 2026年上半期予定 |
| Microsoft Fabric | 2026年Q3予定 |
いずれもゼロコピーデータ共有技術を基盤としており、BW/4HANAからDatasphere/BDCへ移行した場合のデータ連携の選択肢が大幅に広がります。
SAP BW/4HANAの料金・ライセンス体系

SAP BW/4HANAの料金体系について整理します。SAPはBW/4HANAの定価を公開していないため、正確な費用はSAPまたはSAPパートナーからの個別見積もりが必要です。
ライセンス構成の要素
BW/4HANAの費用に影響する主な要素は以下のとおりです。
- ユーザーライセンス
名前付きユーザー(Named User)単位の課金が一般的です。分析ユーザー・開発者ユーザーなど種類により単価が異なります。
- データベースライセンス
SAP HANAデータベースのライセンスが必須です。メモリ容量(GB単位)に応じた課金が基本です。
- インフラ費用
オンプレミスの場合はサーバー・ストレージの調達・運用費用が別途発生します。IaaS(AWS、Azure、GCP)の場合はクラウドインフラの利用料が加わります。
- 保守ライセンス
年間保守料は一般的にライセンス契約額の18〜22%程度が目安です。
SAP Business Data Cloud(BDC)のライセンスモデル
2026年1月以降、DatasphereおよびSAP Analytics Cloudの新規契約はSAP Business Data Cloud(BDC)のCapacity Unit(CU)ベースのサブスクリプションモデルに移行しています。BW/4HANAからDatasphere/BDCへの移行を検討する場合、オンプレミスのライセンス費用とBDCのサブスクリプション費用のTCO比較が重要な判断材料になります。
コスト比較の考え方
BW/4HANAの継続運用とBDC移行のコスト比較では、以下の観点を考慮します。
| 費用項目 | BW/4HANA(オンプレミス/IaaS) | BDC(SaaS) |
|---|---|---|
| インフラ | サーバー調達・運用(自社負担) | サブスクリプションに含まれる |
| DB保守 | HANAライセンス+年間保守 | BDC CUに含まれる |
| 運用人件費 | Basis管理者・インフラチーム必要 | フルマネージドで削減 |
| アップグレード | 自社で計画・実施(工数大) | 自動アップデート |
短期的にはBW/4HANAの継続が安く見えるケースもありますが、インフラ更新サイクル(5年ごと)やHANA DBの保守費用を含めた5年以上のTCOで比較すると、クラウド移行が有利になる場合が多いとされています。ただし、大規模・複雑なBW環境では移行プロジェクト自体のコストも大きいため、一概には判断できません。
分析で終わらせない――データからアクションまでAIが実行
BWで蓄積してきた分析データを、レポートを見て人が判断・実行するフローから、AIエージェントがデータ取得から業務実行まで一気通貫で処理するフローに移行する企業が増えています。「データはあるのに現場が動かない」という課題への解決策です。
AI Agent Hubは、Fabric OneLakeでSAPや外部システムのデータを仮想統合し、AIエージェントが経費精算・請求書処理・承認フローなどの業務を自動実行するエンタープライズAI基盤です。BWのようなDWHで整備してきたデータ資産を、分析だけでなく実際の業務アクションにつなげます。Teamsから呼び出すだけで完結し、すべて自社Azureテナント内で動作します。
AI総合研究所は、SAPデータ分析基盤からAI業務自動化への発展を支援しています。資料で、データ統合からAgent実行までのアーキテクチャをご確認ください。
SAPデータ分析の先にあるAI業務自動化
データからアクションへ直結
BWで蓄積したデータ資産を活かし、AIエージェントが経費精算・請求書処理・承認フローを自動実行。Fabric OneLakeで仮想統合、自社テナント内で完結します。
まとめ
SAP BW/4HANAは2040年まで保守が確約されており、大規模・複雑なDWHを長期運用する企業にとっては引き続き有力な選択肢です。本記事の要点を3つに絞ります。
BW/4HANAの継続とBDCへの移行は「BW環境の規模と複雑さ」で判断が分かれる。 データモデル数が多く、カスタムロジックが複雑な大規模環境ではBW/4HANA継続が現実的です。BW環境が比較的小規模・シンプルで、クラウド移行を戦略的に推進する企業にはSAP Business Data Cloud(Datasphere含む)への移行が適しています。
BW/4HANA 2021以前を利用しているなら、2023へのアップグレードを早期に検討すべき。 BW/4HANA 2021のメインストリーム保守は2027年末で終了します。2023にアップグレードすれば2030年末まで保守が延長されるため、Datasphereへの移行判断に時間的余裕が生まれます。
まず着手すべきは、現行BW環境のデータモデル・カスタムロジック・ユーザー数の棚卸しです。 棚卸し結果をもとにSAPパートナーへ移行見積もりを依頼すれば、継続・段階移行・フル移行のいずれが最適かの判断材料が揃います。RISE with SAPによるS/4HANA移行と合わせて、データ基盤の将来像を検討してください。









