この記事のポイント
AI Modeは、カスタム版Gemini 2.5を搭載し、複雑な質問にAIが直接回答するGoogleの最新検索機能
クエリファンアウト技術で質問を多角的に深掘りし、Google検索で情報を裏付けることで信頼性を担保
対話形式での深掘り検索や、画像・音声を使ったマルチモーダル検索が可能
日本では2025年9月より順次展開中で、PC・モバイルのブラウザやGoogleアプリから利用できる
今後のSEOでは、AIには作れない独自の一次情報や体験価値の提供がより重要になる

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
「検索は"調べる"から"AIに任せる"時代へ」——。そんな変化を象徴するのが、Google検索に新たに搭載された「AI Mode」です。
従来のキーワード検索とは一線を画す、この新しい検索体験に興味はあるものの、「具体的に何ができるの?」「どうやって使うの?」「SEOにはどんな影響があるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、この「Google検索 AI Mode」について、公式情報に基づきその全貌を徹底的に解説します。
AI Modeの仕組み、具体的な使い方、そしてウェブサイト運営者が気になるSEOへの影響まで、詳しくご紹介します。
11月18日発表された最新モデル「Gemini 3」については以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎Gemini 3とは?使い方や料金、Antigravityなど新機能を解説!
目次
基盤モデル:検索向けに最適化されたカスタム版「Gemini」
高度な推論技術:「クエリファンアウト」で質問を多角的に深掘り
信頼性の担保:Google検索による「グラウンディング(情報裏付け)」
Googleの公式見解:「ウェブへの送客は継続し、コンテンツ発見の新たな機会が生まれる」
業界の観測:一部での検索流入減少と「ゼロクリック検索」増加の懸念
Google検索のAI Modeとは?
「検索は"調べる"から"AIに任せる"時代へ」──そんな変化を象徴するのが、Google検索に新たに搭載された「AI Mode」です。これは、Googleが提供する最も強力なAI検索エクスペリエンスであり、従来の「AI概要(AI Overviews)」でできることをさらに拡張した、全く新しい検索の形を提案するものです。
*AIモードのイメージ (参考:Google)
具体的には、ユーザーが投げかけた複雑な質問に対し、AIがウェブ全体の情報を整理・要約した回答を直接生成し、さらにその根拠となった関連リンクでユーザー自身の探求を促す、という2つの要素を兼ね備えています。
従来の検索が、ユーザー自身が情報を探しに行くための「情報の地図」を提示する役割だったのに対し、AI Modeは、目的地までの最適なルートを提案してくれる「経験豊富なリサーチャー兼ガイド」のような存在、と考えると分かりやすいでしょう。
従来のキーワード検索との違い
AI Modeの登場により、私たちの「検索」という行為の本質が変わろうとしています。従来のキーワード検索と、AI Modeが提供する体験の決定的な違いを、以下の表で比較してみましょう。
| 比較項目 | 従来のキーワード検索 | AI Mode |
|---|---|---|
| ユーザーの行動 | キーワードで検索し、複数のサイトを自分で巡回・比較検討する | 対話形式で長く、複雑な質問を一度に行い、AIの回答を起点にする |
| 結果の形式 | 関連性の高いウェブページのリンク一覧 | AIが生成した包括的な回答 + 根拠となるウェブページへのリンク |
| 得意な質問 | 単純な事実確認(「日本の首都は?」など) | 複数の条件を含む複雑な相談(「京都駅出発で6泊7日の旅行プランを立てて...」など) |
表が示す通り、AI Modeは特に、答えが一つではない複雑な情報収集や意思決定の場面でその真価を発揮します。
公式情報によると、AI Modeの初期ユーザーは、従来の検索クエリの2倍から3倍の長さの質問をしていたことがわかっており、これはユーザーがより高度で複雑なタスクをGoogle検索に求めていることの表れです。
AI Modeの仕組み
AI Modeが生成する回答は、単なるウェブページの要約ではありません。その裏側では、Googleが誇る3つの核心的な技術が連携しています。
ここでは、AI Modeの「頭脳」と「情報収集能力」、そして「信頼性」を支える仕組みを、一つずつ詳しく見ていきましょう。
基盤モデル:検索向けに最適化されたカスタム版「Gemini」
AI Modeの「頭脳」として中核を担うのが、Googleの最もインテリジェントなモデルであるGemini 2.5を、検索用途に最適化したカスタム版です。
単に言語を理解するだけでなく、より高度な推論能力やマルチモーダル(テキスト、画像、音声などを同時に扱う)能力を備えています。これにより、ユーザーが投げかける曖昧で複雑な質問の意図を深く汲み取り、自然で論理的な文章を生成することが可能になっています。
高度な推論技術:「クエリファンアウト」で質問を多角的に深掘り
AI Modeの最も革新的な技術の一つが、公式にクエリファンアウト(query fan-out)と呼ばれるものです。これは、AIがまるで優秀なリサーチチームのように振る舞う仕組み、と考えると分かりやすいでしょう。
Googleの公式ブログによれば、これは質問をサブトピックに分解し、ユーザーに代わって複数の検索クエリを同時に実行することで、従来の検索よりはるかに深くウェブを探索し、関連性の高いコンテンツをより多く見つけ出す技術です。この多角的な情報収集と、それらを統合するGemini 2.5の推論能力が組み合わさることで、一つの側面だけではない、深く掘り下げられた回答が生成されるのです。

クエリファンアウトの仕組み
信頼性の担保:Google検索による「グラウンディング(情報裏付け)」
生成AIの大きな課題である「ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)」を防ぐため、AI ModeはGrounding with Google Searchという仕組みで、その信頼性を担保しています。
これは、AIが回答を生成するプロセスの全てにおいて、常に高品質なウェブコンテンツやナレッジグラフといった、Google検索が持つ最新でリアルタイムな情報源によってその内容を裏付け・検証する技術です。
これにより、AIの回答には根拠となる出典リンクが表示され、ユーザー自身が事実を確認できるようになっています。
AI Modeで何ができる?主要機能と具体的な活用例
AI Modeは、私たちの情報収集をどのように変えるのでしょうか。ここでは、AI Modeが提供する主要な機能と、その能力を最大限に引き出すための具体的な活用例を詳しく紹介します。
対話形式での深掘り検索
AI Modeの最も強力な機能の一つが、一度きりの検索で終わらない「対話」能力です。AIとの会話を通じて、まるで専門家と相談するように、思考を整理し、情報を深掘りしていくことができます。
- 活用例:
「京都駅出発で6泊7日の旅行プランを立てて。伝統工芸とか歴史的な場所を巡るアクティビティ中心のプランで、ディナーでおすすめのレストランも入れて。」
このような複雑な依頼に対し、AI Modeはまず包括的なプランを提示します。
そして、その回答に対して「10月に行くんだけど、近くでお祭りはやってる?」「雨が降った場合の代替プランも考えて」といった形で、会話を続けながらプランを具体化し、完成度を高めていくことができます。
機能2:マルチモーダル検索(テキスト・音声・画像)
AI Modeは本格的なマルチモーダル体験ができるよう設計されており、キーボードで文字を打つだけでなく、最も自然な方法でAIに問いかけることができます。
- 活用例:音声入力
マイクアイコンをタップするだけで、思いついた質問をそのまま口頭で投げかけることができます。手が離せない料理中や運転中でも、手軽に検索を始められます。
- 活用例:画像入力(Google Lens連携)
例えば、海外のレストランで読めないメニューをスマートフォンのカメラで写し、**「このメニューが何かわからないんだけど、どれがベジタリアン向けか教えて」**と質問すれば、AIが画像内の文字を認識・翻訳し、条件に合うメニューを料理の内容と共に教えてくれます。

*Googleレンズと音声入力を活用した利用例 *
検索履歴からの再開と文脈の維持
「AIモード履歴」機能を使えば、過去の検索を一覧で確認し、中断したところから会話を再開することができます。
これにより、数日前に調べていたトピックについて、再度ゼロから説明する必要なく、「この前の続きで、〇〇についてもっと詳しく教えて」といった形で、文脈を引き継いだまま探求を続けることが可能です。
【発展】Search Labsで提供される実験的機能
Googleは、イノベーションのテストベッドである「Search Labs」を通じて、AI Modeのさらに高度で実験的な機能を一部のユーザーに先行公開しています。これらは、Googleが今後AI Modeに搭載を検討している、より進んだ機能群です。(※利用には居住国や年齢などの条件があります)
Deep Search:専門家レベルのレポートを自動生成
「Gemini 2.5 Pro」を搭載した、より高度な調査ツールです。通常のAI Modeよりもさらに多くの情報源(何百ものサイト)を深く読み込み、専門家レベルの完全に引用されたレポートを数分で作成する能力を持ちます。
複雑なテーマについて、徹底的にリサーチしたい場合に強力な武器となります。
AIモードのDeep Search機能のイメージ (参考:Google)
エージェント機能:ユーザーに代わってタスクを実行
これは、AIが単に情報を提供するだけでなく、ユーザーに代わって具体的なタスクを実行する機能です。
「今週土曜日のレッズの試合の手頃なチケットを探して」といった指示で、AIが複数のチケット販売サイトを横断的に検索・比較し、最適な選択肢を提示して購入を支援します。

エージェント機能の利用イメージ (参考:Google)
パーソナライズ機能:個人の文脈を理解した提案
過去の検索履歴や、ユーザーが許可すればGmailやGoogleマップなどのGoogleアプリの情報と連携し、よりパーソナライズされた検索結果を提供します。
例えば、旅行プランを検索した際に、Gmailのフライト予約情報から出発地を自動で認識し、「あなたの滞在先の近くのイベント」を提案するといった、より気の利いたアシストが可能になります。
AI Modeの使い方と日本の提供状況
実際にこの新しい検索体験を試してみたい方向けに、公式で案内されている3つのアクセス方法と、日本での現在の提供状況を解説します。
AI Modeへの3つのアクセス方法
現在、AI Modeには主に3つのアクセス方法があります。
-
google.com/ai に直接アクセスする

-
通常の検索を行った後、検索結果ページに表示される「AI Mode」タブをタップする

-
Googleアプリのホーム画面に表示される「AI Mode」のショートカットをタップする

日本での提供状況:2025年9月より順次展開中
AI Modeは英語での提供が先行していましたが、2025年9月、日本語を含む5言語(韓国語、インドネシア語、ヒンディー語、ブラジル・ポルトガル語)へ対応を拡大し、日本国内でも順次提供が開始されました。
PCとモバイルのブラウザ、AndroidおよびiOSのGoogleアプリで利用可能です。お使いの環境でまだ利用できない場合でも、今後段階的に全てのユーザーが利用可能になる見込みです。
AI ModeがウェブサイトとSEOへ与える影響
AI Modeの登場は、ウェブサイト運営者やSEO(検索エンジン最適化)にどのような影響を与えるのでしょうか。これは多くの人が最も関心を寄せる点の一つです。ここでは、Googleの公式見解と業界の観測を、両論併記で公平に考察します。
Googleの公式見解:「ウェブへの送客は継続し、コンテンツ発見の新たな機会が生まれる」
Googleは「ウェブ全体から人々がコンテンツを発見できるよう支援することは、Googleの使命の中核」であると繰り返し強調しています。
AIが回答を生成する際にも、その根拠となるウェブサイトへのリンクを明確に表示するため、ウェブへの送客は継続すると主張しています。さらに、これまで検索されなかったような複雑な質問がAI Modeによって可能になることで、コンテンツ発見の新たな機会が生まれるとも述べています。
業界の観測:一部での検索流入減少と「ゼロクリック検索」増加の懸念
一方、ウェブサイト運営者や一部の調査からは、懸念の声も上がっています。
AIが検索結果画面で答えを完結させてしまうことで、ユーザーがサイトを訪れずに離脱する「ゼロクリック検索」が増加し、結果として検索流入が減少するのではないか、という指摘です。実際に、一部のパブリッシャーからは流入減の事例も報告されており、今後の動向が注視されています。
今後のSEOで求められること:AIには作れない「一次情報」と「体験価値」
このような変化の中で、今後のSEOでは、AIには生成できない価値の提供が、これまで以上に重要になると考えられます。
具体的には、独自の調査データや専門家としての経験に基づく一次情報、そして読者の課題に深く寄り添い、信頼感を与えるような**優れた体験価値(UX)**です。これらは、AIがウェブ情報を参照して回答を生成する際の、重要な「引用元」となり得えます。
まとめ
本記事では、Google検索の新しい標準となりつつある「AI Mode」について、その仕組みからSEOへの影響までを公式情報に基づいて深く掘り下げて解説しました。
最後に、この記事の要点をまとめます。
- AI Modeは、カスタム版Gemini 2.5を搭載し、複雑な質問にAIが直接回答するGoogleの最も強力な検索体験です。
- クエリファンアウトやグラウンディングといった公式技術により、高精度で信頼性の高い回答を実現しています。
- 日本では2025年9月より順次展開中で、3つの公式なアクセス方法があります。
- Search Labsでは、Deep Searchやエージェント機能といった、検索の未来を垣間見ることができる実験的機能も提供されています。
AI Modeはまだ初期段階の製品であり、今後も継続的な改善が約束されています。情報収集のあり方を根底から変える可能性を秘めたこの新しい検索体験を、まずは一度ご自身で試し、その可能性を感じてみてはいかがでしょうか。





