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SAPの2027年問題とは?背景・影響・企業が取るべき対応をわかりやすく解説

この記事のポイント

  • SAP 2027年問題の対象製品と保守期限を整理
  • 保守切れが招くセキュリティ・監査リスクを解説
  • S/4HANA移行・他社ERP・ECC延命の選択肢を比較
  • 現行環境棚卸しとシナリオ案作成のステップを解説
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

SAP ERP 6.0(ECC)などを利用している企業にとって、「SAPの2027年問題」は基幹システム戦略を見直す大きな転機になります。SAP Business Suite 7 の標準保守終了により、セキュリティ・法令対応・運用の各面でリスクが高まる一方、世界中のユーザーが一斉に移行を進めることで、パートナーや人材の逼迫も予想されます。本記事では、2027年問題の対象範囲とリスク、S/4HANA移行・他社ERP・延命策といった代表的な対応方針、そして今から始めるべき検討・行動ステップを整理し、自社にとって現実的なシナリオを描くための視点を解説します。

目次

SAPの2027年問題とは何か(保守期限の概要)

どのシステム/バージョンが2027年問題の対象になるのか

なぜ2027年問題が「今から」の経営・ITテーマになるのか

1. 保守切れは「技術問題」ではなく「経営リスク」になる

2. 世界的に移行需要が集中し、人材・パートナーがひっ迫する

3. 移行には「構想〜設計〜移行」の時間がどうしてもかかる

4. 「様子見」を続けるほど選択肢が狭まる

放置した場合に想定されるリスクと負のシナリオ

セキュリティ・法令対応リスクの顕在化

運用負荷の増大とブラックボックス化

突発トラブル時の事業継続リスク

「あとからまとめて対応」のコストが跳ね上がる

2027年問題への代表的な対応方針(選択肢の整理)

選択肢①:SAP S/4HANA(オンプレ/RISE)への移行を軸にする

選択肢②:他社ERPや領域特化ソリューションへのリプレース

選択肢③:ECC延命(延長保守・第三者保守・機能縮小)という現実解

選択肢④:事業戦略・ITロードマップと紐づけてハイブリッドに考える

SAP 2027年問題への検討・行動ステップ

ステップ1:現行SAP環境の棚卸し(現状の見える化)

ステップ2:経営・業務・ITで「変えたいこと/変えたくないこと」を整理

ステップ3:自社にとって現実的なシナリオ案を2〜3個つくる

ステップ4:2027年から逆算したタイムラインを引く

ステップ5:そのうえで、パートナー選定・RFP作成に進む

まとめ

SAPの2027年問題とは何か(保守期限の概要)

「SAPの2027年問題」とは、SAP ERPを含む「SAP Business Suite 7」系製品の標準保守が2027年末で終了することに伴う課題を指します。
特に、長年ECC 6.0を使い続けてきた企業にとっては、今後の基幹システム戦略を必ず見直さざるを得ない節目になります。

ポイントを整理すると、概ね次のようなイメージです。

  • 対象:SAP ERP 6.0(ECC)、CRM 7.0、SRM 7.0、BW 7.x などを含む SAP Business Suite 7 ファミリー
  • 標準保守(メインストリーム)は 2027年末まで 提供
  • その後は、追加コストを伴う 延長保守(〜2030年末を目安) に移行
  • 一方で、SAP S/4HANA や RISE with SAP などの新世代製品は、この「2027年問題」の対象外

標準保守が終了すると、

  • セキュリティ修正パッチや法改正対応(税制・インボイス・電子帳簿保存法など)が受けにくくなる
  • 不具合発生時のサポートが限定的になり、運用リスクや監査リスクが高まる
  • 2027年に向けて、世界中のSAPユーザーが一斉に移行を進めるため、パートナーや人材の不足が予想される

といった問題が顕在化します。

つまり「SAPの2027年問題」とは、2027年以降もECCなどの旧世代SAPを使い続けるのか、S/4HANAや他の選択肢に移行するのかを、限られた猶予期間の中で決めなければならない状況を指します。

SAPの2027問題

次のセクションでは、どのシステム/バージョンが具体的に2027年問題の対象になるのか を、もう少し踏み込んで整理していきます。

どのシステム/バージョンが2027年問題の対象になるのか

まず押さえておきたいのは、「2027年問題の対象は“SAPを使っている企業すべて”ではない」ということです。対象になるのは、ざっくり言うと 「SAP Business Suite 7 世代のオンプレ製品」 です。

代表的には次のような製品・バージョンが該当します。

  • SAP ERP 6.0(いわゆるECC 6.0、各EHP含む)
  • SAP CRM 7.0 / SAP SRM 7.0 / SAP SCM 7.0 などの周辺コンポーネント
  • SAP BW 7.x など Business Warehouse を含むスイート製品群

これらは「Business Suite 7 ファミリー」として一括で取り扱われており、前述の通り標準保守は2027年末までとなっています。

一方で、次のようなケースは、いわゆる「2027年問題」の直接の対象ではありません。

  • すでに SAP S/4HANA(オンプレ・クラウド) に移行済みの環境
  • RISE with SAP を契約しており、S/4HANAベースのクラウドERPに移行済み
  • ECCではなく、他社ERPや独自開発基幹システムのみを利用している企業

ただし、S/4HANAに移行済みだったとしても、

  • 旧ECC環境を参照用に残している
  • BW 7.x や周辺の旧コンポーネントがまだ残っている
  • 自社開発インターフェースや周辺システムが、旧ECCを前提に動いている

といった場合は、完全に無関係というわけではなく、「どこまで旧環境を残すか」を整理する必要があります。

実務的には、次のような観点で「自社が対象かどうか」をまず確認するのが出発点になります。

  • 本番環境で稼働している SAP のバージョン(ERP 6.0 / S/4HANA など)
  • ECCを使っている場合、そのEHPレベルとサポート契約の内容
  • BW、CRM、SRM、SCM などの旧コンポーネントの残存状況
  • 旧環境とつながっているアドオン・周辺システムの有無

ここまでを整理すると、「自社は明確に2027年問題の対象」「一部コンポーネントのみ対象」「ほぼ影響なし」といった現在地が見えてきます。
次のセクションでは、そうした企業にとって なぜ2027年問題が“今から”の経営・ITテーマになるのか を整理していきます。

なぜ2027年問題が「今から」の経営・ITテーマになるのか

SAPの2027年問題は、「あと数年あるから様子見でよい」テーマではありません。
基幹システムという性質上、検討開始が遅れるほど選択肢が狭まり、コストもリスクも増える構造になっています。

1. 保守切れは「技術問題」ではなく「経営リスク」になる

標準保守が終わったシステムをそのまま使い続けると、次のようなリスクが顕在化します。

  • 新たな脆弱性へのパッチが提供されにくくなり、情報漏えい・サービス停止のリスクが高まる
  • 税制・電子帳簿保存法・インボイス対応など、法令対応が自力での改修前提になりやすい
  • 監査や内部統制の観点から、「保守切れシステムの継続利用」自体が指摘対象になりかねない

これは単なるIT部門の課題ではなく、「経営判断としてどこまでリスクを許容するか」 が問われるテーマになります。

2. 世界的に移行需要が集中し、人材・パートナーがひっ迫する

2027年問題は、国内だけではなく世界中のECCユーザーが同じ期限に直面するテーマです。
そのため、

  • S/4HANAやERP移行の経験を持つコンサルタント・エンジニア
  • S/4HANA/RISE案件をこなせるSIパートナー
  • インフラ・クラウド基盤のリソース

に対する需要が一気に高まることが予想されます。

検討・決裁が後ろ倒しになるほど、

  • プロジェクト開始時期が「パートナーの空き待ち」になる
  • 経験の浅い体制で妥協せざるを得ない
  • 複数社で見積もっても条件が大きく変わらない

といった状況になりやすく、「急いだから高くつく」 という悪循環に陥りがちです。

3. 移行には「構想〜設計〜移行」の時間がどうしてもかかる

SAP移行は、多くの企業にとって1〜2年で片が付くような小さな取り組みではありません。

  • 現行システムの棚卸し(アドオン・インターフェース・データ量の把握)
  • 業務プロセス/テンプレートの見直しレベルの合意
  • 移行パターン(Greenfield/Brownfield/Selective)とロードマップの設計
  • 実際の構築・テスト・データ移行・カットオーバー

といったステップを考えると、「検討開始から本番移行まで数年スパン」が前提になります。

このため、「まだプロジェクトを立ち上げなくてもいい」ではなく、「今のうちに構想と現状診断を済ませておかないと間に合わない」 という時間軸で考える必要があります。

4. 「様子見」を続けるほど選択肢が狭まる

2027年問題に対しては、S/4HANA/RISEへの移行だけでなく、

  • 他社ERPやドメイン特化ソリューションへのリプレース
  • 期間限定の延命策(延長保守・第三者保守・機能縮小)
  • クラウド活用の度合いをどうするか(IaaS/PaaS/SaaS)

といった複数の選択肢があります。

ただし、検討開始が遅れるほど、

  • 「期間的に現実的な選択肢」が限られてしまう
  • 本来は業務刷新も含めて検討したかったのに、「とりあえず延命」に流れがち
  • 将来の再移行・再更改まで見据えた設計が難しくなる

といった形で、中長期の視点でみるとトータルコストがむしろ増えやすいのが実情です。

なぜ今からのテーマになるのか

こうした理由から、SAPの2027年問題は 「期限間際になったら考えるテーマ」ではなく、今のうちから構想と現状診断を進めるべき経営・ITテーマだと言われています。
次のセクションでは、放置した場合に想定されるリスクや負のシナリオを、もう少し具体的に整理していきます。

放置した場合に想定されるリスクと負のシナリオ

SAPの2027年問題は、「多少古いがまだ動いているシステム」の延長線で考えると危険です。
保守切れの基幹システムを持ち続けることは、次のような負のシナリオにつながりやすくなります。

セキュリティ・法令対応リスクの顕在化

標準保守が切れたシステムでは、

  • 新たな脆弱性に対する修正パッチが提供されない/限定的になる
  • 税制改正や電子帳簿保存法対応など、法令対応を自前で実装する必要が出てくる
  • 監査や内部統制の観点で、「保守切れ環境の継続利用」が指摘される可能性が高まる

といった問題が現実味を帯びてきます。特に会計・販売・在庫など、財務報告に直結する領域で使っている場合は、経営・監査上のリスクとして無視できません。

運用負荷の増大とブラックボックス化

保守切れ環境を前提に、その場しのぎの対応を積み重ねていくと、次のような問題が発生します。

  • 法令対応や不具合修正を「社内の特定メンバー頼み」で行う
  • ベンダーからの標準サポートが期待できず、トラブル対応が属人化する
  • ドキュメント整備が追いつかず、気付いたら誰も全体像を把握していない状態になる

こうした状況が続くと、運用コスト増+ブラックボックス化 が進んでいきます。

その結果、システム運用は何とか回っているものの、誰も触りたがらない状態となります。また、新しい施策(データ活用・AI・他システムとの連携)も進まず、攻めにも守りにも動けない状態に陥りがちです。

突発トラブル時の事業継続リスク

基幹系システムでは、「普段は何とか動いている」状態でも、ハード故障・OS更新・ネットワーク更改などをきっかけにトラブルが顕在化することがあります。

保守切れ環境の場合、

  • ベンダーサポート窓口に相談しても、優先度が下がる/対応できない ケースが増える
  • パッチや修正プログラムが存在せず、影響範囲を限定した回避策しか取れない
  • 最悪の場合、長時間の停止やデータ不整合が発生し、事業継続にインパクトが出る

といったリスクが現実になってしまう恐れがあります。

「あとからまとめて対応」のコストが跳ね上がる

2027年問題を先送りし続けると、最終的に

  • 法令対応・運用対処・暫定改修が積み上がり、移行前提の整理作業が肥大化
  • 「もう少し早く着手していれば選べた」移行オプションが取れなくなる
  • 結果として、移行プロジェクトの難易度とコストが高止まり する

という構図になりやすいのが現実です。

リスクと負のシナリオ

こうした負のシナリオを避けるためにも、「2027年問題があるから仕方なく移行する」という発想ではなく、リスクとコストを見極めたうえで、いつ・どこまで・どのように移行するかを自分たちで決めにいく視点が重要になります。

次のセクションでは、その前提として押さえておきたい代表的な対応方針(選択肢)を整理していきます。

2027年問題への代表的な対応方針(選択肢の整理)

2027年問題に対しては、「S/4HANAに移行するか/しないか」の二択ではありません。
現実的には、次のような選択肢の組み合わせから、自社に合ったシナリオを設計していくことになります。

対応方針

選択肢①:SAP S/4HANA(オンプレ/RISE)への移行を軸にする

最もオーソドックスなのが、S/4HANAを次期基幹システムの前提とする方針です。

  • オンプレミス版のS/4HANAを自社データセンター/IaaS上に導入
  • RISE with SAP を利用し、クラウド上のS/4HANA環境+運用サービスを一体で利用

といったパターンが代表例です。

S/4HANA移行を選ぶメリットは、

  • 既存のSAPノウハウやマスタ構造を活かしやすい
  • 会計・販売・在庫など、業務領域をまたいだ一貫した統合基盤を維持できる
  • 将来的な拡張(BTP・生成AI・業務テンプレート活用など)を見据えやすい

一方で、

  • ライセンス・インフラ・移行プロジェクトを含めた投資規模は一定以上になる
  • ECC時代のアドオンや運用をどこまで見直すか、上流での設計負荷が高い

といったポイントも踏まえ、「どこまで業務を刷新したいか」「どれだけ標準に寄せられるか」 をセットで検討する必要があります。

選択肢②:他社ERPや領域特化ソリューションへのリプレース

もう一つの方向性として、SAPにこだわらず、他社ERPや領域特化型ソリューションへのリプレースを検討するパターンもあります。

  • 経理・人事・CRMなど、領域ごとにSaaSを組み合わせる構成
  • 特に海外展開や特定業種で強みのある他社ERPへの乗り換え
  • 「基幹はミニマルなERP+周辺はSaaS」という構成へのシフト

などが代表例です。

この選択肢のポイントは、

  • 「本当にSAPでなければならないのか」をゼロベースで見直せる
  • 領域特化のSaaSを活用することで、初期導入までのスピードを上げられる可能性がある

一方で、

  • 現行のSAP主導のプロセスやインターフェースを、ほぼ作り直す前提になる
  • 複数のベンダーやSaaSを束ねるアーキテクチャ/運用設計が新たな負荷になる

という意味で、2027年問題対応だけを目的に選ぶにはハードルが高い選択肢でもあります。

選択肢③:ECC延命(延長保守・第三者保守・機能縮小)という現実解

現実的には、「当面はECCを延命しつつ、中長期では刷新する」というシナリオもよく検討されます。

  • SAP公式の延長保守プログラムを契約して、2030年頃まで時間を稼ぐ
  • サポート切れ後は、第三者保守ベンダーによるサポートに切り替える
  • ECC上の機能を絞り込み、一部を周辺システムやSaaSに切り出して負担を軽くする

といったパターンです。

この方向性のメリットは、

  • 短期的な投資負荷を抑えつつ、「今すぐの移行」は避けられる
  • 既存プロセスを大きく変えずに、当面の稼働継続が可能

一方で、

  • 延長保守や第三者保守には、別種のコストと制約が発生する
  • 結局いつかは刷新が必要であり、「課題の先送り」に終わるリスクがある
  • セキュリティ・法令対応・監査対応のリスクを完全にゼロにはできない

という意味で、「時間を買うための暫定策」なのか、「中長期戦略として本気で採用するのか」 を整理することが重要です。

選択肢④:事業戦略・ITロードマップと紐づけてハイブリッドに考える

実務的には、上記のどれか一つだけを選ぶというより、

  • 中核の会計・販売・在庫はS/4HANAに集約する
  • 周辺の人事・CRM・ワークフローはSaaSにリプレースする
  • 旧ECCは参照用に絞り込んだうえで、数年間だけ延命する

といったハイブリッド構成になるケースが多くなります。

その際に重要なのは、

  • 自社の事業戦略(どの事業を伸ばしたいか・どこでグローバル展開するか)
  • データ戦略(どこに業務データを集約し、分析やAIでどう活用するか)
  • ITロードマップ(基盤・ネットワーク・クラウド・セキュリティの整備計画)

といった “上位の戦略” にSAP 2027年問題をどう位置付けるか という視点です。

次のセクションでは、これらの選択肢を前提に、
2027年問題にどう向き合い、どのようなステップで検討〜行動に移していくか を、具体的なステップとして整理していきます。

SAP 2027年問題への検討・行動ステップ

2027年問題は「知識として理解する」だけでは意味がなく、いつまでに・何を決め・どこから動くか を具体化して初めてリスク低減につながります。ここでは、検討の初期段階で押さえておきたいステップを整理します。

ステップ

ステップ1:現行SAP環境の棚卸し(現状の見える化)

最初に行うべきは、今のSAP環境を数字と事実で見える化することです。

  • 利用中の製品・バージョン(ERP 6.0/Business Suite 7コンポーネント/S/4HANA有無)
  • アドオン本数・規模・担当モジュール(ざっくりでよいので分布を把握)
  • インターフェース数と接続先(他システム/周辺SaaS/ファイル連携など)
  • データ量と履歴の範囲(会計・販売・在庫など主要テーブル)

この段階では、「完全な台帳」を作ることよりも、
移行の重さと複雑さのイメージを経営・業務と共有できるレベル を目指します。

ステップ2:経営・業務・ITで「変えたいこと/変えたくないこと」を整理

次に、2027年問題を単なる保守期限の話ではなく、事業・業務・ITの将来像と結びつけて議論します。

  • このタイミングで刷新したい業務(会計プロセスの標準化、販売・在庫の見える化 など)
  • 逆に、当面は大きく変えたくない業務や拠点
  • データ活用・AI・クラウドなど、今後やりたいことの方向性
  • 「これ以上はリスクを取りたくない」という制約(停止時間・予算・人員など)

ここで「業務刷新も含めて大きく変えるのか」「まずはリスク低減と延命を優先するのか」といった温度感のすり合わせを行っておくと、後のパターン検討がスムーズになります。

ステップ3:自社にとって現実的なシナリオ案を2〜3個つくる

現状と方針が見えてきたら、社内でたたき台の移行シナリオを2〜3案つくることをおすすめします。

例としては、次のようなイメージです。

  • 案A:主要会社はS/4HANA(RISE)へ移行し、旧ECCは参照用に限定して延命
  • 案B:本社・中核事業はGreenfieldでS/4HANAに刷新し、他拠点は段階的にロールイン
  • 案C:一定期間は延長保守でECCを延命し、その間にS/4HANA/他社ERPを比較検討

この時点では粗くて構いませんが、

  • ざっくりのタイムライン(いつ検討開始/いつ稼働を目指すか)
  • 概算の投資レンジ(数億〜数十億レベルのオーダー感)
  • 業務変更のインパクトの大小

といった比較軸を添えておくと、経営レベルでの議論がしやすくなります。

ステップ4:2027年から逆算したタイムラインを引く

2027年末(あるいは延長保守の期限)から逆算し、

  • 構想・現状診断フェーズ:◯年〜◯年
  • パターン選定・RFP・ベンダー選定:◯年〜◯年
  • 詳細設計・構築・テスト:◯年〜◯年
  • 本番移行・安定化:◯年

といったラフなタイムラインを引いておきます。
ここで「今から検討を始めてもギリギリ」なのか「まだ1〜2年ほど余裕がある」のか、といった感覚を共通認識にしておくことで、意思決定の優先度を経営レベルで上げることができます。

ステップ5:そのうえで、パートナー選定・RFP作成に進む

上記のステップを踏んだうえで初めて、

  • どのパターン(S/4HANA前提か、他社ERPも含めるか)をRFPに盛り込むのか
  • どの領域をスコープイン/スコープアウトするのか
  • どの程度の経験と体制を持つパートナーが必要か

といった 「外部パートナーに投げるべきテーマ」 が明確になります。

逆に言えば、ここまでの整理を自社側で行わずにRFPだけ出すと、

  • 各社から出てくる提案の方向性がバラバラで比較しづらい
  • 結局「安い・早い」に引っ張られ、中長期で不利な選択をしがち

といった状況になりがちです。

このように、SAPの2027年問題への対応は、現状診断 → 方針整理 → シナリオ案 → タイムライン → パートナー選定 という流れで、段階的に進めることがポイントです。
最後に、これらを踏まえて2027年問題をどう捉えるべきかをまとめます。

まとめ

本記事では、SAP 2027年問題の対象範囲とリスク、S/4HANA移行・他社ERP・延命策といった代表的な対応方針、そして今から始めるべき検討ステップを解説しました。

2027年問題を"危機"ではなく"刷新のきっかけ"に変えるためには、「SAPだから2027までにこうしなければならない」という受け身の発想ではなく、自社の事業戦略とデジタル戦略の中に位置付け、主導権を持ってシナリオを描くことが重要です。

まずは現行SAP環境の棚卸しから始め、自社にとって現実的なシナリオ案を2〜3個作成し、2027年から逆算したタイムラインを引いてみてください。早期の検討開始が、コストとリスクを最適化する近道になります。

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監修者

坂本 将磨

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