生成AIチャットから一歩進んで、「AIエージェント」に仕事を任せるワークスタイルが現実的になりつつあります。
その中でも、Manusは「自分専用のPCを持つAIエージェント」として、リサーチ・資料作成・アプリ開発までを自動でこなせるツールとして急速に普及しています。
しかし、「Manus自体は触っているけれど、ワークフロー設計までは手が回らない」「チーム全体のリスキリングまでどう設計すべきか分からない」という声も多いはずです。
そうした課題に対して、Manusが公式に提供している学習プラットフォームが「Manus Academy」です。本記事では、2025年12月時点の情報をもとに、Manus Academyの特徴・学べる内容・料金・活用シナリオを、企業向けのAIリスキリングという観点から整理します。
目次
Manus Academyとは?──Manus公式の「AIエージェント実務スクール」
Build Clubとの連携と、コミュニティベースの学習体験
OpenAI Academy・OpenAI認定コースとの比較
Manus Academyとは?──Manus公式の「AIエージェント実務スクール」
Manus Academyは、Manusが公式に提供するオンラインスクールで、AIエージェントを実務に組み込むためのスキルを体系的に学べる無料プラットフォームです。
単なるプロンプト講座ではなく、「投資リサーチ」「ビジネス分析」「プロダクトマネジメント」など、実際の業務ワークフローを前提にしたカリキュラムが特徴です。

プロンプトの書き方ではなく「業務フロー設計」を学ぶ

多くの生成AI講座は、「うまいプロンプトの書き方」や「質問の投げ方」といった単発のやり取りにフォーカスしがちです。
一方でManus Academyは、次のような学び方を強く意識しています。
- ゴールから逆算したタスク定義
「投資リサーチパックを作る」「競合比較表を作る」といった成果物ベースで考える
- ステップ分解とエージェントへの委任
「データ収集→整形→要約→可視化」という一連の流れを、どこまでAIに任せるかを設計する
- 人間のレビューを前提にしたワークフロー
最終レポートやコードを必ず人間がレビューする前提で、途中成果物のチェックポイントを設計する
この「タスク完了を前提にした使い方」をきちんと学べる点が、Manus Academyの大きな価値です。
Campusプログラムや他の学習リソースとの違い

Manusには、学生向けのCampusプログラムや、コミュニティイベント、オンラインのBuild Clubなど、複数の学習リソースがあります。
Manus Academyはその中でも、以下のような特徴を持つのが特徴です。
- 役割別・レベル別の体系的なカリキュラム
- 実務ワークフローにフォーカスしたコンテンツ
- 公式認定に近い位置づけの**「認証パス(certifications)」**
学生向けやライトユーザー向けにはCampus・コミュニティが、実務で本格的に使いたいユーザー・企業にはManus Academyが主な入口になる、という整理がイメージしやすいでしょう。
Manus Academyのカリキュラムと学習パス

このセクションでは、Manus Academyのカリキュラム構成と、どのような順番で学んでいく想定なのかを整理します。
学習パスを理解しておくことで、「チームでどこまで学習を共通化できるか」のイメージがつきやすくなります。
Manus Academyの主なコース一覧
以下は、2025年12月時点のManus Academy公式カタログに基づく主なコース一覧です。

| コース名 | レベル | 主な対象・ユースケース |
|---|---|---|
| Manus - 基礎 | 初級 | Manus全体の概要と基本操作を短時間で体験 |
| Manus - 中級 | 中級 | 高品質なアウトプットのためのプロンプト設計とプレイブック活用 |
| Manus - 上級 | 上級 | Apps・マイクロサイト・バッチ処理など高度機能による自動化 |
| Manus ビジネスアナリスト向け | 上級 | データ分析・モデリングワークフローの自動化 |
| Manus プロダクトマネージャー向け | 上級 | 市場調査・ロードマップ・仕様書変換などPM業務の効率化 |
| Manus 金融向け | 上級 | ディールソーシング〜DD〜実行までの投資ワークフロー支援 |
そのうえで、各コースの概要をもう少し具体的に見ていきます。
Manus - 基礎
自身のコンピュータを使ってリサーチを行い、アプリを操作し、エンドツーエンドの成果物(ドキュメント、スライド、スプレッドシート、Webページ、画像)を作成・納品するAI「Manus」を、短時間で一通り体験できる入門コースです。
約1時間で、「Manusとは何か?」という理解段階から、ブラウジングやログイン、並列リサーチを伴う成果物作成までひと通り試せる構成になっています。
Manus - 中級
Manusを自在に操り、プロフェッショナル品質の成果物を安定して出すためのコースです。
正確なプロンプト設計、構築済みワークフロー(プレイブック)の発見とカスタマイズ、コンテキスト機能を活用した「外部脳」の作り方などを体系的に学び、最小限の人手修正で済む投資メモ/リサーチレポート/戦略プレゼンの生成を目指します。
Manus - 上級
Manusの高度な機能(Apps、マイクロサイト、バッチ処理、メール連携、各種コネクタ)を徹底的に掘り下げる集中コースです。
データベース付きのフル機能Webアプリ公開、PDFから動的な採用サイトへの変換、画像のスタイル一括適用、カレンダー/Gmail/Notionなどからの日次ブリーフィング自動化、メールエイリアスを使ったカスタムワークフロー構築といった「一歩踏み込んだ自動化」を実装するためのスキルを養います。
Manus ビジネスアナリスト向け
ビジネスアナリストやデータアナリスト向けに、複雑なデータ分析とモデリングを自動化するパターンを学ぶコースです。
データフォレンジック(データ検証)、財務モデリング、プロセス監査、ステークホルダー対応、成長分析という5つの実務ワークフローを通じて、「数日かかる手作業を数分の自動化インサイトに変える」ための設計パターンを身につけます。
Manus プロダクトマネージャー向け
プロダクトマネージャーや事業開発向けに、リサーチと調整業務の自動化をテーマとしたコースです。
市場動向の把握、ロードマップのモデリング、仕様書の変換、進捗報告、フィードバックの統合という5つのワークフローを題材に、手作業での情報整理から脱却し、戦略的な意思決定と実行に時間を割ける状態を目指します。
Manus 金融向け
PE/VC・投資銀行・事業会社の投資部門など、金融・投資領域のプロフェッショナル向けコースです。
ディールソーシング、デューデリジェンス、エグゼキューションにわたる実際のワークフローを通じて、「どの場面をManusに任せるべきか」というマインドセットを習得。ピッチデックをメール送信して即座に分析を得る、引用付き投資メモの生成、創業者プロフィールの構築、ミーティングノートからマーケットマップを起こす──といったタスクを自動化するパターンを学びます。
Build Clubとの連携と、コミュニティベースの学習体験
Manus Academyは、オーストラリア発のAI学習コミュニティ/プラットフォームであるBuild Clubと提携しており、以下のような学習体験が用意されています。
- 受講者同士で成果物を共有できるプロジェクトバンク
- コース修了やチャレンジ参加に応じたポイント/バッジ付与
- オンライン/オフラインのハッカソンやワークショップ
企業研修として考える場合にも、「座学で終わらず、アウトプットが残る」「他社事例から学べる」という点で、通常のeラーニングよりも定着しやすい設計になっています。
Manus Academyの料金・特典情報
Manus Academy自体は無料で受講可能です。
2025年12月時点のEarly Birdフェーズでは、Manus Academy受講者向けに、学習とクレジット付与を結びつけたキャンペーンが複数用意されています。

コース完了ボーナス(Early Bird)
Academyの主要コースを完走した先着500名に、8,000 Manus creditsを付与するキャンペーンが公式ブログで案内されています。
Early Bird Challenge / Weekly Challenge
指定条件(例:Manus Fundamentalsの完了、Manusでのプロジェクト構築、「#manusacademy」でのSNSシェアなど)を満たした先着1,000名に、1,000 Manus creditsを付与。
さらにコンテスト形式で、1〜3位およびPeople’s Choice受賞者に対して、数千クレジット規模の追加ボーナス(例:8,000 / 5,000 / 2,000 credits など)が付与されます。
こうした特典により、**「学ぶ → 実際にプロジェクトを作る → クレジットで実運用を試す」**というサイクルを回しやすくする設計になっています。
Manus Academyの活用シナリオ

次に、具体的な利用者タイプごとに、Manus Academyをどのように活用できるかを整理します。
ここでは、日本企業でよく見られる職種・役割ごとのイメージを挙げます。
ビジネスアナリスト・データアナリストの場合
ビジネスアナリストやデータアナリストは、日々以下のようなタスクをこなしています。
- 売上・KPIデータの抽出と前処理
- 部門別・施策別の集計レポート作成
- レポートのグラフ・チャート作成
- 定例会議用のサマリ資料作成
Manus Academyでは、これらのタスクを一連のワークフローとしてエージェント化する方法を学べます。
- スプレッドシート/CSVをアップロード → 前処理 → 集計 → グラフ作成 → レポート整形
- 社内のデータソースや外部データを組み合わせたダッシュボード用データ生成
- 定例レポートの更新を「ボタンひとつ」で回す仕組みづくり
こうしたワークフローを構築できると、アナリスト自身は**「解釈・意思決定・打ち手設計」**により多くの時間を使えるようになります。
ファイナンス・PE/VCチームの場合
PE/VC・事業会社の投資部門では、次のようなタスクが発生します。
- 投資候補企業の情報収集(ニュース、決算、IR資料など)
- 同業他社との比較表・マトリクス作成
- 簡易DD資料・インベストメントメモの作成
Manus Academyでは、**「投資リサーチパックを自動生成するエージェント」**など、実務に近いユースケースが紹介されています。
- 企業名を入力 → 公開情報を収集 → 主要KPI・トレンドを抽出 → メモ形式に整理
- 同業他社の指標を並べた比較スプレッドシートを自動生成
- 調査対象のアップデートニュースを定期的にウォッチし、レポート化
ファイナンス系のワークフローは、情報量が多い一方で定型的な形に落とし込まれることが多いため、Manusとの相性が非常に良い領域です。
個人クリエイター・中小企業オーナーの場合
個人クリエイターや中小企業オーナーにとってのManus Academyは、「最初の1つのプロジェクトを完走させるためのガイド」という役割が強くなります。
- 商品・サービス紹介のランディングページを自動生成
- キャンペーン用Webサイト+問い合わせフォームの自動構築
- SNS/メールマーケティング用のコンテンツ一式の生成
実際に、海外では小規模フローリストがManusを使ってオンライン販売のインフラを構築した事例などが紹介されています。
テクニカルなバックグラウンドがなくても、「こういうサイト・こういうツールが欲しい」というイメージを言語化できれば、ManusやManus Academyが提供する実務ワークフロー教材を通じて、こうしたプロジェクトの進め方を段階的に学ぶことが可能です。
OpenAI Academy・OpenAI認定コースとの比較

AI学習プログラムという意味では、Manus Academy以外にも、OpenAIが提供するOpenAI Academyや、ChatGPT内で完結する認定コース「AI Foundations」など、ベンダー公式のスクール型イニシアチブが存在します。
これらと比べると、Manus Academyは次のような位置づけになります。
| 観点 | Manus Academy | OpenAI Academy / AI Foundations など |
|---|---|---|
| 主な目的 | Manusを使って、投資・分析・PMなどの具体的な業務ワークフローをエージェント化する | 幅広いユーザーにAIリテラシーとOpenAI製品の実務スキルを身につけてもらう |
| フォーカス | Manusという特定プロダクト+ビジネス職のタスク設計 | ChatGPTとOpenAI API全般の活用、AIの基礎スキル習得 |
| 想定する主な利用シーン | VC/PE、アナリスト、PM、Biz職が、自分のワークフローそのものを変える | 一般ビジネスパーソン、教育機関、ニュースルームなどが、AIの使い方を体系的に学ぶ |
| 学習スタイル | 実際の案件に近い「ワークフロー単位」の演習とプロジェクトベース学習 | ChatGPT内での演習やオンライン教材で、AI活用パターンを広く学ぶ |
どちらも「AIを仕事で使えるようにする」ことを目的としていますが、Manus Academyは「Manusを前提に、業務ワークフローをエージェント化するための実務スクール」、OpenAI AcademyやAI Foundationsは「OpenAI製品全般を起点に、AIリテラシーとスキルを底上げするための学習ハブ」という整理がイメージしやすいでしょう。
Manus Academy利用時のポイント
ここまで見てきた通り、Manus Academyは魅力的なプラットフォームですが、導入前に押さえておくべきポイントもあります。

導入前に決めておきたい「ワークフローのゴール」
企業やチームでManus Academyを導入する場合、まず決めておきたいのは**「何のワークフローをAIエージェント化したいのか」**というゴール設定です。
- 投資リサーチのリードタイムを○%短縮したい
- 定例レポート作成の工数を月○時間削減したい
- プロトタイプ開発の「Day 0」までの時間を半分にしたい
といったように、具体的な業務KPIや指標をイメージしておくと、Academyのコース選定や宿題設計がスムーズになります。
クレジット消費とコスト管理のポイント
Manusはクレジット制のため、「学習フェーズで思った以上にタスクを回しすぎてクレジットを消費してしまう」リスクもあります。
企業で導入する場合、次のようなルールをあらかじめ決めておくと安全です。
- トレーニング期間中は、使用するエージェントの種類(最大性能のエージェントを乱用しないなど)を制限する
- チームごとに「1週間あたりの最大クレジット使用量」の目安を決めておく
- 本番導入前に「1タスクあたりの平均クレジット消費量」を把握し、予算感を共有する
クレジットの仕組みはやや複雑に見えますが、タスクタイプごとの消費量をサンプル計測しておくと、月次の費用見積もりがしやすくなります。
セキュリティ・コンプライアンス観点の確認
AIエージェントは、社内ファイル・外部サービス・メールなどにまたがってタスクを実行するため、セキュリティとコンプライアンスの整理も必須です。
- どのデータソースまでManusにアクセスさせてよいか(個人情報・機密情報など)
- ログの保存期間やアクセス権限の管理はどうするか
- 監査対応のために、どの程度の「プロセスの可視化」が必要か
Manus側は、Trust Centerやドキュメントでセキュリティ・プライバシーに関する情報を公開しています。
企業導入では、CSIRT/情報システム部門と連携して、利用ルールを先に決めてから学習・PoCに入るのが現実的です。
Meta傘下化(Meta x Manus)による今後の可能性

参考:Manus
2025年12月には、ManusがMetaに参加することが発表されています。
現時点では、Manusのサブスクリプションサービスや運営拠点(シンガポール)は継続するとされており、ユーザー側の使い勝手は大きく変えない方針が示されています。
教育面では、将来的に次のような方向性が考えられます。
- Metaの各サービス(Facebook/Instagram/WhatsAppなど)と連携したワークフロー教材
- Meta製LLM・AI機能との組み合わせを前提にしたユースケースの追加
- より多くのユーザー層に向けた大規模なAIリテラシープログラム
現時点では具体的なロードマップは公開されていませんが、「Manus Academyが、より広いエコシステムに接続される可能性が高い」点は押さえておくと良いでしょう。
まとめ──Manus AcademyをAIエージェント時代のリスキリング基盤にする
Manus Academyは、単なるAIの使い方講座ではなく、投資リサーチやビジネス分析、PM業務などを丸ごとエージェント化するための実務スクールです。
Freeプランでも仕組みを試せますが、本格的にワークフローを載せるにはPro/Teamと組み合わせて、どのタスクをどこまで任せるか、クレジットをどう配分するかを設計することが重要になります。
まずは小さなレポートや簡易アプリなど「最初の1本」を題材に、Manus Academyのコースをチームで一周してみることが、AIエージェント前提の働き方へ移行するための現実的な第一歩と言えるでしょう。
日本語ドキュメントが限られる部分はありますが、実案件に近い教材を通じて学べる点は大きな強みです。











