この記事のポイント
Geminiパーソナルインテリジェンスは、Gmail、Googleフォト、YouTubeなどのGoogleアプリ情報をユーザーの同意に基づいてGeminiに接続する機能
過去のメールや写真から特定の情報を検索・抽出したり、個人の嗜好や履歴を踏まえた旅行プランやレコメンドを生成可能
データ利用は完全なオプトイン方式で、接続アプリの選択や解除、アクティビティ履歴の削除など、ユーザー主導のプライバシーコントロールを提供
現時点では米国のGoogle AI Pro/Ultra契約の個人ユーザー向けベータとして提供されており、Workspace法人アカウントへの展開は未定
企業利用を見据える場合、Googleエコシステム内でのデータ活用による利便性と、特定ベンダーへの依存やデータガバナンスのリスク評価が重要な検討点となる

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
2026年1月、GoogleはGeminiに対してGmailやGoogleフォトなどの情報を安全に接続し、個人の文脈を理解した回答を可能にする「Geminiパーソナルインテリジェンス」を発表しました。
これは、単なる検索や生成AIの枠を超え、ユーザー自身の履歴データに基づいた高度なパーソナルアシスタント機能を実現するものです。
本記事では、Connected Appsによる連携の仕組みや、モデル学習へのデータ利用方針を含むプライバシー設計、そして現時点での提供範囲と将来的な企業利用の可能性について、最新情報を基に解説します。
Geminiパーソナルインテリジェンスとは?
Geminiパーソナルインテリジェンス(Personal Intelligence)は、Googleが2026年1月に発表した新機能で、GmailやGoogleフォトなどのGoogleアプリにある自分の情報をGeminiに安全に結びつける仕組みです。
ユーザーが有効化すると、Gmail・Googleフォト・YouTube・検索履歴など、Googleアカウントに紐づくデータを横断的に参照しながら、より文脈に即した回答や提案を行います。

参考:Google
たとえば、車のタイヤサイズやナンバープレート番号のように「一度メールや写真で記録したが、すぐには思い出せない情報」を尋ねた際に、GeminiがGmailやフォトから該当情報を探し出し、その場で回答してくれます。
さらに、家族旅行の写真や過去の予約メールを踏まえて、旅行先やアクティビティの提案を行うといった、個々人の履歴に基づくレコメンドも可能になります。
Geminiパーソナルインテリジェンスの仕組みと連携範囲
このセクションでは、どのアプリと連携できるのか、どのような情報がどのレイヤーで利用されるのか、といった技術的な全体像を整理します。
連携できるGoogleアプリ(Connected Apps)の範囲

Geminiパーソナルインテリジェンスは、現時点では、公式に案内されている「Connected Apps」のうち代表例として次のようなGoogleアプリと連携できます(接続候補や対応範囲はアップデートされる可能性があります)。
- Gmail(メール本文・件名・差出人情報など)
- Googleフォト(写真・動画と日付・位置などのメタデータ)
- YouTube(視聴履歴や登録チャンネルなど)
- 検索(Google検索の履歴や関連アクティビティ)
いずれも、ユーザーがPersonal IntelligenceをオンにしたうえでConnected Appsとして明示的に接続した範囲のみが対象になります。
後述するように、どのアプリを接続するかは一つずつ選択・解除が可能で、「Gmailだけ」「Gmail+フォトだけ」といった粒度で制御できます。
Connected Appsと個人データ参照のイメージ

参考:Google
Connected Appsを有効にした状態でGeminiに質問すると、次のような流れで応答を生成します。
- ユーザーのプロンプト(質問)を解釈する。
- 必要に応じて、GmailやGoogleフォトなどConnected Appsの情報を検索・取得し、該当するメール・写真・動画などを参照する。
- 参照した情報をLLMが読解し、世界知識と組み合わせて回答を生成する。
- 回答の中で、どのメール・写真・動画を参照したのかを、なるべく明示する。
このように、Personal IntelligenceはLLM単体の機能ではなく、「Gemini」と「Googleアプリ」の間に入るパーソナルデータ連携レイヤーと捉えると分かりやすいです。
一般的なチャットLLMとの違い

通常のチャット型LLMでも、ある程度の「継続的な文脈」は保持できますが、その多くはセッション内の会話履歴や、別途アップロードしたファイルに限定されます。
Geminiパーソナルインテリジェンスは、これに加えて次のような特徴があります。
- 長期間にわたるデータ(過去のメールや写真など)をまたいで推論できる。
- 異なるメディア形式(テキスト・画像・動画)を横断して関連付ける。
- 「タイヤサイズ」「旅行の好み」「よく一緒に写っている家族」など、ユーザー固有のパターンを踏まえて提案ができる。
結果として、「インターネット上の一般情報を答えるアシスタント」から一歩進み、ユーザーごとの“生活や仕事の履歴”を前提に動くコンテキストエージェントに近づいていると言えます。
Geminiパーソナルインテリジェンスを使えるプラン

Personal Intelligenceは、2026年1月時点では米国のGoogle AI Pro / AI Ultra契約者向けベータ機能として提供されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象プラン | Google AI Pro Google AI Ultra |
| 対象アカウント | 個人のGoogleアカウント (Google Oneベース) |
| 対応クライアント | Gemini Web Android版Geminiアプリ iOS版Geminiアプリ |
いずれのプランでも、Geminiのモデルピッカー上にある複数のモデル(例:高度なGemini 3 Proなど)と組み合わせてPersonal Intelligenceを利用できます。
今後のロールアウト計画
Personal Intelligenceは、2026年1月時点では米国のみでロールアウトが始まっており、今後数週間かけて対象ユーザーに順次展開されます。
その後、より多くの国・地域および無料プランにも拡大していく方針が示されています。
また、Geminiチャットだけでなく、今後は**「検索のAIモード(AI Mode in Search)」にもPersonal Intelligenceが組み込まれる予定**であり、検索体験全体と連動したパーソナライズが進んでいく見通しです。
【法人向け】Workspaceアカウントの注意点
現時点での重要な前提として、Personal IntelligenceのベータはWorkspaceのbusiness / enterprise / educationアカウントには提供されていません。
【対象外のプラン例】
- Google Workspace Business
- Google Workspace Enterprise
- 教育機関向けWorkspace(Education)
ここでいう「対象外」は、Workspace契約の組織管理アカウント(企業/学校管理下のアカウント)でPersonal Intelligenceベータが提供されていない、という意味です。
Connected Appsの説明上「Workspace系アプリ(Gmail/Driveなど)」というカテゴリ表現が出てくる場合がありますが、契約形態(個人/組織)としてのWorkspaceと、アプリ群の分類は混同しないように整理してください。
Geminiパーソナルインテリジェンスの使い方
Personal Intelligenceの有効化は、あくまでユーザーが明示的にオンにした場合のみ行われます。
設定手順は次のとおりです(UIはプラットフォームにより多少異なります)。
- Geminiアプリ(Web / Android / iOS)を開く。
- 設定(Settings)を開き、「Personal Intelligence」を選択する。
- 「Connected Apps」をタップし、Gmail・フォトなど、連携したいアプリをオンにする。
- 必要に応じて、アプリごとの許可内容(例:メール本文の参照可否)を確認する。
設定後は、いつでも同じ画面からアプリの接続を解除したり、Personal Intelligence自体をオフにしたりできます。
Geminiパーソナルインテリジェンスのユースケース

続いて、Personal Intelligenceが力を発揮しやすい具体的なユースケースを整理します。ここでは個人利用に加え、将来の法人利用を見据えた観点も含めます。
予定・旅行プランニング(タイヤショップ/旅行計画の事例)
Google公式ブログでは、実際の利用例として「ミニバンのタイヤ交換」と「家族旅行の計画」が紹介されています。
タイヤショップの順番待ち中に、Gmailやフォトから次のような情報を引き出してもらうことが可能です。
- 車のタイヤサイズ
- ナンバープレート番号
- 車種のグレード
また、過去の家族旅行の写真・メールをもとに、次のような提案を受けることもできます。
- 似た嗜好の旅行先
- 混雑が少ない日程
- 家族向けアクティビティ(例:ボードゲーム)
法人であれば、「過去の出張メールやカレンダー情報をもとに、次のカンファレンスの旅程案を作る」といった使い方に発展させることができます。
購入検討・意思決定支援
Personal Intelligenceは、購買履歴や視聴履歴などを踏まえたレコメンドにも活用できます。
Gmailに届いた注文履歴やレシートメールをもとに、以下のような商品を提案させることが可能です。
- 最近買った商品と相性の良い周辺機器
- 同じカテゴリでの買い替え候補
また、YouTubeの視聴履歴を前提に、次のようなコンテンツリストを作らせることもできます。
- これまで見てきた技術系・ビジネス系コンテンツに近い新しい動画
- 学習計画として最適な再生リスト
ここでも重要なのは、「何を基準にレコメンドしているか」を説明させることです。Geminiは参照した情報源を回答内で説明しようとする設計になっており、レコメンドの透明性向上につながります。
「思い出し」タスク(メール・写真・履歴からの情報掘り起こし)
ビジネスの現場では、次のような「思い出し」タスクが頻繁に発生します。
- あの見積書の最新版はどれか
- 直近3年分の特定ベンダーからの請求金額の合計
- 前回のセミナーで使った資料のリンク
Personal Intelligenceを利用すると、これらの情報を**「どのアプリに保存したか」を意識せずに呼び出せる**可能性があります。たとえば、次のような問い合わせが考えられます。
- 「A社との最新の契約書PDFと、その直前のドラフト版を探して差分を教えて」
- 「2023〜2025年の間にB社から届いた請求メールの総額をまとめて」
このように問い合わせることで、Gmailやドライブ内の情報をGemini側で整理し直し、要約や集計結果を提示させることができます(Workspace連携や権限制御の設計次第、という前提つきではあります)。
日常の情報整理・ライフログ活用
Personal Intelligenceは、ユーザーの日々の行動ログを踏まえた情報整理の支援にも活用できます。
- 1か月分の旅行・イベント写真を要約し、「今月のハイライト」を文章でまとめてもらう。
- 過去半年分のGmailラベル「ToDo」付きメールを整理し、未処理タスクの一覧を作る。
- 家族や友人とのイベント(誕生日・集まりなど)を書き出して、今後の予定検討に活かす。
こうしたユースケースは、個人利用だけでなく、経営者やマネージャーの業務ログ整理(週次・月次ふりかえりなど)にも応用しやすい領域です。
Geminiパーソナルインテリジェンスのプライバシー・セキュリティ

ここからは、利用にあたって懸念されやすいプライバシーやセキュリティのポイントを整理します。
オプトイン設計と接続範囲のコントロール
前述の通り、Personal Intelligenceはデフォルトでオフになっており、ユーザーが設定画面から明示的にオンにする必要があります。
- 有効化しない限り、GeminiがGmailやフォトの内容を見ることはない。
- 有効化後も、接続するアプリを1つずつ選択できる。
- 設定画面から、アプリ単位で接続解除・機能全体のオフが可能。
これは、既存のGoogleサービスにあるデータを外部ベンダーに再委託することなく活用できるという、Personal Intelligenceの構想とも整合しています。
データ利用方針と学習への反映範囲
Googleは、Personal Intelligenceにおけるデータ利用について、概ね次のように整理しています。
まず、コンテンツの直接学習については否定されています。
- ユーザーの質問に答えるために参照される
。 - ただし、受信箱やフォトライブラリの内容そのものをモデル学習に「直接」取り込むわけではない。
一方で、モデル改善や品質向上の観点では、限定的な利用の可能性が示されています。
- Gemini側のアクティビティ設定(例:Gemini Apps Activity)の状態などに応じて判断される。
- プロンプト・応答、そして回答生成のために参照された情報の要約・抜粋・抽出結果等が、個人情報の保護措置(フィルタリングや難読化など)を前提に利用され得る。
公式ブログでは、ミニバンのナンバープレートの例を引き合いに出し、「モデルは『ナンバープレートの番号』そのものを学習するのではなく、ナンバープレート番号を聞かれたら、写真からそれを探すというタスクを学習する」という説明がなされています。
ガードレールと「過度なパーソナライズ」への対処
Geminiには、健康ケアなどのセンシティブな分野については積極的に推論を行わないガードレールが設けられています。
一方で、写真やメールの傾向から生活スタイルや趣味を推定する過程で、ユーザーの意図と異なる解釈が行われる可能性もあります。
- 例:ゴルフ場の写真が多い → 「ゴルフが好き」と判断して関連コンテンツを勧めてしまう。
このような「過度なパーソナライズ」が起きた場合は、次のようなフィードバックを行うことで今後の推論を調整できます。
- thumbs down(低評価)を付ける
- チャット内で「ゴルフは好きではなく、息子の付き添いで行っているだけ」などと訂正する
一時チャット・非パーソナライズの利用・履歴削除
Personal Intelligenceを使いながらも、場面によっては「パーソナル情報を使ってほしくない」ケースもあります。そのために、Googleは次のようなオプションを提供しています。
- 一時チャット(temporary chats)
- Personal Intelligenceを無効化した状態で一時的に会話を行うモード。
- Personal Intelligenceを無効化した状態で一時的に会話を行うモード。
- 非パーソナライズでの再生成
- ある回答について、「パーソナル情報なしで再生成してほしい」と指定できる。
- ある回答について、「パーソナル情報なしで再生成してほしい」と指定できる。
- Geminiのアクティビティ削除
- Gemini Apps Activityから、特定チャットや全履歴を削除できる。
他社AIの「メモリ機能」との比較
最後に、他社の「メモリ機能」や「接続アプリ連携」との比較軸を整理します。
ChatGPT・Claudeなどのメモリ機能との違い
OpenAIのChatGPTやAnthropicのClaudeも、過去の会話内容を記憶するメモリ機能を提供しています。
-
ChatGPTのメモリ:
ユーザーが共有した事実(名前・好み・プロジェクト情報など)を継続的に覚え、今後の会話で活用。
-
Claudeのメモリ
プロジェクト単位のメモリ空間(Projects)を持つ運用に加え、チャット履歴を要約して活用する仕組みもあり、ユーザーがオン/オフや編集を制御可能。
これらは主に「チャットの中で明示された情報」を記憶する仕組みであり、メールや写真といった既存アプリの内容を直接参照するには、別途プラグインや接続サービス(Zapier等)を組み合わせる必要があります。
一方、Geminiパーソナルインテリジェンスは、すでにGoogleアカウントに保存されているGmail・フォト・検索履歴などを直接参照できる点が大きな違いです。
これは、「プラットフォーム内のファーストパーティデータを前提に最適化された個人化」と位置付けられます。
将来のWorkspace連携を見据えた設計のヒント
現時点ではWorkspace向けにPersonal Intelligenceが解放されていないため、具体的な設計はまだ描きづらい状況です。ただし、将来の展開を見越して、次のような準備は進めておく価値があります。
- メール・ドキュメントのラベリングや整理方針を見直し、後からAIが参照しやすい構造にしておく。
- 個人情報や機微情報を含むメール・ファイルの取り扱いポリシーを明文化しておく。
- 他のAIアシスタント(ChatGPT / Claude / TeamsのCopilot等)とPersonal Intelligenceの役割分担を、粗いレベルで検討しておく。
これにより、Personal IntelligenceのWorkspace連携が始まった際にも、短期間でPoCを回しやすくなります。
まとめ
Geminiパーソナルインテリジェンスは、従来の「検索+チャット型LLM」に、Gmailやフォトといった個人のライフログを結びつける新しいレイヤーです。
- Gmail・Googleフォト・YouTube・検索履歴などをConnected Appsとして連携し、個人の履歴に基づく回答・提案を可能にする。
- 利用は完全オプトインであり、接続アプリはユーザー単位で選択・解除できる。
- 受信箱やフォトライブラリのコンテンツそのものをモデル学習に「直接」取り込むわけではない、という趣旨の説明が示されている一方で、アクティビティ設定等に応じて要約・抜粋・抽出結果などが限定的に改善目的で利用され得る、という整理も示されている。
- 2026年1月時点では米国のGoogle AI Pro / AI Ultra個人ユーザー向けベータであり、法人向けWorkspaceへの展開は今後のアナウンス待ち。
企業の立場から見ると、Personal Intelligenceは「Googleエコシステム内のファーストパーティデータを最大限に活かすパーソナルAI」という位置づけになります。一方で、特定ベンダーへの依存度や、センシティブ情報を含む社内データの扱いなど、慎重な検討が必要な論点も多く含んでいます。
現時点では、
- 個人の開発者・情報システム担当者が、自身のGoogleアカウントで挙動を理解する
- 組織としては、メール・ドキュメントの整理方針やAI利用ポリシーを先に整備しておく
といった**「先回りした準備」**が現実的な一歩と言えるでしょう。Personal Intelligenceの正式なグローバル展開やWorkspace対応が始まった際に、迅速にPoCと評価が行えるよう、今から前提条件を整えておくことが重要です。





