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Azure Peering Serviceとは?機能概要や利用手順、活用事例を解説

この記事のポイント

  • Microsoft 365やTeamsの接続品質改善にはAzure Peering Serviceを第一候補にすべき。Azure側リソース登録は完全無料
  • ExpressRouteの月額$55〜$8,500が不要なため、SaaS接続最適化だけが目的なら圧倒的にコスト効率が高い
  • 日本国内ではColt・IIJ・NTT Communications・TOKAI-NETWORKの4社が東京・大阪で対応しており導入しやすい
  • 暗号化は提供されないため、機密性の高い通信にはExpressRouteやVPN Gatewayとの併用が必須
  • IaaS/PaaSへのプライベート接続にはExpressRoute、SaaSアクセス最適化にはPeering Serviceと明確に使い分けるべき
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

Microsoft Azureが提供するAzure Peering Serviceは、公共のインターネット環境を利用しつつも、高い信頼性と優れたパフォーマンスを実現するネットワークサービスです。

本記事では、AzureのPeering Serviceについて、2026年の最新動向を踏まえた機能解説から導入手順、ExpressRouteやAWS Direct Connectとの比較まで包括的に解説します。

Microsoft 365やDynamics 365などSaaSアプリケーションへのインターネット接続品質を向上させたい企業に向けた実践ガイドです。

Azure Peering Serviceとは(2026最新ガイド)

Azure Peering Serviceは、Microsoftが提携するISP(インターネットサービスプロバイダー)やIXP(インターネットエクスチェンジ)を経由して、パブリックインターネット上でのMicrosoftクラウドサービスへの接続品質を最適化するネットワークサービスです。コールドポテトルーティングと呼ばれる手法により、トラフィックをMicrosoftのグローバルバックボーンネットワーク上にできる限り長く留めることで、遅延の低減とルーティングの安定性を実現しています。

Azure Peering ServiceはExpressRouteのような専用プライベート回線ではなく、パブリックインターネットを活用する点が特徴です。Microsoft 365、Dynamics 365、TeamsなどのSaaSアプリケーションへのアクセスを最適化する用途に特化しており、Azure側のリソース登録は無料で利用できます。マルチクラウドネットワーキング市場は$60.2億(2025年)から$169.5億(2030年)へとCAGR 26.4%で成長すると予測されており、クラウド接続の品質最適化への需要は急速に拡大しています。

以下の表で、Azure Peering Serviceの基本情報を整理しました。

項目 内容
サービス名 Azure Peering Service
提供元 Microsoft Azure
サービス形態 ISP/IXP連携によるパブリックインターネット接続品質最適化サービス
対象サービス Microsoft 365、Dynamics 365、Azure SaaS全般
ルーティング方式 コールドポテトルーティング(Microsoft Edge PoP経由)
Azure側料金 無料(PeerAsn、Peeringリソースは常時無料)
市場規模 マルチクラウドネットワーキング市場 $60.2億→$169.5億(CAGR 26.4%)

Azure Peering Serviceの最大の特徴は、Azure側のリソース利用料が無料である点です。企業が負担するのはISP/IXPパートナーへの接続費用のみであり、ExpressRouteと比較して大幅にコストを抑えたクラウド接続の最適化が可能です。ただし、暗号化は提供されないため、機密性の高い通信にはVPN GatewayやExpressRouteとの併用が必要になります。

Azure Peering ServiceイメージAzure Peering Serviceイメージ(参考:Microsoft Learn

Azure Peering Service仕組みイメージ図Azure Peering Service仕組みイメージ図(参考:Microsoft Learn

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Dataverse統合とパートナーエコシステム拡大が変えるAzure Peering Serviceの2026年動向

2026年のAzure Peering Serviceにおける注目すべき動きは、Dataverse統合とパートナーエコシステムの拡大です。Azure Peering Service for Dataverseにより、Dynamics 365やPower Platformへの接続最適化が新たにサポートされ、SaaSアプリケーションの対象範囲が広がりました。ドキュメント群は2026年2月25日に一斉更新されており、Microsoftが継続的にサービスへ投資していることが確認できます。

パートナーエコシステムは全大陸にわたる30社以上のISP/IXPに拡大しています。日本市場では東京・大阪の両拠点でColt、IIJ、NTT Communications、TOKAI-NETWORKが対応パートナーとして利用可能です。加えてBBIXやNECもアジア太平洋地域のパートナーに含まれており、国内企業にとっても導入の選択肢が充実しています。

関連するAzureネットワーキングの変更として、ExpressRoute Public Peeringが2024年3月31日に廃止されMicrosoft Peeringへの移行が完了しています。また、Basic SKU パブリックIPアドレスが2025年9月30日に廃止、レガシーVPN Gateway SKUが2026年9月16日に廃止予定となっており、ネットワーク構成の見直しを進める企業にとって、Peering Serviceの位置づけを再評価する好機です。

Azure Peering Serviceの主要機能と導入の実践

Azure Peering Serviceの機能は、ルーティング最適化、テレメトリ監視、冗長性確保の3つの柱で構成されています。以下の表で主要機能を整理しました。

機能 カテゴリ 概要
コールドポテトルーティング ルーティング SDNベースの経路選択で最寄りのMicrosoft Edge PoPへ最短パスでトラフィックを転送
BGPルート監視 テレメトリ BGPコミュニティ8075:8007によるルート異常(リーク・ハイジャック)の自動検出
プレフィックスレイテンシ測定 テレメトリ 登録プレフィックスの中央値レイテンシを6時間〜30日間で可視化
プレフィックスイベント追跡 テレメトリ アナウンス・ウィズドロー・バックアップルート・AS変更など8種類のイベントを記録
ローカル冗長性 冗長性 各ピアリングロケーションで複数ルーターによるフェイルオーバーを実装
地理的冗長性 冗長性 プライマリEdgeノード障害時に代替サイト経由でトラフィックを自動再ルーティング

この表で注目すべきは、テレメトリ機能の充実度です。BGPルートの異常検出からプレフィックスレベルのレイテンシ測定まで、ネットワーク品質の可視化機能が無料で利用できる点は、Azure Monitorと併せて活用することで、SaaS接続品質の継続的な改善サイクルを構築できます。

コールドポテトルーティングは、通常のインターネットルーティング(ホットポテト)とは逆に、トラフィックをMicrosoftのネットワーク内にできる限り長く留める方式です。これにより、ユーザーからMicrosoftのEdge PoPまで通常1 ASホップで到達でき、パブリックインターネットの混雑やルーティング変動の影響を最小限に抑えます。仮想ネットワーク間のVNetピアリングがAzure内部のプライベート通信を最適化するのに対し、Peering Serviceはパブリックインターネット経由のSaaS接続を最適化する補完的なサービスです。

パートナー選定からAzureポータル設定までのステップバイステップガイド

Azure Peering Serviceの導入は、パートナー選定、パートナーとの連携、Azureポータルでの設定の3ステップで完了します。

ステップ1として、Azure Peering Serviceに対応するISP/IXPパートナーを選定します。日本では東京・大阪でColt、IIJ、NTT Communications、TOKAI-NETWORKが利用可能です。対応パートナーの最新リストはMicrosoft Learnで確認できます。ステップ2として、選定したパートナーに連絡し、Peering Serviceの利用契約を締結します。パートナーからプレフィックスキーが提供されるため、これを取得しておきます。

ステップ3として、Azureポータルで接続を設定します。前提条件として、Azureアカウントとサブスクリプションが必要です。ポータルの検索ボックスでPeering Serviceを検索し、選択します。

Peering Serviceの選択
Peering Serviceの選択

Peering Service画面で「+ 作成」をクリックします。

作成ボタン
作成ボタン

サブスクリプション、リソースグループ、接続名などの基本情報を入力します。

各種設定
各種設定

構成の設定画面で、場所、プロバイダー、プライマリおよびバックアップの相互接続の場所を指定し、パートナーから取得したプレフィックスキーを入力します。設定内容を確認して「作成」をクリックすれば、接続の確立は完了です。

構成の設定画面
構成の設定画面

接続作成後は、Azureポータルのテレメトリ画面でプレフィックスレイテンシやBGPイベントの監視が可能になります。Azure Network Watcherと併用することで、ネットワーク全体の可視性をさらに高めることができます。

料金体系と競合サービス比較

Azure Peering Serviceの最大の特徴は、Azure側のリソース利用料が完全無料である点です。以下の表で、Azure Peering ServiceとExpressRouteの料金体系を比較しました。2026年3月時点のJapan East(東日本)リージョンの参考価格です。

項目 Azure Peering Service Azure ExpressRoute(Standard)
Azureリソース登録 無料 ポート月額課金
50 Mbps接続 ISP費用のみ 約$55/月
1 Gbps接続 ISP費用のみ 約$436/月
10 Gbps接続(Direct) ISP費用のみ 約$6,000〜$8,500/月
送信データ転送 ISP標準料金 $0.05/GB(従量制プラン)
テレメトリ・監視 無料 Azure Monitor連携(別途課金)

この料金比較から明確なのは、Azure Peering Serviceが低コストでSaaS接続品質を向上させたい企業に適している点です。ExpressRouteはプライベート接続によるセキュリティと低遅延を保証しますが、月額数百ドルから数千ドルのポート費用が発生します。Azureの料金体系を踏まえると、SaaSアクセスの品質改善だけが目的であればPeering Serviceが最もコスト効率の高い選択肢です。

ExpressRoute・AWS Direct Connect・GCP Cloud Interconnectとの4サービス比較と選定基準

クラウド接続サービスの選定では、接続形態、対象ワークロード、コスト構造を総合的に評価する必要があります。Azure Load BalancerApplication Gatewayといったネットワークサービスとの連携も含めた比較が重要です。以下の表で、主要4サービスの特性を整理しました。

項目 Azure Peering Service Azure ExpressRoute AWS Direct Connect GCP Dedicated Interconnect
接続形態 パブリックインターネット(最適化) 専用プライベート回線 専用プライベート回線 専用プライベート回線
帯域幅 ISP依存 50 Mbps〜100 Gbps 1 Gbps/10 Gbps 10 Gbps/100 Gbps
Azure/クラウド側料金 無料 ポート月額$55〜$8,500+ ポート時間$0.285/hr(日本) アタッチメント課金
SLA ISPパートナー依存 99.95%(2回線構成) 99.99%(冗長構成) 99.99%(2接続構成)
暗号化 なし オプション(MACsec) オプション(MACsec) オプション
対象ワークロード Microsoft 365/Dynamics 365/SaaS Azure IaaS/PaaS全般 AWSワークロード全般 GCPワークロード全般
推奨シナリオ SaaS接続品質の低コスト改善 プライベート接続が必須の基幹業務 AWS中心のハイブリッド環境 GCP中心のハイブリッド環境

この比較から分かるのは、Azure Peering ServiceはSaaS接続の品質改善に特化した唯一のパブリックインターネットベースのサービスである点です。他の3サービスはすべて専用プライベート回線を提供しますが、月額コストがかかります。Microsoft 365やTeamsの接続品質を改善したいが、ExpressRouteほどのコストは不要という企業にとって、Peering Serviceは費用対効果の高い選択肢です。

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導入注意点と活用ガイド

Azure Peering Serviceを導入する際には、サービスの特性に起因するいくつかの制約を理解しておく必要があります。以下の表で、主要な注意点を整理しました。

注意点 詳細
ISPパートナーの地域制限 対応ISP/IXPは全リージョンをカバーしていない。利用地域のパートナー有無を事前に確認すること
暗号化非対応 Peering Serviceはインターネット経由の接続最適化サービスであり暗号化は提供しない。セキュリティ要件に応じてVPN GatewayやExpressRouteを併用すること
SaaS特化の効果範囲 Microsoft 365やDynamics 365向けに最適化されており、Azure IaaS/PaaSへのプライベートアクセスには適さない
BGP ASパス制限 ASパス長は最大3ホップ。プライベートASNやASプリペンディングは使用不可
Azure Entra IDの権限設定 Peering Serviceリソースの作成・管理にはネットワーク共同作成者ロールまたはカスタムRBACロールが必要

特に注意が必要なのは、暗号化非対応とSaaS特化の2点です。Peering Serviceはインターネット経由の接続品質を向上させるサービスであり、通信の暗号化やプライベート接続の提供は行いません。金融や医療など規制産業でのデータ通信については、ExpressRouteの利用を検討するか、アプリケーション層での暗号化(TLS等)を確保した上でPeering Serviceを活用する判断が必要です。

段階的導入ステップとFAQ

Azure Peering Serviceの導入は、以下の3ステップで段階的に進めることを推奨します。

  • ステップ1 ISPパートナー選定とPoC接続の実施(1〜2週間)
    利用拠点でのISP/IXPパートナーの対応状況を確認し、テスト接続を実施します。プレフィックスキーを取得し、Azureポータルでの接続登録まで完了させます。

  • ステップ2 テレメトリ確認とパフォーマンスベースライン策定(1〜2週間)
    Azureポータルのテレメトリ画面でプレフィックスレイテンシとBGPイベントを確認し、導入前後のパフォーマンス差を計測します。Azure DevOpsのダッシュボードにネットワーク品質メトリクスを統合し、継続的なモニタリング体制を構築します。

  • ステップ3 本番トラフィック移行と継続的監視体制の構築(1〜2か月)
    PoC結果を基にISPとの本番契約を締結し、SaaSトラフィックの本格的な移行を実施します。ファイアウォールルールやNSGの設定と合わせて、ルーティングの最適化状況を定期的にレビューする運用フローを確立します。

以下は、Azure Peering Serviceの導入を検討する際によくある質問とその回答です。

  • Azure Peering Serviceの利用にAzure側の費用はかかるか
    Azureリソースの登録・テレメトリの利用は完全無料です。PeerAsnとPeeringは常時無料のAzureリソースとして分類されています。企業が負担するのは、ISP/IXPパートナーへの接続サービス費用のみです。

  • ExpressRouteとPeering Serviceはどちらを選ぶべきか
    IaaS/PaaSへのプライベート接続が必要な場合はExpressRoute、SaaSアプリケーションの接続品質改善がメインの目的であればPeering Serviceが適しています。両サービスは併用も可能で、基幹業務はExpressRoute、SaaSアクセスはPeering Serviceという使い分けが一般的です。

  • Internet Routing Preferenceと併用できるか
    併用はできません。Internet Routing Preferenceはトラフィックをインターネット経由で転送する機能であり、Peering ServiceのコールドポテトルーティングとはSaaSアクセスの方針が異なるため、同時に使用することはできません。

  • 日本国内で利用できるISPパートナーはどこか
    東京・大阪の両拠点でColt、IIJ、NTT Communications、TOKAI-NETWORKが対応しています。アジア太平洋地域ではBBIXやNECも追加パートナーとして利用可能です。

  • 仮想マシンやAzure SQLなどIaaS/PaaSへの接続にも効果があるか
    Peering ServiceはMicrosoft SaaSアプリケーションへのパブリックインターネット接続の最適化に特化しています。Azure SQL DatabaseやAzure Storageへのプライベートアクセスが必要な場合は、ExpressRouteまたはVPN Gatewayの利用を検討してください。

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まとめ

本記事では、Azure Peering Serviceの2026年最新動向、主要機能、導入手順、料金体系、競合サービスとの比較について解説しました。

Azure Peering Serviceは、ISP/IXPパートナーとの連携によるコールドポテトルーティングで、パブリックインターネット上でのMicrosoft SaaS接続品質を低コストで最適化するサービスです。Azure側のリソース登録が無料である点は、ExpressRouteの月額$55〜$8,500以上と比較して大きなコスト優位性を持ちます。2026年現在、Dataverse統合により対象アプリケーションが拡大し、日本国内でもColt、IIJ、NTT Communications、TOKAI-NETWORKの4社が東京・大阪で対応しています。

まずはステップ1のISPパートナー選定とPoC接続から着手し、テレメトリによるパフォーマンス計測を経て、SaaSトラフィックの段階的な移行を進めることを推奨します。

監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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