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AIと社会の未来を形作る:Anthropicが提案する長期的利益信託基金とは?

この記事のポイント

  • この記事は、AI技術の進展に伴い提案された「長期的利益信託基金」(LTBT)について詳述しています。
  • LTBTは、企業の公益目的と財政的な利益のバランスを取る新しい企業ガバナンスの形です。
  • 独立した信託者により構成されるLTBTは、企業の長期的な意思決定に焦点を当て、社会的な外部性への対応を目的としています。
  • AnthropicはLTBTを導入することで、AIの社会的影響を考慮した企業運営を目指しており、その長期的な企業ガバナンスの実験的な試みです。

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

AIの進化と社会への影響が注目される中、革新的な企業ガバナンスモデルとして「長期的利益信託基金」(LTBT)が提案されました。本記事では、AI専門企業Anthropicが打ち立てたLTBTについて掘り下げて解説していきます。社会的な外部性に積極的に対応し、公益目的と企業の財政相の利益のバランスをとるこの新しいガバナンス構造は、企業の長期的な決定に焦点を当て、独立した信託者による監督を特徴としています。Anthropicの試みが今後どのように社会に影響を及ぼすのか、LTBTの意義と将来性に迫ります。

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革新的な企業ガバナンス「LTBT」とは

2023年9月19日に発表された「長期的利益信託基金」(LTBT)は、企業ガバナンスにおける新しい試みです。これは、特に変革的AIの開発で見られるような、社会に大きな影響を与えうる技術の進展における固有の課題や長期的な機会に対処するためのガバナンス構造の一種です。LTBTは、財政的な利害関係がない独立したメンバー5人で構成され、時間が経つにつれて(最終的には取締役会の過半数に)増加する予定です。LTBTは、企業が先進的なAIを開発し維持するという使命に合わせて企業ガバナンスを調整する手助けをすることを目的としています。

LTBTの目的と機能

LTBTは、企業が社会的に有益な結果をもたらすためには、非市場の外部性に対応しなければならないという考えに基づいています。外部性とは、ある取引が第三者にコストや利益を課す市場の失敗の一種を指します。AI技術のように外部性が大きい場合、企業ガバナンスのデフォルト設定では、契約していない第三者の利益を期待することはできません。これが、Anthropicがガバナンスを微調整することに投資した理由です。LTBTは、企業の日常的な決定に介入することは期待されておらず、主に長期的な問題に焦点を当てることが意図されています。

LTBTの構造と取締役会への影響

LTBTは、AI安全性、国家安全保障、公共政策、社会企業などの分野で専門知識を持つ5人の独立した信託者からなり、Anthropicが株主の財政的利益と公益目的を適切にバランスさせることを保証する権力を有しています。これは、信託基金が財政的利益に影響されず、一般市民の利益を考慮してAnthropicの取締役を選出し解任する権限を持つ新しい株式クラス(クラスT)を作成することによって実現されます。クラスT株は、企業の大幅な変更がある場合に信託基金に通知を行う「保護規定」も含まれています。

LTBT実施の意義と将来性

LTBTの設立により、Anthropicには異なる種類の株主が存在することになり、取締役会は信託基金と株主双方に説明責任を持ちます。これにより、取締役会は公益と株主の利益のバランスを取るインセンティブを与えられると期待されます。LTBTの「導入」は段階的であり、実験的な構造を修正しやすくすると同時に、企業が成熟するにつれて社会に与える影響が増すことを考慮しています。これは一種の実験であり、その機能が実証されるまで模範として挙げる準備はできていませんが、その設計は最も優れた企業ガバナンスの専門家によって構築され、評価されています。

出典:https://www.anthropic.com/news/the-long-term-benefit-trust

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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