この記事のポイント
この記事は、東アジアにおけるAIを活用したサイバー脅威について解説しています。
中国がAI偽情報キャンペーンでアメリカの選挙に影響を及ぼそうとしていることが明らかになりました。
北朝鮮は、仮想通貨を狙ったサイバー攻撃にAI技術を使用し、大規模な盗難を実行しています。
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監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
東アジアにおけるサイバー脅威の最新動向に関する注目すべきレポートが発表されました。
中国は、米国の選挙に影響を与えるために偽ソーシャルメディアアカウントを使い、地政学的関心事を推進するインフルエンス・オペレーションを行っており、北朝鮮は AI 技術を取り入れたサイバー攻撃で著しい盗難を続けています。
これらの動向は国際社会にとって重要なセキュリティ上の懸念を引き起こしており、今後の情報戦やセキュリティ対策に大きな影響を与えることが予想されます。
中国の偽ソーシャルメディアアカウントによる米国選挙への影響試み
2024年4月4日、マイクロソフト脅威分析センターは、中国が偽のソーシャルメディアアカウントを用いて米国の有権者を分断しようとしていると発表しました。
これらのアカウントは地球温暖化や国境政策などの国内問題について投稿を行っており、アメリカの大統領選挙に影響を与えようとする意図があります。また、AI生成コンテンツの使用が増加しており、特定の情報や立場を支持する有権者人口統計についての情報を収集しているようです。
中国共産党系のSNSアカウントによるプロパガンダ
しかし、これらの試みが公衆の意見に大きな影響を与えている証拠はまだ少ないとされています。
中国のAIを用いた影響力キャンペーンの増加
中国は米国の事件を利用して、AI生成コンテンツを使用したインフルエンス・オペレーション(影響力作戦)を展開しています。
例えば、マウイ島の山火事やケンタッキー州の列車脱線事故に関するデマを流布することで、米国政府を非難しています。台湾の大統領選挙においても、中国はAI生成コンテンツを使用して選挙結果に影響を与えようとしました。
中国によるAIコンテンツを用いたプロパガンダ
このような活動は中国の地政学的目標を推進するために行われており、南太平洋諸島や南シナ海地域など特定の地域の影響力を高めようとしています。
北朝鮮のサイバー作戦の進化とAIの使用
北朝鮮は仮想通貨の盗難やソフトウェアサプライチェーン攻撃によって、自国の軍事目標と情報収集を資金調達しようとしています。
国際連合によると、2017年以降で30億ドル以上の仮想通貨が盗まれており、2023年だけで6億ドルから10億ドルの強盗が発生しています。また、北朝鮮はAI技術を取り入れた作戦を開始し、Emerald Sleetと呼ばれるグループがAIを用いてより効果的かつ効率的な攻撃を行っていると見られています。
北朝鮮のサイバー攻撃による被害内訳
AIと偽情報の今後の動向
AIと偽情報は今後も新たな戦場となり得ます。中国はAI生成コンテンツを用いて、米国の選挙結果に影響を与える目的でメームやビデオ、オーディオなどのコンテンツを作成し、広めようとするでしょう。
選挙結果に直接的な影響を与える可能性は低いかもしれませんが、中国はその手法を洗練させ、将来的にはより効果的な影響力作戦を行うかもしれません。北朝鮮も、自国の軍事プログラムの資金調達やサプライチェーン攻撃を行うために仮想通貨の盗難を続けると予想されます。
AIの進化により、これらの活動はさらに複雑かつ巧妙になり、新たなセキュリティ上の課題を生み出すでしょう。
出典:Microsoft