この記事のポイント
- この記事は、OpenAIが提供するAPIの新機能について紹介しています。
- APIのセキュリティ強化により、Private Linkや多要素認証(MFA)等が導入され、より安全な利用が可能となりました。
- 企業がAPIをより細かく制御・監視できる新しいプロジェクト機能が追加され、コスト管理にも新しいオプションが提供されています。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
AI技術の発展に伴い、企業のニーズに応えるべく新たなAPI機能が求められている中、OpenAIは企業向けにセキュリティの強化とコスト管理の改善を目指したAPIの新機能を導入しました。
本記事では、それらの機能に深く焦点を当て、エンタープライズグレードでありながらも使いやすさを重視したAPIサービスの詳細を解説していきます。
特に、Private Linkの導入、多要素認証(MFA)、HIPAA準拠などのセキュリティ機能の強化や、利便性を高める新しいプロジェクト管理機能、アシスタントAPIの柔軟性向上、そして費用効率も考慮したコスト管理オプションの提供により、あらゆる規模の企業が安全かつ効率的にAPIを利用できるようになります。
OpenAIが提供するエンタープライズグレードのAPI機能強化により、企業はAIをより身近なものとして活用できるようになることでしょう。
エンタープライズグレードのセキュリティ強化
OpenAIは、Private LinkとMFAの導入により、セキュリティとアクセス制御を大幅に強化しました。これにより、機密データを扱う企業でも安心してAPIを利用できるようになります。
また、HIPAAコンプライアンスのサポートにより、ヘルスケア業界でのAPI活用の可能性が広がります。
OpenAI APIのセキュリティ認証 (参考:OpenAI Security Portal)
【主な追加要素】
- Private Linkの導入により、AzureとOpenAI間の直接通信を確保
- 多要素認証(MFA)の導入により、アクセス制御要件へのコンプライアンスを確保
- 既存のセキュリティ機能に加え、SOC 2 Type II認証、シングルサインオン(SSO)、データの暗号化、ロールベースのアクセス制御を提供
- HIPAAコンプライアンスとデータ保持ゼロポリシーを必要とするヘルスケア企業向けのサポートを提供
管理制御の改善
新しいプロジェクト機能により、企業はOpenAIプロジェクトをより細かく制御・監視できるようになりました。これにより、APIの使用状況を把握しやすくなり、予期しない超過を防ぐことができます。
また、サービスアカウントのAPIキー作成機能は、チームでのAPI利用をスムーズにする上で役立ちます。
組織利用における一元管理機能
【主な追加要素】
- 新しいプロジェクト機能により、OpenAIプロジェクトのきめ細かい制御と監視が可能に
- ロールとAPIキーのスコープ設定、モデルの制限/許可、使用量ベースとレートベースの制限設定、サービスアカウントのAPIキー作成などの機能を提供
アシスタントAPIの改善
アシスタントAPIの改善点は、利便性と柔軟性の向上に重点が置かれています。特に、ファイル検索の拡張とストリーミングサポートは、開発者から強く要望されていた機能です。
また、トークン使用量の制御や特定のツールの選択など、きめ細かな設定が可能になったことで、APIの活用の幅が広がります。
AsssistantAPIにおけるファイル検索機能の強化
【主な追加要素】
- アシスタントごとに最大10,000個のファイルを取り込める「file_search」による検索の改善
- リアルタイムの会話応答のストリーミングサポート
- APIの新しい「vector_store」オブジェクトによるファイル管理の簡素化
- 実行ごとに使用されるトークンの最大数と使用される以前と最近のメッセージの制限を制御する機能
- 特定の実行で特定のツールを選択するための新しい「tool_choice」パラメータ
- APIで微調整されたGPT-3.5 Turboモデルのサポート
コスト管理のその他のオプション
OpenAIは、コスト管理の面でも利用者に配慮した施策を打ち出しています。
コミットされたスループットに対する割引と非同期ワークロードのコスト削減オプションは、APIの利用を検討する企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。
【主な追加要素】
- GPT-4またはGPT-4 Turboで一定レベルの使用量を維持しているお客様向けの、コミットされたスループットに対する割引(最大10~50%)
- 新しいバッチAPIを使用した非同期ワークロードのコスト削減オプション
OpenAIのエンタープライズグレードの機能追加は、AIの活用を検討する企業にとって朗報です。
セキュリティ、管理制御、コスト管理の面で大幅な改善が図られたことで、APIの導入障壁が下がり、AIの恩恵をより多くの企業が享受できるようになります。
また、先日日本法人の設立が発表された事もあり、日本の企業特有のニーズにも柔軟に対応して行くと考えられます。
今後も、OpenAIが企業のニーズに応えた機能強化を続けていくことを期待したいですね。
出典:OpenAI