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バイブコーディング(Vibe Coding)とは?定義からツール、導入方法まで徹底解説

この記事のポイント

  • バイブコーディングとは、AIに“ノリ”で指示して開発を進める新しいスタイル
  • GitHub Copilot Agent Modeの登場で企業活用も加速
  • CursorやComposer、Clineなどのツールと組み合わせて強化
  • 少人数でも大規模開発が可能になる一方、レビューや保守性に注意が必要
坂本 将磨

監修者プロフィール

坂本 将磨

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Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

AI技術の進化により、コードを「書く」のではなく「書かせる」開発スタイルが現実のものとなりつつあります。
特に近年注目されているのが、GitHub Copilot Agent Modeなどを活用した バイブコーディング(Vibe Coding) という新しい開発手法です。
本記事では、バイブコーディングの定義から始まり、代表的なツールや導入方法、活用事例、他のAIコーディング手法との違い、注意点やトラブル対処法までを網羅的に解説します。

バイブコーディングとは?

バイブコーディング(Vibe Coding)とは、AIに自然言語で指示を出すことでコード生成を行い、仕様よりも“ノリ”や直感を重視して開発を進める新しいスタイルのソフトウェア開発手法です。

この言葉は、OpenAI共同創設者であり元Tesla AI責任者のAndrej Karpathy氏によって2025年初頭に提唱されたもので、彼はこの開発スタイルを「コードを書くのではなく、AIに話しかけて書かせる」「雰囲気で進める開発」として紹介しました。Vibe Codingは、厳密な設計や仕様に基づくのではなく、対話と感覚でスピーディにプロトタイプを構築することを可能にします。

また、Karpathy氏の影響により、Vibe Codingは単なるユーモアやスラングとしてではなく、AI時代の新たな開発文化を象徴する言葉として注目されるようになりました。

Karpathy氏のX:

また、すでにO'Reilly Media, Inc.から「Vibe Coding: The Future of Software Development」という書籍の出版も決定しており、
今後より広く普及することが期待されています。

Vibe Coding: The Future of Software Development
Vibe Coding: The Future of Software Development


他のAIコーディング手法との違い

従来のAIコーディング支援ツール、たとえばGitHub Copilotなどは、主に関数の補完や短いスニペット生成を行う“補助型”の位置づけでした。開発者が明確な指示や文脈を与える必要があり、あくまで「タイピング支援」の域を出ていなかったと言えます。

一方、Vibe Codingでは、AIにより大きな開発責任を委ねるのが特徴です。ファイルを横断して文脈を理解し、設計意図を汲み取ってコード全体を構築する。これは、従来の“ツール”から、もはや“共同作業者”とも呼べるAIとの関係性を築くスタイルです。

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「Vibe」は英語で「雰囲気」「感じ」「空気感」などを意味します。Vibe Codingにおける“vibe”は、仕様書には書き切れない曖昧なニーズや、場の空気に近いニュアンスをAIと共有しながら形にしていくことを指します。

つまり、「◯◯のようなものを作ってほしい」「こういう雰囲気でまとめて」など、抽象的な要求を出発点にしながら、AIとの反復的な対話でアプリケーションを育てていく──それがVibe Codingの本質です。
:::

CopilotやAIペアプログラミングとの違い

バイブコーディングはAIを活用した開発スタイルのひとつですが、他にもGitHub Copilotを用いた補完型開発や、ChatGPTなどとの対話をベースとするペアプログラミング的な手法も存在します。これらの手法とバイブコーディングは、AIの役割や開発スタイル、求められるスキルが異なります。

特徴 バイブコーディング GitHub Copilot AIペアプログラミング(対話型)
主な役割 AIが実行主体・設計補完まで担う 開発者のタイピングを補助する 会話しながら設計・実装を相談できる
開発スタイル 直感と会話ベースで構築(“ノリ”で進める) 従来のエディタ中心の手動型 設計から実装まで対話しながら進める
指示方法 自然言語による仕様レベルの要望 コメントや関数定義の途中補完 質問と回答ベースで情報を深掘りしながら進める
主要ツール Cursor、Composer、Cline VS Code + GitHub Copilot ChatGPT、Gemini、Claudeなどの対話型AI
向いている業務 PoC開発/プロトタイプ/仕様不確定な案件 ルーチン開発/保守/既存コードの補完 複雑な設計検討/初学者支援/コード解説
難易度・学習コスト 中〜高(プロンプト設計や出力評価に習熟が必要) 低(補完してもらいながら学べる) 中(AIの説明を評価・調整できる力が必要)

バイブコーディングのメリット・デメリット

ここでは、バイブコーディングのメリットとデメリットを整理し、実際の開発現場での活用方法や注意点について考察します。

少人数でも100人規模の開発を実現できるメリット

バイブコーディング最大の魅力は、開発スピードと人的効率の劇的な向上にあります。AIがコード生成や構造理解を担うことで、開発者は仕様の抽出や意図の伝達といった“上流工程”に集中できるようになります。

たとえば、バイブコーディング的な手法により10人のチームで100人規模の開発成果を生み出すことができたと報告されています。これは、AIによる構造把握・実装補完・プロトタイピングの高速化によって、従来の開発ボトルネックを大幅に削減できた成果といえるでしょう。

特に以下のようなチームや場面で効果が発揮されます。

  • 開発リソースが限られるスタートアップ
  • 市場投入までの時間が短いPoC・MVP開発
  • 試行錯誤と反復が前提のプロトタイピング工程

品質・保守性の課題とレビューの重要性

一方で、AIが生成するコードは、常に高品質とは限りません。ロジックの抜け漏れ、冗長な処理、パフォーマンス上の非効率、エラー処理の不十分さなど、見えづらい不具合が混在する可能性があります。

また、AIは過去学習データに依存するため、最新技術への対応や独自業務要件への適応に難があるケースもあります。

このため、以下のような人間によるレビュー・品質保証工程が不可欠です。

  • プルリクエストによるコードレビュー
  • 自動テストによる機能確認(CIとの連携)
  • セキュリティや保守性の観点からの静的解析

バイブコーディングでは「AIが書いたコードを信頼しすぎない」姿勢と、「人が責任を持って最終判断する」運用体制の整備が求められます。

ドキュメント不足・属人化への注意

バイブコーディングは「ノリで作る」開発ゆえに、ドキュメントや設計書が軽視されやすい傾向があります。開発当人がいなくなった後に仕様が不明になったり、AIプロンプトの書き方が属人的になってしまったりといったリスクも無視できません。

特に注意すべきポイント:

  • AIによる構築手順や変更履歴の明文化が不十分になりやすい
  • プロンプトノウハウが開発者個人に閉じてしまう(属人化)
  • チーム内での共通理解が形成されにくい

これらの課題を回避するには、開発履歴の記録、指示プロンプトの共有、設計意図の可視化、wikiの自動生成といった仕組みをあらかじめ用意しておくことが効果的です。

GitHub Copilotとバイブコーディングの関係

GitHub Copilotは、OpenAIの大規模言語モデル(LLM)を活用したAIペアプログラマーです。Visual Studio Codeなどのエディタに統合することで、コードの補完、関数生成、コメントからのコード変換などをリアルタイムで提供します。

従来のCopilotは、あくまで開発者の入力をベースとした“補助型”のAIでした。たとえば「for文の雛形を補完する」「コメントから関数定義を作る」といった作業が主で、開発者が明示的に方向性を示す必要がありました。

【関連記事】
GitHub Copilotとは?使い方や料金、Agent機能について解説

Agent Modeの登場と“バイブコーディングの実現”

Agent Modeの登場
Agent Modeの登場

2025年に登場したGitHub Copilot Agent Modeは、この構造に大きな変化をもたらしました。Agent Modeでは、AIがエディタ上の複数ファイルのコンテキストを横断的に把握し、自然言語による指示だけでコード全体を変更・生成できるようになります。

たとえば以下のような操作が可能になります:

  • 「ユーザ登録機能を追加して」と伝えるだけで、必要なルーティング・バリデーション・データ保存処理を自動実装
  • 関連ファイルにまたがるリファクタリングや設計変更を自動で適用
  • ソースコードとドキュメントの整合性を保ちつつ、変更を提案・適用

これにより、開発者が設計の意図や要望を自然言語でAIに伝え、AIが全体を整合的に構築するというVibe Codingのスタイルが、GitHub Copilotでも本格的に実現可能となったのです。

【関連記事】
GitHub Copilot Agent Modeとは?主要機能や使い方、料金体系を徹底解説!

GitHub Copilot以外のツールとの違いと補完関係

GitHub Copilotは、開発者のニーズに広く対応できる汎用的なAI開発アシスタントですが、バイブコーディングを本格的に行うためには、他ツールとの併用や補完も重要になります。

Copilot+Cursor / Composer / Clineの組み合わせ

バイブコーディングを実践するには、AIとの自然な対話とコード生成を実現できる専用ツールの導入が重要です。特に注目されているのが、以下の組み合わせです:

  • GitHub Copilot(+ Agent Mode)
    基本的なコード補完や関数生成だけでなく、Agent Modeではプロジェクト全体を把握して大規模な改修やファイル間編集も可能です。

  • Cursor
    VS Codeベースのエディタで、AIアシスタントとのチャット、コード選択範囲に基づく生成指示、構造リファクタリングなどに強みがあります。Copilotとの併用も可能です。Cursor Composerで複数ファイルを横断して処理できる、AIによるコード構造の“オーケストレーション”機能です。Vibe Codingの中核ツールといえます。

  • Cline
    ターミナル操作を自然言語で実行できるCLIツール。開発・ビルド・git操作などをAIに任せ、手入力を減らすことで、開発体験がさらにシームレスになります。

これらのツールは、補助的に動作するのではなく、実行主体としてAIが構成やファイル編集まで担う点が従来の開発ツールと決定的に異なります。

vibe codingのはじめ方、環境構築に必要なもの

バイブコーディングを始めるためには、以下のような環境を整える必要があります。これらのツールは、AIとの対話を通じて開発を進めるために不可欠です。

項目 説明
AI対応エディタ Cursor、またはVS Code + Copilot拡張機能など
OpenAI APIキー Cursorなど一部ツールではAPI連携に必要(内部に組み込まれているモデルを選択して使う場合もあり)
GitHubアカウント Copilotの利用、リポジトリ連携、拡張機能の有効化などで必須
開発言語の実行環境 Node.js, Python, Rustなど、プロジェクトに応じてローカルに用意
バージョン管理ツール Git(およびGitHub)
ターミナル操作環境 CLIツール(Clineなど)を活用する場合に必要

基本的には一般的なフロント・バックエンド開発と同じ基盤で動作しますが、AIとの接続設定やプロンプト活用に関する知識が加わる点が大きな違いでしょう。


ツールのインストールと初期セットアップ

たとえばCursorの場合、以下のような手順で導入できます:

実際の導入手順
実際の導入手順

  1. Cursorの公式サイトhttps://cursor.sh/)からOSに対応したインストーラーをダウンロード
  2. 起動後、GitHubアカウントでログインし、必要に応じてOpenAI APIキーなどを設定
  3. エディタ上で「Command+K」や「Command+/」などのショートカットを使ってAIと対話を開始
  4. 必要に応じて拡張機能やComposer機能を有効化し、複数ファイル構成での生成や変更に対応

他のツール(ClineやCopilot)のセットアップもほぼ同様で、基本的にはアカウント連携とAPIキー登録+簡単なGUI設定で利用を開始できます。

詳細は関連記事をご覧ください。

【関連記事】
Cusorとは?使い方や料金、日本語設定の手順を解説!【AIエディタ】


バイブコーディングの実践手順

バイブコーディングを実践するための具体的な手順を以下に示します。これらのステップを踏むことで、AIとの対話を通じて効率的に開発を進めることができます。

効果的なプロンプト設計のコツと具体例

バイブコーディングにおいて最も重要なスキルのひとつが、AIに対して適切に“意図を伝える”プロンプト設計です。自然言語による指示がすべての出発点となるため、曖昧な表現では期待した結果が得られないこともあります。

以下は良いプロンプトを作るための具体的なコツです:

  • 目的を明確にする
    例:
    ❌「ログイン機能を作って」
    ✅「メールアドレスとパスワードを使ったログイン機能をReactで作成してください。失敗時はエラーメッセージを表示してください。」

  • コンテキストを与える(参照すべきコードや仕様)
    例:
    ✅「models/User.js を参考に、Expressでユーザー登録APIを作成してください。」

  • 段階的に分ける(一度に複雑な要求をしない)
    例:

    1. フロントにフォームを作る
    2. バリデーションを追加する
    3. バックエンドに接続する
    4. 成功/失敗のハンドリングを追加する
  • フォーマットや制約条件を伝える
    例:
    ✅「TypeScriptで記述し、React Hooksを使ってください。CSSはTailwindで。」

このように、抽象的な“vibe”を的確なプロンプトに変換するスキルが、バイブコーディングの中核になります。


生成コードのレビューと修正方法

AIが生成したコードは、自動的に「正しい」とは限りません。人間のレビューと微修正が不可欠です。以下の観点でチェックしましょう:

  • 意図通りか?:プロンプトに書いた要件と実装が一致しているか
  • 冗長・非効率な処理はないか?
  • セキュリティやエラー処理の欠如はないか?
  • コードの可読性・保守性は十分か?

もし修正が必要な場合は、「この部分の条件を追加して」「この変数名をより明確に」とAIに再指示することで、対話的に改善することも可能です。

また、開発チームではPull Requestベースでレビューを共有する運用が推奨されます。AI生成であっても、コードの品質は最終的に人間が責任を持って確認すべきです。


自動テスト・CIとの連携による品質担保

バイブコーディングでは、開発スピードが上がる反面、品質管理が疎かになるリスクもあります。そこで重要になるのが自動テストとCI/CDの活用です。

  • AIにテストコードを生成させる
    例:「この関数に対して、Jestでユニットテストを書いてください」

  • テスト自動実行
    GitHub Actionsなどと連携し、コード更新のたびにテストを実行することでバグを早期発見

  • 静的解析ツールの導入
    ESLint、Prettier、SonarQubeなどを活用し、スタイルやセキュリティのチェックを自動化

これらの手法を取り入れることで、「AIによるスピード」と「人間による品質管理」のバランスが取れた開発が実現できます。


まとめ

バイブコーディング(Vibe Coding)は、AIと自然言語で対話しながら、まるで“ノリ”でコードを書き上げていくような、これまでにない開発スタイルです。GitHub CopilotのAgent Modeの登場を契機に、従来の補助型AI開発から、AIを実行主体とする開発の時代が始まったとも言えるでしょう。

本記事では、バイブコーディングの定義から、必要なツール、実践手順、活用シーン、注意点、そして他のAI開発手法との違いまでを包括的に解説しました。

特に少人数チームやスタートアップにとっては、スピードと柔軟性を兼ね備えた極めて有効な手法となる一方で、プロンプト設計力・コード品質管理・ドキュメント運用といった面では慎重な運用も求められます。

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監修者
坂本 将磨

坂本 将磨

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。

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