この記事のポイント
Julesは単なるコード補完ではなく、Geminiと連携して実行まで担うGoogle製“自律型コーディングエージェント”。
テスト作成、バグ修正、新機能の追加、依存関係の更新などを非同期で実行。
「補完支援」ではなく「作業代行」。クラウドVM上で並列・非同期実行が可能な構造が最大の差別化ポイント。
GoogleアカウントとGitHubを連携し、プロンプトで明確な指示を出すだけで利用可能。
無料で使えるベータ版だが、使用回数制限や環境依存などもあるため、実務導入には検討が必要。

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
Jules(ジュール)は、Googleが開発した自律型コーディングエージェントであり、Geminiモデルと連携してGitHubリポジトリ上のタスクを自動実行できる画期的なツールです。
単なる補完ツールとは異なり、Julesはコードの文脈を理解し、非同期にバグ修正やテスト生成、新機能追加などを実行します。
本記事では、Julesの特徴や他ツールとの違い、実際の使い方やメリット・制限まで詳しく解説します。
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目次
Jules(ジュール)とは?
Jules(ジュール)とは、Googleが開発した自律型のコーディングエージェントであり、Gemini 2.5 Proと連携してコードベースを理解・解析し、実行可能なタスクを自動で処理するAIツールです。
従来のAIコーディング支援ツール(例:GitHub Copilot)は「提案型」であるのに対し、Julesはコードの読解・意図の理解・タスクの実行までを一貫して行う「実行型エージェント」です。ユーザーは自然言語でプロンプトを与えるだけで、JulesがGitHubリポジトリに接続し、仮想マシン(VM)上でテスト追加やバグ修正、新機能の開発といったタスクを非同期で実行してくれます。
実際のJules(ジュール)画面
2023年12月にGoogle Labsから発表されたJulesは、2024年にはパブリックベータとして一般公開され、誰でも無料で試すことができるようになりました。順番待ちなどはなく、Geminiが利用可能な国や地域であれば利用可能です。
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Julesの主な特徴とできること
Julesは、従来のコード補完ツールを超えた自律的なコーディングエージェントとして、開発者の作業を大きく変える可能性を秘めています。ここではその具体的な特徴と機能を紹介します。
主な機能一覧
Julesは以下のようなタスクを自律的に実行できます:
- バグ修正:エラーメッセージや既存コードの整合性をもとに、不具合を自動的に修正します。
- テストの追加:関数やモジュール単位でのユニットテストを自動生成し、テストカバレッジを強化します。
- 新機能の開発:新しい関数やファイルの作成、既存コードへの機能追加を行います。
- オーディオ変更ログの生成:変更内容を音声で要約する「聞ける変更ログ」を生成します。
- 依存関係のアップデート:
package.json
などの依存バージョンを安全に更新し、互換性を維持します。
これらはすべて、ユーザーが自然言語でプロンプトを入力するだけで実行されます。
非同期エージェントとしての強み
Julesは、コードベースをGoogle Cloud上の仮想マシン(VM)にクローンして処理を行う非同期型のエージェントです。これにより、次のようなメリットがあります:
- 作業はバックグラウンドで進むため、ユーザーは他の作業に集中できる
- 完了後には、実行プラン・その理由・差分が明確に提示されるため、安心して確認・レビュー可能
- 複数タスクを同時に処理する並列実行にも対応
セキュリティとプライバシーへの配慮
GoogleはJulesのセキュリティ設計にも力を入れており、以下のような配慮がされています。
- プライベートコードは一切学習しない:ユーザーのコードはJulesのAIモデルにフィードバックされず、学習データとして使われません。
- 実行環境の分離:すべての処理はクラウドVM内で完結し、ユーザーの開発環境とは物理的に分離されているため、安全です。
また、利用するときは以下のように出てくるのでオプトアウトの必要性を確認してから利用することをお勧めします。
Julesプライバシーについて
Julesの使い方ガイド(導入〜タスク実行まで)
Julesは、Webブラウザ上で操作できる自律型のAIエージェントです。初回利用のセットアップから、実際にプロンプトを使ってタスクを実行するまでの流れを、以下にステップごとに解説します。
1. ログインとGitHubアカウントとの接続
まずはJules公式サイト(jules.google.com)にアクセスし、Googleアカウントでサインインします。
初回ログイン時の流れ:
実際の接続画面
- プライバシー通知に同意(初回のみ)
- 「GitHub アカウントに接続」ボタンをクリック
- GitHubの認証フローを経て、アクセス許可を与える
- 対象とするすべてのリポジトリ、または一部のリポジトリを選択
- Julesの画面に自動的にリダイレクトされます(手動で更新する場合もあり)
接続後は、画面上にリポジトリセレクターとプロンプト入力欄が表示されます。
接続完了画面
2. リポジトリとブランチの選択
作業対象となるGitHubリポジトリと、対応するブランチを指定します。
- デフォルトでは「main」や「master」など既定のブランチが選ばれます
- 必要に応じて、特定の開発用ブランチ(例:
feature/add-login
)を指定することも可能
3. プロンプト入力とタスク実行
Julesに実行させたい作業を自然言語で記述します。明確で具体的な表現が推奨されます。
プロンプト例:
Add a test for parseQueryString function in utils.js
Fix the bug causing undefined errors in UserProfile.jsx
Upgrade all npm dependencies to latest minor versions
プロンプト送信後、「プランを教えて(What’s the plan?)」をクリックすると、Julesがタスク実行の計画を立案し、内容・理由・影響範囲を表示します。
ユーザーはその内容を確認し、承認することで初めて実行が始まります。
実際の操作イメージ
今回は、空のリポジトリを読めるかどうか確認してみましたが、実際に読むことができています。
また日本語も問題なく読めているようです。
4. 通知と進行管理
Julesは非同期エージェントとしてバックグラウンドで作業します。進捗をリアルタイムで把握するには、以下の方法があります:
- 初回実行時、ブラウザ通知の許可を求めるプロンプトが表示されます。許可すると、完了時や入力要求時に通知されます。
- 「設定 → 通知」メニューから通知のON/OFFをいつでも切り替え可能
- Julesのパネルからすべてのタスクを一覧表示し、進行状況を確認可能
Julesと他のコーディングエージェントとの違い
Julesは、従来のコーディング支援ツールとは異なり、コードの文脈を理解した上でタスクを自律的に実行することに重点を置いたエージェントです。このセクションでは、GitHub CopilotやCursor、Amazon CodeWhispererなどの代表的なツールと比較し、Julesの特長を明確にします。
主な比較表:Jules vs 他ツール
以下に、代表的なエージェント/支援ツールとの違いをまとめた表を示します。
ご指摘ありがとうございます。モデル差に関して過度な強調を避け、機能面にフォーカスした記述に改めて、以下のようにセクション全体を修正いたしました。
Julesと他のコーディングエージェントとの違い
Julesは、従来のコーディング支援ツールとは異なり、コードの文脈を理解した上でタスクを自律的に実行することに重点を置いたエージェントです。
Julesの明確な差別化ポイント
- 実行能力の高さ:単に「提案」するのではなく、「実際にコードを変更・コミット」まで行うエージェント。
- バックグラウンド処理:非同期でタスクを進められるため、開発者は中断なく別作業を継続可能。
- 透明性のあるワークフロー:コード変更前に「実行プラン・理由・差分」が提示され、確認後に実行される。
- プロジェクト全体を理解した判断:個別ファイル単位ではなく、コードベース全体を見たうえでの処理が可能。
CopilotやCursorが「作業中の手助け」に強みを持つ一方、Julesは「作業自体の自動化」に軸足を置いている点が最大の違いです。
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まとめ
Jules(ジュール)は、Googleが開発した自律型のコーディングエージェントとして、これまでのコード補完ツールとは一線を画す存在です。単に「書く支援」をするのではなく、コードを読む・理解する・変更するという一連の流れを、非同期かつ安全なクラウド環境で完結させる点が大きな特長です。
特に、以下のようなニーズに対してJulesは強力な選択肢となります:
- 開発チーム全体の生産性を高めたい
- テストやバグ修正、依存関係更新などの雑務を自動化したい
- 複数タスクを並行して処理し、開発効率を最大化したい
現在はパブリックベータとして無料で利用可能ですが、正式リリース時には課金モデルが導入される見込みです。制限があるとはいえ、今のうちにJulesを試しておくことで、次世代のAI開発環境を先取りすることができるでしょう。
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