この記事のポイント
クラウドIDEとの連携で開発プロセスを可視化
マルチタスク処理が可能な完全自律型エージェント
インタラクティブ・プランニングによる開発計画の自動提案
Devin Searchでコード理解を高速化
自動生成されるDevin Wikiでドキュメント管理を効率化

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
ソフトウェア開発の現場に、AIが“実務者”として参加する時代が始まろうとしています。
Devin(デヴィン)は、要件定義からコーディング、テスト、デプロイに至るまで、開発プロセスをすべて自律的にこなす「完全自律型AIエンジニア」です。
2025年に登場したDevin 2.0は、クラウドIDEとの連携やタスクの自動設計、リアルタイムでの操作・監視機能などを備え、実務レベルでの活用が可能なAIツールへと進化しました。
本記事では、Devin 2.0の概要、注目すべき機能、導入のポイントについて、初めての方にもわかりやすく丁寧に解説します。
Devinとは
Devin(デヴィン)とは、ソフトウェア開発に必要な作業をひととおり自律的にこなす、世界初の「完全自律型AIソフトウェアエンジニア」です。
通常、システム開発では人間のエンジニアが「要件定義」「設計」「実装(コーディング)」「テスト」「デプロイ(本番環境への反映)」といった工程を一つひとつ進めていきます。
DevinはこれらのプロセスをAIだけで実行できるよう設計されたエージェント(知的作業を担う自動化プログラム)であり、ユーザーの指示にもとづいて自ら作業内容を理解し、計画を立て、コードを書き、必要に応じて修正や検証まで行います。
Devinトップ画像
Devinの開発背景
Devinは2024年3月に米国のスタートアップ企業Cognition社によって初めて発表されました。
従来のAI開発支援ツールの多くは、コード補完やバグ検出など「補助的な役割」にとどまっていましたが、Devinは人間のエンジニアのように一連の開発タスクを自ら判断して進める自律性を備えていた点で、大きな注目を集めました。
そして2025年4月、ユーザーのフィードバックや実運用での課題をふまえて改良された新バージョン「Devin 2.0」が登場しました。
この最新版では、Devinが作業を行う専用のクラウドIDE(統合開発環境)が導入され、ユーザーがその進捗をリアルタイムで確認・操作できるようになりました。また、複数のDevinを同時に起動してマルチタスク処理を行う機能や、プロジェクト開始時にコードベースを分析して自動的に作業計画を立てる機能(インタラクティブプランニング)も追加されています。
Devin 2.0の主な特徴と新機能
Devin 2.0には、従来のAIツールでは実現が難しかった「開発タスク全体の並列管理」「自然言語でのコード探索」「自動ドキュメント生成」など、多くの実用的機能が追加されています。
以下に、主な新機能を解説します。
クラウドIDEとの連携と複数エージェントの並列起動
Devin 2.0では、すべてのAIエージェントが個別のクラウドベースIDEと統合されており、開発者は進行中の作業をリアルタイムでモニタリング・介入できます。
さらに、複数のDevinを同時に起動できるため、異なる開発タスクを並列に処理し、それぞれに対応したIDEで個別に操作やレビューが可能です。
ユーザーは Cmd + I
や Cmd + K
などのショートカットを使い、IDE内でコードの修正やテスト実行も行えます。これにより、AIによる自動化と人間の介入のバランスを取りながら、実運用に即した開発が可能となっています。
インタラクティブプランニングによるタスク設計支援
ソフトウェア開発では、タスクの範囲や目的を正しく理解することが成果に直結します。Devin 2.0では、セッション開始時に関連ファイルを自動で分析し、予備的な作業計画を提示する「インタラクティブプランニング」機能を搭載しています。
この計画に対し、ユーザーは事前にレビューや修正を加えたうえでDevinに作業を開始させることができるため、意図しない動作や認識ミスを未然に防ぐことができます。タスク実行前に共有認識を得るというアプローチは、企業チームの開発現場でも有用です。
Devin SearchとDeep Mode
Devin SearchとDeep Mode
開発対象のコードベースを深く理解するには時間と労力が必要ですが、Devin 2.0では自然言語による質問に対し、該当コードを引用した形で即座に回答する「Devin Search」を搭載しています。
さらに、複雑な質問や広範なコード探索を伴うケースでは、「Deep Mode」を有効化することで、高度な解析による回答精度の向上が期待できます。この機能は、既存のプロジェクトに新規メンバーが参加する際や、レガシーコードのリファクタリングにも活用できます。
Devin Wikiによる自動ドキュメント生成
Devinは数時間ごとにリポジトリを自動インデックス化し、以下を含む包括的なWikiを自動生成します。
- アーキテクチャ図
- ソースコードへの直接リンク
- 関連ドキュメント・設計コメント
この機能により、開発者が口頭やスプレッドシートでの知識共有に頼ることなく、最新の仕様・設計情報を即座に参照できるようになります。ドキュメント整備の自動化は、長期的な開発品質の向上に寄与します。
Devinの料金体系
Devin 2.0では、開発規模や利用目的に応じて選べる3つの料金プランが提供されています。従量課金制からエンタープライズ向けの高度なカスタム設定まで、幅広いニーズに対応しています。
以下に、各プランの主な特徴をまとめた表を示します。
プラン比較表
プラン名 | 料金 | 主な機能 | 使用形態 | サポート |
---|---|---|---|---|
コア(Core) | 従量課金(月額契約なし) | - 自律的なタスク実行 - Devin IDE - Devin Search - Devin Wiki |
- ユーザー数無制限 - 最大100のDevinセッション並行実行 |
- 記載なし |
チーム(Team) | 月額500ドル | Coreのすべて + - Devin API - 早期機能リリース/研究プレビューへのアクセス |
- 同時セッション数無制限 - 月額250 ACU(実行単位)付き |
- Slack専用チャンネル - オンボーディングサポート |
企業(Enterprise) | カスタム価格 | Teamのすべて + - Devin Enterpriseアクセス - カスタムDevinへのアクセス |
- プライベートクラウド(VPC)対応 - SAML/OIDC SSO連携 - 組織単位の管理とアクセス制御 |
- 専任アカウントチーム |
補足ポイント
- コアプランは従量課金制:月額契約は不要で、利用した分だけ支払う形式です。個人開発者やスタートアップの試験導入に向いています。
- チームプランは固定月額制+実行リソース付き:複数人のチーム利用を想定し、API連携や機能アップデートの先行利用が可能です。
- エンタープライズプランはセキュリティと制御重視:仮想プライベートクラウド(VPC)やシングルサインオン(SSO)対応で、企業向けに最適化されています。
Devinの使い方の手順
Devinはクラウド上で動作するAIエンジニアであり、セットアップ不要でブラウザからすぐに利用できます。ここでは、Devin 2.0を実際に操作するまでの基本的な流れをステップごとにご紹介します。
1. アカウント登録とログイン
まずは公式サイト(https://app.devin.ai)にアクセスし、アカウントを作成します。
メールアドレスまたはGitHubアカウントなどで登録可能です。新規登録時には、前述のリファラル特典も利用できます。
アカウント登録とログイン画面
2. プランの選択(CoreまたはTeam)
登録後、利用するプランを選択します。初めての場合は、従量課金で始められるCoreプランがおすすめです。
Teamプランを選択すれば、APIや高度な機能もすぐに試すことができます。
また、GitHubリポジトリやSlackチャネルなど必要なものと接続することができます。
接続画面
3. Devin IDEの起動
ログイン後は、専用のクラウドIDE(Devin IDE)が表示されます。
このIDE上で、新しいセッションを開始し、AIにタスクを指示することで作業を開始できます。
Devin IDEの起動
4. タスクの入力とインタラクティブ・プランニング
Devinには自然言語で指示を出します。例:「試しにpyrhonファイルを作成して」など。
最初の数秒でDevinはコードベースを自動解析し、実行計画を提示してきます。計画内容に問題がなければ、「承認」して作業開始です。
実行結果例]
5. 作業の確認と介入
Devinの作業はリアルタイムで表示されます。必要に応じて進捗にコメントしたり、途中で修正指示を出したりすることも可能です。
また、Cmd + I
(差分の確認)や Cmd + K
(ショートカットによる修正)などの操作もサポートされています。
6. 出力の確認とデプロイ・テスト
タスクが完了すると、コードの修正内容やファイル構成が表示されます。自動生成されたテストやドキュメント(Devin Wiki)も併せて確認できます。
そのまま本番環境へのデプロイ作業も、指示すればDevinが実行可能です。
Devinの操作デモ:ログイン機能を追加するまでの具体的な流れ
以下は、Devin 2.0を使って、GitHub上のリポジトリにログイン機能(ユーザー認証)を追加するまでの流れを再現した操作例です。
Step 1:セッションの開始
- Devinにログインし、「New Session」ボタンをクリック。
- 対象のGitHubリポジトリURLを貼り付けて、解析対象のコードベースを指定。
- セッション名を設定(例:「Add login system to flask-app」)。
Step 2:自然言語でタスクを指示
Devinのチャット画面で、以下のように入力:
新しくpythonのFlaskアプリにユーザー認証機能を追加してほしい。
具体的には、ユーザー登録、ログイン、ログアウトの機能を実装してほしい。
プロンプトの改善ボタンをクリック
→「プロンプトの改善」ボタンをクリックすると、Devinが自動でプロンプトを改善してくれます。
改善イメージ
Step 3:Devinがコードベースを解析し、実行計画を提示
数秒後、Devinが自動でコードをスキャンし、以下のような「タスクプラン」を提示:
✅ Identify main app structure
✅ Check for existing user model
✅ Add user registration route
✅ Add login and logout routes
✅ Add templates for login/register pages
✅ Use Flask-Login for session management
→「Approve Plan(計画を承認)」ボタンを押して作業開始。
Step 4:Devinがコードを書き進める
Devin IDE上に以下のような差分が表示されながら、自動で編集が進行:
models.py
にUser
クラス追加auth.py
に/login
,/logout
,/register
のルート新設templates/login.html
,register.html
を生成
進行中でも、Cmd+I
で差分確認、Cmd+K
でレビュー・修正の介入が可能。
Step 5:ユーザーによる修正・質問
例)途中で不安な点がある場合、チャットにこう入力:
Can you show me how you are hashing the user password?
→ Devinは werkzeug.security.generate_password_hash()
を使っていることをコード付きで回答。
Step 6:テストと確認
- Devinが自動で
test_auth.py
を生成し、pytest
を使ったユニットテストを実行。 - 「Tests passed」の表示を確認したら完了。
Step 7:Wikiとドキュメントの自動生成
実際のwiki
最後に、Devin Wikiが自動更新され、以下のような内容が追記されます:
- ユーザー認証の設計図
- 新しく追加されたファイルとルーティング構成
- 実装に使用したライブラリ一覧
このように、Devinを使えば自然言語による指示だけで複数ファイルにまたがる実装とテストを一貫して行うことが可能です。
さらに、途中で質問したり、修正を加えたりしながら柔軟にプロセスを進められる点も大きな特徴です。
導入時の注意点と活用のポイント
Devin 2.0は非常に高度な自律性を備えていますが、その分、利用にあたっては以下のような注意点や前提条件を理解しておくことが重要です。
注意点 | 内容 |
---|---|
タスクの明確化 | 指示が曖昧な場合、意図とは異なる処理が行われる可能性があります。Devinには自然言語理解能力がありますが、業務文脈を伴う曖昧な命令は避け、明確な目的・条件を設定する必要があります。 |
ユーザーの介入タイミング | Devinは作業途中にも適宜ユーザーに計画や結果を共有します。必要に応じてレビュー・修正のタイミングを見極め、積極的に介入することが望まれます。 |
コードの品質・セキュリティ | 自動生成されるコードには、セキュリティ上の脆弱性やパフォーマンス上の課題が含まれる可能性もあります。レビュー・静的解析・テスト工程は必須です。 |
Devinは「全自動化」を謳うツールではなく、「開発者と協働する自律型エージェント」として設計されている点を念頭に置くべきです。
Devin 2.0の活用事例と今後の展望
Devin 2.0は、以下のような場面での活用が想定されています。
- 継続的インテグレーション(CI/CD)パイプラインの自動生成
- レガシーコードのリファクタリング補助
- テスト自動化(ユニットテスト・E2Eテストの生成)
- ドキュメント整備や設計レビューの補助
将来的には、DevinがLangChainやRAG(検索拡張型生成)技術と統合され、より高度な業務自動化や、他のエージェントとの連携による分散開発の効率化が進む可能性もあります。
また、オープンなAPI連携やプラグインエコシステムが今後整備されれば、Devinが「AI開発パートナー」として標準的な位置付けになる未来も現実味を帯びてきています。
まとめ
Devin 2.0は、AIによるソフトウェア開発の可能性を実践的なレベルで押し広げるツールです。
自律的に作業を進める能力と、開発者の意図を確認・反映する協働性の両立により、単なる補助ツールではなく「共同開発者」としての立ち位置を確立しつつあります。
一方で、自律性の高さゆえに、設計段階での指示の精度や、レビュー・介入の仕組みを整備する必要があることも事実です。
導入を検討する際は、技術的な導入コストだけでなく、チームの運用体制や役割分担も含めて慎重に設計すべきでしょう。
AI総合研究所では企業のAI導入支援を行っており、Devin 2.0の活用方法や導入支援についてもご相談を承っています。興味のある方はぜひお問い合わせください。