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Copilot Tuningは、Microsoft 365 Copilotを自社の業務に最適化できる新機能です。
従来の汎用的な支援ではなく、企業固有の文書やワークフロー、ナレッジを活用した業務特化型AIエージェントの構築が、ノーコードで実現可能になります。
Copilot Tuningは、Microsoft Copilot Studioと連携して動作します。
Copilot Studioは、AIエージェントの開発環境として機能し、Copilot Tuningの基盤となります。
Copilot Tuningは、2025年6月から「Early Access Program(早期アクセスプログラム)」として提供が開始される予定です。

Microsoft MVP・AIパートナー。LinkX Japan株式会社 代表取締役。東京工業大学大学院にて自然言語処理・金融工学を研究。NHK放送技術研究所でAI・ブロックチェーンの研究開発に従事し、国際学会・ジャーナルでの発表多数。経営情報学会 優秀賞受賞。シンガポールでWeb3企業を創業後、現在は企業向けAI導入・DX推進を支援。
Copilot Tuningは、Microsoft 365 Copilotを自社の業務に合わせてチューニングできる新機能です。
従来の汎用的な支援ではなく、企業固有の文書やワークフロー、ナレッジを活用した業務特化型AIエージェントの構築が、ノーコードで実現可能になります。
本記事では、Copilot Tuningの仕組みや活用シーン、導入方法について詳しく解説します。
AI総合研究所では、GitHub Copilot研修、請求代行、運用の伴走支援を行っています。
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目次
Copilot Tuningとは?Microsoft365 Copilotの新機能
Copilot Studioとは?Copilot Tuningの母体となる開発環境
Multi-agent orchestrationで実現するチーム型AI運用
Copilot Tuningとは?Microsoft365 Copilotの新機能
Copilot Tuningとは、Microsoft Copilot Studio上で、企業の業務データやフローを活用し、AIモデルを自社業務に最適化できるM365 Copilotの新機能です。
Microsoft 365 Copilotは、生成AIを活用して文書作成や会議要約などの業務支援を行うツールですが、従来はあくまで汎用的な支援を前提としていました。Copilot Tuningを用いることで、企業ごとの専門用語や業務ルールを踏まえたAIエージェントをノーコードで構築できます。これにより、より高精度かつ実務に即した自動化が実現します。
モデルのカスタムイメージ
Copilotとの違い──汎用AIから自社最適型AIへ
Copilot Tuningは、Microsoft 365 Copilotの従来機能と比較して、以下の点で大きく異なります。
項目 | 従来のCopilot | Copilot Tuning |
---|---|---|
AIの適応性 | 汎用モデルによる支援 | 自社データを活用した業務特化型支援 |
カスタマイズ性 | 限定的(プロンプトベース) | ノーコードでAIエージェントを作成・調整可能 |
活用シーン | 一般的なOffice業務補助 | 業界特化業務、社内固有の判断・作業にも対応 |
導入ハードル | 低(すぐ利用可) | 低(開発不要・簡易設定)だがチューニング前提 |
Copilot Tuningは、単なる支援ツールから、企業独自の業務ナレッジを活かした「AIチームメンバー」を育成する手段へと進化を遂げています。
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Copilot Tuningでできること
Copilot Tuningを活用することで、企業は以下のような業務支援を実現できます。
ノーコードで自社業務に最適化したエージェントを構築
Copilot Tuningでは、Microsoft Copilot Studioのノーコード機能を使って、業務に特化したAIエージェントを誰でも簡単に構築できます。開発スキルがなくても、ドラッグ&ドロップや自然言語ベースの操作で、エージェントのふるまいを設定可能です。たとえば、契約書のドラフト作成、社内規定に基づく案内文生成など、ルールベース業務を自動化できます。
企業独自の文書・フロー・業務知識を活かす
Copilot Tuningは、企業が保有するドキュメントやプロセス知識をベースにAIをチューニングします。これにより、汎用AIには難しい「社内固有の言い回し」や「部門ごとの判断基準」に対応できます。たとえば、営業部向けには独自の提案書テンプレートに即した出力ができ、法務部向けには社内規定を踏まえた文案生成が可能です。
Microsoft 365のセキュリティ境界内で安心運用
Copilot Tuningを通じて構築されたAIエージェントや使用されるデータは、Microsoft 365のセキュリティ境界内で保護されます。Microsoftはチューニングに使われた顧客データを基盤モデルの学習に使用しない方針を明示しており、プライバシーとコンプライアンスにも配慮されています。企業ごとのデータ機密性が求められるシーンでも、安心して導入できます。
Copilot Studioとの連携と拡張機能
Coopilot Tuningは、Microsoft Copilot Studioと連携して動作します。Copilot Studioは、AIエージェントの開発環境として機能し、Copilot Tuningの基盤となります。以下に、Copilot Studioの主な機能と特徴を紹介します。
Copilot Studioとは?Copilot Tuningの母体となる開発環境
Copilot Studioは、Microsoftが提供するノーコード・ローコード対応の開発環境であり、Copilot Tuningの実行基盤です。ユーザーはこのスタジオ上で、AIエージェントの作成、ワークフローの設計、データ連携の設定などを一元的に行うことができます。直感的なUIと豊富なテンプレートにより、非エンジニアでも扱いやすい設計となっており、企業内の誰もが業務自動化を推進できるようになります。
Multi-agent orchestrationで実現するチーム型AI運用
Copilot Studioでは、複数のエージェントが連携して業務を分担・協力する**Multi-agent orchestration(マルチエージェントの協調制御)**が可能です。たとえば、人事・IT・総務の各エージェントが連携して「新入社員のオンボーディングプロセス」を自動化するようなシナリオが実現できます。各エージェントは得意分野に応じて役割を分担し、タスクの中間成果物を共有することで、複雑な処理も柔軟にこなすことができます。
Azure AI Foundry連携で独自モデルも利用可能に
Copilot Studioは、Azure AI Foundryとの連携にも対応しています。これにより、OpenAIモデルに加えて、業種別に最適化された1,900以上のサードパーティ・カスタムモデルを活用できます。自社で保有するモデルや外部提供の高精度モデルを組み合わせることで、より専門性の高い応答や生成が可能になります。また、Bring Your Own Model(BYOM)にも対応しており、柔軟な拡張性を確保しています。
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Copilot Tuningの導入方法と提供形態
では、Copilot Tuningを実際に導入するにはどうすればよいのでしょうか?以下に、導入方法と提供形態について詳しく解説します。
Early Access Programの概要と提供時期
Copilot Tuningは、2025年6月から「Early Access Program(早期アクセスプログラム)」として提供が開始される予定です。このプログラムは、先行導入を希望する企業向けに限定公開され、Copilot Studio上での機能検証や運用設計を進めることができます。参加企業は、Microsoftからの技術支援やフィードバック機会を通じて、より実務に即した形でCopilot Tuningを自社に適用できます。
Early Accessは、主に以下のような目的で活用されます:
- 業務に即したユースケースの検証と評価
- 組織内での運用・セキュリティ体制の整備
- エージェント設計・データ連携のプロトタイピング
なお、Early Accessで得られた知見は、正式リリース後の展開にも活かせるため、先行投資としての意味も大きいと言えます。
導入時に押さえておきたいポイントと注意事項
Copilot Tuningの導入にあたっては、いくつかの実務上の配慮が必要です。以下に主な注意点をまとめます。
- データの事前整備が必要:社内の業務マニュアル、Q&A、ワークフロー図などの情報を事前に構造化・整理しておくことで、エージェントのチューニング効果を高められます。
- 業務部門との連携が重要:エンジニア任せではなく、業務フローを熟知した部門担当者との協業が成功の鍵です。
- セキュリティと権限管理:Microsoft Entra(旧Azure AD)と連携することで、エージェントのアクセス権限や動作ログの管理も可能になります。社内規定との整合性を事前に確認しておくことが推奨されます。
また、Microsoft Purviewによる情報保護(Information Protection)機能も順次対応予定であり、特にDataverseと連携したエージェントでは、センシティブデータの保護ルールも自動で適用できます。
まとめ:Copilot Tuningが向いている組織とは
Copilot Tuningは、特に以下のような組織において効果を発揮します。
-
業務に特化した文書やフローが明文化されている
- 契約書テンプレートや業務手順書など、定型的・繰り返しの多い業務を持つ企業。
-
社内ナレッジが部門やチーム単位で分散している
- エージェント化によって、属人化した知識の共有・再利用が可能になります。
-
ノーコード・ローコードのツール導入が進んでいる
- Power PlatformやCopilot Studioに慣れている組織では、短期間での構築・検証が容易です。
-
セキュリティ・ガバナンスの制約がある
- Microsoft 365のサービス境界内で動作し、EntraやPurviewとの連携で安全性も担保できます。
中小規模の企業であっても、特定の業務に特化したエージェントから段階的に展開していくことで、十分な価値を得られるでしょう。
Copilot Tuningの登場は、汎用的な生成AIから「組織に最適化されたAI」への進化を象徴しています。Microsoftは、Copilot Tuning、Copilot Studio、Azure AI Foundry、Entra ID、Purviewといった複数の要素を組み合わせ、AIを組織運営の中核に据えるためのプラットフォームを急速に拡張しています。
今後は、業務プロセスの細部までAIエージェントが入り込み、「AIが文書を作る」「AIが判断を支援する」「AIがタスクを連携して処理する」といった世界が現実のものになるでしょう。Copilot Tuningは、その第一歩として、あらゆる業務にAIを根付かせるための強力な手段となるはずです。
AI総合研究所では、Copilot Tuningを活用した業務自動化の支援を行っています。お気軽にご相談ください。