この記事のポイント
- この記事は「DXリスキリング助成金」について詳しく解説しています。
- 東京都が提供するこの助成金は、デジタル時代に必要とされる新たなスキルを習得する企業の支援を目的としています。
- DXリスキリング助成金の活用により、企業は従業員のスキルアップを通じて競争力の向上を図ることができます。
- 助成金の対象講座の内容や、申請のための要件についても詳しく説明しています。
- デジタル変革に取り組む企業や個人事業主にとって、この助成金制度は大変有益な情報となるでしょう。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
現在、日本では経済産業省、厚生労働省、文部科学省がリスキリングに関する多様な政策を実施しています。その中の代表的な政策が東京都による「DXリスキリング助成金」です。
本記事では、このDXリスキリング助成金の目的や効果、助成内容、申請方法について、実例を交えながら詳しく解説します。
デジタル時代に求められる、「新たなスキルの習得」を支援するこの助成金は、企業の競争力強化と従業員のキャリア形成の両面で大きな効果が期待できます。
助成金の対象となるデジタルスキルトレーニングの内容や、申請のための要件についても詳しく説明することで、制度の活用方法を具体的に提案します。
DXリスキリング助成金とは
DXリスキリング助成金は、急速に進むデジタルトランスフォーメーションに適応するため、中小企業や個人事業主が直面するスキルの再構築(リスキリング)に対するニーズを満たすために東京都が提供する助成制度です。
この助成金は、DXを推進するために不可欠なデジタル関連の知識や技能を身につけるための講座やトレーニングの費用をカバーすることで、都内の事業者の技術革新を支援します。
DXリスキリング助成金とは
DXの定義とビジネスへの影響
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、政府が定義するように、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指します。です。
あらゆる産業において、新たなデジタル技術を利用してこれまでにないビジネスモデルが誕生する中で各企業は競争力の維持・強化するためにDXを急速に進めていくことが求められています。
ただし、DXとは単に「デジタル技術やツールを導入すること」だけを指すのではありません。DXの本質は、顧客視点で新たな価値を創出していくために、ビジネスモデルや企業文化の変革に取り組むことであり、経営の変革そのものだと言えます。
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リスキリングの必要性
このような技術革新やビジネスモデルの変化を背景にリスキリングへの関心が高まっています。
リスキリングとは、経済産業省が定義するように「新しい職業に従事するため、または、現在の職業で必要とされるスキルの大きな変化に適応するために必要なスキルを獲得したり、身につけさせたりすること」です。
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リスキリング助成金の目的と効果
助成金の目的と効果イメージ画像
DXリスキリング助成金は、デジタルトランスフォーメーションの波がもたらす、業務のデジタル化に伴い求められる新たなスキルセットの習得を支援するために設けられた制度です。
この助成金は、従業員が新技術を習得し、業務効率化やイノベーションを促進するトレーニングや教育活動に注力する企業を対象にしています。
主要な支援内容としては、デジタルスキルの教育プログラム・プログラミング・データ分析・AIの知識・クラウドコンピューティング・サイバーセキュリティ・その他デジタル関連分野の専門性向上を含みます。
これらのトレーニングによって、企業は市場の変化に柔軟に対応し、競争力を維持することができるようになります。
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リスキリング助成金によるメリット
助成金の利用は、企業が直面する様々な課題を克服し、デジタルトランスフォーメーションを成功させるための重要なステップです。
以下はその一例です。
- 資金的な支援によるスキルセットの向上
企業は助成金を利用して従業員のデジタルスキルを高めるためのトレーニングや教育プログラムに投資できます。
- 従業員のキャリア発展の機会
新しいスキルの習得は従業員のモチベーションを高め、キャリアの発展に貢献に繋がります。
- デジタル化における競争力の維持
最新のデジタル技術に関する知識とスキルの習得により、市場での競争力を保つことができます。
- イノベーションの促進
新しい技術や方法論の導入が容易になり、業務の効率化や新しいビジネスモデルの創出につながります。
- 持続可能な成長の促進
技術的な進歩と従業員の能力向上を通じて、長期的な競争力を確保し、持続可能な成長を遂げることが可能になります。
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リスキリングの助成金の支援内容
DXリスキリング助成金は東京都の管轄で運営されており、中小企業とその従業員が対象となります。
助成対象となるのは、DXに直結する技術やスキルの向上を目指す研修や教育活動であり、それらが経済の成長や社会の発展に資することを目的としています。
対象となる訓練内容の例
DXリスキリング助成金はデジタル技術を用いた事業や会社の変革に対して支給される助成金です。
そのため様々な訓練内容が「DX」に該当し、助成金の対象範囲となり得ます。
例えばDX推進のためのマネジメント講座・リモートワークの整備に伴う情報セキュリティ対策講座・組織力向上のためのプレゼンテーションソフト活用講座などです。
詳しくはDXリスキリング助成金の対象講座にて解説しています。
助成金の支援内容と対象分野
【令和6年度対応】リスキリング助成金の対象講座および申請方法
DXリスキリング助成金の手続きフローは、以下の通りです。
このセクションでは、DXリスキリング助成金の対象講座およびその申請について解説していきます。
助成金申請のステップバイステップガイド
リスキリング助成金の対象受講者
次の3つの全ての要件を満たす方がDXリスキリング助成金を受け取ることができます。
1.申請企業等の従業員
2.常時勤務する事業所の所在地が都内である者
3.研修ごとに、総研修時間数の8割以上を受講した者
助成対象となる経費
以下の5つが助成対象となる経費です。
- 受講料
- 教科書及び教材代
- 研修に付随する登録料・管理料
- 研修を計画するためのヒアリング料(オーダーメイド研修のみ
- オーダーメイド研修の計画にあたり、教育機関との相談等に必要な料金
以下の6点は助成の対象外です。
- パソコンやオンライン機器類等、設備の購入費用等
- インターネット回線使用料、通信料等
- 食事代、交通費、宿泊費等
- 消費税
- 振込手数料、送料等
- 助成対象経費の支払いによりポイント等を取得した場合のポイント分
DXリスキリング助成金の対象講座
助成対象となる研修は次の11要件を全て満たす必要があります。
要件番号 | 要件 | 詳細 |
---|---|---|
(1) | レディメイド研修又はオーダーメイド研修に該当すること | 既存の公開研修、または企業が計画し教育機関に委託する研修 |
・レディメイド研修 | ① 教育機関が計画した既存の公開研修であること ② 集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む。)又はeラーニングであることと |
|
・オーダーメイド研修 | ① 申請企業等の従業員を対象として計画し、教育機関に委託して実施する研修であること ② 集合研修(同時かつ双方向で行われるオンライン研修を含む。)であること |
|
(2) | 受講経費があらかじめ定められていること | 受講者1人1研修単位の経費が確認できること |
(3) | DX推進のための知識・技能の習得を目的とする研修 | |
(4) | 通常の業務と区別できるOFF-JTであること | OFF-JT とは、通常の業務を離れ、社内の担当部署が考案したメニューや外部の研修機関が作成したプログラムを受講し必要な知識やスキルの習得を図るもののこと。 |
(5) | 研修経費の全額を申請企業等が負担していること | |
(6) | 労働時間内に行い、所定の賃金を支払っていること | |
(7) | 国や地方公共団体からの助成を受けていないこと | |
(8) | 提出した計画通りに研修を実施すること | |
(9) | 指定された期間内に開始し終了する研修 | 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始し、令和7年8月31日までに終了する必要がある、 |
(10) | 総研修時間が3時間以上10時間未満であること | eラーニングの場合は標準学習時間も同様 |
(11) | 受講者の受講状況について教育機関の証明を受けられること | 実績報告書提出時に受講が確認できる証明が必要 |
助成対象外の講座
以下の研修は助成金の対象外です。
番号 | 助成対象外の研修の実施方法 | 例 |
---|---|---|
(1) | 通信(添削方式)による研修 | |
国又は地方公共団体が主催、または委託している研修 | ||
申請企業等と資本関係等のある教育機関が提供する研修 | 例:親会社、子会社、グループ企業、代表又は役員が関与する会社、代表又は役員の親族が経営する会社、顧問契約を結んでいる会社など | |
サブスクリプション形式(定額制)で提供される研修 | ||
(2) | 趣味・教養を身につけることを目的とする研修 | 例:日常会話程度の語学など |
通常の業務に付随する内容の研修 | 例:経営改善指導、業務連絡会、成果発表会、マニュアル作成、作業環境の整備、経営方針・社内規定の説明など | |
見学会、研究会など、研修とはみなせないもの | ||
法令等で義務付けられている教育の実施 | 例:労働安全衛生法に基づく特別教育など | |
技能・知識の習得を目的としていないもの | 例:経営理念の浸透、従業員の意識改革など | |
適性検査や試験問題のみで構成されているもの | ||
資格試験(単独で受験して資格を得られるもの) | ||
医業行為又は医業類似行為を行うもの | 例:あん摩マッサージ指圧、柔道整復、整体、カイロプラクティックなど | |
その他、公的資金の助成を受ける研修として適切でないもの |
--
助成額及び助成限度額
項目 | 詳細 |
---|---|
助成額 | 助成対象経費の4分の3(上限75,000円/1人1研修) |
助成限度額 | 令和6年度DXリスキリング助成金は、1申請企業等あたり100万円が上限。 |
申請できる者
中小企業等がDX リスキリング助成金に申請することができます。
その際以下の2点を満たしている必要があります。
中小企業基本法第2条第1項の中小企業者に該当する人
会社法上の会社等(士業法人を含む。)及び個人事業主で、下の表の資本金の額又は出資の総額、常時使用する従業員数のいずれか一方(又は双方)を満たす必要があります。
業種分類(※1) | 資本金等の額又は出資額の額 | 常時使用する従業員数(※2) |
---|---|---|
小売業・飲食業 | 5,000 万円以下 | 50 人以下 |
サービス業 | - | 100 人以下 |
製造業 | 1億円以下 | - |
その他の業種 | 3億円以下 | 300 人以下 |
みなし大企業ではないこと
みなし大企業は以下に該当する場合です。
1. 大企業が、その会社の株や出資金の半分以上を持っている。
2. 大企業が複数で、発行済株式総数や出資金の3分の2以上を持っている。
3. 会社の役員の半分以上が、大企業の役員や従業員として兼任している。
4. 大企業が実質的ににその会社を支配していると考えられる。
申請要件
助成金を受けるにあたって以下の9点全てを満たす必要があります。
要件番号 | 要件 | 詳細 |
---|---|---|
(1) | 都内に本社又は主たる事業所があること | 法人は都内に本店や支店の登記が必要。個人事業主は都内の税務署に開業届出をしている必要がある。 |
(2) | 都税の未納付がないこと | 法人事業税や法人都民税、個人の場合は個人事業税や個人都民税を滞納していないこと。 |
(3) | 過去5年間に重大な法令違反等がないこと | 罰則を受けたり、脱税で重加算税が課されたりしていないこと。 |
(4) | 労働関係法令を守っていること | 最低賃金の遵守、時間外労働の割増賃金規定の遵守、36協定の締結と遵守、労働基準法の時間外労働上限の遵守、年次有給休暇の取得義務の遵守等が含まれる。 |
(5) | 風俗営業等を行っていないこと | 性風俗関連や接客業務受託などの特定業種を営んでいないこと。 |
(6) | 不適切な業態を営んでいないこと | 連鎖販売取引やネガティブ・オプション、催眠商法、霊感商法など、助成金を受けるのに適切でない業態を営んでいないこと。 |
(7) | 暴力団に該当しないこと | 企業自体が暴力団でないこと。 |
(8) | 暴力団員や暴力団関係者がいないこと | 代表者や役員、従業員に暴力団員または関係者が含まれていないこと。 |
(9) | 過去5年間で不正による交付決定の取消しがないこと | 交付申請日から遡って5年以内に偽りその他不正の手段で交付決定が取消された事実がないこと。 |
申請方法
まず、申請をする際は紙で提出する・インターネットを使って提出するか選んでください。その後のすべての手続きは、最初に選んだ方法に準じます。
紙で提出する場合(紙申請)
東京にある事務局に、郵便や宅配便など追跡ができる方法で以下の住所に書類を送ります。送る時は「申請書類在中」と書きます。
〒102-0072
東京都千代田区飯田橋3-8-5
住友不動産飯田橋駅前ビル11階
公益財団法人東京しごと財団「スキルアップ助成金」事務局
インターネットで提出する場合(電子申請)
「Jグランツ」というデジタル庁のシステムを使って、本助成金のフォームから提出することができます。
このシステムを使うためには「GビズID」というアカウントが必要です。このアカウント作成に時間がかかる場合があるので、余裕を持って準備しておくことが重要です。
Jグランツの画像
代理人を通じて提出する場合
代理人が紙申請で書類を提出する場合は、委任状を添えて送ってください。**ただし、インターネットを使った申請の場合は、代理人を通じての提出はできません。**提出した書類の内容についての確認は、申請する企業の事務を担当している人が対応することになります。
申請期間
番号 | 提出方法 | 提出期限 |
---|---|---|
① | 紙申請の場合 | 研修開始予定日の1か月前まで(当日消印有効) |
② | インターネット申請の場合 | 研修開始予定日の1か月前まで(当日の23時59分まで) |
申請時の注意事項
-
提出された書類が足りない場合、指定された日までに申請企業の担当者(もしくは委任状のある代行者)に連絡が届きます。その際は指示に従って必要書類を提出しましょう。
-
また書類の内容に不明瞭な点がある場合、申請企業の担当者に確認の連絡が届く可能性があります。
-
審査の際、募集要項にない書類が必要となる場合があります。その際は追加提出の指示に従いましょう。
DXリスキリング助成金に関する問い合わせとサポート
助成金に関する質問や相談を行うためのお問い合わせフォームはこちらからアクセス可能です。
また事前予約をすることで対面での説明・相談をすることができます。
電話での問い合わせ先
「DXリスキリング助成金」と伝えたうえで、問い合わせ内容を伝えます。
【公益財団法人東京しごと財団 雇用環境整備課「スキルアップ助成金」事務局】
📞 03-5211-0393
対面での相談・説明希望の場合
〒102-0072 東京都千代田区飯田橋三丁目8番5号 住友不動産飯田橋駅前ビル10・11階
<交通のご案内>
最寄り駅:飯田橋駅
●JR中央・総武線=東口より徒歩3分
●東京メトロ都営大江戸線・有楽町線・南北線=A2出口より徒歩2分
●東京メトロ東西線=A5出口より徒歩1分
※近隣には「東京しごとセンター」があります。間違えのないよう気を付けてください。
対面での説明・相談のご案内>地図
まとめ
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展は業界を問わず、企業にとって新しい課題であり、従業員のスキルセットのアップデートが不可欠です。東京都が提供するDXリスキリング助成金は、従業員のデジタルスキルを高める研修にかかるコストをサポートし、企業の競争力を維持し向上させるための貴重な資源です。
この助成金を利用し、企業はDXの推進を図りながら、将来にわたる持続可能な成長を遂げていきましょう。