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自治体DX推進計画とは?その概要をわかりやすく解説!

この記事のポイント

  • 自治体DX推進計画の意義と具体的な取り組みを解説
  • DX推進計画の背景とメリットを紹介
  • 自治体DX推進計画の現状と課題を分析
  • DX推進計画の具体的事例と成功のポイントを紹介
  • これからの自治体が取り組むべきDX推進計画の方向性を示唆

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

デジタル化が加速する現代、地方自治体にとってDX推進計画の策定と実行は避けて通れない課題です。
自治体DX推進計画は、行政サービスの質の向上や業務効率化、地域活性化などを目的とし、AI、IoT、ビッグデータなどの先進技術を活用して実現されます。

本記事では、自治体DX推進計画の意義や具体的な取り組み、事例を交えて分かりやすく解説。デジタル時代における自治体の在り方や、持続可能な地域社会の実現に向けたヒントを探ります。

自治体DXとは

地方自治体におけるDXは、情報システムの標準化や共通化、行政手続きのオンライン化、デジタル人材の育成、セキュリティの強化などを通じて、行政サービスの質を向上させると同時に、地方の活性化や住民の利便性を高めることを目指しています。

また、DXを通してデジタル技術を駆使し、住民により良いサービスを提供し、地域の課題解決にも貢献することが期待されています。

DXとは
自治体DXとは

自治体DX推進の背景

新型コロナウイルス対応において、地域や組織間でデータが横断的に活用されず、様々な課題が浮き彫りになりました。
これにより、デジタル化の遅れに対処し、社会全体が「新たな日常」に適応するために、制度や組織の在り方をデジタル化に合わせて変革する必要性が高まりました。

つまり、社会全体のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が求められるようになりました。

DX推進の背景
DX推進の背景


その中でも、自治体DXの推進は、新型コロナウイルス対応を含む様々な社会課題に対応するため、デジタル技術を活用して住民サービスの質を向上させ、効率的な行政運営を実現することが目的です。

特に、地方自治体でDX推進が急務となっている社会的・経済的背景には以下の3点が大きな要因になっています。

1.高齢化社会への対応

日本は世界で最も高齢化が進んだ国の一つであり、特に地方では高齢者の割合が高く、これが医療や介護、社会福祉の需要を増大させています。
デジタル技術を用いたサービスの効率化やオンラインでの健康管理、遠隔医療の導入が急がれています。

2.人口減少と地方創生

人口が減少し続ける中で、地方の活性化が求められています。
DXを進めることで、行政サービスの効率化や地域経済の活性化、新たなビジネスモデルの創出が期待されており、地方創生の一環として推進されています。

3.効率化とコスト削減の必要性

経済的な制約が厳しい中、自治体は限られた予算内で最大の効果を出す必要があります。
デジタル技術の導入により、行政手続きのスピードアップやペーパーレス化を実現することで、コスト削減とサービスの質の向上が期待されます。

自治体DXの現状

社会的・経済的な背景を考慮に入れつつ、自治体の役割は重要ですが、日本の自治体がDXにおいてどのような状況にあるのでしょうか。

自治体のDX推進状況
自治体のDX推進状況 (出典:総務省「自治体 DX・情報化推進概要(令和5年度)」

このグラフは、日本の自治体におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進状況を示しています。
全自治体の約半数(49.7%)がDX推進計画に基づいて取り組みを行っており、このうち約10.6%が第5年目、11.1%が第6年目以降の施策を実施しています。

しかし、28.5%の自治体ではDXの取り組みが未実施であることから、デジタル化の推進にはまだ多くの課題が残されている状況です。


自治体DX推進計画とは

自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)推進計画は、地方公共団体がDX化を進めることで、行政サービスの質の向上、効率化、そして市民の利便性の向上を図る取り組みです。

自治体DXの推進に向けた取組について(令和5年度)
出典:総務省「自治体DXの推進に向けた取組について(令和5年度)」


この計画は、情報システムの標準化、デジタル人材の確保・育成、セキュリティ強化などを包括する具体的な手順を含んでおり、地方自治体がそれぞれの地域の特性やニーズに応じてデジタル化を進め、住民サービスの向上及び行政の効率化を図ることを目的としています。

これにより、パンデミックや大震災等の緊急事態への迅速な対応や持続可能な社会の実現に貢献するとともに、地域のデジタル格差を解消が期待されています。


自治体DX推進において重要な7つの取組

自治体DXを推進するには、市民サービスの向上、業務効率化、セキュリティ強化、柔軟な働き方の実現など、多岐にわたる取り組みが必要です。

ここでは、自治体DXの成功に欠かせない7つの重要事項を紹介します。

1.自治体フロントヤード改革の推進

自治体フロントヤード改革の推進に関しては、主に市民が利用する行政サービスのデジタル化とアクセスの向上に焦点が置かれています。

これには、窓口での対応だけでなく、オンライン、モバイルアプリ、自動応答システムなどを通じて、より多くのチャネルでサービスを提供することを含みます。

この改革は、市民が行政サービスを利用する際の効率性と満足度を高めることを目的としており、自治体DXの中核的な取り組みとして位置づけられています。

2.自治体の情報システムの標準化・共通化

自治体の情報システムの標準化・共通化は、異なる自治体間での情報システムの互換性を高め、データやサービスの連携を容易にするための重要な取り組みです。

特に、災害時には迅速な情報共有や公共サービスの連携強化が非常に重要になっていきます。共通化されたシステムを使用することで、異なる自治体間でのデータ共有やサービス連携がスムーズになるでしょう。

3.公金収納におけるeLTAXの活用

公金収納におけるeLTAX(エルタックス)の活用は、電子申告・納税システムを通じて地方公共団体の公金(税金、料金等)収納プロセスをデジタル化し、効率化する取り組みです。

インターネット上で24時間365日納税手続きが可能となるため、納税者は自身の都合に合わせていつでも申告や納税が行う事ができます。

また、電子データの管理により、納税記録の整理・検索が容易になり、データの正確性も向上します。

4.マイナンバーカードの普及促進

日本政府は日本国内で一人一人に割り当てられた個人番号(マイナンバー)を活用し、さまざまな行政手続きやサービスの利便性を高めることを目指しています。
地方自治体はその申請窓口となるため、マイナンバーカードの普及促進において重要です。

特に高齢者やデジタルスキルが低い市民でもスムーズに申請が進められるようオンライン申請の支援、必要書類の案内、申請に関する疑問に対する対応も同時に求められています。

5.セキュリティ対策の徹底

自治体において、デジタル化の進展と共に情報セキュリティの重要性が高まっています。セキュリティ対策の徹底は、市民の個人情報保護や行政データの安全を確保するために不可欠です。

この対策には情報セキュリティーポリシーの策定・職員へのセキュリティ教育・セキュリティ侵害が発生した場合の対応計画の策定が含まれています。

このように、自治体はセキュリティ対策の徹底を通じて、デジタル化が進む中での新たなリスクに対処し、市民の信頼を維持することが求められています。

6.自治体のAI・RPAの利用促進

自治体におけるAIとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の利用促進は、効率化とサービスの質向上を図る重要な戦略です。
これらの技術を活用することで、繰り返し作業を自動化し、職員がより戦略的な業務に集中できるようにする事が目的です。

具体的には、公共料金の請求処理、申請書類のデータ入力、その他の行政手続きなどが自動化の対象となります。

この取り組みにより、行政の迅速化と正確性が向上し、市民からのサービス評価の向上にも寄与する事が期待されています。

7.テレワークの推進

テレワークの推進は、柔軟な働き方を支援し、職員の仕事と私生活のバランスを改善することを目的としています。
また、緊急事態発生時の業務継続計画(BCP)の一環としても重要視されています。また、テレワークを導入することで、通勤による時間のロスを減少させ、より多くの時間を本来の業務に充てられるようにするほか、職場外からでも業務が行える体制を整備します。

これらは、災害時や緊急時においても行政サービスの提供を維持するという側面を持ちます。


自治体DX推進の課題

ここでは、人材不足や資金の制約など、自治体がDXを推進する上で直面する主要な課題を取り上げます。

人材不足

地方公共団体の職員数の推移
地方公共団体の職員数の推移 (出典:総務省|地方公共団体の職員数の推移)


自治体DXへの課題としては、まず自治体職員数の減少が挙げられます。
具体的には、グラフからは平成6年から令和5年までの期間において、職員数はピークの約3,282万人から約2,802万人へと約480万人(約15%)減少しています。

デジタル専門人材の確保に係る課題
デジタル専門人材の確保に係る課題 (出典総務省(2020)「デジタル専門人材の確保に係るアンケート」


特に若年層の減少が顕著な地方自治体では、デジタル技術に精通した人材の確保が困難になっています。これにより、新しい技術の導入や既存システムのアップグレードが遅れ、DXの推進に必要な技術革新が阻害される可能性があります。

資金の制約

DX推進に係る課題
DX推進に係る課題 (出典:総務省(2020)「デジタル専門人材の確保に係るアンケート」)


DX推進にあたっては、都道府県・市区町村ともに「財源の確保」を課題として挙げる団体が最も多くなっています。
これは、厳しい財政状況の中、教育や福祉、インフラ維持といった既存の重要な支出と、新たなデジタル投資をどのようにバランスさせるかが問題となります。

また、そもそもシステム導入・整備のための費用の確保が難しい団体が多いと考られます。


自治体DX推進成功のポイント

地方自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功に導くための重要なポイントは以下の通りです。

1.明確なビジョンと戦略の策定

自治体でのDX推進に成功するためには、地方自治体が明確なDXビジョンを持ち、それを実現するための具体的な戦略を策定することが必要です。

このビジョンと戦略は、地域のニーズと目標に合わせてカスタマイズされるべきで、どのようにテクノロジーを活用してサービスの質を向上させ、効率を高めるかを具体的に定義する必要があります。

2.ステークホルダーの参加と協力

地方自治体のDXを成功させるためには、職員、市民、地元企業、教育機関などのステークホルダーが協力して取り組むことが重要です。

これらの関係者をプロジェクトの初期段階から巻き込み、意見を聞きながら計画を進めることで、実装の際の支持と協力を得やすくなります。

3.デジタルスキルの向上と人材の育成

デジタル化には適切なスキルと知識が必要です。自治体職員に対する継続的な教育とトレーニングを提供することで、デジタルツールの有効活用とプロセス改善の能力を高めることができます。

また、必要に応じてデジタル専門家を採用することも検討すべきです。

4.インフラと技術の整備

強固なデジタルインフラは、DXの基盤となります。高速インターネット接続の提供、セキュアなクラウドサービスへの投資、データ管理と分析を行うための最新の技術の導入が必要です。

これにより、データ駆動型の意思決定を支え、サービス提供を最適化できます。

5.継続的な評価と改善

DXの取り組みは一度きりのものではなく、継続的なプロセスです。実施した施策の効果を定期的に評価し、必要に応じて調整を行うことが重要です。
パフォーマンスの追跡と測定、フィードバックの収集、そして新しい技術やアプローチの探求が含まれます。

これらのポイントを踏まえることで、地方自治体はDXの取り組みを効果的に推進し、より良い市民サービスの提供と地域社会の持続可能な発展を実現することが可能となります。


自治体DXの事例

ここでは、全国の自治体におけるDXの先進的な取り組み事例を紹介します。

デジタル技術を活用した市民サービスの向上、業務効率化、全庁的なDX推進指針の策定、職員のデジタルスキル向上研修など、各自治体の特色あるDXの取り組みを見ていきましょう。

とよなかデジタル・ガバメント戦略(大阪府豊中市)

https://youtu.be/v0zfhTj0R-w?si=mJW-SHyuO-3j3BTq

大阪府豊中市ではコロナ感染が拡大する中、「とよなかデジタル・ガバメント宣言」を行い、デジタルによる価値創造と変革を進める「とよなかデジタル・ガバメント戦略」を策定しました。

デジタルによる取組みを「暮し・サービス」「学び・教育」「仕事・働き方」に分け、3つの柱ごとに全庁を挙げて戦略的に取組みを推進しています。

令和4年度には、「行政手続きのオンライン化100%」を達成し(法令等で対面による申請を求められているものを除く、そのスピード感を持った取り組みに注目が集まっています。

(参考)とよなかデジタル・ガバメント宣言・戦略|大阪府豊中市

DX憲章の策定(千葉県市川市)

市川市のDXの取り組み
市川市のDXの取り組み (参考:DX憲章|千葉県市川市


市川市では、DX憲章を策定し、デジタル技術を利用して市政を進化させることを目指しています。
この憲章には、市民サービスの向上、業務の効率化、市民とのコミュニケーションの活性化を図るための基本方針が定められています。

具体的には、市政サービスのデジタル化推進、データドリブンな政策決定、情報セキュリティの強化が含まれています。
この憲章は、市川市におけるすべての部門でDXの推進を統一するための指針として機能し、持続可能で包括的なデジタルトランスフォーメーションを目指しています。

職位別DX研修(愛知県豊田市)

DX推進体制と取組等について(令和4年度)
参考:DX推進体制と取組等について(令和4年度)|愛知県豊田市


豊田市では、職位別のDX研修プログラムを実施しており、異なる職位の職員に対して適切なスキルと知識の提供を目指しています。
このプログラムは、市職員がデジタルツールやプラットフォームを効果的に利用し、市民サービスの向上と内部プロセスの効率化を図ることを目的としています。

研修は基本的なデジタルリテラシーから高度なデータ分析技術まで、職位に応じた内容が提供されています。これにより、全職員がDX推進の主体として機能し、市全体のデジタル化を支える人材の育成を目指しています。


デジタル田園都市国家構想について

自治体DX推進には「デジタル田園都市国家構想」についても理解しておく必要があります。

https://youtu.be/hxcIJ1Uk4Ho?si=UGyrLIz8xH2yigp6

デジタル田園都市国家構想は、地域の活性化と持続可能な社会の実現を目指す日本の新しい国家戦略の一つです。
この構想は、デジタル技術を活用して、地方都市や田園地帯を再生し、魅力的な居住地域として発展させることを目的としています。

地方自治体と民間企業が協力して、地方におけるデジタル技術の活用と経済活動の支援を行い、新たなビジネスの創出や地方での雇用機会の創出が期待されます。

デジタルデバイド対策

デジタルデバイド対策は、全ての市民がデジタルサービスを利用できるようにするための施策です。

これには、高齢者や障害を持つ人々も含まれ、デジタル技術の利便性を享受できるよう支援します。

デジタル原則を踏まえた規制の点検・見直し

この方針には、デジタル時代に適応しない規制や制度を見直し、デジタル技術の活用を妨げる要因を排除します。
これにより、デジタル技術の導入と利用がよりスムーズに進むよう努めることが求められます。


自治体DX推進に役立つ参考資料

最後に、自治体DXを推進する際に役立つ資料を紹介します。

これらの資料は、目的の確認だけでなく、進め方や実際の事例も含まれており、迷った時に大いに参考にできます。積極的に活用してみてください。


まとめ

この記事では、自治体DX推進計画の重要性と具体的な取り組みについて解説しました。
自治体DXは単なる技術的な変革ではなく、住民サービスの向上や効率化、そして地域社会の持続可能性を高めるための戦略的な取り組みです。

あなたの地域でも、地元の自治体がどのようにDXを推進しているかを確認し、機会があれば提案やフィードバックを通じてそのプロセスに参加してみてください。
また、地域の課題をデジタル技術を用いて解決するアイデアがあれば、積極的に声を上げることで、より良い社会へ近づく一歩になります。

この記事が自治体DXと日本の戦略に対する理解を深める一助となれば幸いです。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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