この記事のポイント
- この記事では、日本企業がデジタル変革(DX)推進において直面する課題とその対策について考察しています。
- 日本企業はDXを成功させるためには、社内のデジタル人材不足の解消、経営層の年齢と在任期間の課題、組織文化の改善が必要です。
- DX推進には、技術だけでなく、組織の柔軟性と変革に対するオープンな姿勢が必要です。。
- 「2025年の崖」を乗り越えるためには、日本企業が既存のビジネスモデルを見直し、イノベーションを取り入れることが重要です。
- 成功事例を参考に、日本企業がデジタル変革を加速させるためには、国内外から最新の技術やアイデアを積極的に取り入れ、実践することが効果的です。
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の存続と競争力向上に不可欠であるにもかかわらず、日本企業はDXを進める上で多くの課題に直面しています。マッキンゼーのレポートによると、DXによる変革の可能性は認識されつつ、進める準備が追いついていないという状況です。
本記事では、デジタル人材不足や経営層の年齢と在任期間、組織文化といった日本企業がDX推進の際に抱える具体的な課題について考察し、それらの克服がなぜ重要であるかを解説しています。また、経済産業省の警告する「2025年の崖」という概念も提示しながら、DXを成功に導くための国内外の成功事例も紹介しています。
企業がこれから迎えるデジタル化の波にうまく適応し、デジタル変革を成功に導くための貴重なヒントとなれば幸いです。
「そもそもDXについてよく分かっていない」「DXについて包括的に知りたい」という方は、こちらの記事もご覧ください。
➡️DXとは?その定義や必要性、IT化との違いや、実際の事例を徹底解説
DX推進の課題とは
DX推進において、日本は諸外国に遅れを取っています。マッキンゼーのレポートでは、「デジタルは有望な次なる一手であるという認識はあるにもかかわらず、その推進の準備ができていないこと」が示されています。
デジタルに対するビジネスリーダーの考え方、マッキンゼーレポートより
以下は、日本企業が直面するデジタル変革(DX)の課題をまとめた表です。
課題の概要 | 主な内容 |
---|---|
社内のデジタル人材不足 | - IT業務の長年のアウトソーシングにより社内にデジタル人材が不足 - 新しい役割(プロダクトオーナー、アジャイルエンジニア、データサイエンティスト等)が必要 - 外部採用または社内育成・再教育の必要性 - 社内にエンジニアがいない、またはITシステム業務要件の定義を外部に依存 |
社長の年齢と在任期間 | - 日本の社長の平均年齢は上昇傾向にあり、2020年時点で59.9歳 - 日本のCEOの平均就任年齢は57.5歳で、平均在任期間は5.1年 - 短期間の任期ではデジタルを活用した大規模な変革が困難 |
外部の人材が活躍しにくい組織文化 | - 人材の流動性が低く、年功序列的な考え方が根強い - 同質の考え方が支配的で、過去の成功体験が強調されがち - 社内にデジタル人材が少なく、デジタルリテラシーが低い - 組織トップの強いコミットなしでは事業の中核を変革することが困難 |
これらの課題は、日本企業がデジタル変革を進めるうえで重要な障壁となっており、戦略的なアプローチが必要です。
社内のデジタル人材不足
DX推進におけるハンディキャップの1つは、これまでのIT業務のアウトソースによる社内のデジタル人材不足です。経済産業省のデジタルスキル標準化においても、「ビジネスアーキテクト」や「データサイエンティスト」など新しい職種の人材が多く定義されています。
DX推進に必要なのは、適切なスキルセットを持つ人材です。この節では、デジタル化をリードする人材が不足していることによる影響が多くの企業の課題となっています。
デジタルスキル標準化、経済産業省
【関連記事】
→DX人材育成のポイント:企業の成功事例を交えてわかりやすく解説
社長の年齢と在任期間
日本は社長の在任期間が短くなりやすく、役員も高齢であることが多いです。
これにより、新しい技術を取り入れ推進するには在任期間が足りないことや、若者のように新しい技術を取り入れる事に積極的ではないといった問題が考えられます。
外部の人材が活躍しにくい組織文化
終身雇用が定着していた日本では、少しずつ天職の文化が生まれているものの、まだ十分とは言えません。年功序列や生え抜き社員、人材流動性の低さやこれまでの会社の成功体験といった要素が重なり、外部からDX人材がきて活躍するケースが少ないといえます。
DX推進の重要性
DXを進めていく上で重要な概念として「2025年の崖」があります。これは経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で提唱された概念で、複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存のITシステムが、日本の企業に大きな経済損失をもたらす可能性を指します。
レポートによると、もしDXが十分に進まなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が発生するリスクがあると警告しています。
2025年の崖、経済産業省
ビジネス環境は日々進化し続けており、競争は激化の一途を辿っています。日本が経済損失を産まないためにもDXを推進し、競合優位性を会得することは急務です。
【関連記事】
→DXはなぜ必要?その理由やメリット、社内DXの推進方法を徹底解説
国内外の成功事例
この画像は、マッキンゼーが「DXによる大規模な企業変革を成功させてきた企業の経営者へのヒアリング結果」をまとめたものです。
この図より、DXを成功させるには推進体制、組織能力、効果実現、デジタル戦略が構成要素として存在し、実際にその効果をモニタリングすることでDXが成功することが伺えます。
DXが成功した状態、マッキンゼーレポート
まとめ
DX推進における主な課題は、日本企業がデジタル変革を進めるうえで直面している社内のデジタル人材不足、経営層の年齢と在任期間の問題、そして外部人材が活躍しにくい組織文化であることを紹介しました。
これらの課題は、デジタル化を加速させるための重大な障害となっており、それぞれの問題を解決するための戦略的なアプローチが求められます。
DXに関する各国の取組状況と我が国における課題、経済産業省
デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ、マッキンゼーデジタル日本