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コーパスとは?自然言語処理やAIとの関係性をわかりやすく解説!

この記事のポイント

  • コーパスの意義と活用方法を解説
  • AIの自然言語処理にコーパスは不可欠
  • コーパスの種類と具体的な利用例を紹介

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

AIや自然言語処理の分野で注目される「コーパス」とは、大量のテキストデータを集積し、品詞などの情報を付与して構造化したデータベースです。
コーパスは、AIがネイティブのように自然な言葉を使えるようにするための重要な役割を果たします。

この記事では、コーパスの基本的な意味から、具体的なメリット、種類、AIや自然言語処理における利用例まで幅広く説明します。

言語学、翻訳、教材開発などの領域に応用されるコーパスが、言語に関わるあらゆる分野でどのように活用され、どのような効果を発揮するのか、具体的な事例とともに分かりやすく紹介します。

コーパスとは

コーパスとは、本、雑誌、映画、テレビなどのさまざまなメディアで使われている文字化された話し言葉を大量に集め、コンピュータで検索できるようにしたデータベースのことです。

自然言語処理の研究に利用するために、自然言語を構造化して大量に蓄積し、品詞などの言語的な情報も付与されています。
言語学において人間が日常的に使っている自然言語を、コンピュータに処理させる技術を自然言語処理と言います。
元々は、「身体」を意味するラテン語「corpus」に由来します。

コーパス
コーパスの例


コーパスの役割

コーパスの最大の役割は、自然な言語表現を理解することにあります。言い換えれば、AIがネイティブのように自然な言葉を使えるようになるのです。

その効果を今回は二つ紹介します。

単語の使用頻度がわかる

コーパスを活用すると、単語の使用頻度が数字で表示されるため、ネイティブがよく使う表現を把握することができます。

例えば、同じような意味を持つ複数の単語や表現をコーパスで検索すれば、よく使われる表現が明らかになります。
これによって、ネイティブの表現を使いこなすために必要な語彙やフレーズを素早く習得できます。

例えば日本語のコーパス少納言で、「朝食」で検索をかけると2073件の検索結果が出てきます。
一方で、「朝ごはん」や「朝ご飯」で検索をかけるとそれぞれ276件と126件の合計402件の検索結果でした。

この結果から朝食という表現の方が約5倍の頻度で使われていることがわかります。

言葉の使い分けや正しい言い回しが確認できる

コーパス内のテキストは実際の言語使用を反映しているため、ある単語がどのような文脈で使われるかを正確に把握することができます。
人間が自然だと感じる文章を作成するためには、微妙なニュアンスの違いや言い回しの使い分けの知識が必須です。

例えばコーパスで「掃除をする」と「掃除する」の検索をそれぞれかけてみると、94件と137件の検索結果でした。
これにより、「掃除する」の方がより自然な表現だということがわかります。


コーパスの種類

コーパスは大きく分けると一般コーパスと特殊コーパスに分類されます。
一般コーパスは、「特定の条件や偏りなく様々なテキストを包括的に含むもの」ですが、「特殊コーパスは特定の言語学的特徴、時間期間、トピックなどに焦点を当てたもの」です。

これ以外にも、様々な種類のコーパスがあり、それぞれの用途に応じた研究やアプリに使用されます。
また、有料、無料などの利用条件も様々です。

日本語コーパス

日本語コーパスは、新聞記事、小説、日常会話、ウェブテキスト等、さまざまなソースから集められた日本語のデータ集です。

代表的なコーパスとして「現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)」があります。

現代日本語書き言葉均衡コーパスは、現代日本語の書き言葉を把握するために約1億語を収録したデータベースです。
無償オンライン版の少納言(登録不要)と中納言(要登録)、そして有償オンライン版の3タイプが利用できます。

少納言
少納言で「掃除する」の検索をかけた結果

英語コーパス

英語コーパスには、ブリティッシュ・ナショナルコーパス(BNC)コーパス・オブ・コンテンポラリー・アメリカン・イングリッシュ(COCA)など、英語話者の言語使用を幅広く収集したものがあります。

これらは英語教育、言語学、翻訳学、辞書作成、そして自然言語処理の研究に欠かせません。

BNCは約1億語のイギリス英語が収録されています。1回で検索できる結果は50例までという制限があるものの、ネットワーク接続があれば世界中どこからでも利用可能です。
また、COCAは、アメリカの小説や新聞、雑誌、ラジオなどで使われている単語を集めて作られています。

COCA
COCAで「make dinner」の検索をかけた結果

学習者コーパス

学習者コーパスは、言語学習者が使用するために収集された言語データのことです。
これは、ネイティブではない人が該当言語を学習する時に利用されるコーパスです。

学習者コーパスには、学習者が読んだり聞いたりした文や文章、そして学習者自身が作成した文章などが含まれます。

学習者コーパスは、言語学習におけるさまざまな目的に利用されます。
例えば、以下のような利用方法があります。

  1. 言語習得の分析
    学習者コーパスを分析することで、学習者が特定の言語現象や文法ポイントをどのように理解しているかを把握することができます。これによって、教える側は、学習者のニーズに合わせたアプローチを取ることができるようになります。

  2. 誤り分析
    学習者コーパスを用いて、学習者がよく犯す誤りや間違いのパターンを把握することができます。教える側は学習者の誤りを理解し、学習者側の悪い癖を把握することができて、効果的なフィードバックを与えられます。

  3. 教材開発
    学習者コーパスから得られた情報を元に、教材や教科書を開発することができます。学習者がよく使う表現や文型を反映した教材は、より効果的な学習を促進することができます。


C-JAS(Corpus of Japanese As a Second language)など、母国語が中国語や韓国語である人が日本語を学ぶために利用できるコーパスは多く存在します。

また、「JEFLL学習者コーパス(Japanese English as a Foreign Language Learner)」(サービス終了)は、中学生や高校生など、日本人が英語を学ぶ過程で作成された作文データからなるコーパスです。

検索エンジンコーパス

検索エンジンコーパスは、検索エンジンがウェブページをインデックスするために使用するデータのことです。
これは、ウェブ上の様々なウェブページのテキストやメタデータ、リンク情報などを含んでいます。

検索エンジンコーパスには、次のようなデータが含まれます。

  1. ウェブページのテキスト
    ウェブページの本文や見出し、リンクテキストなどのテキスト情報が含まれます。これにより、検索エンジンはページの内容を理解し、適切な検索結果を提供することができます。

  2. メタデータ
    タイトル、メタ説明、キーワードなどのメタデータ情報が含まれます。これにより、検索エンジンはページの内容やテーマを把握し、ユーザーに最適な結果を表示するための手がかりを得ることができます。

  3. リンク情報
    ウェブページ間のリンク関係やリンクのアンカーテキストなどの情報が含まれます。これにより、検索エンジンはページの重要性や関連性を評価し、適切なランキングを行うことができます。

自然言語処理におけるコーパスの役割

自然言語処理(Natural Language Processing/NLP)は、人間が使用する自然言語を機械が処理し、内容を抽出する技術です。
対象となるのは、会話や論文などの自然言語で、言葉の意味を解析する手法を指します。

自然言語処理では、文章の構造や全体像を表す「形態素解析」、単語のつながりを理解する「構文解析」、意味解釈を行う「意味解析」、そして文脈を考慮して調整を行う「文脈解析」といった過程を経て、自然言語の文章を処理します。
この過程で、機械可読なデータやコーパスが必要です。

自然言語は、同じフレーズや単語でも文脈によって解釈が異なることがあります。
そのため、機械がこれらの曖昧さや意味の重複を正確に処理することは困難ですが、技術の進歩によりそれらの解決が期待されます。


自然言語処理を応用した事例

自然言語処理(NLP)は今日、数多くの実用的な応用事例が存在します。これらの応用事例でコーパスは、言語データを提供し、より正確で効率的なシステムを開発するための基礎素材として機能しています。

文章の生成や要約

コーパスは文章生成や要約といったタスクにも使用されます。
例えば、大量のニュース記事が含まれるコーパスを機械学習モデルにフィードすることで、重要なポイントを抜き出して要約するAIシステムを開発することができます。

要約には2種類あり、抽出的要約と生成的要約があります。

抽出的要約は、文章から主要な情報を抽出し要約を作成する手法で、現在の自動要約の主流です。
一方、生成的要約は、内容をより的確に反映するために言い換えや短縮表現を用いて、より自然な文章を生成します。

最近では、AI文章生成サービスを使った文学作品の審査コンテストなども開催され、AIと人間の共同執筆による創作活動が注目されています。

近年話題のChatGPTClaudeなども文章生成、要約サービスの一つです。
chatgpt
chatGPTで上の文章を要約させた結果

チャットボットや音声対話システム

チャットボットや音声対話システムでも、人間同様に多様な会話パターンに対応するためにコーパスが活用されます。
ある領域に特化した会話を行うシステムの場合、その分野に関する専門的なコーパスが有効です。

チャットボットや音声対話システムは、自然言語処理技術を活用しています。チャットボットは、入力された文章の文脈や意味を理解し、適切な回答を生成します。
日本語では主語が抜けることが多いため、直前の文脈を記憶して適切な応答を行う仕組みが特徴です。音声対話システムは、音声を聞き取り理解し、適切な対応を返します。

それぞれ人間同様に多様な会話パターンに対応するためにコーパスが活用されます。
特に、ある領域に特化した会話を行うシステムの場合、その分野に関する専門的なコーパスが有効です。

代表的なサービスには「Siri」や「Googleアシスタント」、そして「Amazon Echo」があります。
また、「CLOVA Speech」は、日本語や韓国語の音声認識サービスで、ノイズの多い環境でも高い精度で音声を認識し、テキストに変換します。

検索エンジン

検索エンジンも自然言語処理技術を利用しており、Googleが開発した「BERT」はその代表例です。

BERTは、会話型式や複雑なクエリに対しても文脈を理解し、高精度な検索結果を提供します。また、少ないデータ量でも幅広いタスクに応用でき、感情分析などへの活用も可能です。

ただし、偏見などの課題もありますが、改良を加えることでさらなる進化が期待されます。
最近では、Googleが「MUM(Multitask United Model)」を発表し、BERTよりも性能が高く、マルチタスクに対応し、動画や音声入力にも対応しています。この技術は将来的にGoogleの様々な製品に採用される予定です。

機械翻訳

機械翻訳の精度を向上させるには、大量かつ多様な言語データが必要です。コーパスに基づいて訓練された機械翻訳システムは、異なる言語間の文脈をより正確に捉えられるようになります。
これにより、より流暢で自然な翻訳を提供できるようになるのです。

近年、Google翻訳やDeepL翻訳など、機械翻訳サービスの精度が急速に向上しています。これは、自然言語処理技術の進歩によるもので、従来の直訳に近い翻訳から、より自然で適切な表現になっています。

特にDeepL翻訳は、ディープラーニングを活用し、高精度な翻訳を実現しています。そのため、ネイティブスピーカーでも違和感の少ない翻訳文が生成され、ネット上でも注目を集めています。

deepl
適当な英文をDeepLで日本語に翻訳

テキストマイニング

テキストマイニングは、記述された文章を統計学やAIのデータ解析技術を用いて分析する手法です。
この技術は、大量の文章データから規則性のある情報を取り出すことができます。特に、ビッグデータの活用においては欠かせない技術となっています。

近年では、コールセンターのやり取りの記録やWebアンケートの自由記述文、さらにはインターネット掲示板やSNSの投稿などのデータもテキストマイニングの対象となっています。

これにより、マーケティングや商品開発などの目的で、ユーザーの生の声を適切かつ効率的に集約し、企業活動に反映させることが可能になっています。

【関連記事】
➡️ChatGPTをテキストマイニングに活用する手順を徹底解説

このように、AIの性能向上において、コーパスは欠かすことができない資源です。AIシステム、特に機械学習(ML)に基づくモデルは、高品質なデータによってのみ最適に機能し、望ましい結果を出せるようになります。


まとめ

本記事ではコーパスの定義、特徴、種類、そしてAIと自然言語処理におけるその重要性について解説しました

言語学習、言語処理、翻訳、生成、要約様々な用途に応用され、言語に関する必要不可欠なデータソースとしてコーパスは活用されています。

現状は違和感の表現や曖昧さの解消、生成AIにおけるハルネーションなどの課題はたくさんあります。
しかし、技術の進歩やコーパスの質の上昇により、それらの課題が解決されることが期待されています。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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