この記事のポイント
- ChatGPTの記憶はセッションごとに管理され、新セッションでリセットされる
- 長い会話ではメモリ制限により途中で記憶がリセットされることがある
- 定期的な会話の要約が効果的な対策の一つ
- 英語での対話やプロンプトエンジニアリングの活用も有効
- GPT-4へのアップグレードでより長い会話が可能になる
監修者プロフィール
坂本 将磨
Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。
ChatGPTを利用しているときに、「前の会話内容を忘れてしまっていた」という経験がある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ChatGPTの会話忘却の原因を、セッションごとの記憶管理やメモリ制限の観点から分かりやすく解説します。さらに、要約の活用、英語での対話、プロンプトエンジニアリング、GPT-4へのアップグレードといった実践的な対策方法を提案します。
ChatGPTとのスムーズなコミュニケーションを目指す方々への問題解決のヒントとなれば幸いです。
最新モデル、OpenAI o1(o1-preview)について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください⬇️
OpenAI o1(ChatGPT o1)とは?その特徴や使い方、料金体系を徹底解説!
目次
ChatGPTが会話を忘れてしまう原因
ChatGPTが会話を忘れる原因は大きく分けて次の二つがあります。
- ChatGPTの記憶はセッション毎に行われる
- *会話が長く続くとメモリ制限によりリセット
1. ChatGPTの記憶はセッション毎に行われる
ChatGPTによる対話は、一般に「セッション」に基づいて処理されます。セッションとは、画像の左側にある赤い枠で囲われた部分です。
これは、ユーザーがチャットを開始してから終了するまでの一連の会話のことを指し、このセッション中にChatGPTは、会話を記憶します。
しかしながら、新しいセッションが開始されると、以前の情報はリセットされてしまいます。これは、ChatGPTが人間のような長期記憶を持たないためであり、プライバシー保護の観点からも意図された設計です。
つまり、ChatGPTはセッション毎に会話を区切って管理しているため、前のセッションの内容を忘れてしまうのです。
2. 会話が長く続くとメモリ制限によりリセット
ChatGPTが会話中に記憶をリセットするもう一つの原因は、メモリ制限に関連しています。ChatGPTを含む多くのAIモデルでは、所定のメモリサイズによって処理できるインプット(入力テキスト)の長さが限定されています。
メモリサイズにはトークン数が関係しており、GPT-3.5の場合トークン数は4096です。これは会話にすると「およそ数十回から数百回程度の応対が可能な量」です。
つまり、長時間の会話を続けていると、途中でメモリ制限に達してしまい、それ以前の会話内容が失われてしまうのです。
また、一度に入力する文章が長すぎる場合は、ChatGPTは上手く内容を理解できない可能性があります。
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ChatGPTが会話を忘れる時の対策
ChatGPTが会話を忘れないようにするための対策方法は次の4つがあります。
- 定期的に会話ログを要約させる
- 英語で対話する
- プロンプトエンジニアリングを活用する
- GPT-4にアップグレードする
1. 会話ログを定期的に要約する
ChatGPTとの長い会話では、定期的に対話内容の要約を依頼することが効果的です。要約することで、ChatGPTは会話の重要なポイントを把握しやすくなり、全体的な文脈を忘れにくくなります。
最も手軽な方法は、ChatGPTに自動的に要約を作成させることです。
例えば、「今までの会話を300文字程度で要約してください」といった指示を与えるだけで、ChatGPTが自動的に要点をまとめてくれます。
もう一つの方法は、ユーザー自身が手動で要約を入力することです。これは少し手間がかかりますが、ユーザーが重要だと思うポイントを強調できるため、ChatGPTがその部分を忘れにくくなるでしょう。
定期的な要約は、ChatGPTが会話の重要な内容を覚えておくのに役立ちます。長い会話や複雑な話題を扱う際には、ぜひ試してみてください。
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2. 英語で対話する
ChatGPTとの対話を英語で行うことは、会話忘却を防ぐ効果的な方法の一つです。その理由は主に2つあります。
まず、ChatGPTの学習データの大部分は英語で書かれています。そのため、英語での対話はChatGPTにとって処理しやすく、理解度が高くなります。
自然言語処理の観点からも、ChatGPTは英語での会話をより正確に理解し、文脈を捉えやすいのです。
次に、**英語は日本語と比べて一般的に表現がシンプルで簡潔だという特徴++があります。つまり、同じ内容を伝えるのにより少ない単語数で済むのです。
この特性により、英語での対話はメモリ制限に達するまでにより多くの情報をやり取りできます。結果として、ChatGPTが会話内容を忘れにくくなるのです。
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3. プロンプトエンジニアリングを活用する
プロンプトエンジニアリングとは、AIに適切な指示(プロンプト)を与えることで、より良い結果を引き出すテクニックです。
ChatGPTとの会話でも、うまくプロンプトを設計することで、忘却を防ぐことができます。
例えば、「この会話では、あなたは秘書のように振る舞い、私の指示を忘れないようにしてください」といったプロンプトを冒頭に与えることで、ChatGPTに会話を忘れないよう意識させることができます。
また、「今までの会話を踏まえて」といった言葉を適宜使用することで、ChatGPTに過去の会話を参照するよう促すこともできるでしょう。
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4. GPT-4を利用する
もし、GPT-3.5を使用していてChatGPTの会話忘却に悩んでいるなら、GPT-4(有料版)の利用を検討してみましょう。GPT-4は、GPT-3.5と比べて大幅に性能が向上しており、会話忘却の問題を解決できる可能性があります。
GPT-4の最大のメリットは、トークン数の増加です。トークン数とは、モデルが一度に処理できるテキストの単位のことを指します。
GPT-4のトークン数はGPT-3.5の2~8倍とも言われており、これにより、より長い会話に対応することができます。
つまり、GPT-4を使えば、メモリ制限による会話忘却が起こりにくくなるのです。
また、GPT-4は全体的な性能も向上しています。より正確な理解力と表現力を持ち、複雑な文脈も追跡しやすくなっています。これにより、会話の流れを忘れにくくなり、ユーザーとのコミュニケーションがスムーズになります。
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ただし、GPT-4を利用するには、ChatGPT Plusへのアップグレードが必要です。
これには費用がかかりますが、会話忘却の問題を解決し、よりスムーズなコミュニケーションを実現するには効果的な方法だと言えるでしょう。
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まとめ
本記事では、ChatGPTが会話を忘れてしまう原因とその対策を詳しく解説しました。セッション毎の記憶管理やメモリ制限といったChatGPTの特性が、会話忘却の主な原因であることが分かりました。
これらの問題に対処するために、会話ログの定期的な要約、英語での対話、プロンプトエンジニアリングの活用、GPT-4へのアップグレードなどの効果的な方法を提案しました。状況に応じて適切な対策を選択し、組み合わせることで、ChatGPTとのスムーズなコミュニケーションを実現できるでしょう。
ChatGPTは私たちにとって強力なツールであり、その能力を最大限に引き出すためには、利用者側の工夫も必要です。本記事で紹介した対策を参考に、ChatGPTとのより良い対話を目指してみてください。