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AIで生成した作品の著作権はどうなる?注意点や実際の事例を徹底解説

この記事のポイント

  • 本記事では、AIによって生成されたコンテンツの商用利用とその法的な問題点について解説しています。
  • AIによる作品の著作権所持者は現在、明確な基準がなく、開発者、学習データの著作者、プロンプトの入力者の三者が考えられています。
  • 著作権に関する国際的な動向を踏まえ、各国での法整備と議論が進んでおり、日本を含む世界各国の取り組みが注目されています。

監修者プロフィール

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

AIが生成した作品の商用利用は、クリエイティビティの新たな地平を切り拓く一方で、著作権を巡る法的な問題に直面しています。AI技術の進化により簡単に高品質なコンテンツを生成できるようになった今、誰がその著作権を保持するのかという議論が活発に行われています。

本記事では、AIによって作成されたコンテンツの商用利用に関する、著作権の所在や法的な見解、実際の事例を基に、今後の展望と課題について解説します。AIの学習プロセスや生成結果の著作権帰属に関して、国際的な視点を含めた最新の動向についても触れ、個人や企業が適切にAI生成物を利用するための指針を提供します。

AIによる生成物の著作権は誰のものか

現状、AIによる作品の著作権の所持者については法的に明確な基準は確立されておらず、多くの見解が存在します。
著作権の権利帰属については、一般的に以下の三つの視点が考慮されます。

1.生成AIサービスの開発者

AI技術を用いて作成されたプラットフォームを提供する企業や個人がが著作権を主張する可能性があります。
しかし、生成AIサービスの開発者はあくまでも、生成AIサービスそのものの作成が目的であると考えられるため、著作者には該当しないと判断される場合が多いです。

2.学習データの著作者

AIが学習に使用されたデータ(アニメや小説や、プログラミングのコードなどのコンテンツ)の著作者が、生成されたコンテンツに対する著作権を持つ可能性もあります。
これについては、既存の著作物との類似性によって解釈が変わってくると考えられています。(詳しくは後述します)

3.プロンプトの入力者

AIに指示を与えたユーザー(プロンプトを入力してコンテンツを作成したユーザー)が、生成されたコンテンツへの創作的な貢献を行ったとして、著作権を主張する可能性があります。

実際に文化庁の見解では、「プロンプトを入力したユーザーが、思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものと認められれば著作者に該当し、その権利が帰属する」との見解がなされています。
参考:AIと著作権(文化庁)

上記はAIにまつわる著作権基準の一例ですが、日本ではまだ判例がなく、非常に判断が難しい問題です。
また、各生成AIサービスによっては、無料プランと有料プランでの商用利用の可否や、ライセンス表記の義務などが定められている事が多いので、各サービスの利用規約を確認する事をお勧めします。


既存の著作物への侵害リスク

AIが生成するコンテンツは、しばしば既存の著作物に影響を受けているものも見受けられます。
有名なアニメのキャラクターや小説など、AIによって生成された画像や文章が、既存の著作物と類似している場合、著作権侵害の問題が生じる可能性があります。
著作権侵害を判断する上で重要な要素は「類似性」と「依拠性」です。これらは、AI生成物が既存の著作物とどの程度似ているか、そしてその生成が既存の著作物に依存しているかどうかを判定するために用いられます。

例えば、以下はBingの画像生成AIで、「ディズニー」と入力して生成された画像です。

画像生成ai ディズニーの画像
「ディズニー」というプロンプトでAIによって生成された画像

このように、AIが学習したデータを元に作成されてるとは言え、「ディズニーを完全に模倣する意図を持って作成したか」と問われたら否定のしようのない画像が生成出来てしまいます。

これを元にして動画や映画などのコンテンツを作成したとして、「あくまでもAIツールで作成したものであり、著作権はプロンプトの入力者に帰属する」という理屈が通ってしまえば大問題ですよね。

この件に関してMicrosoft社は直接的な声明は出していませんが、以前には「ユーザーが自社製品(CopilotやBing Image Creatorなど)を利用し著作権関連の訴訟に巻き込まれた場合、そのユーザーを保護する」という発表がありました。
参考:Microsoft announces new Copilot Copyright Commitment for customers


AIの学習プロセス自体が著作権侵害になる?

AI開発・学習段階での著作物利用は、AIの性能と精度を向上させるために重要です。しかし、この段階で使用されるデータが既存の著作物を含む場合、著作権の問題が発生する可能性があります。

こちらについても多くの議論が生じていますが、実際にOpenAIやMicrosoft社は、「AIの学習データの為に著作物が無断利用された」として、作家や匿名団体によって訴訟を起こされています。
参考:「ゲーム・オブ・スローンズ」作者ら、米オープンAIを提訴 ChatGPTの学習過程は著作権侵害

日本において、AIの学習データに関しては著作権法第30条の4により、AIの開発段階における言語モデルの学習データについては「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用行為は、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能」とされています。

ただし、個別の事例によって判断が異なる可能性があるので注意が必要です。
AIコンテンツの著作権
文化庁:「AIと著作権」より


世界各国のAI生成物に関する著作権への対応

ChatGPTを初めとするAIツールと著作権法の国際的な動向を確認すると、各国がAI生成物に対する著作権認定や保護範囲を巡って議論を展開していることがわかります。
世界各国で法整備に対する議論が進んでおり、国際機関(WIPOなど)もAI技術と著作権法の整合性や適用範囲について検討を進めています。

現状の世界各国のAI生成物に関する著作権制度を概観すると、次のような動きが見られます。

米国

米国では、著作権法は人間による創作物に限定されており、現状ではAI生成物に著作権が認めない、という声明が出されています。実際に今年8月には「AIが制作した創作物には著作権が認められない」という判決が下されました。
しかしその後、米国著作権局が著作権に関する意見募集を開始するなど著作権保護への動きも見られ、今後の動向が注視されます。
参考:AIが生成した作品、著作権認められず 米裁判所が判断

中国

基本的には認められて今
しかし昨年、Stable Diffusionを介して生成された写真が、「人間の作成者の独創性と知的入力に基づく著作権法の保護の下で芸術作品と見なされるべきである」
とされ、その権利が認められました。米国の意向に対する中国でのこの判例は、将来のAI著作権紛争に広範囲な影響を及ぼすと予想されます。
参考:Computer Love: Beijing Court Finds AI-Generated Image is Copyrightable in Split with United States

EU

生成AI利用の規制案に付随して、当初は生成AIの学習において、著作権のある資料の使用を全面的に禁止する提案をしていたが、開示義務による透明性の確保をするという方針になっている。
参考:EU、AI利用巡る規則案で合意 著作権の透明性確保

今後、国際的な議論が進められる中で、各国の著作権制度は変化し続けることが予想されます。また、AI領域の著作権問題は各国内でとどまらず、世界水準でのルールが設けられる可能性も考えられます。
最新の情報に注意を払いつつ、企業・個人共に適切な対応が求められます。


AIと著作権にまつわる今後の展望と課題

AI著作権の今後の展望は、技術の進歩と法制度の整備が大きく影響すると考えられます。AIが生成するコンテンツが増える一方で、法制度の整備が追いつかずに権利侵害や利益の分配問題が発生することが懸念されます。
潜在的な課題としては、著作権法の改正や新たな指針が著作物の価値や創作意欲にも影響を及ぼす可能性があります。

例えば、AI著作物に対する保護が強化されれば、人々の創作意欲や活動が活性化する一方、過剰な保護が創作の自由やイノベーションに制約を与えることもあるかもしれません。
しかし、国際的な事例や議論が積み重ねられる中で、徐々に適切な対応策が模索されていくと考えられます。
また、AI生成物を活用するビジネスモデルや教育分野においても、権利関係の明確化や法制度の整備が進むことで、新たな可能性が広がると期待されています。

このように、AI著作権の今後の展望と潜在的な影響は、技術の発展と法制度の整備が大きく関わっており、適切なバランスを見極めながら対応を進めることが求められています。


まとめ

ChatGPTは便利な言語生成ツールですが、その商用利用には慎重な対応が求められます。学習データや生成文章の著作権を意識し、人間の創作性を高めることで適正な利用を心がけましょう。

また、ChatGPTに限らずAI利用時の著作権意識向上は、経済や文化の発展において重要なポイントとなります。AIが生成する作品や表現に関する法的な問題は、企業や個人にリスクをもたらす可能性があります。
各個人・企業のAI利用時の著作権意識を高めることで、適切な対策を講じ、リスクを回避することが重要視されます。

また、著作権意識を高めることで、生成AIの活用を通じた新たなビジネスチャンスや、文化的交流を促進することができます。経済や文化の発展を目指す中で、AI著作権の進展を理解し、適切に利用することが重要であると言えるでしょう。

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監修者

坂本 将磨

Microsoft AIパートナー、LinkX Japan代表。東京工業大学大学院で技術経営修士取得、研究領域:自然言語処理、金融工学。NHK放送技術研究所でAI、ブロックチェーン研究に従事。学会発表、国際ジャーナル投稿、経営情報学会全国研究発表大会にて優秀賞受賞。シンガポールでのIT、Web3事業の創業と経営を経て、LinkX Japan株式会社を創業。

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